<1>アレルギー・アトピーのホリスティック栄養療法について・・・アトピー患者にとっての最高の治療法

今や国民病になったアレルギー・アトピー

第2の国民病

1980年代以降、日本では「アトピー性皮膚炎」が急激に増加するようになりました。2000年から昨年にかけて厚労省が行った調査では、アトピー有症率の平均は、1歳半の幼児で9.8%、3歳児で13.2%で、幼児のアトピーはここ10年間で倍増していることが明らかになっています。4年ほど前に東京都が行った3歳児を対象にした調査では、アトピーを発症している子供は約18%でした。これは小児科医たちの間で言われてきた「乳幼児のおよそ20%がアトピー」という数字とほぼ一致しています。

この他に調査時にはアトピーを発症していないけれど、過去にアトピーと診断されたり、治療を受けていたケースがあります。それを含めると3歳児の30%以上がアトピーを経験していると思われます。ちなみに東京都の調査による3歳児のアレルギー疾患全体の有症率は約42%でした。

アトピーを抱えた人々は、軽症者も含めると日本では数百万人にのぼると言われています。アレルギー疾患全体ではその数は大きく上昇し、国民の3分の1が何らかのアレルギーをもっているというのが実状です。現在、糖尿病患者が約750万人で国民病と言われていますから、アレルギー・アトピーは、まさに“第2の国民病”ということになるでしょう。

重症化するアトピー

アトピーはかつては子供特有の病気であり、成長にともない自然に快癒するものと言われてきましたが、最近では多くの成人にも見られるようになっています。現在では何十年にもわたって回復しないケースや、逆に悪化するケースも増えています。ここ数年間、成人性アトピーは明らかに増加し、重症化の傾向をたどっています。 

アトピーは現代の医学においては、完治させることがきわめて難しい病気となっています。患者の中にはアトピーで10年以上も苦しみ、あちこちの病院を回ってもいっこうによくならず、「本当にアトピーは治るのか?」と不安の中で毎日を送っている人が大勢います。(※成人のアトピー性皮膚炎には、幼児からずっと続くケースもあれば、いったんは治まり、思春期や成人になって再発するケースもあります。筆者が栄養指導したうち、アトピー歴の一番長い人は28年でした。10年以上という人たちは、相当数にのぼります。)

民間療法では派手な宣伝を繰り返し、治療前と治療後の患者の写真を並べ、自分たちの方法で「アトピーはこんなに見事に完治した」とアピールしています。長年苦しんできた患者は「今度こそは……」と思い、救いの希望を託すのですが、またしても期待は裏切られることになります。民間療法の宣伝どおりにアトピーが治るようなことは、めったにありません。

絶望状況にあるアトピー患者

私たちの相談室には、これまで何年もアトピーで苦しみ続け、その間いくつもの病院を回り、さまざまな民間療法を体験した人々が訪れます。そうした人の大半が、今までの苦しい体験から絶望的な気持に陥っています。しかし、それでも「もしかしたら?」と、ワラをもつかむような思いで足を運んでくるのです。

アレルギー・アトピーは、どうして起きるのか

アトピーは“アレルギー”が第一原因

ステロイド塗布だけにこだわる皮膚科では、アトピー性皮膚炎がアレルギーとかかわりがあることは認めつつも、そのすべてをアレルギーだけで説明することはできないと主張してきました。

確かにアレルギー以外にも、アトピーを引き起こす原因はありますが、だからといってそのことが、アトピー治療においてアレルギー対策が不要であるとの理由にはなりません。検査でアレルゲンを突き止め、これを除去することによってアトピー症状が軽減するというれっきとした事実があるからには、「ステロイド剤だけでいい」と言う、かつての皮膚科の主張にはあまり説得性がありません。

アトピーの原因については、現時点では医学的に十分解明されていない部分もありますが、アレルギーとのかかわりが明確である以上、“アレルギー対策”がアトピー治療の大きな柱となるのは当然のことです。

免疫とアレルギー反応

免疫システムは、体内に侵入してくる有害な微生物などを排除する大切な役目を担っていますが、時に人間にとってマイナスの反応を引き起こすことがあります。その1つが“アレルギー”です。アトピーや鼻炎・喘息などのアレルギー性疾患は、免疫システムがバランスを崩し、自分自身の細胞や組織を傷つける「免疫システムの過剰反応」から発症します。

アレルギー発症のメカニズムについては、多くの専門書が出回っていますので、ここでは省略します。(※アレルギーに関する最新情報や発症のメカニズムなどの詳細については、次のような本を読まれるとよいでしょう。矢田純一著『アレルギー』岩波新書/白川太郎監修・鈴木明編著『アトピーを治す』リヨン社/三宅健著『子どもの診察室』集英社新書/斎藤博久監修・岡村友之著『図解雑学アレルギー』ナツメ社) 

アレルギー反応が、皮膚で起きると「じんま疹」や「アトピー性皮膚炎」、気管支で起きると「気管支喘息」、目では「アレルギー性結膜炎」、鼻では「アレルギー性鼻炎」や「花粉症」、消化管では「胃腸炎」ということになります。また脳でもアレルギーは生じ、頭痛・めまいなどを引き起こします。「脳アレルギー」は神経の働きを狂わせ、不安や緊張など精神的なトラブルを招きます。

※“アレルギー体質”とは、専門的に言えば「IgE抗体を大量につくりやすい体質」のことです。IgE抗体が大量につくられることで“マスト細胞”から放出されるヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が増大し、さまざまなアレルギー症状が現れます。アレルギー体質でない人は、IgE抗体を少しはもっていても、不快な症状を引き起こすまでには至りません。

IgE抗体の量は個人差が大きく、アレルギーの人は普通の人の50〜100倍ももっていることがあります。

アトピー性皮膚炎の引き金・・・「食物アレルギー」と「化学物質」

食品中のアレルゲン

食べ物は消化・吸収されて体内で利用されますが、その食べ物の成分がアレルゲンとなり発症するのが「食物アレルギー」です。これまでは卵・牛乳・大豆が日本人にとっての“3大アレルゲン”と言われてきましたが、最近では大豆を抜いて小麦・ソバ・エビなどが上位に上がってきています。(※ソバが深刻なアレルギーを引き起こすことは、以前からよく知られています。)

その他には肉類・魚貝類・ナッツ類などがアレルゲンになりやすい食品として挙げられます。また主食の米やゴマといった伝統的な食材で発症する人も増えています。野菜や果物は比較的アレルゲンになりにくい食品ですが、人によっては反応を生じるものもあり、果物ではキウイがアレルゲンとなる場合が多いようです。食物アレルギーは死に至るほど激しい反応を起こすこともあり、ここ5年間で15人の方が亡くなっています。

あらゆる食品がアレルギー反応を引き起こす可能性がありますが、実際に“アレルゲン”となるのは食品成分の中の「特定のタンパク質」にかぎられます。そのタンパク質もアミノ酸や小さなペプチド(※アミノ酸が2〜3個つながった程度)にまで分解されていれば、アレルゲンとなることはありません。「食物アレルギー」を起こすのは、十分に消化されないまま体内に吸収されるタンパク質です。

未消化タンパク質(アレルゲン)が血液によって全身に運ばれ、そこでマスト細胞と結合することで、さまざまな症状が現れます。皮膚では「アトピー性皮膚炎」や「じんま疹」などが起こります。

食物アレルギーは、大人から子供まで見られますが、特に腸がしっかり発達していない乳幼児では、食べ物がアレルゲンとなるケースが多いのです。アトピー治療では、食物アレルギー対策がきわめて重要です。

アレルギー反応

※食物アレルギーは“アトピー”と密接な因果関係がありますが、アトピーの直接の原因ではないと言う研究者もいます。食品に由来するアレルゲンは皮膚の浅い部分までは届かないので、皮膚の深部での反応による“じんま疹”の原因にはなっても、アレルギー発症の直接の原因にはなりえないと言うのです。

しかし体内で「食物アレルギー」が起きている部位に白血球が集まることで炎症がひどくなり、アトピーが引き起こされると考える研究者が大勢を占めています。特定の食べ物によってアトピーが悪化するのは明白です。

化学物質によるアレルギー

環境中や食品から体内に入ってくるさまざまな「化学物質」の中には、アレルギー反応を引き起こしたり、誘発・悪化させるものがあります。化学物質によるアレルギーは、大きく2つのタイプに分類されます。

1つは直接“アレルゲン”となって炎症反応を引き起こすもの、もう1つはアレルゲンとはならないけれど、アレルギーを誘発・悪化させるものです。

■“アレルゲン”となる化学物質

化学物質は分子量が小さいために、体内に侵入してもそれだけではアレルゲンとはなりませんが、皮膚組織のタンパク質と結合することで“アレルゲン”となり、アレルギー反応を引き起こします。自己のタンパク質と結合することでアレルゲンに変身し、免疫システムの攻撃対象となってしまうのです。

これが「アレルギー性接触皮膚炎」で、ウルシによるかぶれや化粧品負けなどがこのタイプです。ニッケルやクロムなどによる金属アレルギーも接触皮膚炎の一種です。こうした皮膚アレルギー(接触皮膚炎)は、アトピーと深くかかわっています。

アレルギー性接触皮膚炎

接触皮膚炎を起こす化学物質や金属は、次のようなものに含まれています。

接触皮膚炎を起こす化学物質や金属

■アレルギーを誘発・悪化させる化学物質

呼吸器や消化管から侵入する化学物質の中には、アレルギーを誘発したり、悪化させるものがたくさんあります。建材や家具の接着剤に含まれる“ホルムアルデヒド”などはよく知られています。飲食物と一緒に体内に侵入する着色料や保存料などの「食品ケミカル(添加物)」も、アレルギー・アトピーに深刻な影響を及ぼします。

こうした化学物質は、アレルゲンとなって直接アレルギー反応を引き起こすわけではありませんが、神経や免疫細胞を刺激して、アレルギーを誘発・悪化させることになります。

化学物質に誘発されるアレルギーは、アレルギー体質で、鼻炎や喘息などを繰り返している人に現れます。いつもアレルギーを起こしている人の鼻や気管支の粘膜は、傷ついています。粘膜が剥がれて露出した神経は、外界からの刺激に過敏に反応し、化学物質の侵入によって容易にアレルギーと同じような症状を引き起こすようになります。体内に入った食品ケミカルなどの刺激によって、アトピーの“かゆみ”も増大し、炎症がひどくなります。

※化学物質の刺激だけでなく、朝の冷たい空気に触れただけでくしゃみを連発し、鼻水を流す人がいます。じんま疹が出る人もいます。(※寒冷じんま疹)反対にお風呂に入って温まるとじんま疹が出る人もいます。

 このような化学物質や冷気などの刺激によって起きるアレルギー(※アレルゲンによらない炎症反応)を、まとめて“類似アレルギー”と呼んでいます。

類似アレルギー

アレルギーと同様の反応を引き起こす化学物質は、次のようなものに含まれています。

アレルギーと同様の反応を引き起こす化学物質
アレルギー反応

アレルゲンの侵入を許してしまう「皮膚のバリアー機能の低下」

 アトピー性皮膚炎が発症する原因として、これまで述べてきた食物アレルゲンや化学物質以外に、最近では「皮膚のバリアー機能の低下」が考えられるようになってきました。皮膚機能の低下がアレルギー反応を増幅するというのが、最新の医学における見解となっています。アトピー患者に一般的に見られるドライスキンによる“皮膚過敏症”は、皮膚の角質バリアーが異常であることを示しています。

壊れたバリアーを修復するためには、アレルゲン対策と同時に、保湿剤などを使った“皮膚対策”が重要となります。

皮膚のバリアー機能の低下によるアトピー発症のメカニズム

皮膚のバリアーの働きが低下すると、ダニ・ホコリ・食べ物のカスや、皮膚に付いたブドウ球菌が出す毒素が皮膚の内部に侵入することになります。

ダニや食べ物のカスなどは“アレルゲン”となり、アレルギー反応を引き起こします。ブドウ球菌の出す毒素は、皮膚の内部で非アレルギー性の炎症反応を起こします。(※アレルギーの素因のない人でも“アトピー”を発症することがありますが、それにはブドウ球菌などが出す細菌の毒素が関係しています。また、体内ではブドウ球菌以外にも、“イースト菌(カンジダ菌)”などが毒素を放出してアレルギー・アトピーを悪化させます。)

皮膚において、こうした「アレルギー性」と「非アレルギー性」の2種類の炎症反応が起きることで、アトピーが発症したり悪化します。

皮膚のバリアー機能の低下によるアトピー発症のメカニズム

正常な肌と乾燥肌の違い

正常な肌と乾燥肌の違い

※皮膚の表面の角質層には、微生物などの侵入を防ぐバリアーの機能がありますが、アトピー患者の皮膚は、角質細胞のすき間を埋めている皮脂(セラミド)が少なくなり、潤いを保てず、かさかさした乾燥肌の状態になっています。またかゆい部分を掻きむしるために皮膚が傷つき、いっそうバリアー機能が低下しています。

「皮膚のバリアー」は、腸粘膜のバリアーと並んで免疫の最前線です。

スキンケアの重要性

こうしたメカニズムが明らかになるにつれ、皮膚のバリアー機能を修復するために“スキンケア”の重要性が強調されるようになってきました。アトピー治療では食物アレルギー対策は欠かせませんが、皮膚のバリアー対策も同時に進める必要があります。(※アトピー治療における皮膚のバリアー対策とは、患部を清潔に保ち、保湿剤などによって潤いを与える“外用ケア”を言いますが、“栄養療法”による細胞レベルからの皮膚の強化も考慮しなければなりません。)

アレルギー・アトピー治療の原則

正しい栄養療法を、治療の中心にする

アレルギー治療(※特にアトピー治療)の過程では、どうしても“ステロイド剤”を使うしかないような事態も生じます。やむをえない場合、一時的にならステロイドを使ったとしても、それほど心配する必要はありません。あまりにも“かゆみ”がひどくてどうにもならないようなときには、ステロイドの助けを借りることも必要でしょう。また現代医学が行っているような徹底した“アレルゲン除去”も必要になるかもしれません。

しかし本書で述べてきた「食事改善」を実践せずに、そうした方法だけに頼るとしたら、いつまでたっても病気を克服することはできません。アレルギー・アトピー治療では、徹底した「栄養療法」を中心にすることが原則です。この点を、しっかり守らなければなりません。

アレルギー・アトピーは、さまざまな要因が絡み合って発症します。それを根本的に克服するには、栄養療法を核として、総合的に対処していかなければなりません。「食事療法・栄養療法」を一番の中心に据えて、他のホリスティックな治療方法や、優れた民間療法などを取り入れ、総合的に対処していくことが必要となります。

意識改革と真剣な努力が必要です

アレルギー・アトピー治療のためには、まず“意識改革”が必要です。そのうえで食事改善を着実に実行していかなければなりません。本人が努力をしないで医者に頼っていては、アレルギー・アトピーは克服できません。食事改善への強い決意を固め、真剣な努力をした人だけが、アレルギー・アトピーを克服できるのです。

自分から主体的に取り組もうとする人でなければ、私たちには手助けすることはできません。それがよく分かりますので、私たちの研究所に相談に来る方々に対しては、どんなに苦しい思いをしても挑戦する気持があるかどうかを、まず確認しています。

“真のアレルギー治療”は人生の質をもアップさせる

アレルギー・アトピー治療への真剣な取り組みによって、病気が克服されるばかりでなく、生活全般の質も向上していきます。その人の心の豊かさ・精神の豊かさが、もたらされるようになります。アレルギー・アトピーの治療を通じて、高次の意識改革が引き起こされるのです。

広い視野に立てば、アトピーで苦しむのも必然の結果であることが分かります。生活が間違っていたために、そうした苦しみが生じてきたのです。“正しい治療”とは―「病気を招いた間違った生活を改めることであり、人生そのものを変えること」なのです。それによって人生の質が、大きくレベルアップするようになります。

その努力ができる人だけが、結果的にアトピーを克服することに成功するのです。

ステロイド外用の問題点

ステロイド剤の正しい使い方―あくまでも最後の手段として

ステロイド外用剤がアトピー性皮膚炎の世界標準治療薬となってから、ほぼ50年がたちます。アトピーのような皮膚の炎症を驚異的に消し去ってしまう“ステロイド”の効き目はまるで手品のようで、そのためステロイドは“魔法の薬”とまで言われています。(※ステロイド剤は“副腎皮質”という内分泌器官から分泌されるホルモンと同じ化学構造をした合成の薬剤で、「副腎皮質ホルモン」「副腎皮質ステロイド」とも呼ばれています。)

しかしステロイドが目を見張るような効き目を現すのは―「免疫機能を直接的に抑制する」という仕掛けがあるからです。ステロイドは病気を治すのではなく、症状を抑えつけ、身体に備わった治癒力が働くチャンスを奪ってしまいます。時には、免疫力そのものを弱めることにもなりかねません。

ステロイドはきわめて強力な作用をもっているため、何カ月も連続して毎日のように用いることは避けなければなりません。食事療法や栄養療法といった他の根本的な治療を施すことなく、ステロイドによる“対症療法”を長期にわたって続けるなら、たとえそれが外用薬(塗り薬)であったとしても、皮膚から浸透して、さまざまな副作用が生じることになります。

抗生物質と並んで現代医学が誇りとするステロイドは、ともに“免疫機能を弱める”という大きな問題点をもっています。したがってこうした薬は、他に可能性のあるあらゆる療法を試した後に―「最後の手段として一時的に用いる」ということでなければなりません。

ステロイドの副作用

ステロイド外用剤の使用にともなう副作用として一般的に知られているのは、皮膚が薄くなる・皮膚が黒くなる・毛細血管が拡張する・毛が濃くなる・化膿しやすくなるなどの症状です。また目に入ると白内障になることもあります。

アトピー治療でのステロイド使用はもっぱら外用であり、内服のケースで見られるような全身的な副作用はないとされています。異常なほど大量のステロイドを塗らないかぎり、重大な副作用の心配はないと繰り返し言われます。ステロイド擁護派の医師の中には、「もしステロイドが本当に危険な薬なら、とっくに禁止になっている」と息巻く人もいます。

しかし、これまでの歴史が明らかにしているように、いったん安全だとされた薬が後になって危険性が発覚し、販売禁止になるという事態はよくあることです。アメリカでは、ステロイド塗布による副腎の完全抑制という副作用の報告もなされています。(※正常な皮膚への15gのデルモベート塗布1回で、9時間後に副腎の完全抑制を確認)現時点において、「通常のステロイド使用であるかぎり危険性はない」と断言する確たる根拠はありません。

ステロイドについては、正しく使うかどうかが問題ではなく、「可能なかぎり使わないようにする」ということが大切です。ステロイドを用いなくても、食生活を改善するだけで長年のアトピーが完治するという多くの事実があるのです。その事実を無視してステロイド使用を優先する医師の栄養学に対する知識の乏しさ・怠慢こそが、真っ先に問題とされなければなりません。食事改善や栄養療法など、本来なすべきことをしないで“ステロイド使用の是非”を問うこと自体が、そもそも的外れの議論なのです。

ステロイドをめぐる“是非”の確執

アトピー性皮膚炎は、皮膚科の立場では、ステロイドを塗布して炎症をコントロールすることによって寛解状態(※症状がほとんど出ないで治まっている状態)に達し、やがて皮膚のバリアー機能が回復して、症状は軽快・消失していくと考えられています。そのためステロイドは、アトピー治療には不可欠なものとされています。世間で騒がれているステロイドの副作用も、注意して正しく使いさえすれば、ほとんど問題はないと言われます。これが皮膚科における“アトピー治療”の通常のスタンスです。

ステロイド治療を絶対不可欠なものと考える皮膚科の立場からすれば、「民間療法や健康産業が“ステロイドの副作用”を声高に叫ぶのはとんでもない」ということになります。ステロイドを正しく使ってアトピーの炎症をコントロールさえしていれば、皮膚の順調なバリアー形成を促すことができるのに、ステロイドを悪者扱いして何とか避けようとするために、かえってアトピーを深刻化・重症化させることになっていると非難します。「アトピーの患者が急増したのは“反ステロイド”という間違った風潮のせいである」というような、言いがかりに等しいことを口にする医師もいます。

皮膚科内部からの“反ステロイド”の動き

1983年に日本で最初に起こされた“ステロイド訴訟”に端を発して、ステロイド剤の使用による副作用の問題がクローズアップされるようになり、必然的に反ステロイドの動きが生まれることになりました。

1990年に入ると、一部の皮膚科医師の中からも“脱ステロイド”の動きが形成されるようになっていきます。「ステロイドを使わない治療をしよう!」と主張する皮膚科医師が登場するようになり、皮膚科は内部からの造反者も抱えることになりました。

アレルギー対策療法の登場

ステロイド使用を絶対の治療法とする皮膚科に対して、小児科サイドから「アトピー性皮膚炎はアレルギーによるものである」との見解が出されるようになりました。そして食べ物から“アレルゲン”を取り除くための「厳格な食事制限法(アレルゲン除去法)」や、アレルゲンに対して徐々に適応性をつけていくための「減感作療法」などが、新たな治療法として提唱されることになりました。皮膚科のステロイド療法に代わって、小児科のアレルギー療法が、アトピー対策として脚光を浴びるようになってきました。これは明らかに“アトピー治療”における1つの進歩と言えます。

しかし厳格な食事制限法では、食べ物の選択の幅が極端に限定されるという問題が生じるようになりました。さまざまな食品をアレルゲンとして次々に排除する行き過ぎた食事制限は、後になって身長が伸びないとか脚気といった“栄養障害”の問題を引き起こしたり、多くの落伍者を出すなどのマイナス面が露呈されることになりました。それにともない小児科の医師の中にも、こうした治療法に対する反省の動きが現れるようになりました。

1990年の小児科学会では、「厳しすぎる除去食で、子供たちの成長や発達が遅れている」という報告がなされ、それ以後、厳しい食事制限は緩和される傾向に変わりました。現在では“回転食”という新しい食事療法の試みもなされています。

このように多少の問題はあったとしても―「アトピー性皮膚炎は、アレルギーによって引き起こされる」との見解は確実に定着していくことになりました。アレルギー検査に保険が適用されるようになり、さらに“ステロイド訴訟”が起こされるなどの動きにともない、“アレルギー対策”としてのアトピー治療が人々に受け入れられるようになっていきました。

アレルギー対策療法の問題点

確かに一歩の前進ではあるが・・・

ステロイドによって湿疹を抑えることが最上の治療であると考える立場では、“食事療法”はどちらでもいいことになります。現に多くの皮膚科の医師は、そうした考えに立っています。しかしステロイドでアトピーの症状をコントロールすることに成功したとしても、次に喘息や鼻炎など、他のアレルギーを発症させることになる可能性は大きいのです。

小児科ではアトピーの原因を“アレルギー”に求めたことで、アトピー治療は一歩前進することになりました。ところがその小児科でも結局は“対症療法”にとどまり、根本的な治療へと向かってはいきませんでした。現在ではアレルギー体質は遺伝することが確かめられているところから、「アトピーは完治しないのだから、病気と上手に付き合っていくことが大切である」というようなことが言われるようになりました。

こうして小児科でも、アレルギー対策と同時に、症状をコントロールするためのステロイド治療を併用するようになっていきます。アトピーの原因をアレルギーに求めたまではよかったのですが、小児科も皮膚科同様、アレルギー自体を根本から解決する方向には進んでいきませんでした。

医師の“栄養学”に対する知識の乏しさ

現在、小児科において行われているアレルギー対策には多くの問題点があります。それは、医師の栄養学に対する知識の乏しさから生じています。

小児科におけるアトピー治療はアレルゲンチェックから始まり、食品では卵・牛乳・小麦・大豆・エビやカニ・肉類などが有力なアレルゲンとされます。検査の結果、アレルゲンが確定すれば、それを含む食品を排除することになります。その反対に、アレルゲンでない食品は食べてもかまわないということになります。つまり「牛乳がアレルギーを起こさない子供は、牛乳を飲んでも問題はない」ということになるのです。

アレルギーの症状だけをなくせばいい、という観点に立てばそうなりますが、そこでは「体質劣化によるアレルギーの発生」という、より根本的な問題が置き去りにされています。ただアレルゲンを排除することだけを重視し、健康にとって本当にプラスとなる食品かどうかという、食品自体のよし悪しに対する厳密な視点が無視されているのです。体質がよければ、アレルギーそのものの発生が抑えられるし、たとえ発生しても軽度に終わり、かゆみもそれほどひどくなくてすむという事実が全く考慮されていません。

小児医療に携わるほとんどの医師は、「牛乳や卵はタンパク質を豊富に含む優れた食品」という昔の栄養学の知識を、そのまま引きずっています。一時代前のアミノ酸信仰・タンパク信仰を抜け出せずにいます。現在の欧米の栄養学では、牛乳や卵の摂取を積極的に勧めるようなことはありません。これらの食品は、むしろ現代病・成人病を引き起こす悪い食品として位置付けされ、健康人に対しても摂取を控えるように指導しています。

牛乳については、たとえ成長期の子供であっても「スキムミルクをコップ1杯以上は摂らない」ように勧めています。こうした考え方が欧米においては常識になりつつあるのです。

牛乳や卵は、たとえアトピーでなくても、またアトピーが治ってからも控えるべき食品なのですが、そうした観点が抜け落ちています。

アレルゲン対策の甘さ

小児科におけるアトピー治療のもう1つの問題点は、母乳に含まれるアレルゲン対策への甘さです。母乳しか飲まない赤ちゃんにアトピーが発症するのは、母親の食べたものがアレルゲンとなって母乳中に含まれているからです。ここまではっきりしている以上、母親に牛乳や卵などの食品を徹底して排除するよう指導するのが当然のことなのです。

しかし医師の間には、牛乳や卵は栄養豊富な食品で、タンパク質やカルシウムなどの補給に欠かせないものという間違った栄養学的知識があるために、それらの摂取を毅然として否定できないのです。ここでも栄養学に対する無知が問題を引き起こしています。

母体の体質向上こそ最優先すべき

多くの医者は―「母体の体質劣化が、生まれつき虚弱な子供をつくり出している」という事実を、あまり重要視していません。妊娠可能な女性の大半は、これまでの間違った食生活によって体質を著しく劣化させ、若くして成人病を進行させています。まず母親となる人たちの体質を向上させないかぎり、健康な子供は生まれませんし、アトピーの問題を根本的に解決することはできません。

母親がアレルギーならば、ほとんどの赤ちゃんはアレルギーを発症させやすい“劣化体質”をもって生まれてくることになります。それは代を重ねるごとに重症化していきます。子供が生まれてからでは、さらに言えば「妊娠してからでは遅い」のです。食生活の徹底改善による母親の体質向上こそ、真っ先に図らなければなりません。それと同時に“年子を避ける”などの栄養学的観点からの指導も必要となるのです。

アトピーに対する根本治療は、何よりも―「母親になる女性の体質改善」から出発しなければなりません。その意味からすると、アレルギーが発生してからのアレルゲン対策だけでは、問題のほんの一部を見ているにすぎないということになります。

※アレルギー体質が遺伝すると言っても、母親の「IgE抗体」が直接移るというわけではありません。胎児の抗体をつくる能力は妊娠後期にできるので、妊娠してからの食事改善であっても、それなりに悪影響をくい止めることができます。

 妊娠前に体質のアップを図ることがベストですが、気づいたときから実行することが大切です。

混乱と不安の中に置かれているアトピー患者と、健康産業の隆盛

健康産業の流行

こうした医学界内部の混乱や反ステロイドの世論の高まり、さらにアトピー患者数の急増に並行して、“民間療法”がアトピー治療を謳ってさまざまなビジネスを展開するようになりました。各種健康食品をはじめとして化粧品・石鹸・シャンプー・宅配温泉・入浴剤・アルカリイオン水・波動水などが、アトピーに効果があるとして盛んにPRされました。

たくさんの民間療法が、ステロイドを用いないアトピー治療を旗印にして、次々と一過性の流行をつくり上げていきました。

振り回されたアトピー患者

ここまで日本におけるアトピー治療をめぐる一連の動きと問題点を紹介してきましたが、こうした治療サイドの状況は、アトピー患者の側にそのまま反映されることになりました。つまり大半のアトピー患者は、まずステロイド治療を受け、その後アレルギー治療や、両者を併用する方向へ進むようになりました。

そして病院での現代医学の治療が功を奏さない中で、大勢の患者が、さまざまな民間療法にかかわっていくことになります。患者は治りたい一心で民間療法に多額のお金をつぎ込みます。しかしその民間療法でも何の改善も見られず、結局、混乱と不安の中に追い込まれることになります。これが多くのアトピー患者の実態です。

「病院でも治らない」「民間療法でも治らない」といった絶望的な状況の中で、大勢のアトピー患者が苦しんでいます。

アトピー治療をめぐる最近の医学界の動き

 アトピー治療をめぐっての混乱と反目(※皮膚科と小児科)が、患者にいっそうの不安と混乱を与えてきました。このような医学界の失態を尻目に、民間療法や健康産業が流行し、新たな問題を引き起こすようになっていきました。

こうした事態を収拾するために、厚生省(当時)は重い腰を上げ、1999年になって「アトピー治療のガイドライン」を出すことになります。これは医療に携わる医師にとっての共通の基本的治療を示したものです。

厚生省が示したアトピー治療のガイドラインとは、大きく次の3つから成り立っています。(1)薬物による炎症の治療 (2)悪化要因の除去 (3)スキンケアです。このガイドラインは具体的な治療方法について定めたものではなく、基本的な治療の方針を示したものにすぎませんが、(1)の薬物治療とは、ステロイド剤や抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤を指していることは明らかです。(2)の悪化要因の除去とは、アレルゲンとなる食べ物やダニなどの除去を意味します。こうした厚生省の指針によって、医療界の意志の統一が一応の形を整えることになりました。

翌2000年には、皮膚科によるガイドラインが出されます。これは皮膚科医師が、アトピーに対するさらに専門的な治療を明確化することを目的としたものですが、1年前に示された厚生省のガイドラインと基本的な違いはありません。ただ皮膚科のガイドラインでは、アトピーを皮膚の疾患としてとらえ、アレルゲンについてはあまり重要視していません。ステロイドなどの“薬物治療”を十分に行えば、ほとんどの例で治療の目的は達せられるとしています。

厚生省のガイドラインも、皮膚科のガイドラインも、どこまでも現代医学の枠内における治療方法であり、対症療法にすぎません。アレルゲン対策を挙げてはいますが、「患者自身の体質をアップする」という観点が見られません。いかに症状を取り除くかということだけに意識が向けられているのです。

対症療法が間違っているということではありませんが、もっと重要なことは体質向上であり、それを治療の中心に据えないかぎり、アトピーは克服できないということなのです。肝心なことをしたうえで、状況によって必要な対症療法を用いるというのが正しい在り方です。

一番肝心なことをせずに“対症療法”だけに走ることは間違っています。徹底した食事改善やストレス対策のないところでの“薬物療法”は誤りです。「不健全な食事による体質劣化」という最大の原因を無視したところでのガイドラインは、全くの的外れと言わざるをえません。

「ホリスティック栄養学療法」こそが最高の治療法

欧米に遅れをとっている日本のアトピー治療

幸いなことに、アトピーが発症してからでも徹底した食事改善を行えば、体質が向上して実際にアトピーを克服することができるようになっていきます。栄養療法によってアトピーのかゆみも軽減し、早く消え去るようになります。もちろんステロイドを使う必要もなくなります。栄養療法ならば、アレルギーそのものを根本的に改善することも可能なのです。

欧米に比べたとき、日本でのアトピー治療は大きく遅れをとっています。欧米では最新の栄養学によって、これまで難病とされてきた多くの現代病・成人病が克服されつつあります。21世紀においては、「現代栄養学」は最新の科学として、医学の中心的な地位を占めようとしています。

アメリカでは食事改善の重要性とサプリメントによる栄養素の補給が、国民の中に浸透するようになってきました。数年前から“心臓病”による死亡者数は減少に転じていますが、それはこうした理由によるものと思われます。日本をはじめとする他の先進諸国では死亡者が年々増加し、ガンを抜いて死因の第1位になるような趨勢が一般的ですが、アメリカでは死者が減少するという、きわめて特殊な現象が起き始めています。(※アメリカでは心臓病だけでなく、“ガン”による死亡者数も減少に転じています。)

そうしたアメリカの動きと比べ、我が国の健康問題に対する取り組みや国民の意識は、きわめて遅れています。成人病やアトピーに対して、いまだに「通常の医学」か「民間療法」を選択せざるをえないといった状況に置かれています。その結果、アトピーの治癒率は、ほとんど期待できないままにとどまっています。

私たちは、相談に訪れた患者の皆さんに対して、まずアトピー治療に関する最新の栄養学の話をすることにしています。話が進むにつれ、これまで絶望的な思いを抱いていた人々も、「もしかしたら今度こそ、本当に治るかもしれない」と希望をもち始めるようになります。

「アトピーは100%治る」と断言する欧米の栄養療法医たち

栄養療法の権威であるジョナサン・ライト博士は、「自分が治療したアトピー患者の中で、治癒しなかった者は数人しかいない」と述べています。また「自分のクリニックを訪れるアトピー患者の大部分は、症状が100%治まり完治する。私にとってアトピーは治せるか治せないかの問題ではなく、どれだけ早く治せるかが問題である」と言う栄養療法医もいます。

もちろん彼らはステロイド剤を使うことはありません。「100%治る」などというのは民間療法の常套句であって嘘くさいと思いがちですが、そうではありません。現実に私たちも、「ホリスティック栄養学」の理論に基づきアトピー患者を指導してきた体験から、それが大袈裟でもはったりでもないことを自信をもって断言することができます。

何年か前から話題となっている“宅配温泉療法”は、現在日本での最大の民間療法(※あるいは健康産業)と言えますが、そこで発表されている完治に至るまでの期間はきわめて長期にわたっています。しかも、どのくらいの確率でアトピーが治癒したのかが明確にされていません。ある調査によれば、温泉療法では大々的な宣伝がなされ多額の治療費がかかる割には、治療の有効性は15.9%、変化なしが65.6%とかなり低いことが明らかにされています。

これに対して「栄養療法」による治癒率(有効性)は100%、しかも効果は2〜4カ月程度で確実に現れるのです。そして法外な治療費もかかりません。さらにその情報は完全にオープンにされています。

ホリスティック栄養学療法は、アトピー治療の切り札

ホリスティック栄養学に基づく「栄養療法」こそ、まさに最新のアトピー治療法です。最も確実で信頼性が高く、それでいてお金がかからない良心的な方法なのです。アトピーに苦しむ人々には“最後の切り札”と言っても過言ではありません。

しかし栄養療法は、安易に実行できるものではありません。アトピーが治るか治らないかは、本書で述べたことを厳格に実行するかどうかにかかっています。栄養療法を実践するには、強固な決意と徹底した努力が必要とされるのです。アトピーを治すのは本当にたいへんなことですが、正しい方法であるなら確実によい結果がもたらされます。

現在アトピーに苦しんでいる方々には、栄養療法という最後の希望が残されているのです。

アトピー栄養療法の実際

食事改善・サプリメント摂取・アレルゲン除去・スキンケア

アレルギーもアトピーも、全身退化・体質劣化による生活習慣病に他なりません。ホリスティック栄養学によるアトピー栄養療法は、ガン・心臓病・脳卒中・糖尿病などの成人病に対する治療法と本質的には変わりません。体質を劣化させた最大の原因である間違った食生活を正し、健全な食生活によって体質アップをはかり、自然治癒力を引き出そうというものです。

アトピー栄養療法においては、何といっても「食事改善」が土台となります。そのうえで、あまりにも低下してしまった体質を効果的に引き上げるために“サプリメント”を上手に用います。サプリメントによって栄養補給を強力に進め、治療効果を高めることが可能となります。さらにアトピー治療では、アレルギー発症の引き金となる“アレルゲン除去”や、皮膚のバリアー異常に対する“スキンケア”が求められます。

このようにホリスティック栄養学によるアトピー治療は―「食事改善」「サプリメント摂取」「アレルゲン除去」「スキンケア」の4つを同時に行う中で進めていくことになります。

“栄養療法”は試行錯誤のプロセス―知識・経験・勘を頼りに、すべて手探りで進める困難な道

アレルゲンを除去し、悪い食品をやめ、よい食品を摂るところからアトピー栄養療法は始まります。とはいっても体質の劣化した多くのアトピー患者は、よい食品に対してでさえ“アレルギー”を引き起こすことも珍しくありません。(※例えば、米・豆・ゴマ・野菜などに対するアレルギー)

こうしたケースでは、食事改善の第一歩さえ思うように踏み出せないことになります。これは実に厄介なことです。特にそれが食事も満足に噛めない、自分では症状も訴えられない幼児ともなると、事態はいっそう困難になります。細心の注意を払いながら、1つ1つ手探りで進めていくしか方法がありません。反応を起こさない食品を探し出しながら、栄養摂取の土台を固めていかなければなりません。できる範囲で少しずつ、ゆっくりと体質アップを図るしか方法がないのです。押したり引いたりしながら、同時にさまざまな体の反応(アレルギー反応・食欲・便の状態)を注意深く観察して進めていくことになります。

栄養療法においては、型どおりの方法は存在しません。サプリメントの摂取についても同じです。ある患者には何ともないサプリメントが、別の患者には激しいアレルギー反応を引き起こすことがあります。一定の量を超えると、急激に反応が生じることもあります。また、ある会社のサプリメントでは何ともないのに、別の会社のサプリメントは全く受けつけないといったことも起こります。本来ならば健康レベルをアップするのにプラスとなる食品やサプリメントによって、アレルギーが引き起こされるといった困難が、常に付きまとっているのです。

このような綱渡りのような状態で、患者の身体とかみ合う食品や栄養素を探し、それを調整しながら適量を見つけ出していきます。すべて手探りで、細心の注意を払って、根気よく進めていく試行錯誤のプロセスなのです。

幸い予想した食品やサプリメントを身体が受けつけ、状態が安定するようになれば、健康レベルのアップを目指して、新たな食品や栄養素を付け加えていきます。こうして体質向上のステップを一歩ずつ上っていくにつれ、アトピーの症状は確実に好転していくようになります。人によっては1ヵ月もたたないうちに驚くほど症状が治まることもありますが、普通は2〜3ヶ月で確かな好転の兆しが見られるようになります。しかし中には3ヶ月たっても、効果的なサプリメントの組み合わせさえ見つけられず、とても苦労することもあります。

患者の状態にピッタリかみ合う栄養素の組み合わせや栄養素の分量、さらには追加の方法などは、それぞれ異なります。まさに治療は十人十色“オーダーメイド”なのです。患者の状態をしっかり見きわめ適切な助言をしていくには、カウンセラーのトータル的な力量が要求されます。栄養学についての豊富な知識と多くの経験、その土台のうえで直感が働くのです。もちろん患者と徹底して向き合う長時間のカウンセリングは不可欠です。

重症のアトピーを克服するための栄養療法は、闇の中を手探りで進んでいくようなものです。知識・経験・勘、そして時間をかけたカウンセリングというサポートがあってこそ、確実に治癒への道を歩むことができるのです。

アレルゲン除去

食事改善とサプリメント摂取の他に、アレルギー・アトピー治療の初期には“アレルゲン除去”が必要となる場合があります。ひどい食物アレルギーで、食事のたびに繰り返し反応を引き起こしているようでは、アトピー治療は進みません。“腸管のバリアー”が傷つき炎症を起こしたままでは、栄養の吸収も妨げられ、効果を上げることはできません。いったんは、“アレルゲン”となる食品を排除して――「アレルギー反応の悪循環を断つ」ことが必要です。

アレルゲンと思われる食品のうち、強く反応するものは徹底して排除するようにします。それほどでもない食品は、1回に摂る分量を減らしたり、ひんぱんには摂らないようにするなどの工夫をします。同じ食品であっても、加工や調理法の違いによって、アレルゲンにならないこともあります。

例えば、“大豆アレルギー”の場合、煮豆や黄粉は駄目でも、少量の豆腐や納豆、味噌やしょう油なら食べられることがあります。“小麦アレルギー”の場合、輸入小麦粉で焼いたパンには反応するけれども、国産小麦でつくったうどんなら大丈夫というようなこともあります。

しかし、“疑わしい”と思われる食品は、治療の初期(※2〜3ヶ月)には避けるようにするのが賢明です。強く反応する食品も1〜2年徹底して排除すれば、食べられるようになるケースが多いのです。

栄養療法の場合、一時は完全に除去しなければならない食品がいくつかあったとしても、“栄養障害”が起きる心配はありません。サプリメントによって必要な栄養素を補っていけば、問題は生じません。それどころか“栄養療法”だからこそ、アレルゲン除去を徹底しても、問題を起こすことなく治療効果を上げることができるのです。(※家庭でできるアレルゲン・チェックの方法や、花粉やダニなど食品以外のアレルゲン除去については、ここでは省略します。)

適切なスキンケア

アトピー治療では、食事改善・サプリメント摂取・アレルゲン除去に加えて“スキンケア”が大切です。スキンケアの目的は――「皮膚を清潔にする」「皮膚の潤いを保つ」という2つにしぼられます。適切なスキンケアを行うことで、皮膚についたアレルゲンや細菌の毒素を排除し、潤いを保って“かゆみ”を抑えることができます。

皮膚を清潔に保つためには、1日2回ほど、ぬるいお風呂に入ったり、シャワーを浴びるようにします。(※夏はシャワーの回数を増やします。)水道水そのままでは“塩素”の害があるので入浴剤を使うようにしますが、市販品の場合は、皮膚を刺激するような着色料や香料などの入っていないものを選びます。木炭や木酢・緑茶・ハーブ・塩などを用いるのもよいでしょう。シャワーも塩素を除去するためのヘッドが市販されていますので、それを使うようにします。石鹸は低刺激性のものを選び、手で泡立ててから、そっと体を洗うようにします。タオルやスポンジで、こすったりしないことです。

ぬるい湯に15分以上浸かって、ゆっくり汚れを落とすことも有効です。こうした入浴方法を実行すれば、乾いて荒れた皮膚に水を浸透させ、毒素を出す細菌を洗い流すことができます。(※こうして湯に浸かるだけで、皮膚に付いた細菌を90%減らすことができるのです。)

入浴後は、やわらかいタオルで押さえるように軽く水気を拭い、まだ濡れているうちに保湿剤を塗るようにします。入浴によって皮脂が失われているので、保湿剤によって皮膚に含まれた水分を保ち、バリアーの代わりにするのです。

ここで重要なことは、入浴剤・保湿剤などによる“外用スキンケア”は、あくまでも“対症療法”であるということです。アトピーなどの「皮膚のバリアー異常」を根本から治すには、細胞レベルからのケアが必要です。“栄養療法”にしっかりと取り組み、強い角質細胞の再生を促すことができれば、確実に皮膚を丈夫にすることができるのです。

アトピー治療では外用スキンケアは欠かせませんが、それはステロイドなどの化学薬剤と同じで、対症療法として一時的に必要なものなのです。本質的な治療は“栄養療法”による細胞レベルからの皮膚の強化です。それを忘れていては、アトピーを克服することはできません。栄養療法によって皮膚のバリアーが修復・強化されれば、特別なスキンケアは必要でなくなります。

“激しいかゆみ”への対策

アトピー患者にとって最も辛いのは“激しいかゆみ”があることです。本人ばかりか、それを見ているまわりの人たちも、いたたまれない気持にさせられます。残念なことに現時点では、かゆみを完全にとめる方法はありません。

アトピーでは皮膚を「掻く」ことによって、傷がひどくなり、かゆみが増すようになります。したがってどんなにかゆくても、「掻く」という刺激はできるかぎり避けなければなりません。

アトピー患者は“かゆみ”を感じる神経の働きが、健康な人とは違っています。健康な人なら痛みを感じるような刺激も、アトピーの人は“かゆみ”として感じます。皮膚が薄くなり、ちょっとした刺激でも“かゆみ”が引き起こされるようになります。

毎日のように使用する石鹸・シャンプー・入浴剤・衣類などについても、できるだけ刺激性のないものを選ぶようにします。あらゆることに可能なかぎり手を尽くして対処することが必要です。

かゆみがひどいときには“抗ヒスタミン”作用のある栄養素を補い、かゆい部分を強く冷やすようにします。アイスノンやクライオパックなどを冷凍庫に常備しておきます。アトピーでは風呂やこたつ・ふとんなどに入って体が暖かくなるとかゆみが生じます。冷やすと知覚神経が抑制され、感覚が鈍くなってかゆみが軽減します。

ステロイドは最後の手段にとどめ、どうしても使用せざるをえないときには、短期に集中して用いるようにします。(※ハーブなどを使ったスキンケア用品などの中には、炎症を抑え“かゆみ”をやわらげくれるものもありますが、完全に抑えきることはできません。)

アトピー特有の辛いかゆみについては、次のようなことを、しっかり覚えておいてください。食生活を徹底して改善し、万全の栄養学的対処をするならば、長年にわたって苦しんできた“かゆみ”も、短期間のつちにみるみる減少していくということです。根本的な対処をすれば、耐えがたいような“激しいかゆみ”で苦しむ期間は、それほど長くは続きません。

アレルギー・アトピー栄養療法のポイント

  • 徹底した食事改善(治療レベルの食事)
  • 適正なサプリメント摂取
  • アレルゲン除去
  • スキンケア(アトピー)
  • かゆみ対策(アトピー)
  • 上手なストレス解消
  • 規則正しい生活リズム・適度な運動・十分な休養

Copyright(C)2004-2016 ホリスティック健康学・栄養学研究所. All Rights Reserved.