萱草の話
別名 忘れ草、忘憂
分類 ユリ科 ワスレグサ属
原産地 中国
奈良時代以前に中国から伝来し、食用・薬用の目的で栽培されていたのが野生化したと云われています。
この中国から伝来して野生化した種は、ヤブカンゾウ(藪萱草)と云われ、この種が染色体は3媒体で結実せず、肥大した地下茎を使い、分株することで繁殖し、あまり人里離れた所には生育していません。
また、ノカンゾウ(普通、果実は出来ず、稀には結実します)も同様との説があります。
日本ではユリ科ワスレナグサ属の総称としてカンゾウ(萱草)と呼ぶ場合があります。
正しく萱草に相当する植物は中国産のホンカンゾウ(これは他のノカンゾウ、ヤブカンゾウやハマカンゾウなどと区別するために日本で呼ばれている)で、日本には自生しないと云われています。
このホンカンゾウは中国で種子が出来、一重の花が咲きます。
日本の野生種には、現在数種類知られており、開花時間の点から昼咲きのニッコウキスゲ、ノカンゾウ、ヒメカンゾウ、エゾキスゲ、夜咲きのユウスゲなどの種群が区別されるが、自然条件下でもまれに自然雑種が形成されることがあるそうです。
薬用部分 蕾、葉、根
生薬名 蕾:キンシンサイ(金針菜)
葉、根:カンゾウ(萱草)
成分 蕾:ヒドロオキシグルタミン酸、コハク酸、β-シトステロール他
葉:アルギニン、コリン他
根:アスパラギン、リシン他
適用 解熱:金針菜の煎じ液を服用
利尿、むくみ、不眠:萱草の煎じ液を服用
食用 金針菜共に中華料理に用いられる。また、古くはお茶と同様に航海中のビタミン不足を補う食料とされた。
生の蕾、新芽は軽く茹でて水で晒して、おひたし、和え物、炒め物、天ぷらなどに
ノカンゾウ、ヤブカンゾウも、薬用、食用ともに、同じです。
名前の由来 漢名の萱草を音読みして戦前までは旧仮名使いで“クワンザウ”であったが、戦後の新仮名使い“カンゾウ”となり、他の薬草の“カンゾウ(甘草:マメ科カンゾウ属)と同じになり、混乱が生じています。
古くは、忘草、忘憂と呼ばれており、和名抄(934年)に萱草の漢名をあげ、一名“忘憂(ぼうゆう)”和名を“和須礼久佐(わすれぐさ)”としています。
忘草、忘憂の由来は、中国の詩人“陶淵明(とうえんめい:365〜427年)の飲酒詩の一節に“忘憂の物”とありこれは、酒の異称であり萱草の異称であると云われていて、その訳には幾つかの説があります。
その一、この美しい花を見て、憂いを忘れる。
そのニ、金針菜は美味しくて、食べると憂いを忘れる。
その三、早春の新芽を食べると“憂いが晴れる”と云われたのが、花を見
     るだけで”憂いを忘れられる”になった。
その四、金針菜は薬効として、気分を高揚させる興奮剤になることから。
他に、牧野富太郎博士の説は、中国でも、この花を見て憂いを忘れるという故事から“忘れる”に“萱“の文字を充てることから“萱草”と云い、和名は、この漢字の意訳であると、しています。
近種のユウスゲ(夕菅)は別名キスゲ(黄菅)とも云い、花の色が黄色く、葉は萓笠を作るカサスゲ(笠菅)に似ていることに因み、ニッコウキスゲとか、エゾキスゲは、自生地の地名を付けたもの。
萱草色(かんぞういろ)
萱草の花色にちなんだ黄味がかった橙色で、源氏物語にも登場する由緒ある伝統色ですが、当時は喪の時に着用される凶色とされふだんは着ない色で、スオウやアカネ、クチナシなどで染めたようです。
因みに黒が喪服の色になったのは明治時代からで、それ以前は貴族のみ萱草色で、他はは白でした。
階級によっての色分けは貴族や武家で、貴族の一番高級な色は“黒”で、武士は”浅縹(あさはなだ:濃い水色)でした。