カーテン 〜ポワロ最後の事件〜

Curtain: Poirot's Last Case
  • 放送履歴

    2014年10月06日 21時00分〜 (NHK BSプレミアム)
    2015年03月29日 15時30分〜 (NHK BSプレミアム)
    2016年02月02日 23時45分〜 (NHK BSプレミアム)
    2017年03月04日 15時00分〜 (NHK BSプレミアム)
    2017年08月09日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)

    2013年11月13日 20時00分〜 (英・ITV1)
    2014年01月03日 20時10分〜 (波・Ale Kino+)

  • 原作邦訳

    『カーテン ―ポアロ最後の事件―』 クリスティー文庫 田口俊樹訳
    『カーテン ―ポアロ最後の事件―』 クリスティー文庫 中村能三訳
    『カーテン ―ポアロ最後の事件―』 ハヤカワミステリ文庫 中村能三訳
  • OPクレジット

    カーテン 〜ポワロ最後の事件〜 // DAVID SUCHET / Agatha Christie POIROT / CURTAIN: POIROT'S LAST CASE / based on the novel by AGATHA CHRISTIE / SCREENPLAY KEVIN ELYOT / HELEN BAXENDALE, SHAUN DINGWALL / CLAIRE KEELAN, ANNA MADELEY / AIDAN MCARDLE, MATTHEW MCNULTY / ALICE ORR-EWING, JOHN STANDING / with HUGH FRASER as Captain Hastings / and ANNE REID / and PHILIP GLENISTER / Producer DAVID BOULTER / Director HETTIE MACDONALD
  • EDクレジット

    原作 アガサ・クリスティー Agatha Christie  脚本 ケヴィン・エリオット 演出 ヘティ・マクドナルド 制作 ITVスタジオズ/エーコン・プロダクションズ マスターピース/アガサ・クリスティー・リミテッド (イギリス 2013年)  声の出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄  アーサー・ヘイスティングス大尉(ヒュー・フレイザー) 安原義人 ジュディス・ヘイスティングス(アリス・オル=ユーイング) 安藤麻吹  ジョン・フランクリン博士(ショーン・ディングウォール) 世古陽丸 バーバラ・フランクリン(アンナ・マデリー) 勝生真沙子  スティーブン・ノートン(エイダン・マカードル) 渡辺穣 ウィリアム・ボイド・キャリントン卿(フィリップ・グレニスター) 田中正彦  エリザベス・コール(ヘレン・バクセンデイル) 泉晶子 トービー・ラトレル(ジョン・スタンディング) 佐々木敏  デイジー・ラトレル(アン・リード) 山本与志恵 アラートン少佐(マシュー・マクナルティー) 高橋広樹  ジョージ 坂本大地 クレイブン 上田ゆう子 検視官 増山浩一  <日本語版制作スタッフ> 翻訳 澤口浩介 演出 佐藤敏夫 音声 小出善司
  • DVD版EDクレジット

    原作 アガサ・クリスティー Agatha Christie  脚本 ケヴィン・エリオット 演出 ヘティ・マクドナルド 制作 ITVスタジオズ/エーコン・プロダクションズ マスターピース/アガサ・クリスティー・リミテッド (イギリス 2013年)  声の出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄  アーサー・ヘイスティングス大尉(ヒュー・フレイザー) 安原義人 ジュディス・ヘイスティングス(アリス・オル=ユーイング) 安藤麻吹  ジョン・フランクリン博士(ショーン・ディングウォール) 世古陽丸 バーバラ・フランクリン(アンナ・マデリー) 勝生真沙子  スティーブン・ノートン(エイダン・マカードル) 渡辺穣 ウィリアム・ボイド・キャリントン卿(フィリップ・グレニスター) 田中正彦  エリザベス・コール(ヘレン・バクセンデイル) 泉晶子 トービー・ラトレル(ジョン・スタンディング) 佐々木敏  デイジー・ラトレル(アン・リード) 山本与志恵 アラートン少佐(マシュー・マクナルティー) 高橋広樹  ジョージ 坂本大地 クレイブン 上田ゆう子 検視官 増山浩一  <日本語版制作スタッフ> 翻訳・台本 澤口浩介 演出 佐藤敏夫 調整 小出善司 録音 黒田賢吾 プロデューサー 武士俣公佑  制作統括 小坂聖
  • オリジナルEDクレジット

    Hercule Poirot: DAVID SUCHET / Elizabeth Cole: HELEN BAXENDALE / Captain Hastings: HUGH FRASER / Dasy Luttrell: ANNE REID / Colonel Toby Luttrell: JOHN STANDING // Stephen Norton: AIDAN McARDLE / Sir William Boyd Carrington: PHILIP GLENISTER / Curtis: ADAM ENGLANDER / Judith Hastings: ALICE ORR-EWING / Doctor Franklin: SHAUN DINGWALL // Major Allerton: MATTHEW MCNULTY / Barbara Franklin: ANNA MADELEY / Nurse Craven: CLAIRE KEELAN / Coroner: GREGORY COX / George: DAVID YELLAND / Stunt Co-ordinator: TOM LUCY // (中略)1st Assistant Director: MARCUS CATLIN / 2nd Assistant Director: SEAN CLAYTON / 3rd Assistant Director: JAMES McGEOWN / Location Manager: CHRIS WHITE / Assistant Location Manager: MARK WALLEDGE / Script Supervisor: JAYNE SPOONER / Script Editor: KAREN STEELE // Production Accountant: VINCENT O'TOOLE / Asst Production Accountant: DAVID RUDDOCK / Production Co-ordinator: PAT BRYAN / Asst Production Co-ordinator: HELEN SWANWICK-THORPE / Press Officer: NATASHA BAYFORD // Camera Operator: MARTIN FOLEY / Focus Pullers: SAM SMITH, RICHARD BRIERLEY / Clapper Loaders: JAMES CHESTERTON, ELIOT STONE / Data Wrangler: BECKY MOORE / Camera Grip: ROBIN STONE / Gaffer: GARY CHAISTY / Best Boy: MARK DAY // Supervising Art Director: PAUL GILPIN / Art Directors: PILAR FOY, MIRANDA CULL / Standby Art Director: JOANNE RIDLER / Production Buyer: TIM BONSTOW / Construction Manager: DAVE CHANNON / Standby Construction: FRED FOSTER, BOB MUSKETT // Sound Recordist: ANDREW SISSONS / Sound Maintenance: ASHLEY REYNOLDS / Property Master: JIM GRINDLEY / Dressing Props: JAMES BAYLAN, SIMON BURET, JACK CAIRNS / Standby Props: BARRY HOWARD-CLARKE, BEN THATCHER // Assistant Costume Designer: PHILIP O'CONNOR / Costume Supervisor: JENNA McGRANAGHAN / Costume Assistants: LOUISE CASSETTARI, LIZZIE MOUL / Prosthetics: KRYSTIAN MALLETT / Make-up Artists: BEE ARCHER, HELEN CONROY, LOUISE FISHER / Mr Suchet's Dresser: ANNE-MARIE BIGBY / Mr Suchet's Make-up Artist: SIAN TURNER MILLER // Picture Publicist: PATRICK SMITH / Assistant Editor: JOHN DWELLY, EVE DOHERTY / Supervising Sound Editor: JOHN DOWNER / Dialogue Editor: SARAH MORTON / Re-recording Mixer: GARETH BULL / Colourist: DAN COLES / Online Editor: SIMON GIBLIN // Associate Producer: DAVID SUCHET / Post Production Supervisor: BEVERLEY HORNE / Hair and Make-up Designer: PAMELA HADDOCK / Costume Designer: SHEENA NAPIER / Casting: MAUREEN DUFF / Production Executive: JULIE BURNELL // Composer: CHRISTIAN HENSON / Poirot Theme: CHRISTOPHER GUNNING / Editor: TANIA REDDIN / Production Designer: JEFF TESSLER / Director of Photography: ALAN ALMOND BSC / Line Producer: MATTHEW HAMILTON // Executive Producer for Masterpiece: REBECCA EATON // Executive Producer for Acorn Productions Limited: HILARY STRONG / Executive Producer for Agatha Christie Limited: MATHEW PRICHARD // Executive Producers: MICHELE BUCK, KAREN THRUSSELL, DAMIEN TIMMER / © Agatha Christie Ltd 2013 // A Co-Production of itv STUDIOS, MASTERPIECE, Agatha Christie in association with Acorn Productions
    Editors の誤記
  • あらすじ

     ポワロからの誘いを受けたヘイスティングスは、かつて二人で殺人事件を解決したスタイルズ荘を訪れる。ところが再会を喜ぶのも束の間、ポワロはふたたびここが殺人現場になると告げる。車椅子に乗って動けないというポワロに代わり、ヘイスティングスは彼の耳目となって一緒に調査をしてほしいと頼まれるが……
  • 事件発生時期

    1949年10月上旬 〜 1950年2月
  • 主要登場人物

    エルキュール・ポワロ私立探偵
    アーサー・ヘイスティングスポワロの旧友、大尉
    トービー・ラトレルスタイルズ荘経営者、大佐
    デイジー・ラトレルスタイルズ荘経営者、ラトレル大佐の妻
    ジョン・フランクリンスタイルズ荘宿泊客、医学博士
    バーバラ・フランクリンスタイルズ荘宿泊客、フランクリン博士の妻
    ジュディス・ヘイスティングススタイルズ荘宿泊客、フランクリン博士の秘書、ヘイスティングス大尉の娘
    スティーブン・ノートンスタイルズ荘宿泊客
    ウィリアム・ボイド・キャリントン卿スタイルズ荘宿泊客、バーバラの友人、準男爵
    エリザベス・コールスタイルズ荘宿泊客
    アラートンスタイルズ荘宿泊客、少佐
    クレイブンフランクリン夫人付の看護師
    カーティスポワロの世話係
    ジョージポワロの元執事
  • 解説、みたいなもの

     最終回である本作の舞台となるのは、ポワロがイギリスで初めて解決した殺人事件の現場であるスタイルズ荘。かつてベルギーで知りあったポワロとヘイスティングスが偶然の再会を果たし、ともに殺人事件の捜査に当たった「スタイルズ荘の怪事件」の原作は、1920年に刊行されたポワロのデビュー作であると同時にクリスティー自身のデビュー作でもあった。一方、副題の示すとおりポワロ最後の事件を描いた本作の原作は1975年刊行。翌1976年の1月12日にはクリスティーも後を追うように亡くなり、『カーテン』を生前最後の刊行として85年の生涯を閉じた。だが執筆は第二次大戦中におこなわれていたと言われ、クリスティーの死後に出版される予定でずっと金庫で保管されていたものが、翻意されて生前の発表となったとされる[1][2]。ドラマの撮影も、2012年10月中旬から11月上旬と第13シリーズで最初に撮影され[3][4]、残り4作品の撮影と放送が済むまで寝かされていた。これには、ポワロの撮影の最後を明るく終えたいというスーシェの希望のほか、ポワロがすっかり体重を落としていたという原作の描写にあわせるために、スーシェが減量をする期間が必要だった事情があったという[5]。吹替の収録は2014年4月上旬[6]
     原作のヘイスティングスは、長篇第2作であった「ゴルフ場殺人事件」のあとまもなく南米に移住し、その後もしばしばイギリスに帰国してはポワロが手がける事件の語り手を務めていたものの、「もの言えぬ証人」での登場を最後に読者の前から姿を消し、『カーテン ―ポアロ最後の事件―』で再登場するまで40年近い空白があった。ドラマでも、2002年放送の「白昼の悪魔」以降、最終シリーズの「ビッグ・フォー」と本作で再登場するまで、12年という期間が空いている。これまで1930年代に固定されてきた舞台設定は、本作では1949年の10月に設定されており、この時代の跳躍は、劇中の世界で第二次世界大戦をまたぐのと同時に、ちょうど現実の世界で視聴者がヘイスティングスの姿を見ていなかった期間とも重なる。ただ、ヘイスティングスの娘のジュディスはどう見ても成人女性なのに、ベラ夫人との出会いは「ゴルフ場殺人事件」の1936年のはずで、そちらは計算が合わない。なお、ジュディスを演じたアリス・オル=ユーイングは撮影当時23歳。
     本作の日本語音声ではヘイスティングスの主な一人称は「わたし」、ポワロからヘイスティングスへの二人称は「あなた」だが、かつての宇津木道子さんの台本ではヘイスティングスの一人称は「ぼく」、ポワロからヘイスティングスへの二人称は(「ダベンハイム失そう事件」での例外を除き)「君」だった。また、かつてヘイスティングスがポワロのことを二人称代名詞で呼ぶことはなく、(「スタイルズ荘の怪事件」での例外を除き)「ポワロさん」と名前で呼んでいた。
     エリザベス・コールがピアノで弾いているのは、「雨だれ」として知られるショパンの24の前奏曲の一つ(作品28-15)。
     クレイブン看護師の「大戦の折にはこちらに?」という質問に対し、ヘイスティングスが「スタイルズ荘の怪事件」のときのことを踏まえて「ええ、療養のために。ポワロさんと知りあったのもここです」と答えるが、今作の舞台である1949年は第二次大戦終結の4年後であり、ただ「大戦」と言われて第一次大戦中のことを答えるのは不自然に感じられる。また、ヘイスティングスとポワロの初対面は第一次大戦前のベルギーにおいてであり、スタイルズ荘では再会だった。原語でのやりとりは 'I gather you were here in the First War.' 'Yes, in 1916, I came here to convalesce. That's when I met Poirot.' という表現で、ちゃんと the First War (第一次大戦), met (出会った) と言っているのでそこに不都合はないが、「スタイルズ荘の怪事件」の時代設定は1916年ではなく1917年6月。ただし、ヘイスティングスのスタイルズ荘訪問が「スタイルズ荘の怪事件」では1917年なのに、本作では1916年と回想されるのは原作同様。
     原作で描かれていた、ラトレル大佐が夫人を撃ってしまった事件によって夫妻の関係が修復される様子は、ドラマではその後の晩餐で前より和やかな会話が交わされるくらいに見えるが、原語では事件直後に「意図的な行為でしょうか?」と訊かれたヘイスティングスが 'Well, I did until I saw them together—now I'm not so sure. (二人が一緒にいるのを見るまではそう思いましたが……いまはわかりませんね)' と答えていて、一言だけながら、この時点で具体的に関係修復が示されている。
     ノートンがジュディスに言う「ホロフェルネスの首をはねたユディットのようだ」という台詞は、聖書の『ユディット記』を踏まえてのもので、ユディットを英語読みするとジュディスになる。そして、そのあとのキャリントンとノートンの、「ずいぶんと古い話だ」「でも、彼女は……大義のためにあれをやった」というやりとりは、逆接の接続詞でつながるのが若干不自然だが、キャリントンの台詞は原語だと 'A bit grim, old boy. (いささか残酷だな)' で、「古い (old)」という単語を含む部分はノートンへの呼びかけ。
     流れ星を見たあとにバーバラが言う「ドロップがほしいの」の「ドロップ (drop)」は、そのあとジュディスが小瓶を持ってきているように、滴剤のこと。
     ポワロがヘイスティングスに書いた手紙が画面に映る際、いずれも途中までは同じアルファベットの字形が完全に一致しており、スーシェの手書き文字をサンプリングして組みあわせた印刷と思われる。
     ノーラ・シャープルズ殺害事件を報じた新聞記事では、その容疑者である姪のフリーダ・クレイを、メドウバンク学園で10年間英語教師をしていたと紹介している。このメドウバンク学園は「鳩のなかの猫」の舞台となった女子校と同一と思われるが、彼女の職歴は原作にないドラマオリジナルの設定。
     スタイルズ荘のロケ地は「スタイルズ荘の怪事件」撮影時に使われたチャベネージ・ハウスチェニーズ・マナーハウスでなく、「第三の女」で門への道が撮影に使われたシャバーン城。審問の開かれた法廷は「杉の柩」「五匹の子豚」「複数の時計」と同じサリー州庁舎のもので、ヘイスティングスがエリザベス・コールに真相を伝える場面も同庁舎裏側で撮影された。ヘイスティングスとジョージが会うイーストボーンの海岸は現地で、画面奥には「グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件」で舞台になったイーストボーン・ピアが見える。
     ジェラルディン・マクイーワン主演の「ミス・マープル」シリーズでは、ノートン役のエイダン・マカードルを「スリーピング・マーダー」のホーンビーム役、ラトレル夫人役のアン・リードを「復讐の女神」のシスター・アグネス役で見ることができる。また、主演をジュリア・マッケンジーに交代した同シリーズ「ポケットにライ麦を」では、バーバラ・フランクリン役のアンナ・マデリーをアデール・フォーテスキュー役、エリザベス・コール役のヘレン・バクセンデイルをメアリー・ダブ役で見ることができる。
     » 結末や真相に触れる内容を表示最期を迎えるポワロが、手近に置いた薬ではなく、その奥に置かれたロザリオにあえて手を伸ばすのは、原作にはないドラマでのアレンジ。ポワロを演じるデビッド・スーシェも、ユダヤ系の家庭に育ったが1986年にはキリスト教へ改宗して英国国教会に入信[7]。ポワロと宗派は異なるものの、自らの信仰心に強い関心を持っていることをしばしば公言し、近年では聖書の朗読の収録をおこなうなどの活動にも勤しんでいる[8]。スーシェにはかねてよりポワロというキャラクターをもっと人間的に掘り下げて描きたいという意向があり[9]、その彼が第9シリーズからアソシエイト・プロデューサーとして制作にも参画するのに伴って、ポワロの信仰心はドラマの重要なテーマの一つとなっていった。死に至るかもしれない発作の中で命よりも信仰を選んだポワロの姿は、そんなスーシェが突きつめたポワロの到達点となった。
     シェークスピアの『オセロー』に登場するイアーゴに着想を得た、他人の感情を煽ることでその行動を操る「最高の殺人者」のアイディアは、『ストランド』誌1932年1月号に掲載された短篇「バグダッドの大櫃の謎」ですでに見ることができる。ただ、「バグダッドの大櫃の謎」や、それを膨らませた中篇「スペイン櫃の秘密」およびそのドラマでは、ポワロが犯人の手腕を微笑すら浮かべて絶讃しており、その姿は近年の殺人に厳しいポワロからは想像もできない。
     人から聞いた話をくり返すキャリントンの癖に関して、原語では、彼が晩餐でノーラ・シャープルズ事件の話題を出すより前に、ポワロが「大言壮語ばかりで中身はない、おまけに記憶力がからっきしだめ」と評する台詞が '(Boyd Carrington) is a pompous bore, whose memory is so bad that he tells back to you the story that you have told to him. (もったいぶった退屈な男で、記憶力もだめだから、人から聞いた話を聞いた本人にくり返す)' となっていて、直接的に言及されていた。しかし、原作でノートンがこの癖を利用してラトレル大佐を夫人射撃に思い切らせた場面は、ノートン自身の発言が直接大佐を刺激する形になり、犯行の伏線としての役割は失われている。
     ポワロが最後に口にする「シェ・ラミ (cher ami)」とは、直訳すれば「親愛なる友よ」という意味で、普段から用いる「モ・ナミ (mon ami)」(直訳すれば「わが友よ」)以上に強い親愛の情を示すフランス語。なお、原語ではここ以外でも何度か口にされている。
     「エルキュール・ポワロ 死す」の新聞記事の本文は「ビッグ・フォー」の「ポワロ氏 爆死 ビッグ・フォーの犯行か」の記事と同じ内容で、本篇には登場しないジャップ警部の名前も見える。一方、「ビッグ・フォー」ではジャップ警部(警視監)は登場するが、舞台は第二次大戦勃発前の1939年であり、文中に含まれる the First World War (第一次世界大戦) という表現が時代にあっていなかった。撮影順を鑑みれば、この文章は先に本作品のために用意され、それを時代設定の異なる「ビッグ・フォー」でも気づかずそのまま使ってしまったという順番だろうか。一緒に掲載されたポワロの写真は「マギンティ夫人は死んだ」のときのもの。
     ポワロがヘイスティングスにココアを勧めたときの台詞は、リアルタイムには「飲み干してください、最後の一滴まで (Drink it all, cher ami, every last drop.)」だったが、ポワロの手紙から回想されるときは「ノンノンノン、最後の一滴まで (No, no, no, every last drop.)」になっている。
     ノートン殺害の現場を密室にするのに使われた合鍵は、ドラマだとポワロの説明で前触れなく登場するが、原作ではポワロがスタイルズ荘に来てから部屋を替えたことがあり、自室以外の部屋の合鍵を作っておく機会があったという伏線が張られていた。
     ヘイスティングスへの手紙のなかでポワロが「あなたが殺人者の正体を訊ねたとき、あえて真実を明かしませんでした」と言った部分は、原語だと 'When you asked if I knew who was the killer, I did not quite tell to you the truth. I knew, but had to make sure. (あなたが殺人者の正体を知っているか訊ねたとき、わたしは一切真実を明かしませんでした。知ってはいても、確認が必要だったのです)' という表現で、そのあとのポワロの「長くはかかりませんでした」とは、この確認に要した時間のことを言っている。また、原語で 'Oh, yes, Norton was our man. (そう、ノートンが目指す相手だったのです)' という台詞が、日本語だと「ノートンは憎めない男でした」とされているため、真犯人をノートンと名指ししたことがしばらく受け取りにくいかもしれない。「そしてあざけりへの報復として、人々に、彼らが忌み嫌うことをさせたのです」の「彼らが忌み嫌うこと」は、原語だと things they did not want to で、これは「望んではいないこと」くらいのニュアンス。そして、「それは人の心にあいつを殺してやりたいという感情を芽生えさせることです――心理的殺人教唆」は 'This sense of power gradually developed into a morbid taste for violence at second-hand, which soon turned into an obsession. (その力の知覚は徐々に他人の手を使った暴力の病的嗜好に発展し、それは遠からず病みつきになりました)' で、ノートンが他人に殺人の意思を生じさせることではなく、それが可能だと知ったノートンが、その愉しみにおぼれていく様子を言っている。「フランクリンとジュディスのあいだのことも、いまは受けとめられるでしょう」は、 'You will have realised by now that Franklin was in love with Judith and she with him. (いまはもう、フランクリンとジュディスが互いに想いあっていることに気づいているでしょう)' ということ。のちにポワロがヘイスティングスに、バーバラを殺したのはジュディスではないかという疑いが生じることを懸念していることを考えると、この時点で受けとめるところまで行っていると想定するのは不自然に感じられる。「わたしはアラートンの部屋から聞こえてくる音に集中し、あなたが嫌うことをあえてしたのです」は、 'I heard you in the bathroom of Allerton, and promptly, in the manner you so much deplore, dropped to my knees. (あなたがアラートンのバスルームにいる物音が聞こえ、すぐにわたしは、あなたの嘆かわしく思うやり方で、膝を落としました)' で、日本語の「あなたが嫌うこと」はヘイスティングスの犯行を妨害したことを指しているようにも聞こえるが、原語では彼が拒否しつづけていた、鍵穴を覗くという行為を言っている。キャリントンとバーバラの関係について、「かつて彼女にプロポーズしている男が」と言ったところは、原語では 'who'd nearly asked to marry her when she was a girl (かつて彼女にプロポーズ直前まで行った男)' で、実際にプロポーズするところまでは行っていなかった。そして、バーバラがフランクリンに言及した部分を評した「彼女の表向きの称讃と、そこに見え隠れする本音。さらには懸念」という台詞は、 'It was so obvious, her protestations of admiration, then her fears for her husband. (実に見え透いていました、夫へのことさらの称讃と、それから懸念)' で、「見え隠れする本音」には触れておらず、「懸念」もバーバラ自身の将来に関するものではなく、夫の身を案じて見せた(ように思わせて、夫の事故死の可能性をにおわせた)ことを指す。「わたしは、モ・ナミ、あなたが無意識のうちにテーブルをまわし、コーヒーが入れ替わったことを知りましたが、それはあとからの話です」は、 'I realised what must have happened that she'd poisoned the coffee and you'd unwittingly turned the table, but you see, Hastings, I could not prove it. (彼女がコーヒーに毒を入れ、あなたが知らずにテーブルをまわしたにちがいないと悟りましたが、証明はできませんからね)' で、あとから知ったのではなく、その場で真相に気づいたが証明手段を持たなかったことが課題。「幸い、ポワロの言い分が疑われることはありませんでした」は事実関係は原語どおりだが、原語では 'I knew that my statement would be accepted because I am Hercule Poirot. (わたしの言い分が疑われないのはわかっていました。なぜならわたしはエルキュール・ポワロだからです)' と言っており、「幸い」どころか相変わらず自信満々である。「あなたはジュディスのことで頭がいっぱい、それがあなたの思考力を鈍らせていた」は、 'You were not pleased, but mercifully you did not suspect the true danger. (あなたはいやがりましたが、幸い真の危険には気づきませんでした)' で、 not pleased の対象はジュディスの恋愛のことではなく、ポワロが意図的に評決を誘導したこと。そして、「そして今、真実をお教えしましょう」も原語ではその先の説明を切り出す台詞ではなく、 'And therefore, you must know the truth. (だからこそ、あなたは真実を知る必要があるのです)' と、自らの行為が意図せずバーバラを死なせることになったという残酷な真実を知らなければいけなかった理由が、娘への疑念を払拭するためであることを説明している。そして、その疑念を吹き込んだノートンの手口を説明する「彼はあの日、あなたたちとの散歩の途中であるものを見ました。決定的なことは言わず、ジュディスの相手がアラートンではなくフランクリンであるかのような余韻を残し、そしてこれが、自殺とされたバーバラの死に影を落とすのです。彼女を邪魔に思う人間がいたのでは、と」という台詞は、 'He began to throw out hints about what he saw that day with you and Mademoiselle Cole. What is it? He'd never said anything definite, so if he could convey the impression that it was Franklin and Judith that he saw, not Allerton and Judith, then that could open up an interesting new angle on the suicide case, perhaps even throw doubts on the verdict. (あなたやマドモワゼル・コールと一緒にあの日見たものについて、彼はほのめかしを始めました。どんな? その場では決定的なことは言っていませんでしたから、もし彼が見たのがアラートンとジュディスでなくフランクリンとジュディスだったと思わせることができれば、自殺事件に興味深い新たな視点をもたらし、評決に疑念を生じさせることすらできるかもしれない)' という台詞で、決定的なことを言わなかったのは目撃時の話であって、それゆえにあとから別の視点を注入することができたと言っている。そして、ついに対峙したノートンに過去の事件の調査結果を見せながら言う「いずれの事件にも決定的な証拠は存在せず、しかし、あなたが、ムッシュウ・ノートン、悪意を持ってすべてに関わっている」は、 'in none of these murders was there any real doubt. There was one clear suspect. No other, But you, Monsieur Norton, are the one factor malevolent common to all (いずれの事件も現実的な疑義はなく、明白な容疑者が一人だけ。しかし、ムッシュウ・ノートン、あなただけがすべてに共通した邪悪な要素だ)' で、おそらく real doubt を「犯人に対する本当の疑惑」ととらえてしまったために、その流れに沿わない 'There was one clear suspect. No other.' が訳し落とされている。また、「君には同情する。この美しき世界を汚す役目を、君は負わされた」は、 'I pity you, Norton. How very sad to find this great and beautiful world is so foul and disappointing. (君には同情する、ノートン。この美しく偉大な世界を、汚れた、失望を呼ぶものと知らされたのはさぞかし悲しいことだったろう)' で、ポワロの同情の対象は、ノートンを邪悪な愉しみに走らせた、周囲からあざけりを受けたつらい過去である。ノートンに自ら手を下したことについて語る「人には法をねじ曲げる権限はない。しかし、ノートンの命を奪うことがほかの多くの命を救うことにならないだろうか? わたしはそう問いつづけました」は、 'I do not believe that a man should take the law into his own hands, but by taking the life of Norton, have I not saved others? I have always been so sure, but now... (個人が法をその手にするべきだとは思いません。でもノートンの命を奪うことで、わたしはほかの命を救ったのではないか? わたしにはずっと確信がありましたが、でもいまは……)' という台詞で、前半は法をねじ曲げるというより、個人が法になりかわり私刑をくだすことを否定しており、これは原作にもある見解だが、ドラマ化にあたって「オリエント急行の殺人」に加えられ、そして最終シリーズ諸作にも通底していたテーマを受けた形になっている。そして後半は、問いつづけていたのではなく、ずっと自らの正しさを確信してきたが終わってみてその確信が揺らいだということ。だからこそ、ここにいたって自らを神の御手にゆだねるという選択につながった。
     ポワロが告白する「あなたは気づいていなかったでしょうが、わたしは付け髭をしていました」という台詞は、日本語だとこれまでの口髭がすべて付け髭だったと告白しているようにも聞こえるが、原語だと 'You will not have realised, Hastings, that recently I have taken to wearing a false moustache.' となっており、付け髭をしていたのは recently (最近) のみの話だと明言されている。原作では付け髭に加えてカツラまで使っていたことになっており、付け髭は単に、部屋から覗いたヘイスティングスにポワロをノートンと誤認させる手段の一つとしての側面が強かった。だが、ノートンに変装できたのは誰かという問題にほとんど踏み込まないドラマでは、それまで否定しつづけてきた殺人という行為に踏み出すポワロの象徴として、自らの重要なアイデンティティであったその口髭をはずす姿を描いているようだ。そして、殺害の瞬間にノートンが目を開けて笑みを浮かべるのもドラマでのアレンジで、これによってポワロの殺人すらノートンの心理的殺人教唆(という言葉は、前述のとおり日本語のみ命名された概念だけれど)によって引き起こされたものという解釈の余地を生んだ。ノートンの銃創にヘイスティングスがカインの烙印を想起するところで終わった原作と比べると、「原作に最も忠実なポワロ」と評されたスーシェのポワロは、ポワロの最後の行為を神の裁きのようにとらえた原作とは、最終的に真逆の結末に至ったとも受け取ることができる。

    [1] 早川書房編集部, 「エルキュール・ポアロの死の謎」, 『カーテン ―ポアロ最後の事件―』, pp. 261, 早川書房, 1975
    [2] 中島河太郎, 「解説」, 『カーテン ―ポアロ最後の事件―』, pp. 281, 早川書房(ハヤカワミステリ文庫), 1982
    [3] David_Suchet on Twitter: "Filming starts Oct 15th. We start with CURTAIN. I can't believe that this will be the last series. Will be talking about this today."
    [4] David_Suchet on Twitter: "Curtain has now finished :( Just finished the first week of filming a documentary on Agatha Christie"
    [5] David Suchet and Geoffrey Wansell, Poirot and Me, pp. 269, headline, 2013
    [6] 田中正彦司令・代理さんはTwitterを使っています: "NHK BSプレミアムで放送予定、アガサ・クリスティー原作の人気シリーズ、『名探偵ポワロ』 ついに最終回を迎えます。 名作の最後を飾れて、司令も感慨深げ。 これもロンドンが舞台のお話ですね。 放送日がわかったら、またお知らせします! http://t.co/wMAMQ0U6Yf"
    [7] David Suchet reveals how he found faith | Celebrity News | Showbiz & TV | Daily Express
    [8] David Suchet: Recording the NIV Bible is my legacy | Christian News on Christian Today
    [9] David Suchet and Geoffrey Wansell, Poirot and Me, pp. 75-90, headline, 2013
  • ロケ地写真


  • カットされた場面

    なし
  • 映像ソフト

    【DVD】 「名探偵ポワロ 52 カーテン〜ポワロ最後の事件〜」(字幕・吹替) ハピネット・ピクチャーズ
    「名探偵ポワロ NEW SEASON DVD-BOX 5」に収録
2017年9月27日更新


 ・ トップ ・ リスト(日本放送順 / 英国放送順 / 邦題50音順 / 原題ABC順