余暇の運動や仕事での身体活動は心不全のリスクを低下させる

2011年02月10日…No.110210-079

米国のルイジアナ州立大学ペニングトン生物医学研究所センターのGang Hu博士らの研究チームによって「余暇の運動や仕事・通勤での身体活動は、心不全のリスクを低下させる」という報告がなされました。

これまでの研究では、余暇の運動と心不全との関連性は明確にされていませんでした(*脳卒中との関連性は明らかにされています)。この研究は、余暇の運動と心不全との関連性に加え、勤務中や通勤時における身体活動が、心不全の発症リスクにどのような影響を与えるかを調査したものです。

研究チームは、心不全の病歴がない25〜74歳のフィンランドに住む男性28334人と女性29874人を対象に、日常の運動や仕事の内容、通勤方法などに関するアンケートを実施しました。そのアンケートの結果をもとに、それぞれの身体活動(運動)を軽度、中程度、重度(※1)の3つのレベルに分けて、心不全のリスクとの関連性を約18年間にわたって追跡調査しました。期間中に男性1868人、女性1640人が心不全を発症しました。

調査の結果、余暇の運動については、男女ともに運動量が増えるほど、心不全のリスクが低下したことが確認されました。勤務中の身体活動については、男性は重度の仕事ほど心不全のリスクが低下しましたが、女性の場合は、重度よりも中程度の仕事の方が、心不全のリスクが低下したことが明らかにされました。通勤にともなう身体活動については、女性は徒歩や自転車で通勤している人の方が、自動車などで通勤している女性よりも心不全のリスクが低下しましたが、男性では関連性は見られませんでした。

研究チームは、「今回の調査では、余暇の運動だけでなく、仕事に関わる身体活動も心不全のリスクを低下させることが明確にされた。仕事内容や通勤方法によっては、心不全の予防に重要な役割を持つ可能性がある」と述べています。

※1今回の研究では、身体活動(運動)の程度を以下のように分類しました。

  • 余暇の身体活動(運動)
    • 軽度・・・・・・・・・読書・テレビなど
    • 中程度・・・・・・・ウォーキング・サイクリングなどを4時間以上/週
    • 重度(強度)・・・ジョギング・水泳などを3時間以上(数回行う)/週
  • 勤務中の身体活動
    • 軽度・・・・・・・・・デスクワークなど
    • 中程度・・・・・・・立ち仕事・出張など
    • 重度(強度)・・・庭仕事・農作業など
  • 通勤の身体活動
    • 軽度・・・・・・・・・自動車・バス・電車など
    • 中程度・・・・・・・徒歩・自転車などを30分未満/日
    • 重度(強度)・・・徒歩・自転車などを30分以上/日

出典:『米国心臓病学会誌 2010年9月号Vol.56』

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