綿の話
種の系統 綿の種類は、二系統あって、約20種が分布し数種が栽培されています。
一つは、アフリカ起源の2倍体系で、アフリカから数千年前にインドに伝り作物化される過程で、更に二系統に分派したが、これらをアジアワタと総称します。
アジアワタは、キダチワタとシロバナワタに大別され、そして、キダチワタからは1年生ワタが生じ、10世紀以降に中国に伝わって12世紀中頃にナンキンワタの系統が出来、日本へも伝えられました。

一方、アメリカ大陸でも数千年前からワタを栽培していたことは遺跡の調査から明らかにされていて、中央アメリカ起源の4倍体系が北アメリカに伝えられたものの中から、早生の1年生リクチメン(陸地綿)が
出来ました。

また、その後、アフリカの2倍体系が中央アメリカや南アメリカにも伝わり、その内の、2倍体A染色体種の綿とペルーの現地種の内の4倍体D染色体種が自然交雑して、4倍体AD染色体種が出来、ペルーワタと呼ばれ、このペル−ワタからカイトウメン(海島綿)が生まれ、更に改良され18世紀にエジプトワタが出来ました。
用途 1.繊維としての使用は、この繊維長の順位(長い)@カイトウメン
  AエジプトワタBリクチメン(長繊維種)Cリクチメン(短繊維種)
  Dアジアメン系(キダチワタ、シロバナワタ、ナンキンワタ)(短い)で用途
  が変わり、最も繊維長の短いアジアメン系は、詰綿、脱脂綿や布団綿
  などに用いられ、最も繊維長の長いカイトウメン、エジプトメンは縫い
  糸など製糸用で、中間のリクチメンは布地などの紡績用の用いられま
  す。
  従って、世界で最も多く栽培されているのが、リクチメンです。
  また、種子の表面には長い綿毛と短い地毛が生えていて、繊維として使
  用できない短い地毛はリンターパルプと呼ばれ、良質な製紙原料となり
  ます。
2.綿実の種子から搾った綿実油は、有毒色素ゴシポール(gossypol)を除
  去したもので、食用油(サラダ油やオリーブ油の代用)、マーガリン、ロー
   ソク、石けんなどに広く利用される。
3.薬用として、綿実の種子は催乳薬になるが有毒色素ゴシポールが含ま
  れるので用量には注意が必要で、また、根の表皮(メンコンピ
  :綿根皮)は、通経、陣痛促進薬(麦角の代用)として用いられる。
*麦角:ライムギに寄生する麦角菌(Claviceps purpurea)の菌核に含まれ
  るインドールアルカロイドが代表的なもので、他にも小麦に繁殖するなど
  の麦角菌があり、古来から穀物につく猛毒として知られている。
*ゴシポール:殺精子作用が有り、種子、葉、茎 に含まれます。