コーンワルの毒殺事件
The Cornish Mystery

放送履歴

日本

オリジナル版(44分30秒)

  • 1990年08月01日 20時00分〜 (NHK総合)
  • 1992年04月24日 17時05分〜 (NHK総合)
  • 1998年10月28日 15時10分〜 (NHK総合)
  • 2003年06月11日 18時00分〜 (NHK衛星第2)

ハイビジョンリマスター版(47分00秒)

  • 2016年01月30日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)
  • 2016年07月06日 17時00分〜 (NHK BSプレミアム)

海外

  • 1990年01月28日 (英・ITV)

原作

邦訳

  • 「コーンウォールの毒殺事件」 - 『教会で死んだ男』 クリスティー文庫 宇野輝雄訳
  • 「コーンウォールの毒殺事件」 - 『教会で死んだ男』 ハヤカワミステリ文庫 宇野輝雄訳
  • 「コーンウォールの謎」 - 『ポワロの事件簿2』 創元推理文庫 厚木淳訳

原書

雑誌等掲載

  • The Cornish Mystery, The Sketch, 28 November 1923 (UK)
  • The Cornish Mystery, The Blue Book Magazine, October 1925 (USA)

短篇集

  • The Cornish Mystery, The Under Dog and Other Stories, Dodd Mead, 1951 (USA)
  • The Cornish Mystery, Poirot's Early Cases, Collins, September 1974 (UK)

オープニングクレジット

日本

オリジナル版

名探偵ポワロ / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / DAVID SUCHET // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / PAULINE MORAN / コーンワルの毒殺事件, THE CORNISH MYSTERY / Dramatized by CLIVE EXTON

ハイビジョンリマスター版

名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / コーンワルの毒殺事件 // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / PAULINE MORAN / THE CORNISH MYSTERY / Dramatized by CLIVE EXTON

エンディングクレジット

日本

オリジナル版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 クライブ・エクストン 監督 エドワード・ベネット 制作 LWT(イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口芳貞 ミス・レモン 翠 準子  ラドナー 堀 勝之祐 ペンゲリー夫人 公卿敬子  弥永和子 大木民夫 一城みゆ希 潘 恵子 松岡文雄 仁内建之 藤城裕士 森  一 竹口安芸子 辻谷耕史 / 日本語版 宇津木道子  山田悦司 福岡浩美 南部満治 金谷和美

ハイビジョンリマスター版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 クライブ・エクストン 演出 エドワード・ベネット 制作 LWT (イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬/安原 義人 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口 芳貞 ミス・レモン(ポーリン・モラン) 翠 準子  ラドナー 堀 勝之祐 ペンゲリー夫人 公卿 敬子  弥永 和子 大木 民夫 一城 みゆ希 潘 恵子 松岡 文雄 仁内 建之 藤城 裕士 森 一 竹口 安芸子 辻谷 耕史  日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 山田 悦司 音声 金谷 和美 プロデューサー 里口 千

海外

オリジナル版

Hercule Poirot: DAVID SUCHET; Captain Hastings: HUGH FRASER; Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON; Miss Lemon: PAULINE MORAN; Freda Stanton: CHLOE SALAMAN; Jacob Radnor: JOHN BOWLER; Edward Pengelley: JEROME WILLIS; Mrs Pengelley: AMANDA WALKER; Jessie Dawlish: TILLY VOSBURGH; Dr Adams: DEREK BENFIELD; Edwina Marks: LAURA GIRLING; Prosecutor: JOHN ROWE; Judge: HUGH MUNRO; Solicitor: GRAHAM CALLAN; Landlady: EDWINA DAY; Shop Assistant: RICHARD BRAIN; Vicar: HUGH SULLIVAN; Policeman: JONATHAN WHALEY / Developed for Television by Picture Partnership Productions / (中略) / Production Designer: ROB HARRIS / Director of Photography: IVAN STRASBURG / Theme Music: CHRISTOPHER GUNNING; Incidental Music: FIACHRA TRENCH; Conductor: DAVID SNELL / Executive Producer: NICK ELLIOTT / Producer: BRIAN EASTMAN / Director: EDWARD BENNETT

あらすじ

 夫に毒を盛られているのではないかというペンゲリー夫人の訴えを受けて、ポワロとヘイスティングスは彼女が住むコーンワルの村、ポルガーウィズを訪ねる。しかし、二人が村に到着したときにはすでに遅く、夫人は1時間前に死んだという……

事件発生時期

1935年7月上旬 〜 下旬

主要登場人物

エルキュール・ポワロ私立探偵
アーサー・ヘイスティングスポワロのパートナー、大尉
ジェームス・ジャップスコットランド・ヤード主任警部
フェリシティ・レモンポワロの秘書
アリス・ペンゲリー依頼人
エドワード・ペンゲリーアリスの夫、歯科医
フリーダ・スタントンエドワードの姪
ジェイコブ・ラドナーフリーダの婚約者
エドウィナ・マークスペンゲリーのアシスタント
ジェシー・ドーウィッシュペンゲリー家のメイド
アダムズ医師

解説、みたいなもの

 ペンゲリー夫人が裕福な婦人になっている点と、ポワロの犯人の供述書に対する扱いが異なる以外、話の大筋に目立った変更はないが、原作でのポワロの台詞の一部をヘイスティングスに割り振ることで、ヘイスティングスに重要な活躍どころが提供されている。
 事件の舞台はグレート・ブリテン島南西端コーンワルだが、撮影はそのやや東に位置するサマーセット北部の町、ダンスターで行われた。当地での撮影に当たっては、1930年代の雰囲気を出すために家からテレビのアンテナをはずし、現代的な街灯や道路標示を隠すといった対応がとられたほか、非番の警官に交通整理を依頼したり、道路沿いの店に一日分の売り上げを補償することまでおこなわれたそうで、地元の人たちもエキストラとして多数出演しているという[1]。そのダンスターは14世紀後半からラトレル家の城下町として栄えてきた町。しかし、画面奥に見えるダンスター城は19世紀に改築されたもので、現在はナショナルトラストが管理している。ポワロたちが滞在したブル・ホテルは、実際にはラトレル・アームズというホテルで、その向かいの、最後にジャップ警部が前に立ってパイを食べている建物は、ハイ・ストリートにあるヤーン・マーケット。ペンゲリーの裁判がひらかれた建物は、外観にはダンスターの元礼拝堂が使われているが、内部は「消えた廃坑」でスコットランド・ヤード内部として使われたロンドン郊外のチジック・タウン・ホールで撮影された。ペンゲリーの家の診療所入り口はいかにもな後付けだが、その内部も別の場所で撮影されたと見られる。ポルガーウィズの駅として使われたのは、ダンスターからやや東にある、西サマーセット鉄道のブルー・アンカー駅。
 撮影時期については(1989年の)11月とする資料もあるが[2]、スーシェの自伝によれば「消えた廃坑」に次ぐ第2シリーズ4話目の撮影だったようで[3]、路傍にアジサイが咲いていることなどからしても、11月の撮影とは思われない。
 ヘイスティングスが言及する「インドの哲学者タゴール」とは、詩集『ギーターンジャリ』でノーベル文学賞を受賞し、アジアで初のノーベル賞受賞者となったラビンドラナート・タゴールのこと。彼が実際に「コメはすべての病を癒やすものとして推奨して」いたかは浅学寡聞にしてわからないけれど、「コメは、我々が何世代にもわたって、健康や強さ、活力、知性の多くを授かってきた主要な食べ物である」と書き、機械による近代的な精米の拡がりを批判したりはしていたようだ。ただ、その文章は1935年12月28日付で、劇中の時期より半年弱あとのもの。[4]
 雨の降りしきる公園で、さしていた傘をわざわざ閉じるポワロ。天気の変わりやすい気候ゆえか、西洋では傘をさす習慣が日本ほど強くなく、多少の雨なら傘をささない人が多い。しかし、日本人の感覚からすると、潔癖性のポワロらしからぬ行動に見えるかも。
 ヘイスティングスが日本語で「ペンゲリー夫人のいとこの息子という触れ込みで乗り込むんですからね」と言う箇所の「いとこ」に対応する原語は second cousin で、これは「はとこ」のこと。また、ヘイスティングス家の出身地であるという「ウィットシャー」の原語は Wiltshire (ウィルトシャー) で、これはコーンワルとロンドンのあいだにある地域。フリーダが「ジェイコブは三十になったばかり」と言った箇所は、原語だと 'and he's no thirty yet (ジェイコブはまだ三十にもなっていないのに)' ですこしだけ若い。
 ポワロが口にする「銀行休日 (bank holiday)」とは、日本で言うところの祝祭日に当たる公休日のこと。現在のイングランドの8月の銀行休日は8月最後の月曜日だが、1935年当時は8月最初の月曜日だった。
 ポワロたちが裁判所でペンゲリーの弁護士に面会した際、原語では最初に法廷から検事の声が聞こえているが、日本語音声では特に台詞がない。
 市場でジャップ警部が「こういうのはよそにはないねえ」と言う台詞は、原語だと 'Don't get many of that in Peckham. (ペッカムではそうは手に入らないねえ)' と言っており、「よそ」ことペッカムとは南ロンドンの町の名前。当時は、ジョーンズ・アンド・ヒギンズというデパートをはじめとした店が建ち並ぶショッピング街として知られていた。
 最後にジャップ警部が食べているパイはコーニッシュ・パスティと呼ばれるコーンワルの名物料理で、パイ生地のなかに牛肉や野菜をつめて包み焼きにしたもの。ジャップ警部は「ロンドンじゃこれは食べられませんよ」と言うが、「夢」のニュース映画によればファーリーズ食品が生産している(日本語音声では「ミートパイ」と訳されていたけれど)ので、味にこだわらなければたぶんロンドンでも食べられる。
 ハイビジョンリマスター版でヘイスティングスとミス・レモンが興じている「イー・チン (I Ching)」とは『易経』のこと。占いによって選ばれた「ヘキサグラム (hexagram)」とは一般に六芒星を言う言葉で、日本語音声でも「星」と訳されている箇所があるが、原義としては6つの要素で成り立った図形を指し、ここでは6本のこう(陰陽を表す破線あるいは実線の横棒)で構成された六十四卦の図形のこと。その15番である ䷎ の「チーエン (Ch'ien)」とは漢字で書けば「謙」のことで、上半分の ☷ が「地」、下半分の ☶ が「山」を表すことから「地山謙」と呼ばれる。しかし、「でも、つづきが重要なんです。いいですか、聞いててください」とヘイスティングスがつづけるところは原語だと 'Yes, but it's the lines that are important. You see, your second line says... (ええ、でも爻が大事なんです。いいですか、ポワロさんの二爻は……)' と言っているのだが、その先は「地山謙」の二爻の爻辞(爻が示す占いの言葉)ではなく、「二十匹の亀も彼には逆らえない」は41番の「山沢損」の五爻あるいは42番の「風雷益」の二爻の、「赤い膝バンドの男が現れる」は47番の「沢水困」の二爻の爻辞の一部。加えて、「二十匹の亀も彼には逆らえない」は原語(英語)を適切に訳したものなのだが、これは中国語だと「十朋之亀弗克違」となっている一節で、「朋」は貨幣の単位であって、本来は「十朋もする高価な亀で占いをしても覆すことができないほど確実である」という意味である由。また、「赤い膝バンド (scarlet knee bands)」こと朱紱しゅふつはかつて天子が膝に巻いたもので、「赤い膝バンドの男」とはすなわち天子のこと。それが現れるとはつまり、「天子の目に留まって取り立てられる」という意味である。ただ、朱紱に対して赤紱せきふつだと諸侯を表すのだが、「赤い膝バンド」という日本語では両者の訳し分けができない。
 オリジナル版の、公園でポワロたちがペンゲリー夫人に歩み寄る場面では、画面左上(上から約4分の1、左から約2分の1)だけ映像のぶれがなく、遠景に写り込んだ何かを合成で消したことが窺える。ハイビジョンリマスター版では画面のぶれはないが、明らかに色合いが異なる部分が存在し、やはり合成の形跡が見える。
 ダンスターの駅では、到着のときと帰りのときとでプラットフォームは異なるが、なぜか汽車はいずれも同じ向きに発車する。また、帰りの際には、動き出す汽車の車輪が映ったあとに画面が車内へと切り替わるが、最初、車窓の向こうの景色は動いていない。
 ジョン・ネトルズ主演の「バーナビー警部」シリーズでは、エドワード・ペンゲリー役のジェローム・ウィリスを「流浪の馬車がやってくる」のジョン・スミス役で、アリス・ペンゲリー役のアマンダ・ウォーカーを「採石場にのろいの叫び」のエドウィナ役で見ることができる。
 ハイビジョンリマスター版で番組内容として放送データに載っているあらすじでは、ペンゲリーの逮捕を夫人の死去から「数か月後」と書いているが、夫人の死が1935年7月10日、ペンゲリーの逮捕が8月の銀行休日が「再来週の月曜日」である日なので、1か月にも満たない。
  1. [1] ピーター・ヘイニング, 『テレビ版 名探偵ポワロ』, pp. 51, 求龍堂, 1998
  2. [2] Mark Aldridge, Agatha Christie on Screen, pp. 252, Palgrave Macmillan, 2016
  3. [3] David Suchet and Geoffrey Wansell, Poirot and Me, pp. 84, headline, 2013
  4. [4] Rabindranath Tagore, 'The Rice We Eat', The English Writings of Rabindranath Tagore, pp. 812-813, Sahitya Akademi, 2006

カットされた場面

日本

オリジナル版

[27:39/1:57]ヘイスティングスとミス・レモンが中国の占いをしている最中にポワロが帰宅し、ペンゲリー夫人の遺体発掘を報じる新聞を見せる場面 〜 ジャップ警部に連れられて家を出るペンゲリー
[28:24/0:20]再びポルガーウィズへ向かう汽車内の場面の後半
[31:41/0:02]地方裁判所前でのポワロたち3人の会話の一部

映像ソフト

  • [VHS, LD] 「名探偵ポアロシリーズ Vol.3 コーンウォールの毒殺事件, 二重の罪」(字幕) ハミングバード
  • [VHS] 「名探偵エルキュール・ポアロ 第14巻 コーンウォールの毒殺事件」(字幕) 日本クラウン
  • [DVD] 「名探偵ポワロ 8 コーンワルの毒殺事件, ダベンハイム失そう事件」(字幕・吹替) ビームエンタテインメント(現ハピネット・ピクチャーズ
  • [DVD] 「名探偵ポワロ [完全版] 8 コーンワルの毒殺事件, ダベンハイム失そう事件」(字幕・吹替) ハピネット・ピクチャーズ
  • [BD] 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX Disc 4 ベールをかけた女, 消えた廃坑, コーンワルの毒殺事件, ダベンハイム失そう事件」(字幕/吹替) ハピネット・ピクチャーズ
2020年7月2日更新