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お題:  夏の予感

ガクアジサイ [額紫陽花]
別名 ガク、ガクソウ、ガクバナ
分類 ユキノシタ科 アジサイ属
日本の固有種で、房総・三浦半島・伊豆半島・伊豆諸島・小笠原等の沿海地の低木の林に自生するそうです。
薬用 花は解熱、葉は瘧(おこり:決まった時間をおいて発熱してはさめることを繰り返す熱病。マラリア性の熱病。)に特効とされました。
名前の由来 “万葉集(600年位〜759年の歌を収載)”には2首詠われており“アジサイ(味狭藍/安治佐為)”、“新選字鏡(897年頃)”では“アジサイ(安知左井)”や“和名抄(934年頃)”には“アヅサイ(安豆佐為)”などと記述されていて、古代から“アジサイ/アヅサイ”と呼ばれていました。
真青な花が集って咲く姿から、集めるの“あづ”に真青を意味する“さあい(真藍)”の“アヅサアイ(集真藍)”が転訛して“アジサイ“となったと云われています。
また、漢字の“紫陽花”を“アジサイ”に充てたのは“和名抄”が最初で、“白氏文集律詩に云ふ、紫陽花 和名安豆佐為”と記述されており、中唐時代の詩人白居易(はくきょい・白楽天(はくらくてん):772−846年)の詩文集“白氏文集”中の詩“紫陽花”に由来しています。
その詩はつぎのようなものです。
 [紫陽花詩]
何年植向仙壇上(何れの年にか植えて仙壇の上に向う)
早晩移栽到梵家(早晩移栽して梵家に到る)
雖在人間人不識(人間に在るといえども人識らず)
与君名作紫陽花(君がため名づけて紫陽花となさむ)
“紫陽花詩”の註があり
招賢寺有山花一樹、無人知名(招賢寺に山花一樹あり、名を知る人無し)
色紫気香、芳麗可愛、頗類仙物(色紫にして気香しく、芳麗にして愛すべ                     く、頗る仙物に類す)
因以紫陽花名之(よって紫陽花を以てこれを名づく)
とあり、白居易による造語で、本当にあじさいであったかは疑問視されています。
それは、註書きから@“招賢寺に山花一樹あり:花木”A“色紫にして:花の色は紫”B“気香しく:香りが良い”が特徴で“アジサイ”に該当するのはAの花の色は紫のみです。
むしろ、中国にとっては外来植物であったライラックではなかったと云う説があります。
その後、貝原益軒も“大和本草(1709年)”で“紫陽花”と書いており、アジサイに“紫陽花”の字を充てることが定着しました。
ガクアジサイの名前は、花序の周縁を装飾花が額縁のように取り囲んでいることから付いたもので、装飾花の花弁のように見えるものは、萼です。
欧州への伝来は、古代に中国へ伝わり、中国から欧州へと伝わりりましたが、1829年にシーボルトが帰国の際に持ち帰ったのが契機となり、欧州で品種改良されたものが“セイヨウアジサイ”です。
アジサイの旧学名の“Hydrangea otaksa”の“otaksa”は、シーボルトが名付け、シーボルトの愛人だった長崎の遊女お滝さんに由来するそうです。
また“Hydrangea”とは、“水の容器”と云う意味で、沢山の水を吸収して蒸発する性質を表しています。
土壌と花の色 日本では古代からアジサイは青いものと思われていましたが、欧州で栽培されることで赤となり、派手目の花を好む欧州人にむしろ好まれ、欧州での品種改良に拍車が掛かり、あの見事な西洋種の作出となったようです。
では何故、日本では青で、欧州では赤と為るのでしょうか、日本は火山国なので、噴火による火山灰に覆われた土壌ですから酸性です。
対して欧州は古い岩盤と石灰岩で出来ており、それらが水や風また氷河
によって侵食されて出来た土壌ですから、アルカリ性です。
この事が切っ掛けとなり、酸性度と花色の関係の研究が行われ、その理由が分って来ました。
まず青花も赤花も発色させている色素は共に同じアントシアニンなのです。また、アントシアニンは酸性度(ペーハー:pHと記号で表す)によって、色が変化する性質(リトマス試験紙と同じ様な)があります。
pHとアントシアニンの発色と花の発色の関係は、結論から云うと、この様になります。
          アントシアニン  花・萼色
酸     性      赤色     青〜紫紅色
中     性     紫紅色     桃〜赤色
アルアカリ性      青色     桃〜赤色
アントシアニン色素単体と花色の関係は、逆になることが試験栽培などで分かってきて、土壌のpHが花のpHを変えているのでは(土壌が酸性だと、花はアルカリ性とか)と考えられ、花・萼のpHが計測出来るようになり、測ってみると青花も赤花もどちらも共に酸性であることが分かり、土壌のpHの影響を全く受けていないことが分かってきたのです。
では何が、花・萼の色を変えているのでしょうか。
花・萼の成分分析を行うことで分かってきたことは、青い花には、アルミニュムが多く、赤い花には少ないことでした。
アルミニュウムはアントシアニンを赤から青へと発色を変えるのに関係しているようです。
アルミニュウムなどの金属は土壌中でイオンの形や、他の物質と結合して存在しています。
土壌が酸性になるとアルミニュウムイオンとして水に融け出し、根からの吸収量が増え、植物体内のアルミニュウム量が増加し、花が青色に発色出来るようになるようです。
最近の研究では、アジサイ自身が作り出すアントシアニンの赤い色素と補助色素(有機酸の一種)と土壌中から吸収するアルミニュウムイオンの三者で出来た錯体の形がアルミニュウムイオンの量で変化し青色か赤色に発色するようです。
アントシアニンを失った白花種は別として、西洋アジサイはpHの影響を受け難いようです。

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