ドラマの舞台
Locations

ホワイトヘイブン・マンション

ホワイトヘイブン・マンション  住所はロンドン西一区サンドハースト・スクエア(「西洋の星の盗難事件」「ABC殺人事件」ほか)。セントラル・ヒーティング、エレベーター、ゴミ出し用リフトなどを完備したモダンなマンションで、6階の向かって左側に当たる56B号室にムッシュウ・エルキュール・ポワロが自宅兼探偵事務所を構える。46B号室にミス・パトリシア・マシューズが居住、36B号室にはアーネスティン・グラント夫人とそのメイドのミス・トロッターが引っ越してくるも、入居当日にグラント夫人は殺害された(「4階の部屋」)。管理人兼ドアマンを務めるのはディッカー氏(「砂に書かれた三角形」「二重の罪」ほか)。各部屋は分譲ではなく賃貸の模様(「夢」)。
 原作では、「ABC殺人事件」において「ロンドンで最新のタイプの賄いつきアパート」として登場。その際にはヘイスティングスに「あまりにも四角四面すぎる」と評される建物だが、ドラマで使われている建物の外観には曲面も見られる。しかし、左右対称の美しい建物で、いかにもポワロが好みそうな建物ではある。原作のポワロは何度か住まいを替えているが、「ABC殺人事件」でマンションの名前が重要な役割を果たすことを見据えてか、ドラマでのポワロの住居にはホワイトヘイブン・マンションが選ばれた。
 ロケに使われたのはフローリン・コートと呼ばれる1936年オープンのマンションで、ガイ・モーガン・アンド・パートナーズによる設計。1980年代に一度改装が行われており、その外観がドラマに映る場面の多くは、第1シリーズ撮影時、改装直後の住人が再入居するまでのあいだにまとめ録りしたものが使われている。屋内のシーンは主としてトウィッケナム撮影所にセットを組んで撮影されたが、第1シリーズでは、屋内のシーンも複数、実際にフローリン・コートの内部で撮影されているようだ(ただし、「4階の部屋」で見られるエレベーターの周辺は、救世軍ウィリアム・ブース・カレッジのもの)。地下鉄バービカン駅のすぐ近く、チャーターハウス・スクエアに面した場所にあり、ドラマでは人や車が盛んに行きかう賑やかな場所に見えるが、実際はとても閑静なところ。マンションの前の賑やかな公園も、実際には撮影当時はプライベートガーデンで、スクエアに面した住民だけが鍵を持っていた。背後には近代的な高層ビルがそびえており、それが映らない角度から常に撮影されている。[1]
56B号室見取り図  第10シリーズの「ひらいたトランプ」「満潮に乗って」では、制作会社の変更で以前のセットが使えなくなったためか、ポワロは新しい住まいへ引っ越しをした設定になった。これは、新体制での制作方針によりヘイスティングスたちを失ったポワロに、新しく帰る場所を用意したいというスーシェの希望によって製作されることになったものだという。しかし、この新居はホワイトヘイブン・マンションの一室であることに変わりはなく、「複数の時計」の原作と同じに203号室と設定された(「三幕の殺人」「ビッグ・フォー」)。美術監督のジェフ・テスラーのもとでデザインされた新しいセットは、リビングルームの窓が描く特徴的な曲線は以前のままだが、それ以外の家具や調度品には曲線を排した直線的なデザインのものを多く揃え、より原作の描写に近い雰囲気になったほか、部屋の間取りや玄関の向きなども以前の56B号室とは変更された。このセットは第10シリーズ撮影後も倉庫に保管され、結局、最終シリーズの「ビッグ・フォー」まで使われることになった。[2][3][4]
 2017年現在、フローリン・コートのフラットは分譲で20万~80万ポンド[5]、賃貸では週300ポンド程度から[6]。居室のほかに、住民が利用可能なルーフガーデンや屋内プールを備える。また、向かいのチャーターハウス・スクエアでは2016年2月下旬から工事がおこなわれ、ガーデンのリニューアルがなされた。この工事により、ドラマで見られたゲート近くの守衛所のほか、木の一部や生垣、柵などが現在は失われている。
  1. [1] ピーター・ヘイニング, 『テレビ版 名探偵ポワロ』, pp. 42-45, 求龍堂, 1998
  2. [2] David Suchet and Geoffrey Wansell, Poirot and Me, pp. 229-231, headline, 2013
  3. [3] 'Behind-the-Scenes,' Cards on the Table (Poirot tie-in edition*), pp. 326-327, HarperCollinsPublishers, 2005
  4. [4] Poirot Set Model
  5. [5] House Prices in EC1M 6EX
  6. [6] For rent florin court - Trovit
  7. * 本書内の書誌情報には Marple tie-in edition と誤記

スコットランド・ヤード

スコットランド・ヤード  ジャップ警部が勤務する首都警察 (The Metropolitan Police) の本部で、日本語ではしばしば「ロンドン警視庁」と訳される。その管轄は近郊を含むロンドン一円だが(ただし、歴史的経緯からシティ・オブ・ロンドンは管轄外)、重大事件では地方警察がロンドン警視庁に助力を求めることができ、直接は管轄外の事件にもジャップ警部は足繁く出張っていく。
 〈スコットランド・ヤード〉という通称は、1829年の発足当時にスコットランド王の離宮があった場所に建っていたことに由来するが、1890年、そこからすこし南のダービー・ゲートに移転し、劇中で見られる建物はその〈ニュー・スコットランド・ヤード〉ことノーマン・ショー・ビルディングズのもの。地下鉄ウェストミンスター駅のすぐ北側、テムズ川の西岸にあり、川の対岸から望むこともできるが、劇中では常にパーラメント・ストリート側から北棟を写した映像が使われる。一方、内部の場面は現地ではなく、都度さまざまな場所で撮影されているが、撮影場所がどこであれ、ジャップ警部のオフィスにはたいてい同じ扇風機が置かれている[7]
 なお、警察機能は1967年にブロードウェイへ再移転しており、2代目の〈旧ニュー・スコットランド・ヤード〉は現在、議会のオフィスとして使われている。2013年にもさらに移転し、現在の所在は〈旧ニュー・スコットランド・ヤード〉の北隣の建物である。
  1. [7] ピーター・ヘイニング, 『テレビ版 名探偵ポワロ』, pp. 48, 求龍堂, 1998

アレクサンドラ・コート/ボロディン・コート

スコットランド・ヤード  ロンドンのメイフェア地区にある(「象は忘れない」)、オリヴァ夫人の住むマンション。ミス・クローディア・リース・ホランド、ミス・フランシス・キャリー、ミス・ノーマ・レスタリックの3人がオリヴァ夫人の上の部屋でルームシェアをしているほか、ノーマの乳母だったミス・ラヴィニア・シーグラムも同じマンションで暮らしており、管理人のアルフはオリヴァ夫人の大ファン(「第三の女」)。「ひらいたトランプ」では撮影に使われた建物の名前そのままにアレクサンドラ・コートという名前だったが、「第三の女」では原作でノーマたちが住むマンションにあわせてボロディン・コートという名前に変更された。
 撮影に使われた建物はサウス・ケンジントンのクイーンズ・ゲートにあり、ポール・ホフマンによる設計で1898年築[8]
  1. [8] Buildings of the Domestic Revival and later | British History Online

※ 各エピソード個別の撮影地については、【各作品紹介】の個々の紹介文をご参照ください。
2020年4月4日更新