ホリスティック医学・健康学“コラム”No.26

本当の和食とは、かつての“長寿村の日常食”のこと――千年以上、菜食主義の道を歩んできた日本人

2018/03/18

近年、和食が世界遺産に登録されましたが、そこでお決まりのように取り上げられる料理(寿司・刺身・天ぷらなど)は、必ずしも健康食とは言えず、伝統的な日本食ではありません。それらは経済的に恵まれた一部の人間の食事であって、一般庶民の日常食ではなかったことを知っておくべきです。和食として世界中に知られている料理は、一般大衆にとってはたまに食べる“ハレの食事・ご馳走”であって、決して日常食ではありませんでした。

真の意味で伝統的な日本食と言えるものは、日本の長寿村の日常食です。長寿村の日常食は、まさに完全菜食(ヴィーガンの食事)に近い内容になっています。かつての日本の農村では、牛乳や乳製品・獣肉などはめったに口にすることはできませんでした。雑穀の割合の多い穀物と豆(大豆)、野菜を中心とする質素な食事が当たり前で、食用油は高価であったため油料理は日常的ではありませんでした。魚も大衆魚を少々食べるといった程度でした。これが長寿村における日常の食事内容で、本当の意味での「日本食・伝統的和食」と言えます。

6世紀に仏教が渡来して千年以上にわたり、日本は仏教国として長い歴史をたどることになりました。仏教は日本人の信仰の中心となり、人々の心の支えとなってきました。仏教では殺生を罪として戒めてきたため、大半の日本人にとって、“菜食主義”が日常の食生活でした。仏教の衰退とともに獣の肉が食べられるようになりましたが、それは限られた狩猟によるもので、量としては微々たるものでした。大半の日本人は、獣肉とは無縁な食生活、ベジタリアンとしての生活を送ってきたのです。明治維新以前の日本には、肉食の習慣はなかったのです。

「ホリスティック食事学」の立場から言えば、どのような理由であれ千年以上もの間、ほとんど肉食をしてこなかったという事実は、驚嘆に値する素晴らしいことです。日本人は伝統的に菜食を日常食とし、菜食主義者としての道を歩んできました。日本人が長い期間、肉食を遠ざけ“菜食主義”を守ってきたことは、まさに世界に誇るべき伝統と言えます。


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