アクロイド殺人事件
The Murder of Roger Ackroyd

放送履歴

日本

オリジナル版

  • 2000年12月30日 15時40分〜 (NHK総合)
  • 2002年07月28日 13時00分〜 (NHK総合)
  • 2003年08月17日 15時05分〜 (NHK総合)

ハイビジョンリマスター版

  • 2016年09月10日 15時00分〜 (NHK BSプレミアム)
  • 2017年02月15日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)

海外

  • 2000年01月02日 (英・ITV)

原作

邦訳

  • 『アクロイド殺し』 クリスティー文庫 羽田詩津子訳
  • 『アクロイド殺し』 ハヤカワミステリ文庫 田村隆一訳
  • 『アクロイド殺害事件』 創元推理文庫 大久保康雄訳
  • 『アクロイド殺人事件』 新潮文庫 中村能三訳

原書

  • The Murder of Roger Ackroyd, Collins, June 1926 (UK)
  • The Murder of Roger Ackroyd, Dodd Mead, 19 June 1926 (USA)

オープニングクレジット

日本

オリジナル版

海外ドラマ // 名探偵ポワロ / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / アクロイド殺人事件 // DAVID SUCHET / PHILIP JACKSON / THE MURDER OF ROGER ACKROYD / Based on the novel by AGATHA CHRISTIE / Dramatized by CLIVE EXTON

ハイビジョンリマスター版

名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / アクロイド殺人事件 // DAVID SUCHET / PHILIP JACKSON / THE MURDER OF ROGER ACKROYD / Based on the novel by AGATHA CHRISTIE / Dramatized by CLIVE EXTON

エンディングクレジット

日本

オリジナル版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 クライブ・エクストン 演出 アンドリュー・グリーブ 制作 カーニバル・フィルム(イギリス 1999年) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口芳貞  ドクター・シェパード 中村正 ロジャー・アクロイド 稲垣隆史 キャロライン 谷育子 ヴェラ 吉野佳子 フローラ 名越志保 ラルフ 大滝寛 アーシュラ 渡辺美佐 レイモンド 納谷六朗 パーカー 斎藤志郎 デイビス 森田順平  麻志奈純子 姉崎公美 楠見尚己 安井邦彦 くわはら利晃 清水敏孝 小林沙苗 / 日本語版スタッフ 宇津木道子  金谷和美 南部満治 浅見盛康  佐藤敏夫

ハイビジョンリマスター版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 クライブ・エクストン 演出 アンドリュー・グリーブ 制作 カーニバル・フィルム (イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口 芳貞  ドクター・シェパード 中村 正 ロジャー・アクロイド 稲垣 隆史 キャロライン 谷 育子 ヴェラ 吉野 由志子 フローラ 名越 志保 ラルフ 大滝 寛 アーシュラ 渡辺 美佐 レイモンド 納谷 六朗 パーカー 斎藤 志郎 デイビス 森田 順平  松村 彦次郎 麻志那 恂子 姉崎 公美 楠見 尚己 安井 邦彦 くわはら 利晃 清水 敏孝 小林 沙苗  日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 佐藤 敏夫 音声 金谷 和美 プロデューサー 里口 千

海外

オリジナル版

Director: ANDREW GRIEVE / Producer: BRIAN EASTMAN / For A&E Television Networks; Exective Producer: DELIA FINE; Supervising Producer: KRIS SLAVA / Director of Photography CHRIS O'DELL; Production Designer: ROB HARRIS; Costume Designer: CHARLOTTE HOLDICH; Make-up: PAM MEAGER / Music: CHRISTOPHER GUNNING; Editor: FRANK WEBB; Sound Recordist: SANDY MACRAE; Associate Priducer: PETER HIDER / Poirot: DAVID SUCHET; Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON; Dr. Sheppard: OLIVER FORD DAVIES; Roger Ackroyd: MALCOLM TERRIS; Caroline Sheppard: SELINA CADELL; Ursula Bourne: DAISY BEAUMONT / Flora Ackroyd: FLORA MONTGOMERY; Geoffrey Raymond: NIGEL COOKE; Ralph Paton: JAMIE BAMBER; Parker: ROGER FROST; Mrs. Ackroyd: VIVIEN HEILBRON; Inspector Davis: GREGOR TRUTER / Mrs. Ferrars: ROSALIND BAILEY; Mrs. Folliott: LIZ KETTLE; Hammond: CHRLES SIMON; Constable Jones: CHARLES EARLY; Landlord: GRAHAM CHINN; Naval Officer: CLIVE BRUNT; Mary: ALICE HART; Postman: PHILIP WRIGLEY; Ted: PHIL ATKINSON / (中略) / CARNIVAL FILMS in association with A&E TELEVISION NETWORKS and AGATHA CHRISTIE LTD with the co-operation of THE ESTATE OF MICHAEL MORTON
  • with 以降はワイド映像版のみの記載

あらすじ

 都会の邪悪さに嫌気を覚えたポワロはキングズ・アボットという田舎の村に引退し、庭仕事に精を出す日々。ところがそんなポワロの思いとは裏腹に、そこでも殺人事件は起こった。懐かしいジャップ警部とも再会し、ポワロの心はかつての仕事を思って揺れる……

事件発生時期

1936年3月中旬

主要登場人物

エルキュール・ポワロ私立探偵
ジェームス・ジャップスコットランド・ヤード主任警部
ジェームス・シェパード医師、ポワロの隣人
キャロライン・シェパードドクター・シェパードの妹
ロジャー・アクロイドアクロイド化学社長、ポワロの友人
ヴェラ・アクロイドロジャーの義妹
フローラ・アクロイドヴェラの娘
ラルフ・ペイトンロジャーの甥で養子
ジェフリー・レイモンドアクロイドの秘書
パーカーアクロイド家の執事
アーシュラ・ボーンアクロイド家のメイド
ハモンドアクロイド家の弁護士
ドロシー・ファラーズアクロイドの友人、未亡人
デイビス警部補

解説、みたいなもの

 前シリーズから5年のブランクをおき、制作局を英 LWT から米 A&E に移して制作が再開された新シリーズの1作目。このブランクのあいだ、ポワロは現役を退いて田舎暮らしをしていたことになっており、今回のエピソードでは、その引退先の村で起こった殺人事件をきっかけに、ポワロが現役復帰を決意するまでを描く。日本では、これまでの作品でずっと演出を手がけてきた山田悦司さんが1996年初めに亡くなっており、佐藤敏夫さんに引き継がれた。また、本作から撮影が 16:9 の画面比でおこなわれており、「名探偵ポワロ」オリジナル版は 4:3 の画面比で放送されたが、ハイビジョンリマスター版では本作から画面比が 16:9 に切り替わる。クレジットに使われるアールデコ風の欧文フォントも変更になった。
 原作は、1926年に発表され、その大胆な仕掛けによってクリスティーの名を一躍有名ならしめたと言われる代表作。この仕掛けをいかに映像化したかが見所の一つでもあるので、できればドラマを見るより前に原作を読んでおきたい。原作の登場人物のうち、アクロイド家の家政婦のミス・ラッセルと、同客人のブラント少佐がカットされたが、後者は一部ジェフリー・レイモンドがその代わりを務めている。クリスティーのお気に入りで、ミス・マープルの原型にもなったとされるキャロラインは[1]、なぜかドクター・シェパードの8歳年上の姉から妹(と明確に言っているのは日本語だけだけど)に設定が変更されたほか、ドクターが語り手という立場でなくなったこともあって、あくまで登場人物の一人という扱いになった。執事のパーカーが殺害されるのはドラマオリジナル。
 引退したポワロが栽培している「トウガン」こと vegitable marrow は、辞書では通例「ペポカボチャ」という訳語が載っており、市販の原作邦訳の多くでも「カボチャ」と訳されているが、実際には映像に見られるような「ウリ」や「ズッキーニ」に近い野菜を指すのが一般的で、果肉も白い。ただ日本の「トウガン」と違う点として、多くのものが縞模様のある表皮を持つ。なお、果肉の黄色い「カボチャ」は squash と呼ばれることが多い。
 劇中の時期については、ラルフの結婚発表の予定日が、アクロイドの台詞から土曜日、フローラの台詞からアクロイド殺害翌日、そして警察署内のカレンダーからそれが14日であることがわかる。本作につづく「エッジウェア卿の死」が1936年5月からに設定されていることなども考えあわせると、劇中は1936年3月と考えられる。ただし、そうなると結婚指輪に刻まれた「3月13日」はアクロイド殺害当日の日付ということになり、その意味がもっと追及されないのは不自然な感じもする。なお、撮影は1999年の初夏におこなわれ[2]、藤やポピー、バラなどの花が咲いている様子が見られる。
 事件翌日の捜査中にジャップ警部が「誰に訊いてもこの2週間晴天つづきだったというのに」と言うが、冒頭にパーカーの車がポワロの家の前までやってくる場面では地面が雨上がりのように濡れており、またそれ以外の場面でも日中はほぼ影が濃くなく、おおむね曇天と言える天候である。なお、冒頭でパーカーが車から降りてからの地面は濡れておらず、別のタイミングで撮影されたことが窺える。ほかに地面が濡れているのはポワロの投げた「トウガン」がドクター・シェパードたちの足許で砕ける場面などで、おそらくは俳優の出演が不要な場面が、雨上がりにまとめて撮影されたのだろう。
 「しかしその時刻、(キングズ・アボット)駅にはロンドンからの列車が到着し、別のホームからはリバプール行きが出てるんで」というジャップ警部の台詞があるが、キングズ・アボット駅の正確な所在は不明ながら、おおよその場合においてロンドンとリバプールは逆方向で、これでは両方同じ向きの列車になってしまう。「ロンドンからの列車」の原語 the London train は、ここでは「ロンドン行き」の意味。
 キングズ・アボット村のポワロの家の壁には、ホワイトヘイブン・マンション56B号室で果物の鉢が置かれたサイドボードの上の壁にかけられていたのと同じ絵が飾られている。この絵は「チョコレートの箱」でのベルギー時代のポワロのアパートや、「スタイルズ荘の怪事件」でのスタイルズ・セント・メリー村の仮住まいにも飾られていた。ポワロとジャップ警部が昔のマンションの部屋を訪れる場面ではこの絵だけが壁からはずされており、ポワロがこの絵を選んで引退先へ持っていったことがわかる。また、ファーンリー・パークの玄関近くの壁に掛かっている絵は、「死人の鏡」においてミス・リンガードが美術館で写真撮影をしていたのと同じ絵。
 原語音声において、ロンドンでの友人であるヘイスティングスやジャップ警部には苗字で呼ぶ姿勢を崩さなかったポワロだが、キングズ・アボット村の友人たち、中でも特にドクター・シェパードに対しては頻繁にファーストネームで呼んでおり、ポワロが村での隠退生活で感じていた(あるいは、感じようと努力していた)親しみを端的に表現している。またポワロの服装も、ロンドン在住時代には地方へ出かけるときにも決して着ることのなかった田舎風のスーツを当初は着用し、ステッキも素朴な木の質感を活かした支柱のものを使用しているが、後半ロンドンに出向いてからは村でも以前どおりの都会風のスーツを身につけ、ステッキもおなじみの白鳥の持ち手がついたものに持ち替えており、衣装の面からもポワロの心がかつての生活に戻っていることが演出されている。
 診療所を出ていった患者をキャロラインが「見慣れない方ね」と言ったのに対して、ドクター・シェパードが「ああ、飛び込みできたんだ」と応えた際に手にした硬貨を掲げて見せているのは、この台詞の原語が 'No, my dear sister, cash. (現金払いだよ)' となっているため。それが日本語のように意訳できるのは、かかりつけの患者であれば当時はつけ払いが通例であり、継続的でない関係の場合に現金払いがおこなわれたことによる。
 事件の晩にフローラが聴いていたのは、「スペイン櫃の秘密」のリッチ少佐のパーティーでポワロがチャールストンを踊った Nobody's Sweetheart という曲。
 事件翌朝に村の全景が映る場面では、画面中央の木立の陰を白いバンのような車が走っているほか、画面右側に現代風のサンルーフのある屋根や自動車が見える(自動車はハイビジョンリマスター版でないと見切れているけれど)。また、ポワロの乗ったタクシーがロンドンの通りを右折する場面では、運転席の横の床に現代風のトランシーバーが置かれているのが見える。
 ポワロとジャップ警部がポワロの昔のマンションを訪ねる場面では、屋外からはポワロの部屋の窓に白いカーテンが掛けられているのが見えるが、屋内の場面では窓に赤いカーテンが掛かっている。また、パトカーのなかでポワロとジャップ警部が新聞記事について話す場面では、ジャップ警部がアップのときには窓の向こうが森なのに、ポワロのアップに切り替わると家並みになる箇所がある。
 キングズ・アボット村の撮影が行われたのは〈イングランド一美しい村〉と評されたこともあるウィルトシャーのカースル・クームで、ドラマ化にあたってスリー・ボアーズから変更されたラルフの宿泊先ホワイト・ハートもこの村に実在のパブ。ただし、ポワロの家の外観は教会の東側にある家のものだが、トウガンを育てていた庭は教会の南側にある(教会の塔との位置関係でそれがわかる)。また、アクロイド邸ファーンリー・パークとして撮影に使われたキッツ・クロースIIハウスはオックスフォードシャーのヘンリー・オン・テムズ近郊にあり、ジェラルディン・マクイーワン主演「ミス・マープル」シリーズでも「スリーピング・マーダー」のドクター・ケネディの家として使われた。アクロイドの化学工場として使われたのはミドルセックスのケンプトン・パーク近くにある元浄水場で、現在はケンプトン・スチーム・ミュージアムとして一般に公開されている。フォリオット夫人の家の前の通りはロンドンのゴードン・スクエアで、「雲をつかむ死」でノーマンの家からジェーンの家に行く途中にも同じ場所を通過していた。フリート街にある設定のニューズ・クロニクル社(当時のフリート街は新聞社や通信社が密集していたことで知られる)のエントランスが撮影されたのはブルームズベリ・スクエアのヴィクトリア・ハウス。ここは、ジュリア・マッケンジー主演「ミス・マープル4」の「ポケットにライ麦を」ではレックス・フォーテスキューの投資信託会社の社屋として使われている。
 ドクター・シェパード役のオリバー・フォード・デイビスは、ジュリア・マッケンジー主演「ミス・マープル6」の「カリブ海の秘密」ではパルグレイブ少佐を演じている。また、キャロライン役のセリナ・カデルは、ジョーン・ヒクソン主演の「ミス・マープル」の一篇、「ポケットにライ麦を」のミス・ダブ役や、ジョン・ネトルズ主演の「バーナビー警部」の一篇、「森の蘭は死の香り」のフィリス・カデル役でも見ることができる。ハモンド弁護士役のチャールズ・サイモンも、同「バーナビー警部」の「古城の鐘は亡霊を呼ぶ」にマーカス・ラウリー役で出演。
 エンディングに制作としてクレジットされているカーニバル・フィルムとは、プロデューサーのブライアン・イーストマンが1978年に設立した制作会社で、近年ではドラマ「ダウントン・アビー」のヒットで知られる。「名探偵ポワロ」のエンディングでクレジットされたのは今作が初めてだが、これまでの作品でもずっと制作実務を手がけてきており、 Agatha Christie's Poirot のエンディングには当初からずっとクレジットされていた(ただし、1990年前半まではピクチャー・パートナーシップ・プロダクション名義)。
 ハモンド弁護士の吹替は松村彦次郎さんの声だが、なぜかオリジナル版のキャストにはクレジットされていなかった。
 Agatha Christie' Poirot のクレジットの最後に名前があるマイケル・モートンは、1928年に本原作を「アリバイ」という題名で戯曲化した劇作家。このときにポワロを演じたのは、クリスティーの戯曲『検察側の証人』をビリー・ワイルダー監督で映画化した「情婦」の老弁護士サー・ウィルフレッド役でも知られるチャールズ・ロートン。
 » 結末や真相に触れる内容を表示
  1. [1] アガサ・クリスティー, 『アガサ・クリスティー自伝 〔下〕』, pp. 288-290, 早川書房(ハヤカワミステリ文庫), 1995
  2. [2] David Suchet and Geoffrey Wansell, Poirot and Me, pp. 185, headline, 2013

ロケ地写真

カットされた場面

日本

オリジナル版

[0:11:25/0:29]睡眠薬を飲んでベッドに横たわるファラーズ夫人
[0:59:45/0:13]レストランでのポワロとジャップ警部のメニューに関する会話

映像ソフト

同原作の映像化作品

  • [映画] 「Alibi」 1931年 監督:レスリー・ヒスコット 出演:オースティン・トレバー
  • [TV] 「黒井戸殺し」 2018年 演出:城宝秀則 出演:野村萬斎
2018年6月9日更新