アジアでも深刻化する2型糖尿病

2010年01月28日…No.100128-068

これまで2型糖尿病は西欧諸国特有の病気であると考えられてきましたが、今日では世界中で深刻な問題となっています。中国・米国・日本・インド・韓国の大学等(※1)の専門家らで構成された研究チームによって、アジア地域における2型糖尿病の発症状況や要因についての共同研究が進められました。研究チームは、メッドライン(*医学文献データベース)に登録されている2型糖尿病に関する大規模調査やコホート研究などの文献(*1980〜2009年に公表された英語論文)を精査し、そのデータにもとづき比較分析を行いました。

その結果、以下の内容が報告されました。

  • 世界の糖尿病患者は2007年の時点で2億4千万人、2025年には3億8千万人に達することが予測される。アジアの2型糖尿病患者は、2007年では1億1千万人以上(*アジア上位10カ国の合計数)にも及び、ここ数十年で急速に増加している。アジアは世界で最も人口の多い地域でもあることから、今後、世界の糖尿病患者の60%以上がアジア諸国で占められると推測される。
  • アジアの急速な工業化・都市化は、これまでの伝統的な食生活に大きな変化をもたらしている。栄養過多の食事・運動不足の生活が2型糖尿病の発症リスクを増加させている。また経済発展にともない、精神的ストレス・うつ・睡眠不足に苦しむ人々も増え、それがさらにメタボリック・シンドロームや2型糖尿病の発症リスクを増加させている。
  • 西欧諸国では高齢(60〜79歳)の2型糖尿病患者が多いのに対し、アジアでは特に若年から中年(20〜59歳)にかけての患者が多い。子供の肥満率の増加は、若年層の発症リスクを高める一因となっている。
  • アジアは欧米と比べて、BMI値の低い糖尿病患者が多く、BMI値やウエストサイズが同じでも、内臓脂肪の割合が高い患者が多い。内臓脂肪量が増えるほど、糖尿病の発症リスクは高くなる。
  • アジアの多くの国々で、成人男性の50〜60%が定期的に喫煙している。高い喫煙率は、糖尿病患者を増大させる。
  • インドやアジアのいくつかの地域では低出生体重児が多い。胎児が、母親の子宮内でストレス等にさらされると、組織構造・代謝・生理機能に遺伝子レベルでの変化が起こり、それが糖尿病や他の疾患の発症リスクに影響を与える。最近の30の研究では、出生時における低体重と2型糖尿病との間に強い関連性があることが明らかになっている。また、アジア女性の妊娠糖尿病の発症リスクは、白人女性に比べて2〜3倍高い。妊娠糖尿病の既往歴のある女性は2型糖尿病の発症率が特に高く、同時に、産まれた子供たちも早期にメタボリック・シンドロームの症状が現れやすくなることから、“糖尿病が糖尿病を生む”という悪いサイクルが繰り返されるようになる。これが、糖尿病発症の低年齢化に拍車をかけている。妊娠糖尿病・子宮内での栄養的アンバランス・児童期の肥満・成人期の栄養過多の連係は、急速な栄養的変遷を経たアジアの国々における糖尿病患者の増大を助長している。
  • アジア人は白人に比べて食後の血糖値が高く、インスリンの感受性が低いことから、アジア人は遺伝的にインスリン抵抗性の影響を受けやすいと考えられる。
  • 環境汚染物質と糖尿病との関連性も示唆されている。台湾とバングラデシュの研究では、慢性的なヒ素の暴露が糖尿病の発症リスクを高めることが確認されている。
  • 糖尿病の早期発症とそれにともなう長期闘病は、合併症である心腎疾患の発症リスクを大幅に高める。さらにガンは、糖尿病の罹患率や死亡率を高める大きな要因の一つとなっている。

研究者たちは「アジアの2型糖尿病の特徴として、欧米に比べ短期間のうちに急速に拡大していること、若年者やBMI値が低い人の発症率が高いことなどが挙げられる。食事や生活環境の改善といった広域での予防政策・糖尿病の早期発見・異なる分野の専門家らによる治療計画――これらを統合した戦略が、アジアの2型糖尿病と合併症の発症リスクを低減させることになるだろう」と結論づけています。

※1香港中文大学・上海交通大学・ハーバードメディカルスクール・東京大学大学院医学系研究科・インドKEM病院リサーチセンター・韓国カトリック大学

出典:『Journal of the American Medical Association Vol.301 2009年5月27日号』

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