ボタンをクリックすると写真変わります
![]() |
別名 | スエツムハナ(末摘花)、サフラワー |
分類 | キク科 ベニバナ属 有刺と無刺の株があり、生薬の生産には有刺株を用い、無刺株は園芸に用います。 |
原産地 | エジプト、エチオピア、アラビア、インド、中央アジアなどと云われ、紀元前から栽培されているが、野生種が発見されておらず原産地は確定していません。 古代エジプトではミイラ化する遺体の腹部に紅花帯を巻く習慣があり、畑から引き抜いた紅花株の根部を左石に数株ゆわえ腹部に巻いた、また、ミイラを包んだ布帯は紅花で染められていた。 日本では、藤ノ木古墳(奈良県生駒郡斑鳩町にある6世紀後半の円墳)から、埋葬されていた2人の男性遺体の腹部中心から紅花の花粉が大量に検出された、この遺体はミイラ化処理(内臓摘出)され、そこに防腐剤として紅(赤い塊)が入れられていたのではないかと考えられています。 このことから、日本には6世紀初め頃に高句麗の僧侶(曇徴)によってもたらされ、推古天皇(554〜628年)の時代には、紅色の染料をとるための植物として利用されていたと云われますが、応神天皇(270年〜310年)の時代に渡来したとの説もあります。 |
生薬名 | コウカ(紅花) 日本薬局方(管状花のまま又は黄色色素の大部分を除 き、圧搾して板状としたもの) |
薬用部分 | 花(管状花)、種子 |
成分 | 管状花:紅色色素カルタミン、 水溶性の黄色色素サフロールイエロー、 脂肪油、リグナン、フラボノイド、ステロールなど 種子:リノール酸、ビタミンE |
適用 | 花:漢方処方(折衝飲、通導散、治頭瘡一方など)に配合され、浄血、 通経の婦人薬とされ、冷え症、産前・産後、更年期障害にも応用され 鎮静、鎮痛、抗炎症作用などもあることが判明しています。 種子:リノール酸が70%も含まれているので、食用油として使用すると、 血液中のコレステロール濃度の低下や動脈硬化予防になり、 また、医薬原料等にも使用される。 ベニバナ酒 サラシ木綿などの袋に紅花を入れて、砂糖を共にホワイトリ カーに漬け込み、2ヶ月程度熟成させると、メノウ色のきれ いなベニバナ酒が出来上が、婦人病一般や内外用に用い ます。 紅花油 種子の脂肪油(サフラワーオイル)はリノール酸を70%も含み、 食用油として使用するとコレステロール代謝の正常化、動脈硬 化予防の効果があるとされ、アメリカが世界第一の生産国となっ ています。 また、日本の栽培では花の結実時期が梅雨期になるために、あま りよく出来ないと云われますが、油のすすは墨に使われます。 |
名前の由来 | 中国へは“博物誌(張華:232〜300年の人が創ったとされる百科事典)”に“紅花”の記載があり、3世紀には既に伝来していて、また“金匱要略(張仲景:二世紀中頃から三世紀初めの頃の人で後漢の末期に創られたと云われる医学書)に“紅藍花”の記載があるので、導入後まもなく薬用にも使用され、染料植物と薬草として世界各地に広まったのです。 3世紀後半には確定していた、漢名“紅花や紅藍花”の日本での記述は、“本草和名(918年)”に漢名“紅藍花(コウランカ)、和名“久礼乃阿為(クレノアイ)を充てている、また“和名抄(932年)”では、和名“久礼乃阿井(クレノアイ)”に対して漢名“紅藍(コウラン)俗に紅花(コウカ)”とされています。 これで“ベニバナ”の名前は、漢名の“紅花”を訓読みしたものであることは、おわかりと思います。 また、漢名でベニバナの別名に“紅藍花や紅藍”と書きますが、この意味は、文字通り紅は赤色のことで、藍は青色のことと理解したのでは、意味不明ですが、当時“藍”は代表的な染料でありましたから、“藍”は染料の総称の意味にも使われていて、このことから“紅藍花や紅藍”は“紅色の染料の花”の意味となります。 従って、和名の“久礼乃阿井(クレノアイ)”は“呉の藍”のことで、中国の揚子江の南にあった呉の国の染料の意味を持ちます。 このことから、紅を“くれない”と訓読みするのは“クレノアイ”が短縮して“クレアイ”となり、更に転訛して“クレナイ”となりました。 “本草和名や和名抄”より古い万葉集(600〜759年の歌を収録)には“久礼奈為、呉藍、紅、末採花(末摘花)”として、また、古今和歌集(905年成立)には、末摘花(ウレツムハナ)として詠まれていますし、源氏物語(1005年〜1020年頃に成立)には、末摘花の巻があります。 この末摘花(ウレツムハナ)の由来は、花の咲く順序が上方から順に咲いていくので、花が末枝から咲き、末枝(ウラエ)の花から順序に摘みとるので呼ばれていたが、室町時代になって末摘花(スエツムハナ)と呼ばれるようになったようです。 |
紅染め、 口紅 について |
<紅餅(紅花餅)の作りかた> 染料や口紅の原料としては咲き始めの花が良質で、また、摘み取りは棘による痛みを防ぐため、棘が露で柔らかいうちの早朝に行われます。 紅花の花弁は、紅色と黄色の2つの色素を持ち、原料生成を目的に摘まれた花は、黄色色素サフロールイエローを抜くことから工程が始まり、素足で水をかけながら揉み出して品質を高めます。 次に、発酵の工程に移り、黄色素を抜いた花弁を、莚(むしろ)に広げ、その上に濡れた莚をかぶせて発酵させ、カルタミンを、カルタモンという紅色の色素へと発色を促進させます。 発酵した粘りけのある紅花を臼(うす)に移し、搗(つ)いて餅状にし、小さく丸めて莚に並べ、その上に莚をかけて、素足で均等に踏んで煎餅のように展ばして天日で乾燥させて出来上がり。 <紅染め> 紅餅を麻布や木綿布の袋に入れ、灰汁(主成分:炭酸カリウム)の上澄み液のアルカリ溶液の中で袋に入れた紅餅を手で良く揉み解き紅色色素のカルタモンを溶出します。 次に、烏梅(主成分:クエン酸)を前日から熱湯につけておいて麻布で漉して作った酸性の発色液を紅色色素を溶出した液に入れ中和させ紅色に発色させた染料液を作ります。 この染料液に絹の糸や布を入れて色素を吸収させます。 最後に烏梅から作った酸性溶液に色素を吸収させた絹の糸や布を入れて、色素を定着させた後、水洗い乾燥させて出来上がりで、色を濃くしたければ、これを繰り返します。 <口紅> 紅餅を麻布や木綿布の袋に入れ、灰汁(主成分:炭酸カリウム)の上澄み液のアルカリ溶液の中で袋に入れた紅餅を手で良く揉み解き紅色色素のカルタモンを溶出します。 麻や綿などの植物性の繊維布を、紅色色素のカルタモンを溶出液に入れて染めます。 そこに烏梅で作った酸性溶液を入れ中和すると、紅色素のカルタモンが、布地に吸着されます。 これを何度か繰り返して、カルタモンの吸着量を増やして色の濃い布地にして行きます。 次に色の濃い布地を、少な目の灰汁の上澄み液のアルカリ溶液に浸けて紅色素のカルタモンを溶出させて、濃縮液を作ります。 この濃縮液に烏梅で作った酸性溶液をゆっくりと加え酸性に溶液にすると色素が不溶性となり器の底に沈殿します。 一日位、放置すると、上は澄んだ水になり、下に紅色素のカルタモンの沈殿層ができます。 うわ水を捨てて、これを羽二重で漉し、布の上に純粋な紅色素のカルタモンが出来上がります。 これを蛤の貝殻や白い磁器などの器に塗り重ねて京紅の完成です。 紅を唇に塗るのには、紅筆や小指の先に水をつけて塗ります。 重ね塗りをすると、光を受けて、玉虫色になったり、時には緑に、また黄金色に輝くと云われ、古より女性の唇や頬を美しく彩ってきました。 <灰汁> 稲藁(いなわら)を黒焼きにしたものを樽に入れ、熱湯を入れて炭酸カリウムを溶出させた上澄み液を取り出します。 また、沈殿した藁灰は、酸化珪素が多く含まれているので、陶磁器の釉薬に使われます。 <烏梅> 梅の実に灰の粉をかけて燻製にして黒くなった梅の実です。 |