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別名 | ノダフジ(野田藤) |
分類 | マメ科 フジ属 つるは右巻きで、つるが左巻きのヤマフジが兵庫県以西から四国、九州に自生します。 ヤマフジの花房はフジより短く色が濃くて花も大きいため、別名“カピタン(花美短)”とも呼ばれます。 |
生薬名 | 老木にできる瘤 |
薬用部分 | トウリュウ(藤瘤) |
成分 | 未詳 |
適用 | 下剤、口内炎、抑ガン剤に用いられたようです。 |
有毒部分 | 葉、種子、サヤ |
有毒成分 | ウィスタリン |
中毒症状 | 不明 |
食用 | 新芽の若葉は、茹でてよく水で良く晒したものを飢饉の際に食用にしたようです。 |
繊維材 | フジの蔓の内皮から取った繊維は丈夫で、この繊維で織った布は藤布(ふじふ)と呼ばれます。 つるは丈夫で縄の代用にしたり、籠などの材料に利用される。 ”繊維の歴史”は、ここクリック |
名前の由来 | 定説は無いようですが、次の説があります。 その一、“花が吹き散る”からと云われる。 そのニ、“東雅(新井白石 1717年)に因ると“フジとはフシといふ語の 転ぜしなり。凡そ藤生の物に節あるをいふなるべし”と記述されて いる。この“フシ”はトウリュウ(藤瘤)を指しているのかもしれませ ん。 万葉集(26首収載)には藤、布治、敷治の文字が使われていて、中国原産の支那藤は漢名を“紫藤”と書き、“つる”の意味のある“藤”の字を充てることに由来します。 別名の“ノダフジ”は摂津(大阪)の野田から出たものと考えられていたことに由来するそうです。 |
古典の中 の藤 |
<古事記 中つ巻 其の十六 応神天皇> 沢山の男神に結婚を申し入れられても、ことごとく断っていた美しい女神の伊豆志袁登売(いづしをとめ)が居りました。 兄弟神がおり、そこで兄神の秋山之下氷壮夫(あきやまのしたひをとこ)が女神に結婚を迫ったのですが、見事に振られます。 振られた兄神は、弟神の春山之霞壮夫(はるやまのかすみをとこ)に、お前はあの女神を嫁にすることが出来るかと聞くと、弟神は出来ますよと答えます。 兄神は、お前が女神を嫁にしたなら、沢山の酒と食べ物を贈ろうと約束をし、賭けを行います。 『爾其弟如兄言具白其母。』 “それで、弟神は兄神が言ったように詳しく、その母神に言いました。” 『即其母取布遲葛而一宿之間。』 “直ぐに母神は藤(布遲)の蔓を取って、一晩のうちに” 『織縫衣、褌及襪、沓。亦作弓矢。』 “上衣と袴、また靴下と靴まで織って縫いあげ、また弓矢を作って、” 『令服其衣、褌等令取其弓矢。』 “〔弟神に〕その衣服を着せて、弓矢を持たせて” 『遣其孃子之家者。』 “その女神の家に行かせたら、” 『其衣服及弓矢悉成藤花。』 “その衣服と弓矢はすっかり藤の花に成った。” 弟神は藤の花に成った弓矢を、女神の家のトイレに置くと藤の花に成った弓矢を女神は自分の部屋に持ち帰り、その後に続いた弟神は部屋に入り結婚し、子供が出来ました。 賭けに勝った弟神が兄神に云うと、兄神は塞込んでしまい弟神との約束を反故にしてしまいます。 約束を反故にされた弟神は、事の次第を母神に告げると、母神は兄神を懲らしめなければいけないと思い懲らしめの呪の掛け方を弟神に教え、弟神は呪を掛けます。 呪を掛けられた兄神は八年間の間、痩せ衰え病気になります。これに懲りた兄神は嘆き泣いて母神に赦しを乞い、この話を母神から聞いた弟神は呪を解きます。 すると兄神は健康を取り戻しました。 余談ですが、この伝説が【神賭けて(神に誓っての意)】の言葉か生まれた故事と云われています。 <万葉集> 第三巻 0330 『藤浪之 花者盛尓 成来 平城京乎 御念八君』 作者 大伴四綱 “藤波の花は、盛りになりにけり、奈良の都(平城京)を、思ほすや君” 第三巻 0413 『須麻乃海人之 塩焼衣乃 藤服 間遠之有者 未著穢』 作者 大網公人 “須磨の海女の、塩焼き衣の、藤衣、間遠(まとほ:織目が粗い)にしあれば、今だ着なれず” このように、古代から日本では重要な材であり、観賞され、愛されてきた花木の一つです。 以後も『枕草子』『源氏物語』『平家物語』など代表的な古典作品のなかにも度々登場します。 源氏物語の中で光源氏の理想の女性の名が藤壺であったのも、当時の日本人のフジに対する考え方が微妙に影響していると思うのですが。 |