死者のあやまち

Dead Man's Folly
  • 放送履歴

    2014年09月22日 21時00分〜 (NHK BSプレミアム)
    2015年03月15日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)
    2016年01月19日 23時45分〜 (NHK BSプレミアム)
    2017年02月18日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)
    2017年07月26日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)

    2013年10月30日 20時00分〜 (英・ITV1)
    2013年12月06日 20時10分〜 (波・Ale Kino+)
    2014年08月03日 21時00分〜 (米・PBS)

  • 原作邦訳

    『死者のあやまち』 クリスティー文庫 田村隆一訳
    『死者のあやまち』 ハヤカワミステリ文庫 田村隆一訳
  • OPクレジット

    死者のあやまち // DAVID SUCHET / Agatha Christie POIROT / DEAD MAN'S FOLLY based on the novel by AGATHA CHRISTIE / Screenplay NICK DEAR / JAMES ANDERSON, ROSALIND AYRES / SINÉAD CUSACK, TOM ELLIS / REBECCA FRONT, EMMA HAMILTON / MARTIN JARVIS, SAM KELLY / STEPHANIE LEONIDAS, SEAN PERTWEE / DANIEL WEYMAN, NICHOLAS WOODESON / and ZOË WANAMAKER as Ariadne Oliver / Producer DAVID BOULTER / Director TOM VAUGHAN
  • EDクレジット

    原作 アガサ・クリスティー Agatha Christie  脚本 ニック・ディア 演出 トム・ヴォーン 制作 ITVスタジオズ/エーコン・プロダクションズ マスターピース/アガサ・クリスティー・リミテッド (イギリス 2013年)  声の出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄  アリアドニ・オリヴァ(ゾーイ・ワナメイカー) 山本陽子  フォリアット夫人(シニード・キューザック) 寺田路恵 ジョージ・スタッブス卿(ショーン・パートウィー) 中村秀利 ハティ・スタッブス 雨蘭咲木子  ワーバートン大尉 金子達 ワーバートン夫人 吉野由志子 サリー・レッグ 岡ェ恵  エティエンヌ・ド・スーザ 桐本琢也 ミス・ブルイス つかもと景子 ブランド警部 小野塚貴志  ジョン・マーデル 五王四郎 ホスキンス巡査部長 こねり翔 マイケル・ウェイマン 梶雅人  鈴木幸二 西谷修一 芽衣 藤田彩 立岡耕造 尾花糸名子  <日本語版制作スタッフ> 翻訳 澤口浩介 演出 佐藤敏夫 音声 小出善司
  • DVD版EDクレジット

    原作 アガサ・クリスティー Agatha Christie  脚本 ニック・ディア 演出 トム・ヴォーン 制作 ITVスタジオズ/エーコン・プロダクションズ マスターピース/アガサ・クリスティー・リミテッド (イギリス 2013年)  声の出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄  アリアドニ・オリヴァ(ゾーイ・ワナメイカー) 山本陽子  フォリアット夫人(シニード・キューザック) 寺田路恵 ジョージ・スタッブス卿(ショーン・パートウィー) 中村秀利 ハティ・スタッブス 雨蘭咲木子  ワーバートン大尉 金子達 ワーバートン夫人 吉野由志子 サリー・レッグ 岡ェ恵  エティエンヌ・ド・スーザ 桐本琢也 ミス・ブルイス つかもと景子 ブランド警部 小野塚貴志  ジョン・マーデル 五王四郎 ホスキンス巡査部長 こねり翔 マイケル・ウェイマン 梶雅人  鈴木幸二 西谷修一 芽衣 藤田彩 立岡耕造 尾花糸名子  <日本語版制作スタッフ> 翻訳・台本 澤口浩介 演出 佐藤敏夫 調整 小出善司 録音 黒田賢吾 プロデューサー 武士俣公佑  制作統括 小坂聖
  • オリジナルEDクレジット

    Hercule Poirot: DAVID SUCHET / Sir George Stubbs: SEAN PERTWEE / Bickford: CHRIS GORDON / Henden: RICHARD DIXON / Mrs. Folliat: SINÉAD CUSACK // Miss Brewis: REBECCA FRONT / Ariadne Oliver: ZOË WANAMAKER / Dutch Girl Hiker: FRANCESCA ZOUTEWELLE / Hattie Stubbs: STEPHANIE LEONIDAS / Michael Weyman: JAMES ANDERSON / John Merdell: SAM KELLY // Captain Warburton: MARTIN JARVIS / Mrs. Warburton: ROSALIND AYRES / Sally Legge: EMMA HAMILTON / Alec Legge: DANIEL WEYMAN / Marlene Tucker: ELLA GERAGHTY / Etienne De Souza: ELLIOT BARNES-WORRELL // Detective Sergeant Hoskins: NICHOLAS WOODESON / Detective Inspector Bland: TOM ELLIS / Gertie Tucker: ANGEL WITNEY / Stunt Co-ordinator: TOM LUCY / Filmed on location at Agatha Christie's Home: Greenway, Devon // (中略)1st Assistant Director: MARCUS CATLIN / 2nd Assistant Director: SEAN CLAYTON / 3rd Assistant Director: JAMES McGEOWN / Location Manager: CHRIS WHITE / Assistant Location Manager: MARK WALLEDGE / Script Supervisor: JAYNE SPOONER / Script Editors: THOM HUTCHINSON, KAREN STEELE // Production Accountant: VINCENT O'TOOLE / Assistant Production Accountant: DAVID RUDDOCK / Production Co-ordinator: PAT BRYAN / Assistant Production Co-ordinator: HELEN SWANWICK-THORPE / Press Officer: NATASHA BAYFORD / Picture Publicist: PATRICK SMITH // Camera Operator: PAUL DONACHIE / Focus Pullers: RICHARD BRIERLEY, BEN GIBB / Clapper Loaders: ELIOT STONE, SANDRA COULSON / Data Wrangler: PATRICK KING / Camera Grip: PAUL HATCHMAN / Gaffer: TREVOR CHAISTY / Best Boy: GARRY OWEN // Supervising Art Director: PAUL GILPIN / Art Director: MIRANDA CULL / Standby Art Director: JOANNE RIDLER / Production Buyer: TIM BONSTOW / Construction Manager: DAVE CHANNON / Standby Construction: FRED FOSTER, BOB MUSKETT // Sound Recordist: ANDREW SISSONS / Sound Maintenance: ASHLEY REYNOLDS / Property Master: JIM GRINDLEY / Dressing Props: MIKE RAWLINGS, SIMON BURET, MONTY WILSON / Standby Props: SIMON BLACKMORE, POLLY STEVENS, DOUGLAS GEN, JACK CAIRNS // Assistant Costume Designer: PHILIP O'CONNOR / Costume Supervisors: KATE LAVER, LOUISE CASSETTARI / Costume Assistants: SOPHIE EARNSHAW, MARK HOLMES / Make-up Artists: LOUISE FISHER, LAURA SOLARI, DAISY LYDDON / Mr Suchet's Dresser: ANNE-MARIE BIGBY / Mr Suchet's Make-up Artist: SIAN TURNER MILLER // Assistant Editors: DAN McINTOSH, HARRISON WALL / Supervising Sound Editor: JOHN DOWNER / Dialogue Editor: SARAH MORTON / Re-recording Mixer: GARETH BULL / Colourist: DAN COLES / Online Editor: SIMON GIBLIN / Visual Effects: SIÔN PENNY // Associate Producer: DAVID SUCHET / Post Production Supervisor: BEVERLEY HORNE / Hair and Make-up Designer: BEE ARCHER / Costume Designer: SHEENA NAPIER / Casting: SUSIE PARRISS / Production Executive: JULIE BURNELL // Composer: CHRISTIAN HENSON / Poirot Theme: CHRISTOPHER GUNNING / Editor: ADAM RECHET ACE / Production Designer: JEFF TESSLER / Director of Photography: ZAC NICHOLSON / Line Producer: MATTHEW HAMILTON // Executive Producer for Masterpiece: REBECCA EATON // Executive Producer for Acorn Productions Limited: HILARY STRONG / Executive Producer for Agatha Christie Limited: MATHEW PRICHARD // Executive Producers: MICHELE BUCK, KAREN THRUSSELL, DAMIEN TIMMER / © Agatha Christie Ltd 2013 // A Co-Production of itv STUDIOS, MASTERPIECE, Agatha Christie in association with Acorn Productions
  • あらすじ

     ポワロはオリヴァ夫人からの電報を受け取ってデヴォンのナス屋敷におもむいた。そこではお祭りの演し物としてオリヴァ夫人考案の殺人推理ゲームをおこなうことになっていたが、夫人は嫌な予感がするという。はたして、死体役の少女が本当に殺されてしまう……
  • 事件発生時期

    不詳
  • 主要登場人物

    エルキュール・ポワロ私立探偵
    アリアドニ・オリヴァ推理作家
    ジョージ・スタッブス卿ナス屋敷の主
    ハティ・スタッブスジョージ卿の妻
    エイミー・フォリアットナス屋敷の前のオーナー、ハティの元後見人
    アマンダ・ブルイスジョージ卿の秘書
    ジム・ワーバートンナス屋敷隣人、議員、大尉
    イニッド・ワーバートンナス屋敷隣人、ワーバートン大尉の妻
    アレック・レッグナス屋敷隣人、生物化学者
    サリー・レッグナス屋敷隣人、アレックの妻
    マイケル・ウェイマン建築家
    ヘンデンナス屋敷の執事
    エティエンヌ・ド・スーザハティのまたいとこ
    マーリーン・タッカー死体役の少女
    ガーティー・タッカーマーリーンの妹
    ジョン・マーデル舟番
    ブランドナスコム署警部
    ホスキンスナスコム署巡査部長
  • 解説、みたいなもの

     原作は1956年刊行。もともとはその原稿料を地元の教会のステンドグラス修復資金に充てようと執筆された『ポアロとグリーンショアの阿房宮』という中篇だったものが買い手がつかずお蔵入りとなり、後に長篇へ書き直されて出版された[1]。舞台のナス屋敷はクリスティーの別荘であったグリーンウェイ・ハウスがモデルとされ、ドラマの撮影も同所で5日間おこなわれている[2]。その撮影はスーシェに、1987年、ポワロ役を引き受けることになってクリスティー一家に招待されたときのことを思い起こさせたという[3]。このグリーンウェイは、クリスティーが夫への手紙の中で「世界でもっともすてきな場所」と称讃したお気に入りの土地で、その緑豊かな敷地は、劇中でポワロも「この国でもっとも美しい場所のひとつ」と評する。ただ、かつて白色に塗られていた邸宅は、ナショナル・トラストに移管された際の改修でややクリーム色がかった色に塗り直されており[4]、原作に描かれた「白堊の美しい館」という表現とは異なってしまった(現在は、再度白色に塗り直されている)。撮影順では第13シリーズ5作品中最後の作品となり、2013年6月上旬に撮影を開始[5]。同6月28日のグリーンウェイ・ハウスでの撮影をもって「名探偵ポワロ」の全撮影は終了した[6]。最終回「カーテン 〜ポワロ最後の事件〜」の撮影を先に終え、本作の撮影を最後としたのは、「名探偵ポワロ」の撮影を明るく終えたいというスーシェの希望による[7][8]
     全体としては原作に忠実なドラマ化。ただし、原作の登場人物のうち地方議員ウィルフリッド・マスタートンはその代理人ワーバートン大尉とまとめられ、マスタートン夫人はワーバートン夫人となった。ほかには、アレック・レッグの不機嫌の秘密もカット。一方、ジョージ卿が妻の浮気を疑ったり、ド・スーザのポケットからハティの指輪が見つかったり、パビリオンに物証となるバックルが落ちていたりするのはドラマで追加された要素。これはもともと中篇だった原作を長篇にするために追加された尋問のつづく中盤にメリハリを加えるとともに、現在の犯行に関する謎解きをポワロの言葉のみに終わらせない工夫か。
     ピーター・ユスチノフ主演で一度映像化された作品を、第7シリーズの「エッジウェア卿の死」以降、第10シリーズを除いて1シリーズ1作品ずつ再映像化してきたのが、最終シリーズの本作品でようやく完了。ユスチノフ版では原作にいないヘイスティングスが姿を見せていたが「名探偵ポワロ」では原作通りに登場せず、一方で原作には登場していたミス・レモンの出番もない。
     主なロケ地は前述の通りグリーンウェイだが、フォリアット夫人の住む門番小屋やお祭りの会場となった庭、そしてナス屋敷内部はロンドン北部のハイ・カノンズで撮影されており、庭に面した家もグリーンウェイ・ハウスではなくハイ・カノンズのもの。前述の、ポワロがナスを「この国でもっとも美しい場所のひとつ」と評する場面も、実はハイ・カノンズの敷地で撮影されている。このハイ・カノンズは、「ホロー荘の殺人」でもホロー荘邸内として撮影に使われていた。また、森の中の場面は「ビッグ・フォー」でジョナサン・ウォーリー邸内に使われたヒューエンデン・マナーの森でも撮影されているという[9]。一度ロンドンに戻ったポワロとオリヴァ夫人が話しているティーラウンジは、「象は忘れない」でオリヴァ夫人とシリアが会っていたのと同じ場所。
     四阿あずまやが森の中に建てられた理由について、マイケル・ウェイマンが、「風で木が倒れて場所をふさいだもんだから、成金どのがここに建てろと」と日本語で言っているが、原語では「場所をふさいだ」とは明言されておらず、逆に、森の木が倒れて場所が空いたので、そこに建てることにしたという経緯。また、終盤に「木が台風で根こそぎにされ」というポワロの台詞もあるが、「台風」は東アジアの熱帯低気圧に対して用いる呼称で、イギリスの嵐には使用しない。
     ポワロがフォリアット夫人に「私は感傷に浸るほうではありませんが、あなたはついにナスに戻られた」と話すが、夫人はナス屋敷を手放さざるをえなくなったものの、そこにちょうどジョージ卿が現れたので、ナスを離れたことはないはず。原語では 'I am not, like the English, a romantic about these matters. Et voici, here you are, still at Nasse House.' となっており、前半部分は、その直前の話題であった、ハティの結婚に対するフォリアット夫人の処置についてのコメント。後半は「それにこのとおり、(後見人をしていたハティをジョージ卿と結婚させたことで)あなたもナス屋敷に残ることができた」という意味。
     ディナーの席で、お祭りでサリーが演じる占い師の名前について「マダム・ズライカ、あるいはローマニー・ライとでも?」「流浪の民はふさわしくない」というやりとりがあるが、却下された後者の案はその名前に「ローマニー」を含むように、「流浪の民」ことジプシー(ロマ、ロマニー)を思わせる名前。そして、ワーバートン大尉の「流浪の民はふさわしくない」という台詞の原語は 'No one likes gypsies round here.' で、「このあたりの人間はジプシーを好まない」という意味。つまり、周辺住民の感情(あるいは偏見)に配慮して、ジプシー風のローマニー・ライ案は却下されたのである。またその直後、ジョージ卿がサリーに「蛇を首に巻いてみろ」と言ったのに対し、夫のアレックが「グラスに入れろ」と吐きすてたのは、日本語だとジョージ卿とサリーの軽薄なやりとりへの批判のように聞こえるが、原語では 'A snake in the grass. (草むらのなかの蛇)' という表現。これは転じて「目に見えない敵」「油断できない人物」という意味で、サリーへの不信を表す台詞だった。ちなみに、ガラス容器の「グラス」は glass で、草むらの grass とはつづりも発音も異なる。
     お祭りの日の朝にナス屋敷の外観が映る場面は、実は太陽が西側にあり、夕方に撮影されたもの。
     お祭りで演奏しているブラスバンドはボアハムウッド・ブラス、曲目はユリウス・フチーク作曲のフローレンティナー・マーチ。
     死体が発見される場面では、死体が穏やかに息をしているのがわかる。
     警部の尋問中にフォリアット夫人が、ワーバートン夫人について「イニッドは案内係とジムカーナーの統括よ」と言うが、原語では 'Enid Warburton runs the Girl Guides and the gymkhana.' という台詞で、 Girl Guides とは「案内係」(ガイド)ではなく、日本で言うガールスカウトのこと(日本語の由来となった Girl Scouts はアメリカ英語)。また、「ジムカーナー」とは馬術競技会のこと。動詞が runs と現在形であるように、原語ではお祭り中の行動ではなく、ワーバートン夫人の社会的地位の話をしている。
     事件翌朝、ミス・ブルイスがジョージ卿に言う「郡のリューテナント卿 (Lord Lieutenant of the county)」とは個人名ではなく州知事のこと。
     「屋敷に隠し部屋が、とかいうことは」というオリヴァ夫人の思いつきが「建てられた年代からしてそれはありえない」と否定されるのは、「隠し部屋」の原語が、「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」では「神父の抜け穴」と訳されていた 'priest's hole' であるためで、これは16世紀後半から17世紀はじめにかけて、カトリックの聖職者が国王の部下の探索から隠れたり逃れたりするためによくつくられた。ナス屋敷はジョージ朝様式の建築で、18世紀頃に建てられたと見られる。なお、ナス屋敷の建物についてフォリアット夫人が言う「王朝時代は荘園でしたが、過去の栄光」という台詞は、原語では 'There was an Elizabethan manor before, but it burnt down.' という台詞で、これは「かつてはエリザベス朝時代(16世紀後半から17世紀初頭)の館でしたが、火事で焼けまして」という意味。吹替の「王朝時代」という表現は英国史における一般的な区分ではなく、いつを指すのかよくわからない。
     アレック・レッグがサリーとマイケル・ウェイマンを追っていく先のチェルシー・アート・クラブは、芸術家たちが加入する実在のクラブ。
     「さよならポワロ!〜世界が愛した名探偵・25年の軌跡〜」でも放送された、ポワロがナス屋敷へ入っていく最後に撮影されたシーンは劇中に見当たらない。撮影はしたものの、編集でカットされたのだろうか。スーシェがポワロとして最後に発した台詞は、その前日に撮影された、ナス屋敷に最初に到着した日にボート小屋前でオリヴァ夫人と交わした会話の「この屋敷の持ち主? (The owners of this property?)」だという。[10]
     サー・ジョージ・スタッブスを演じるショーン・パートウィーは、「クラブのキング」のロニー・オグランダー役以来の「名探偵ポワロ」再出演。フォリアット夫人を演じるシニード・キューザックは、同じく「クラブのキング」でバレリー・サンクレア役を演じたニーヴ・キューザックや「グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件」でマーガレット・オパルセン役を演じたソラカ・キューザックの姉。ジェラルディン・マクイーワンおよびジュリア・マッケンジー主演の「ミス・マープル」シリーズでは、ハティー・スタッブスを演じるステファニー・レオニダスが「無実はさいなむ」のヘスター・アーガイル役、ワーバートン大尉役のマーティン・ジャーヴィスが「鏡は横にひび割れて」のヴィンセント・ホッグ役で見ることができる。また、ワーバートン夫人役のロザリンド・エイアーズは、ジョン・ネトルズ主演の「バーナビー警部」の「愛する人のためならば」にドリーン・アンダーソン役、ホスキンス巡査部長役のニコラス・ウッドソンは同じく「開演ベルは死の予告」にエイバリー・フィリップス役で出演。
     » 結末や真相に触れる内容を表示解決篇のポワロの説明を日本語で聞くと、フォリアット夫人が途中で息子にすでに妻があることを知り、離婚させようとしたが成功しなかったためにハティ殺害に至ったようにも聞こえるが、原語で聞くと原作通りにフォリアット夫人にハティ殺害の意図はなかったことがわかる。夫人の計画はハティからジェームズに財産を移し、彼をナス屋敷の主とするところまでで、ハティは引きつづき自分が面倒を見ていくつもりだった(吹替で言われる「監視下」よりも「保護下」のニュアンス)のだが、ジェームズはすでに妻のある身であることをフォリアット夫人にも隠しており、ナス屋敷に到着した日、本当の妻とともに早々にハティを殺害して、夫人を事後従犯としてしまった。フォリアット夫人が、ハティの実家が破産したことにしてジョージ卿との結婚を勧めたという筋立ては、原語ではハティに向けたものではなく、周囲の人へジョージ卿の出現を説明するために喧伝されたもの。また、ハティが治療を受けたように見せかけ周囲を欺くというのも、原語では、偽のハティが、知的水準が低いふりをやめていくための将来の計画であって、偽のハティを本物と思わせることに成功した過去の計画ではない。ミス・ブルイスがハティを偽物であると見抜いていたように聞こえる台詞も、原語ではハティ(とされる人物)の知的水準が普通であることを見抜いていたというニュアンス。本物のハティがナス屋敷に到着した際、それまで自分で面倒を見てきた相手であるハティに対して、フォリアット夫人が「ハティ様」や「こちらへどうぞ」(冒頭では「こちらへいらして」という日本語だったが、原語はいずれも 'Come along, my dear.' で同じ)と呼びかけるのも不思議な感じがする。その他細かいところでは、ジェームズが14歳のときに犯した非行の相手とされる「若きメイド」の原語は dairymaid であり、これは酪農に携わる女性の意味なので、おそらくはナス屋敷の使用人ではなく近在の女性と思われる。また、ハティの知能が未熟だったことをポワロが「幸いにも」と評した部分は、原語では sadly (残念ながら) とまったく逆の評価。
     ポワロが言うマーデル老人「一流のジョーク」は日本語だとわかりにくいが、原語だと 'Always be Folliats at Nasse. Old Mum still be here, h'aint she?' という台詞で、尺を気にせず訳せば、「ナスにはいつだってフォリアット家の人間がいるさ。今だって大奥さまがいなさるだろう?」という意味。つまり最初に、ナス屋敷の現在の主であるジョージ・スタッブス卿が実はフォリアット家の人間であると暗に言っておきながら、つづく後半で、それをフォリアット夫人のことだと思わせているのである。その後、ワーバートン夫人との会話でポワロが「彼らはナスの名門」と言ったのも、原語ではマーデル老人の発言の前半部分の反復で、マーデル老人のこの発言がポワロの心に引っかかっていることを示していた。またそのすこし前の、マーデル老人が「父親がお国のために命を落とし、たががはずれたんだな」と言う台詞の原語は 'Master Henry, he died for his country, fair dos, but Master James... (ヘンリーさまはお国のために立派に命を落とされたが、ジェームズさまのほうは……)' という表現で、ここの Master Henry (ヘンリーさま) はフォリアット夫人の夫ではなく長男のこと。そして、二人の息子のうちヘンリーは死んだと明言したがジェームズのほうはぼかしており、ここもジェームズが実は生きていることを示唆する伏線になっていた。
     ロンドンのラウンジでオリヴァ夫人が、フォリアット夫人に関して「ナスの主ならすべてを知っている。違う?」と言ったのに対して、ポワロが「ナスの主」と反復したところは、原語では 'She knows everything. (すべてを知っている)' とくり返しており、フォリアット夫人が(お祭りで自然と女主人役を演じていたように)一面で今なお「ナスの主」であるという見方ではなく、単に夫人が事件の全貌を把握している可能性を散文的に示唆していた(なお、原語ではオリヴァ夫人の台詞に「ナスの主」に直接対応する表現はない)。その後ナスで再会したフォリアット夫人にポワロが「今回の事件についてあなたは多くのことを知っていますね」と言う台詞も、原語では everything (すべて) を知っている可能性を指摘しており、つづけて「誰があの少女を、そしてハティ・スタッブスを殺したのかを」と言った部分も、原語では加えてハティの死体の場所すら知っている可能性を列挙している。さらにポワロの「そう、5週間前の事件も悪、14歳の少女を殺すのも悪だ」という台詞は、日本語では「5週間前の事件」と「14歳の少女を殺すの」が別々の事件のようにも聞こえ、ハティ失そう事件とマーリーン殺害事件を並べているようにも取れるが、原語では後者が前者の言い換えであると受け取りやすく、5週間前にハティに何かが起きたという想定をポワロが置いていないことがわかる。
     マイケル・ウェイマンが四阿を「これではただのコンクリの塊だ」と評した台詞は、原語だと 'It's only on a yard of concrete. (厚さ1ヤードのコンクリに載っているだけだ)' で、だから、そう言われたポワロとオリヴァ夫人が土台に目を向けるし、ウェイマンが言うように「沈み始めてる」のである。この台詞は本来、四阿の下に何かが埋まっていることを示唆する伏線だった。またこの場所について、終盤の「理想的な埋葬場所です。木が台風で根こそぎにされ、土はけがされました。まもなく若き女性がコンクリートから出てきます」というポワロの台詞は、日本語だと何がどう理想的なのかよくわからないが、2文目以降に対応する原語は 'A tree, it is uprooted in a storm, the soil, it is disturbed, and very soon a young lady, she is covered with concrete. (嵐で木が掘り返され、土はかき乱されていて、若き女性はすぐにコンクリートで覆われてしまう)' という表現で、つまりは死体を埋めるのに土を掘り返す手間がすくなく、すぐに四阿の土台で蓋をされるためにあとから見つかる可能性も薄いことを言っているのである。つづく「愚行の土台となったコンクリート。ナスの主の愚行」というポワロの台詞は、原語では 'And, on the concrete, a folly it is built. The folly of the owner of Nasse.' という表現で、「そしてそのコンクリートの上に四阿 (folly) が建つ。ナスの主の四阿が」という物理的な意味を表すとともに、 folly の「愚行」「あやまち」という意味にかけて吹替のような象徴的な意味を持たせている。なお、ポワロがフォリアット夫人を見据えて言うことや、日本語だとフォリアット夫人が一面で今なお「ナスの主」であるという見方を強調してきたことから、息子への愛情に目がくらんだ結果の夫人の愚行を糾弾しているようにも聞こえるが、前述のように後者は日本語独自の表現であり、「死者のあやまち」というタイトルも、事故死したことになっていたジェームズ・フォリアットを指していると思われることから、シンプルに現在のナスの持ち主であるジョージ卿の犯行のことを言っていると取るのが妥当だろうか。
     前述の指輪によってド・スーザが逮捕されたり、謎解きのあとにフォリアット夫人を屋敷へ行かせたりするくだりはドラマオリジナル。このアレンジによって後半はブランド警部がポワロと対立する立場になったため、原作どおりに友好的な再会の場面と後半とで、警部のキャラクターに一貫性がないように見えるかもしれない。

    [1] ジョン・カラン, 「アガサ・クリスティーとグリーンショアの阿房宮」, 『ポアロとグリーンショアの阿房宮』, pp. 149-152, 早川書房(クリスティー文庫), 2015
    [2] David_Suchet on Twitter: "Off to Greenway- A. Christies house in devon for the last 5 days of filming. its a wrap on thursday:("
    [3] National Trust - Greenway - Historic House/Palace in Galmpton, nr Brixham, Dartmouth - Dartmouth
    [4] 数藤康雄, 「グリーンウェイ・ハウス再訪からポアロの死を考える」, 『ハヤカワミステリマガジン』 No. 705 2014年11月号, pp. 53, 早川書房, 2014
    [5] David_Suchet on Twitter: "Just started filming the very last POIROT story - DEAD MAN'S FOLLY. And don't forget ELEPHANTS CAN REMEMBER is on ITV this Sunday evening."
    [6] David_Suchet on Twitter: "I have finished filming DEAD MAN'S FOLLY and have come to the end of my Poirot series. What a moment!"
    [7] 「さよならポワロ! 〜世界が愛した名探偵・25年の軌跡〜」
    [8] David Suchet and Geoffrey Wansell, Poirot and Me, pp. 269, 286, headline, 2013
    [9] Agatha Christie's Poirot: discover the locations of the hit detective series | Radio Times
    [10] David Suchet and Geoffrey Wansell, Poirot and Me, pp. 286, 289, headline, 2013
  • ロケ地写真


  • カットされた場面

    なし
  • 映像ソフト

    【DVD】 「名探偵ポワロ 50 死者のあやまち」(字幕・吹替) ハピネット・ピクチャーズ
    「名探偵ポワロ NEW SEASON DVD-BOX 5」に収録
  • 同原作の映像化作品

    【TV】 「死者のあやまち」 1986年 監督:クライブ・ドナー 出演:ピーター・ユスチノフ(福田豊土)、ジョナサン・セシル(羽佐間道夫)、ジーン・ステープルトン(藤波京子)
2017年9月20日更新


 ・ トップ ・ リスト(日本放送順 / 英国放送順 / 邦題50音順 / 原題ABC順) ・