愛国殺人
One, Two, Buckle My Shoe

放送履歴

日本

字幕版

  • 1992年10月03日 19時30分〜 (NHK衛星第2)

オリジナル版

  • 1993年01月02日 16時05分〜 (NHK総合)

ハイビジョンリマスター版

  • 2016年06月11日 15時00分〜 (NHK BSプレミアム)
  • 2016年11月19日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)

海外

  • 1992年01月19日 (英・ITV)

原作

邦訳

  • 『愛国殺人』 クリスティー文庫 加島祥造訳
  • 『愛国殺人』 ハヤカワミステリ文庫 加島祥造訳

原書

  • One, Two, Buckle My Shoe, Collins, November 1940 (UK)
  • The Patriotic Murders, Dodd Mead, February 1941 (USA)

オープニングクレジット

日本

オリジナル版

名探偵ポワロ ♦ スペシャル / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / DAVID SUCHET // PHILIP JACKSON / 愛国殺人, ONE, TWO, BUCKLE MY SHOE / Dramatized by CLIVE EXTON

ハイビジョンリマスター版

名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / 愛国殺人 // PHILIP JACKSON / ONE, TWO, BUCKLE MY SHOE / Dramatized by CLIVE EXTON

エンディングクレジット

日本

オリジナル版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 クライブ・エクストン 監督 ロス・デベニッシュ 制作 LWT(イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口芳貞  ブラント 天田俊明 ガーダ 鈴木弘子 メイベル 加藤みどり グラディス 宗形智子 ジェーン 潘恵子 フランク 大塚芳忠 アンベリオティス 小林清志 篠原大作  堀内賢雄 宮内幸平 京田尚子 沼波輝枝 安達忍 中村秀利 沢木郁也 緒方賢一 阿部光子 石森達幸 丸山詠二 西村知道 滝沢ロコ / 日本語版 宇津木道子  山田悦司 浅見盛康 南部満治 金谷和美

ハイビジョンリマスター版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 クライブ・エクストン 演出 ロス・デベニッシュ 制作 LWT (イギリス)  出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口 芳貞  ブラント 天田 俊明 ガーダ 鈴木 弘子 メイベル 加藤 みどり グラディス 宗形 智子 ジェーン 潘 恵子 フランク 大塚 芳忠 アンベリオティス 小林 清志  篠原 大作 堀内 賢雄 宮内 幸平 京田 尚子 沼波 輝枝 安達 忍 中村 秀利 沢木 郁也 緒方 賢一 阿部 光子 石森 達幸 丸山 詠二 西村 知道 滝沢 ロコ 飯島 肇  日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 山田 悦司 音声 金谷 和美 プロデューサー 里口 千

海外

オリジナル版

Hercule Poirot: DAVID SUCHET; Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON; Gerda/Helen: JOANNA PHILLIPS-LANE; Blunt: PETER BLYTHE; Mabelle: CAROLYN COLQUHOUN; Frank Carter: CHRISTOPHER ECCLESTON; Gladys Neville: KAREN GREDHILL; Henry Morley: KAURENCE HARRINGTON; Georgina Morley: ROSALIND KNIGHT; Jane Olivera: SARA STEWART; Julia Olivera: HELEN HORTON; Amberiotis: KEVORK MALIKYAN; Agnes Fletcher: TRILBY JAMES; Alfred Biggs: JOE GRECO; Mr Hendry: OLIVER BRADSHAW; Alison Hendry: JEAN AINSLIE; Albert Chapman: BRUCE ALEXANDER; Beryl Chapman: MARY HEALEY; Lionel Arnholt: TOM DURHAM; Dr Bennett: JOHN CARLIN; First Coroner: GEORGE WARING; Sencond Coroner: JOHN WARNER; Sergeant Beddoes: BEN BAZELL; Mrs Pinner: DAWN KEELER; Receptionist: CASSANDRA HOLLIDAY; Pageboy: STEPHEN BIRD; Sergeant: JOHN PETERS; Mr Leatheran: NIGEL BELLAIRS; Manageress: EILEEN MACIEJEWSKA; Waiter: NICHOLAS BROOK; Desk Clerk: KEITH WOODHAMS; Police Constable: MARK HEAL; 'Claudio': CHRIS SPICER; 'Antonio': ALAN PENN; 'Benedick': GUY OLIVER WATTS; Hopscotch Girls: EMMA GREY, JULIE SMITH / Developed for Television by Carnival Films; (中略) Production Designer: ROB HARRIS; Director of Photography: CHRIS O'DELL; Music: CHRISTOPHER GUNNING; Executive Producer: NICK ELLIOTT / Producer: BRIAN EASTMAN; Director: ROSS DEVENISH

あらすじ

 ポワロのかかりつけの歯科医モーリーが診察室で死んでいるのが発見された。ギリシャ人患者に麻酔を過剰投与してしまったことを後悔しての自殺と判断されたが、どうやら国家の重鎮アリステア・ブラントに関わる陰謀のにおいが……

事件発生時期

1937年8月上旬 〜 下旬

主要登場人物

エルキュール・ポワロ私立探偵
ジェームス・ジャップスコットランド・ヤード主任警部
マーチン・アリステア・ブラント銀行家
ジュリア・オリベラブラントの死んだ妻の妹
ジェーン・オリベラジュリアの娘
ヘレン・モントレソーブラントの秘書
ヘンリー・モーリーポワロのかかりつけの歯科医
ジョージナ・モーリーヘンリーの妹
グラディス・ネビルモーリーの秘書
フランク・カーターグラディスの婚約者
アルフレッド・ビッグスモーリー歯科医院のボーイ
アグネス・フレッチャーモーリー家のメイド
メイベル・セインズベリー・シールモーリーの患者
アンベリオティスモーリーの患者、ギリシャ人

解説、みたいなもの

 ドイツ軍によるポーランド侵攻の翌年である1940年に発表された長篇小説の映像化作品。原作執筆当時の時代背景を反映して、政治色の強い作品になっている。その原作の主要な登場人物のうち、バーンズ、レイクス、ライリーがカット。特にバーンズとレイクスのカットによって政治思想の対立の構図が不鮮明になり、ブラント謀殺疑惑への描写は弱くなってしまっている。また、原作では露出がすくなかった共犯者にドラマでは比重が置かれており、その反面、主犯の人物の愛国心に高潔な一面を認める描写が影を潜めて傲慢さが強調されている。細かな変更では、地名や住所が軒並み変更されており、モーリーの歯科医院の所在がクイーン・シャーロット街58からハーリー街168へ(ハーリー街は名医の医院が建ち並ぶ通りとして有名)、ポワロたちがセインズベリー・シールに面会に向かった先がグレンゴリー・コート・ホテルからカーライル・ホテルへ、アンベリオティスの宿泊先がサボイ・ホテルからアストリア・ホテルへ、チャップマン夫人のフラットがキング・レオポルド・マンションからリッチフィールド・コートへ。なお、撮影にあたってモーリー歯科医院の建物は番地が付け替えられているが、周囲の家の番地は本物のままなので、劇中ではモーリー歯科医院だけ番地の数字が飛んでいる。
 原題の One, Two, Buckle My Shoe はマザーグースの数え唄の冒頭の一節。見立て殺人のように劇中で意識されるわけではないが、物語はこの数え唄をなぞる形で進み、原作ではその各フレーズが章題になっていた。「愛国殺人」という邦題は、原作の米題である The Patriotic Murders の日本語訳から。
 冒頭、インドでガーダが羽織っているキモノの襟には漢字が書かれている。全体は見えないが「春乃庭」だろうか。
 フランク・カーターが参加し、ジャップ警部がブラント氏を除こうとする勢力として挙げた「黒シャツ党」ことイギリスファシスト連合は、1932年にサー・オズワルド・モズレーによって設立されたファシスト政党。「砂に書かれた三角形」でも見られたイタリアの黒シャツ党にならった黒服の制服を身につけ、同様に「黒シャツ党」の異名で呼ばれた。劇中ではカーターがその恰好で行進に参加しようとするが、舞台の1937年には公共の場所や会合での政治的な制服の着用は法律で禁止されていた。
 アーンホルト財閥の会議室にかけられているブラントと亡きレベッカの絵は、レンピッカの「マダム・ブカールの肖像」と「夫の肖像(未完成)」を重ね合わせ、「夫」の顔をブラントの顔に置き換えたもの。
 メイベルが仕事をしていたゼナナ・ミッションとは、インド女性の衛生や教育思想の改善を図るために19世紀半ばに設立された伝道会で、ゼナナとはインドの婦人部屋のこと。
 モーリー氏の遺体を検めたジャップ警部が「右手にピストルを握りしめてる」と言った台詞は、原語だと 'Revolver grasped in lifeless fingers. (死者の指がリボルバーを握りしめてる)' となっているが、遺体が握っているのはリボルバーではなくオートマチック。
 モーリー氏から予約をすっぽかされたとして怒っていたピナー夫人は、原語によれば南海岸にあるワージングから来ており、ワージングからロンドンまでは直線で片道80キロメートルの距離があるので、それで予約どおりに診察を受けられずに帰ることになったら、確かに「こんなに不愉快なことってない」でしょうとも。
 ポワロがジャップ警部に「あなたのような大物が、単なる自殺と見られる事件にどうして?」と言う台詞があるが、これは原作からあったもの。原作は発表順だとジャップ警部が登場する最後の作品で、ドラマの「ビッグ・フォー」のように出世はしていないものの、警察内でのジャップ警部の立場が向上していたことを窺わせる。ドラマでは、このあとも「死人の鏡」のように自殺と思われた事件にもジャップ警部は出張ってくるが、本作はこの時期に制作された作品としてはめずらしく1937年に設定されており、劇中世界でもすこし遅い時期に設定されている。
 ポワロがアーンホルト氏に対して「もちろん証拠はありません」と言った台詞は、原語だと 'One grips at the straws.' と言っているが、これは「見込みのうすい希望でもすがる」という意味の grasp [snatches, clutches] at straws という表現をポワロが誤解したもの。 grip と grasp の違いは「スタイルズ荘の怪事件」でもヘイスティングスに指摘を受けていた。
 最後のポワロの台詞のうち、日本語音声ではポワロの信条を表す前半の 'There are no little chaps. (人間に小物などいない)' の要素が落とされている。また、本篇には関係ないが、下で紹介しているビデオの字幕では逆に、後半の 'Especially not Poirot. (特にポワロは小物とは違う)' の部分が誤訳されていた。
 冒頭のインドの場面が撮影されたのは世界標準時の本初子午線が通ることで知られるロンドン南東部のグリニッジで、総督官邸はグリニッジ大学構内の旧王立海軍大学、ガリソン・シアターの建物はその向かいの元宿舎。一方、アーンホルト財閥の建物はトリニティ・スクエアにある元ロンドン港湾局の建物。アストリア・ホテルの建物は、「西洋の星の盗難事件」「あなたの庭はどんな庭?」のほか、「スズメバチの巣」「盗まれたロイヤル・ルビー」でも撮影に使われたフリーメイソンズ・ホールで、今回使われた入り口は「西洋の星の盗難事件」と同じ正面口。エクスハムにある設定のブラントの郊外の邸宅も、「二重の手がかり」のハードマン邸と同じバッキンガムシャー州チャルフォント・セント・ジャイルズのシュラブズ・ウッドが使われている。メイベルが引き払ったホテルは現ローズウッド・ホテル・ロンドンで、ブラントのオフィスが撮影されたのも同じ建物内と思われる。アンベリオティス氏の検死結果を聞いた後にポワロとジャップ警部が歩いていたのは、「スペイン櫃の秘密」で軍人クラブ前の通りの奥に見えていたリンカーンズ・イン・フィールズとサール・ストリートの丁字路付近。バターシーにあるというリッチフィールド・コートは実在のマンションだが、現実の所在はリッチモンド。実際のバターシーでは、ポワロとジャップ警部がモーリー歯科医院からアーンホルト財閥へ車で向かう場面と、ポワロがグラディスとカーターに会ったバンドスタンドの場面が、バターシー・パークの中で撮影されている。
 「名探偵ポワロ」オリジナル版ではカットされたが、ハイビジョンリマスター版ではジャップ警部の自宅が初登場。このシーンの会話の原語からは警部の自宅がロンドン西部郊外アイゾルワースにあることがわかり、この設定はのちの作品でも何回か言及されることになる。なお、警部の自宅のロケ地は、実際にはアイゾルワースではなく、そのやや南のセント・マーガレッツにあるシドニー・ロード。そして、この場面の警部の台詞に出てくる「この先にあるサリー通りのリッチモンド (Richmond, Surrey, just down the road here)」とは本来、「この通りの先にあるサリー州リッチモンド」の意味。また、そのすこし前の「教会の婦人会だか何だかの集まりだとかで」という台詞も、原語では 'Women's Institute, parish councul, or something. I don't know. (婦人会か、教区会か、ほかの何だかわかりませんが)' という台詞で、「教会」と「婦人会」はそれぞれ別の可能性。最後に警部がポワロに「どうですか (Garibaldi)」と言って差し出すガリバルディ・ビスケットは、干し葡萄をはさんで薄焼きにした、イギリスの伝統的なビスケット。このビスケットは、つぶれた干し葡萄の見た目から dead fly biscuit (死んだハエのビスケット), fly sandwitch (ハエのサンドイッチ), flies' graveyard (ハエの墓場) 等の渾名があり、ポワロが遠慮したのもそのあたりが理由と思われる。
 アリステア・ブラント役のピーター・ブライスは、フランセスカ・アニス主演の「二人で探偵を」の一篇、「キングで勝負」でもビンゴー・ヘイル役を演じている。また、ジョージナ・モーリー役のロザリンド・ナイトは、ジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」の一篇、「青い紅玉」のモーカール伯爵夫人役や、ジェラルディン・マクイーワン主演の「ミス・マープル」の一篇、「動く指」のパートリッジ役でも見ることができる。チャップマン夫人役のメアリ・ヘリーも、同「ミス・マープル」の一篇、「スリーピング・マーダー」で手芸用品屋の店員役を演じている。
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ロケ地写真

カットされた場面

日本

オリジナル版

[0:43:53/1:49]ポワロがジャップ警部宅を訪ねて、グラディスへの電報やメイベルについて話す場面
[0:48:34/0:48]リッチフィールド・コート前に到着するポワロ 〜 チャップマン夫人の部屋へ入っていくポワロとジャップ警部

映像ソフト

2018年9月16日更新