ホリスティック栄養学に基づく食生活改善について・・・新・ベジタリアン生活のすすめ

バランスのとれた食事とは・・・栄養学的条件を、すべてクリアした食事のこと

医者や栄養士はよく、バランスのとれた食事が大切であると言います。しかし、これほどあいまいに使われている言葉はありません。バランスのとれた食事が大切であると言う医者や栄養士自身が、それが実際にどのような食事を指すのかが分かっていないのです。具体的な指示を出さずに、どうして患者に食生活の改善を指導することができるでしょうか。それでは口先だけのきれいごとになってしまいます。平和、平和と言っていれば、戦争がなくなるかのように考える観念論と大差ありません。「バランスのとれた食事」とは、どこまでも具体的な内容によって示されるべきものです。

現代栄養学は、病気と健康についての徹底した科学的な探求に他なりません。第4章では、現代栄養学が明らかにした研究成果の概要を見てきましたが、この最新の栄養学の立場からは、バランスのとれた食事とは―「これまで明らかにされた栄養学理論を、すべて満たす食事」ということになります。

具体的に言えば、ビタミンやミネラルなどの必須栄養素・食物繊維・薬理効果の高い植物栄養素を十分に含み、オメガ3とオメガ6の摂取比率が適正で、抗酸化栄養素・解毒栄養素・酵素をたっぷり供給できる食事のことです。

しかし、こうした栄養学的条件をすべてクリアした食事を栄養学理論に基づいて組み立てようとすると、それがいかに難しいことであるかがすぐに理解されます。あまりにも諸条件が複雑に入り組み、現実にどのようにメニューを立てたらよいのか分からなくなってしまうのです。現代栄養学の理論を忠実に実践しようとすればするほど、食事の組み立ては困難をきわめ、絶望的になってしまいます。

伝統的な日本料理・長寿村の食事をモデルにした「食事改善」

栄養学理論を実践に移すことの難しさ

栄養学の理論が分かっても、それを実際の食事改善に結びつけるのは容易なことではありません。「必須栄養素を満たす」という1つの条件だけにしぼって考えてみても、その難しさは十分に理解されるはずです。一定のカロリーの枠内で、50種類もある必須栄養素を過不足なく摂取できる食品の組み合わせを、短時間に、しかも毎日計算できるような人はいないでしょう。

10種類くらいの必須栄養素なら、何とか理論どおりの食事の組み立てはできると思うかもしれませんが、実際にメニューをつくってみると、すぐにカロリーの枠を超えてしまいます。まして50種類もの必須栄養素や食物繊維・酵素などを完璧に満たそうとすれば、毎日毎日、家畜なみに穀類や野菜を食べ続けなければならなくなってしまいます。

さて、ここで発想の転換が必要です―「正しい食事」は人間を健康にし、「悪い食事」は人間に病気をもたらします。私たちの食事が正しいものかどうかは、それを続けた結果に反映されるのです。つまり人々の健康状態は、それまでの食事が正しかったか、間違っていたかを示す指標と言えるのです。

こうした発想から、食事改善のヒントを探ることにしましょう。

伝統的な日本食への注目

現代栄養学が始まった頃、欧米の栄養学の研究者は、伝統的な日本人の食事に注目しました。なぜなら日本は欧米と肩を並べる先進国でありながら、国民の平均的健康状態が飛び抜けて高かったからです。ここで対象となった日本人の食事とは、現代人が一般に食べているようなものではなく、50年以上も前の日本人の食事のことです。

日本の伝統食についての研究の結果、さまざまな栄養学的事実が明らかにされることになりました。我が国の伝統的食事の中でも、特に刺身や多種類の発酵食品・大豆食品に関心が集まりました。そしてこれらが、日本人の健康と長寿を支えてきた大きな要因であることが突きとめられたのです。

今や欧米では、「日本食は健康によい」という認識が定着しています。そのため、鮨・刺身・豆腐・納豆といった伝統的な日本食が、海外で大流行するようになっています。多くの外国人が豆腐ステーキを食べ、すしバーにせっせと足を運んでいます。

ここに食生活改善の1つのヒントがあります。つまり食事改善の具体的モデルとして、「伝統的な日本食」を考えてみるということです。(※伝統的な日本食とは、昭和30年以前の食事のことです。)

長寿村の食生活

また日本人全般という大きな単位ではなく、「長寿村」という特定の狭い地域に注目しても、食事と健康の明確な関係を理解することができます。日本各地には昔から、長寿村として知られる村々が点在していました。そうした中で最も有名な長寿村が、山梨県の棡原です。(*現在の山梨県北都留郡上野原町)

長寿村という名前が示すとおり、そこでは90歳、100歳を超える老人たちを至るところで見ることができました。さらに驚くべきことは、その年寄りたちの健康レベルの高さです。かつての棡原では、80歳を超えた老人であっても畑仕事を日課とし、特別な病気で苦しむようなことはありませんでした。寝たきり老人は1人もなく、老人ボケや、糖尿病に代表される成人病とも全く無縁でした。年寄りたちは亡くなる直前まで普通に暮らし、ある日、眠るがごとく息を引きとっていました。まさに大往生という言葉がピッタリの、安らかな死を迎えていたのです。

これまで棡原は、多くの研究者によってさまざまな角度から研究されてきました。その結果、棡原の人々の優れた健康状態と長寿の要因の1つが、村人の日常の食事にあったことが明らかにされました。

しかし戦後、バス路線の開通にともない“陸の孤島”の生活は一変しました。村の若者たちの食生活はたちまち西洋化されたものになり、それと同時に、以前には存在しなかった現代病・成人病が急増するようになりました。村人の食生活は、伝統的な食事を続ける年寄りと、加工食品や洋食などの現代的な食事をする若者に分かれ、中年層の短命化が目立ち始めるようになってきました。やがて棡原は、かつての長寿村の面影を完全に失うことになってしまったのです。 

この棡原における出来事は、私たちが食事改善をするに際して、重要なヒントを与えてくれます。健康と長寿が当たり前だった当時の棡原の人々と同じような食事をするならば、彼らのような健康と長寿が得られる可能性があるということです。そして間違った食事を続けるなら、すぐに病気で短命化するということなのです。

伝統的な日本食・長寿村の食事こそが、食事改善のモデル

伝統的な日本人の食事と、長寿村の食事が、現実的に高い健康レベルをもたらしてきました。したがって、こうした食事をモデルにして真似ることが、そのまま根本的な食事改善になるのです。そして驚いたことに、日本の伝統食や長寿村の食事は、現代栄養学が明らかにした科学的な理論と多くの点で一致しているのです。本書の第4章で挙げた現代栄養学の理論的内容を、ほとんどクリアしています。

つまり私たちが、かつての日本食や長寿村の食事をモデルにして、これにならう努力をするなら、個々の栄養学理論についてあまり神経質に考えなくても、結果として理想的な食事を組み立てることができるのです。日本の伝統食や長寿村の食事を真似ることによって、大半の条件を満たす食事をつくることができるのです。

20世紀の人類に病気をまん延させてきた欧米型の食事の特徴は、肉・油・砂糖・加工食品が極端に多く、野菜が少ないというものです。高タンパク・高脂肪・高カロリー・低食物繊維・低ビタミン・低ミネラルが間違った食事の特徴です。それに比べ、よい食事のモデルである昔の日本食や長寿村の食事は、見事なまでに正反対なのです。欧米型の食事の最も対極にあります。肉料理・油料理・加工食品はめったに食卓にのぼることはなく、多種類の野菜が日常的に摂られてきたのです。

「新・伝統食主義」の確立

これで私たちの食事改善の在り方が決まりました。「伝統的な日本食」と「長寿村の食事」をモデルにして、これに近づけていくことが改善の指針になります。ただし単に昔の伝統食を真似るのではなく、現代栄養学の最新の科学的知識を応用して、伝統食の利点を引き上げた、さらに強力な伝統食でなければなりません。ホリスティック栄養学が目指す食生活改善とは、こうした新しい伝統食なのです。この意味でホリスティック栄養学は―「新・伝統食主義」と言えます。

次にそうした観点から、食事改善の具体的な方向性について見ていくことにしましょう。

食事改善の10のポイント・・・「健全な菜食主義」の指針

伝統的な日本食や長寿村の食事を真似てこれに近づけるためには、具体的な食事改善の指針が必要となります。その指針とは、次の10のポイントにまとめられます。

  • 1)加工食品・インスタント食品をできるだけ減らす
  • 2)脂肪・油をできるだけ減らす(オメガ3を摂る)
  • 3)肉・乳製品・卵を摂らないか、ごく少量にする
  • 4)砂糖をごく少量にする。白砂糖を摂らない
  • 5)主食を精製度の低い穀類にする。雑穀を加える
  • 6)豆類を摂る。種子・ナッツ類を摂る
  • 7)野菜をたっぷり摂る。果物を摂る。海藻を摂る
  • 8)魚貝類を少量摂る
  • 9)発酵食品を常に摂る
  • 10)食材・調味料は自然で新鮮なものを使う

食生活改善は本当のおいしさを追及するもの・・・“正しい菜食”は決してまずくない

新・菜食主義(新・ベジタリズム)

バランスのとれた健全な食事とは、伝統的な日本食や長寿村の食事であることを述べてきました。食生活の改善とは、こうした食事をモデルにして、それに近づける努力をすることです。ホリスティック栄養学が行き着いた“正しい食生活”の内容は―自然と調和した「健全な菜食主義」のことだったのです。つまりホリスティック栄養学に基づく食事改善とは、現代栄養学の最新の知識を導入して健全な菜食主義を目指すことなのです。

菜食は、まずい食事か?

さて“菜食主義”などと言うと、ヨーガの行者や、仏教の修行僧などのイメージを思い浮かべるかもしれません。食事の喜びを捨て去った、無味乾燥した食事スタイルのように考えるかもしれません。「菜食主義に戻せ」などと言うと、かなりの人々が「あんなまずいものはイヤ」「病気になってもいいから、おいしいものを食べたい」と言います。ファーストフードに味覚が支配された現代人にとって、“素食・菜食”はとても耐えられない食事のように映るのです。大半の人々は、よほどひどい病気にでもなって、いやおうなく食事改善を強いられないかぎり、菜食など口にすることはないでしょう。(*素食とは、肉類を加えない野菜を中心とした料理、シンプルな普段の食事を言います。)

しかし、こうした考えはすべて間違っています。健康になるために、まずい食事を無理をして食べる必要はありません。食事は私たちの肉体を維持するためのものである以上、十分な栄養素を含んでいることが大切ですが、それだけでなくおいしいものでなければなりません。食事は人間にとって毎日の生活・営みの中心であり、健康と同時に、喜びと楽しみをもたらしてくれるものなのです。“おいしさ”という喜びを与えてくれるものでなければ、よい食事とは言えません。ホリスティック栄養学の勧める食事は、決してまずいものではないのです。

健全な身体は、正しい食事がおいしい

ファーストフードの味になれた人間でも、いっとき我慢して食事改善を始めると、食の好みが180度変化するようなことが起こります。それまでおいしいと思っていたものが、おいしくなくなるようなことがたびたび生じます。味覚が健全化して、大好物だったはずの油っこい料理や甘いお菓子・ソフトドリンクなどに、あまり魅力を感じなくなるのです。

私たちの身体は本来、健康にプラスとなるものを“おいしい”と感じるようにつくられています。栄養のあるものにおいしさを感じられなかったり、まずいと思うことは、すでに健全な味覚が失われていることを示しています。感覚がマヒして、正常な反応ができなくなっているのです。肉体が不健康で病的だったりすると、自然と不健全なもの・肉体を弱らせるようなものへと嗜好が傾くことになるのです。

精神的に不健全な人間は、騒がしい人込みや大都会の雑踏、あるいは本能的な欲望を満たしてくれるような歓楽街を好みます。しかしそうした人間も、いつまでも同じ環境にとどまり続けることはできません。やがて耐えられなくなり、無意識のうちに心の休まる環境を求めるようになります。精神的に健全な人であれば、初めから人込みや雑踏を敬遠し、自然と触れ合うことのできる落ち着いた環境を求めます。そこが一番居心地がよいからです。

こうしたことが、身体の健康と味覚の関係についても言えるのです。身体が健康であれば、おのずと体によいものを求め、それをおいしいと感じます。身体が不健康であれば、不健全な食べものがおいしくなります。そして病気になって破綻をきたすまで、次々と体に悪い刺激的な食べ物を求めるようになっていくのです。

味覚革命!

食事改善は、体によい食べ物が自然においしくなり、それを常に欲しくなるようなレベルにまでもっていかなければなりません。これまでの「味覚異常」という習性を断ち切ることは容易ではありませんが―そのためしばらくは、時々の楽しみとして悪いものを食べることがあっても―最終的には、体に悪い食品においしさを感じなくなるところにまで至ることを目標にすべきです。

体によいものが「おいしい!」と感じられる人は、本当に素晴らしい宝を得たと言えます。なぜならその人は、一生を健康に過ごすことができるからです。どれほどお金があっても健康を買うことはできないことを考えれば、まさに人生の宝を得たということになります。それは、親が子供たちに与えることのできる“最高の宝”であることは間違いありません。

これから食事改善に取り組む皆さんに知っていただきたいことは、現代人から見るとあまりにもシンプルで、おいしくなさそうに見える昔の人々の食事も、当時の人々にとっては決してまずいものではなかったということです。彼らの誰もが、おいしい食事を感謝して食べていたはずなのです。もし昔の人々が現代人の食べ物を口にしたなら、きっとあまりのまずさに吐き出してしまうことでしょう。

こうしたことを考えると、現代人の大半、特にグルメ指向を自慢する人々の多くが、実はたいへんな「味覚異常・味覚音痴」であることが分かります。

食事改善の3つのステップ

悪い食品を、きっぱりとやめる決心を固める――食事改善の第1ステップ

食事改善の第一歩は、体にとって悪い食品・健康に有害な食品を排除するところから始まります。特に問題の多い食品・有害性の大きい食品は―「きっぱりとやめる」ようにしなければなりません。少し害がある程度のものは後回しにして、明らかに有害度の高いものを真っ先に取り除くようにします。

ところが厄介なことに“有害な食品”のほとんどは、現代人、特に若者や子供たちの好きなものばかりなのです。ハンバーグ・焼肉・ステーキ・から揚げ・フライ・コロッケ・ピザなどの肉料理・高脂肪料理は、まさに病気になるための食べ物です。砂糖たっぷりのケーキやソフトドリンク、添加物だらけのインスタント食品・加工食品なども病気の強力な元凶です。 

これらの有害性の大きい食品を完全に排除しようとすると、大半の人々は1週間の食事の半分以上に穴が空いてしまうことになるでしょう。それは現代人の食事が、いかに有害な食品で埋め尽くされているかということをよく示しています。そして、こうした悪い食品をきっぱりとやめるのが「食事改善の出発点」なのですから、食生活を変えることのたいへんさを実感されるはずです。

しかし、ここで後込みしていては先はありません。第一歩さえ踏み出せない人には、食事改善は無理なのです。これまでどおり自分流に自由にやっていくしかありません。病気への道を歩み続けるのか、思いきって方向転換するのかは、皆さん自身が決めることなのです。

すでにアトピーなどの病気に苦しみ、その治療のために食事改善に踏み出す場合には、有害食品の除去は厳格でなければなりません。一定の治療期間(※6カ月〜1年)は、それらをいっさい口にしない覚悟が必要です。例外をつくってはダメなのです。

アトピー・アレルギーなどでは“悪い食品”を摂った結果が、ただちに身体に現れます。1回の気のゆるみが、何日にもわたって尾を引くことになります。そのため症状がしっかり改善して安定するまで、ひたすら厳格に守っていかなければなりません。

現在、病気や不調のない健康な人が悪いものをたまに摂ることは、さほど問題ではありません。有害な食品も月に1〜2回程度ならば、楽しみとして食べてもいいでしょう。

よい食材を手に入れるルートを確保する――食事改善の第2ステップ

悪い食品を排除したら、次は健康的な食品を積極的に取り入れます。有害な食品に代えて、野菜・豆・海藻・果物・ナッツなど安全で品質のよいものを増やしていきますが、そのためには信頼できる入手ルートを確保する必要があります。農産物・海産物・調味料など良質の食材を、安心して買うことができる店を探さなければなりません。食生活の改善には―「よい食材を確保する」ことが重要な問題となります。

近くにそうした店があればいいのですが、なければ宅配や生協などを利用するといった方法もあります。真剣に探そうとするなら現在では、何らかの信頼できる入手ルートが見つかるはずです。

メニューの立て方(食材の組み合わせ)の原則――メニューづくり3つのルール

食材が準備できたら、メニューづくりに取りかかります。言うまでもないことですが、よい食材を集めたからといって、それだけで優れた食事ができ上がるわけではありません。次は―「食材を、どのように組み合わせるのか」ということが問題となってきます。

食品の組み合わせによって食事全体の栄養バランスが決まりますが、それだけでなくよいメニューであれば、食事のトータル的な力を高めることができます。その反対に食品の組み合わせが悪ければ、食事のすべてを台なしにしてしまうことにもなりかねません。

メニューをつくるに際して、必ず守らなければならない3つのルールがあります。そのルールをしっかり覚え、常にそれを指標としてメニューづくりをします。次に、その3つのルールについて説明していきます。

(1)主食と副食の比率を守る―ルール1

伝統的な食事では例外なく、主食と副食の区別が明確になっています。そしていずれの民族においても、主食の位置は穀類によって占められています。日本人における主食は言うまでもなく“米”です。

「主食」とは文字どおり食事の中心となるものであり、栄養的に優れているだけでなく、毎日食べても飽きない食材でなければなりません。めん類やパンは、いくら好きな人でも食べ続ければ飽きてしまいますが、米はそうではありません。日本人にとって“米”は、毎日おいしく食べられる唯一の食品なのです。そうした理想的な食材である米に麦や雑穀を加えれば、栄養的にも味覚的にも「最高の主食」になるのです。

主食は、食事全体の半分以上(約6割)を占めるようにしなければなりません。主食となる穀類にはカロリー栄養素であるデンプンが多く含まれているため、主食をしっかり摂っていれば、他の悪い食品を食べることができなくなります。また主食だけでかなりの必須栄養素が補給され、栄養バランスの土台ができ上がります。

このように主食によって基本的な栄養素は摂取しますが、不足分は副食によって補います。主食の足らないところを補うのが「副食」の役割です。食事の核である主食と、それを引き立てる副食の組み合わせによって、食事全体のバランスが強化されるようになるのです。

しかし何といっても重要なのは―「主食がしっかりしている」ということです。もし主食が必須栄養素を大きく欠乏させていれば、いくら副食を補っても食事全体の栄養バランスをとることは難しくなります。反対にしっかりした主食が食事の中心的位置を占めていれば、多少副食が貧弱であったり乱れていても、深刻な問題とならずにすむのです。 

欧米型の食事では、主食と副食の区別が明確ではありません。それどころか本来は副食であるはずの肉料理などが、メインディッシュとして食事の中心を占めるようになっています。この点から、すでに大きく狂っているのです。副食であるおかずの方に、より多くの栄養素があると勘違いしている人たちは、「ご飯を減らして、おかずを多く摂れ」などと言いますが、主食の重要性が分かれば―「おかずは残してもいいが、ご飯だけはしっかり食べなさい」ということになるのです。

主食の中には穀類だけでなく、豆や種子も含めます。「豆・種子類」は、本質的には穀類と同じ性質をもった食品だからです。穀類・豆・種子類は、自分たちの種の子孫を残すために必要な栄養素や生命力をすべてその中に備えています。これらが私たち人類に、“天の恵み”として健康と生命力をもたらしてくれることになるのです。

主食とは、単にデンプンという物質的エネルギー源を補給するだけのものではありません。もっと広く、私たちの生命活動を支えるエネルギーの源というようにとらえるべきなのです。その意味で主食には、豆・種子類を含めるのです。

食事の土台を固める主食と、それを補う副食の理想的な比率は―「6:4」です。つまり主食が食事全体の約60%を、副食が約40%を占めるようにするということです。

(2)食材間の比率を守る(「穀類」「豆・種子類」「野菜・海藻類」「魚貝類」の比率)―ルール2

さらに私たちの食事は、摂取する食品の種類別に細分化されます。各食品の比率は、穀類が全体の約50%、豆・種子類が10%で、これらが主食を構成し、合わせて60%ということになります。副食40%のうち、30%は野菜・海藻類で、残り10%が魚貝類(動物性食品)という比率になります。つまり「穀類」「豆・種子類」「野菜・海藻類」「魚貝類」の比率は―「5:1:3:1」ということになります。

食卓に並ぶ食品が、こうした比率になっているかチェックしてみましょう。(※1日の食事をとおしてチェックしたとき、食材間の比率は守られているでしょうか。また1週間分の食事は、適正な比率になっているでしょうか。)

(3)植物性食品と動物性食品の比率を守る―ルール3

正しい食事の一番の原則は、「人間の体に適合した食材の組み合わせからなっている」ということです。動物の歯は、それぞれの動物の“食性”に適した形状をしています。ライオンなどの肉食動物は、生肉を食べるのにふさわしい歯をもっています。ゾウなどの草食動物は、草を食べるのにふさわしい歯をもっています。もし、これらの動物たちが自分の歯に合わない食べ物を摂るとするなら、生きていくことはできなくなります。 

こうした観点から見ていくと、私たち人間には、どのような食べ物がふさわしいのかが明らかにされます。結論を言えば人間の歯は  ―「穀類」と多種類の「野菜類」「果物」などを摂って生きていくようにつくられています。この事実は、人間はもともと植物性食品摂取動物であることを示しています。人間は決してライオンのような肉食動物ではないのです。 

したがって人間が、菜食中心の食事をやめて肉食に偏るならば、健康を損なうことは当然です。まさに現代人は、“肉類過剰”の食生活によって多くの病気を引き起こしているのです。一昔前の栄養学では、「デンプンよりタンパク質を多く摂れ」「米を減らして肉を摂れ」というようなことが言われましたが、それは根本的に間違っています。

人間の歯の構成からすると、植物性食品だけでよいということになります。現在の日本人は、動物性食品の割合をもっと少なくすべきです。日本人は、米や野菜の栽培に適した風土の中で“伝統食”を築いてきました。そこでは植物性食品と動物性食品の摂取比率が―ほぼ「9:1」となっており、圧倒的に植物性食品にウエイトが置かれていたのです。日本の伝統食は完璧なベジタリアンとまではいかなくても、きわめて理想に近い形になっています。伝統食の比率に近づけることが、メニューづくりにおける大切な指針となります。

つまり正しい食事とは―「動物性食品をまったく摂らないか、ほんの少しだけ摂る菜食」ということです。そして長寿村の食事は、まさにこの原則と一致したものになっています。(※動物性食品は多くても10%までということです。)

それに対して大半の現代人が好む欧米型の食事は、植物性食品と動物性食品の比率が大きく逆転しています。

メニューづくりの3つのルールを図示すると、次のようになります。

メニューづくりの3つのルール 食材の比率

主食のパワーアップを図る・・・“5分づき米と雑穀”

食事のよし悪しは、主食によって決まる

食事のよし悪しは、「主食によって決まる」と言っても間違いありません。主食でしっかりと必須栄養素を固めることができれば、あとは副食として、汁物と少しのおかずがあればよいということになります。副食は添え物として、主食の不足分を補うだけで十分なのです。

このように食事の質を決定してしまう主食には、パワーのある穀類を用いることです。特に主食の核となる米は、精製度の低い「茶色い米」でなければなりません。必須栄養素や食物繊維・植物栄養素をたっぷり含んだ米でなければ、食事の土台を固めることはできません。

食事改善においては何よりも―「主食としての米の力をアップさせる」ことが重要なのです。

玄米より5分づき米

自然食愛好家の間では一般に玄米が勧められますが、必ずしも玄米でなければならないということではありません。自然食やマクロビオティックでは、玄米はよく噛めば消化不良を起こすことはないとされ、ひたすら噛むことが奨励されますが、現実にはよく噛んでも“消化不良”を起こす人が多いのです。

玄米を食べるとガスが止まらないとか、吹き出物ができるというような消化不良の兆候がある人は、玄米は避けた方が無難です。豆類をたくさん食べるとガスがたまりますが、玄米も本質的には豆類と同じ種子であり、大量に摂ると、豆類を食べたのと同じことになるのです。

また100%の玄米食にすると、ひたすら噛まなければならないことから、食卓での楽しい会話が失われがちになります。食事は修行の場ではなく、笑いの絶えない楽しい場であるべきです。

玄米の調理には一般に圧力釜が使われますが、せっかくの玄米も圧力釜による高温化によって必須栄養素(ビタミン)の損失が多くなります。5分づき米であれば、ごく普通の釜で炊くことができます。昔は圧力釜などなかったのです。

したがって主食の基本としては、玄米よりも「5分づき米」を勧めます。5分づき米は確かに玄米と比べ栄養素が少なくなっていますが、それは麦や雑穀を多めに加えることで十分に補えます。幼児から高齢者まで無理なく食べられる主食としては、5分づき米と雑穀の取り合わせが最適です。(※大人だけの家庭であれば、3分づき米も勧められます。)

多種類の雑穀を加える

米が主食として広く日本人の間に普及したのは明治以降で、それまで米は、貴族や武士など一部の上流階級の人々だけが常食できるものでした。一般の人々、特に農民は、麦やヒエ・アワ・キビなどの雑穀を食べていました。米が主食として一般化した後も、農漁村の人々は、米に雑穀や芋・豆などを混ぜて食べていました。荒れ地にも育つ雑穀類は、米に劣らない高い栄養価・生命力をもっており、これによって昔の人々の健康が守られてきたのです。

したがって今、私たちが食事改善において主食のパワーアップを図るには、「雑穀の力」を利用すべきです。米に麦や雑穀を混ぜてみると栄養価がさらに高まり、おいしさが増大することが分かります。風味やコクが加わって、まさに“充実した主食”になるのです。

米や雑穀以外の穀類は、時々に

米は毎日食べても飽きない主食ですが、ときには炊き込みご飯・混ぜご飯・雑炊・おかゆなどのように調理法を工夫すれば、さらに食事が楽しくなります。また雑煮・めん類・パスタ類などを取り入れると、いっそう食欲が増すようになります。

ただし、こうした「バリエーションの主食」はあくまでも時々にとどめます。特に米以外の穀類を使った主食は、うどんやそばなどの伝統的なめん類であっても毎日のように摂ることは勧められません。米に雑穀を合わせたほどの栄養価はないからです。(※めん類は週に1〜2度程度にします。)

毎朝の主食をパンにするようなことをしたら、たとえそれが全粒粉のものであっても“食事改善”は根底から崩れてしまいます。小麦は米に比べて栄養価が低いだけでなく、パン食には動物性食品や油を使った洋風料理の方が合うからです。(※小麦粉に雑穀を混ぜたパンも出回っていますが、食事としては勧められません。ゴマペーストを塗って野菜サンドにしたり、スープを添えるなどすれば軽い食事になりますが、毎日の食事メニューに組み込んでは食事改善はできません。)

アトピー・アレルギーの人は、小麦製品やそばには注意が必要です。アレルゲンテストで反応の見られない人でも、ひんぱんに食べたり、一度に大量に摂ることは避けなければなりません。また玄米もちにたっぷりの野菜や魚貝を加えた雑煮はよい主食になりますが、アミノ酸の多いもち米は、うるち米に比べアレルギーを起こしやすいので、人によってはたくさん摂らないようにします。

豆類・・・主食の一部(豆類を主食に含める)

豆類による、必須アミノ酸の補給

完全な菜食にしたときの唯一の問題点は、必須アミノ酸(タンパク質)の欠乏を引き起こしやすくなるということです。この場合、豆類をしっかり摂取すれば穀類に欠けたアミノ酸が補われ、不足は解消されます。

それも主食が「精製度の低い米と雑穀」によって形成されているならば、かなりの必須アミノ酸が含まれているため「豆類」は少しでよいことになります。

しかし主食が小麦の場合には、必須アミノ酸の不足は大きくなり、それを補うためには大量の豆類が必要とされます。穀類の3分の1〜2分の1といった量を摂らなければなりません。それが補給できなければアミノ酸欠乏を引き起こし、動物食品への欲求が高まることになります。

米と雑穀を主食にした場合には、10%程度の豆類を摂るだけで必須アミノ酸の不足分は補えるようになります。それを日本人は、主として大豆から摂取してきたのです。(※何度も述べてきましたが、アミノ酸の補給は「米と豆と少量の魚」で十分です。ところが現代では米の消費量は減少し、パンやパスタ類などの小麦製品が好まれるようになっています。そのうえ豆類の摂取も減って“肉食化”が進んでいるのです。)

「大豆の発酵食品」は、民族の叡知の結晶

一般に“豆”には消化吸収が悪いという欠点がありますが、この欠点を民族的な知恵として解決してきたのが「大豆の発酵食品」です。味噌やしょう油・納豆などは、日本人の食生活に欠かすことのできない食品です。

刺身と並ぶ日本食の最高傑作の1つが“納豆”です。納豆は日本が世界に誇るべき発酵食品です。納豆は優れたアミノ酸の補給源であるだけでなく、良質のビタミン・ミネラル源でもあり、腸内細菌のバランスを正常化するなど、さまざまな効用があります。

納豆は味噌汁と同じように、毎日1回は必ず摂りたい食品です。納豆は食べる直前に冷蔵庫から出すのではなく、30分以上、常温中に置いておきます。すると納豆菌が増殖して驚くほどやわらかく、粘りも増しておいしくなります。

味噌や納豆などの大豆の発酵食品は、普通の煮豆などに比べ、はるかに消化吸収がよくなっています。こうした栄養学的な観点から、味噌や味噌を使った料理・納豆は、毎日の食卓になくてはならない食品と言えます。(※タンパク質は、一度に大量に摂取しても長時間体内でキープしておくことはできません。そのため豆類は、1日に2回は摂るようにします。)

他の豆類のメニュー

豆類のメニューとしては、多種類の煮豆や炒り豆・スープ・豆モヤシなどがあります。豆腐や湯葉・豆乳・黄粉などの大豆製品も、利用したい食品です。

豆類は適量ならば体によい必須の食品ですが、食べ過ぎるとタンパク質が腸内で異常発酵し、ガスがたまる原因になります。そうなれば肉を食べたのと同じ弊害が生じることになるので、気をつけなければなりません。

豆・種子類の中には、アーモンドやクルミなどの「ナッツ類」も含めます。ナッツ類は高脂肪食品ですので、できるだけローストしていない生のままで摂るようにします。加熱による酸化を防ぐためです。(※アーモンドやクルミなどのように生で食べられるナッツもあれば、クリやギンナンのように生では食べられないナッツもあります。)

ナッツ類は少量で栄養価の高い食品ですので、おいしいからといって食べ過ぎないようにしなければなりません。おやつとして少量つまんだり、砕いてサラダに飾ったり、すりつぶして味噌に混ぜるなどして摂るようにします。

メニューの基本は「主食と汁物」・・・おいしい汁物づくり

ご飯と味噌汁の組み合わせは最高

ご飯と味噌汁の組み合わせは栄養学的に見たとき最高で、1日に1回は必ず食卓に用意したいものです。ご飯と味噌汁さえあれば、あとは1〜2品の野菜料理と漬物・小魚をそえるだけで立派な食事になります。ご飯と味噌汁の組み合わせがないと食事全体のバランスをとるのが難しくなり、おかずづくりが急にたいへんになるのです。極端な言い方をすれば、毎回ご飯と味噌汁を用意すれば、あれこれメニューを考えなくてもよいということになります。

また食が細くて、あまり食べられない人にとっては、力のある主食と味噌汁があれば、健康維持のための最低ラインの栄養素は何とか確保できることになります。ご飯と味噌汁の組み合わせは、最も合理的なメニューづくりの基本なのです。

味噌汁は、調理の観点から見たときにも重要な一品です。汁の中に季節のさまざまな野菜や海藻・魚貝類を入れるだけで、メニューのレパートリーを大きく増やすことができるようになります。それだけで毎日のメニューに変化をつけることができるのです。

このように味噌汁は、実に便利な汁物です。ご飯に飽きがこないように、味噌汁も飽きがこない優れた料理です。味噌汁があるだけで、どれほどメニューづくりが楽になり、健全な食事を簡単に整えられるか、その効果は計りしれません。

だしと味噌には、こだわりが大切

さて問題は、誰もが欲しくなるような味噌汁をつくることができるか、ということです。おいしい味噌汁をつくるためには、「だしと味噌」にこだわることが必要です。ここで本当のグルメかどうかの真価が問われます。

味噌汁の調理の秘訣は、ひとえに“だしづくり”にかかっています。味噌汁のだしの基本は、良質のカツオ節と昆布です。それをベースに時にはシイタケを加えたり、たまには煮干しなどを使うのもよいでしょう。

味噌は、材料を吟味した天然醸造の高級品を選びます。米味噌・麦味噌・豆味噌など、好みに合わせて用います。

だしと味噌には、お金を惜しんではなりません。味噌汁さえ上手につくれるようになれば、“味覚異常”の現代人も無条件に日本食が好きになり、食事改善がスムーズに進められるようになります。

味噌汁以外の、おいしい汁物づくり

おいしい汁物があるかどうかが、食事のよし悪しを大きく左右します。最高の汁物は今述べたように味噌汁ですが、この他にも多種類の吸物(すまし汁)やスープなどがあります。

汁物のおいしさ、特に和風の汁物の味を決定するのは、言うまでもなく“だし”です。カツオ節・昆布・干しシイタケ・干しエビ・煮干しなどの天然の素材からは、インスタントでは味わえない素晴らしいだしが取れます。汁物は、主食のご飯を引き立てる大切な脇役です。良質のだしと調味料を使い、取り合わせの具に変化をつければ、メニューのレパートリーが一気に広がります。おいしい汁物があれば、それだけで食事の満足度が高まります。

調味だしやスープストックをつくっておく―調理の工夫

調理の工夫として、時間のあるときに「調味だし」をつくっておくことを勧めます。(*カツオ節・昆布・しょう油・酒で濃いめに調味した“だし汁”をつくって冷蔵庫に入れておけば、4日〜1週間くらい保存が効きます。)

この調味だしがあれば、それを薄めるだけで、簡単においしい料理をつくることができます。薄めて吸い物にしたり、うどんやそばのつけ汁・かけ汁にしたり、根菜を煮たり、お浸しの味付けなどに使うことができます。

洋風スープを手軽においしくつくるためには、くず野菜を煮込んで野菜のスープストックをつくり、冷凍庫に保存しておきます。これをベースにすれば、栄養的に充実したコクのあるスープをつくることができます。

こうした「調味だし」や「野菜のスープストック」を常備しておけば、調理の時間を短縮することができます。忙しいときにも手抜きをすることなく、栄養的にも味覚的にも優れた食事を整えることができます。食事改善においては―「上手なだしのつくり方」をぜひマスターしてください。

副食のメニュー

副食の中心は「野菜」

主食の穀類(米・雑穀・豆)についで重要な食品は「野菜」です。野菜は副食(おかず)の中心に置く食品で、主食をしっかり固めることができたら、あとはいかに多くの野菜を摂るようにするかが問題です。食事全体に占める野菜の量は約30%が理想ですが、これは大半の現代人にとってはかなりの量になります。

野菜をたくさん食べられる人、野菜の好きな人は例外なく健康です。野菜の好き嫌いは、健康度を知るための最も簡単で確実な指標です。常にできるだけ多くの野菜を摂取することに意識を向けなければなりません。

野菜の中でも、特に季節の野菜には栄養素がたくさん含まれているため優先的に用いるようにします。(※野菜料理の半分は、季節の野菜・旬の野菜を使うようにします。)

加熱しないで食べられるものは、できるかぎり“生”で摂ります。加熱による栄養素の損失を防ぐためです。モヤシや生野菜のサラダは、ビタミン・ミネラル・植物栄養素・酵素をたっぷり補給できるよい料理です。生野菜をそのままでは摂りづらいという場合は、少し塩をふってしんなりさせたり、浅漬にすると食べやすくなります。胃腸が弱くて生野菜が摂れないような場合には、自家製の野菜ジュースが勧められます。

ごく短時間だけ加熱した野菜は、大半の酵素は失われているものの、ビタミン類の損失は最少限に抑えられています。ほとんど水を加えずにつくる「蒸し野菜」は、理想的な野菜の調理法です。野菜自体の水分を利用することで、油を使わずに簡単に、栄養豊かな野菜料理をつくることができます。キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・アスパラガス・小松菜など、少々の塩だけで野菜のうま味が引き出され、おいしく食べられます。さらに干しエビを加えたりドレッシングを工夫すれば味の変化も楽しめます。(※蒸し野菜の調理には、ステンレスの“多層構造鍋”が向いています。大半の野菜は数分で調理できます。)

同じく厚手の鍋でつくる「焼き野菜」も勧められます。カボチャ・ジャガ芋・サツマ芋・玉ネギなど、切ってただ焼くだけの簡単さです。時々ならば野菜の炒めものもいいですが、その場合はオリーブ油を使います。

野菜の煮物は、必ず煮汁ごと食べるようにします。汁の中にミネラルが溶け出しているからです。煮物のように長時間加熱した野菜は酵素だけでなくビタミンなどの一部も失われていますが、汁もすべて摂るようにすれば、多くのミネラルを補給することができます。

野菜料理のおいしさは―「野菜に含まれる栄養素を、いかに損なわずに調理するか」ということにかかっています。栄養素があるものは、無条件においしいのです。もう1つは―「調味料やドレッシングを工夫する」ということです。「生野菜」と「温野菜(加熱野菜)」を準備すれば、2品の副食が整います。(※具体的な調理法については「クッキング・ブック」を参考にしてください。)

食が細くてあまり野菜を食べられない人がいますが、温野菜なら量を摂ることができます。特に野菜のスープは、少食の方でも摂りやすいものです。味噌汁の中に野菜の具を多めに入れるだけでも、充実した野菜料理になります。

ただし酵素は失われていますから、ジュースで補うようにします。自家製の野菜ジュースは―「栄養素が失われていない」「酵素が生きている」「少ない量に栄養素が凝縮している」といった点で、野菜摂取の最も合理的な方法と言えます。ガンなどの栄養療法では大量の野菜ジュースが強力な手段となり、高い治療効果を上げています。

子供は一般的に野菜が嫌いですが、無理じいする必要はありません。調理を工夫したり、好きな野菜だけを食べさせるなどして、結果的にたくさんの野菜を摂れるようにするのがよいのです。嫌がる野菜を何とか食べさせようとするより先に、油料理・肉料理・乳製品・砂糖などを排除することの方が重要です。「ご飯と味噌汁」がしっかり摂れていれば、あとは好きな野菜だけを食べていても大きな問題は生じません。

「酵素」を多く補給できる副食メニューを増やす

第4章の「酵素」の箇所で述べましたが、酵素を補給するためには「食品を生で摂る」ようにしなければなりません。酵素の研究者の中には、食事全体に占める生の食品の比率を75%程度にするのがよいと言う人がいます。(※生の食品と加熱した食品を「3:1」の割合で摂るということです。)

酵素の摂取を徹底しようとするなら、そこまで生の食品を増やす必要があるということですが、重病人の治療食ならともかく、日常の食事としてはまず不可能です。しかし、できるだけ生の食品を多く摂る工夫はしなければなりません。そのためには―「野菜の半分を生で摂る」ことを目安にしたらよいでしょう。さらに酵素をたっぷり補給するためには―「発酵食品を増やす」ことが効果的です。副食には必ず1〜2品の発酵食品を加えるようにします。(※納豆と漬物をそえるだけで、簡単に2品の発酵食品を摂ることができます。)

納豆やぬか漬などの漬物は、酵素の補給源としてとても優れています。さまざまなモヤシを使ったサラダや大根おろし・とろろ汁・酢の物なども勧められます。また生味噌を使った味噌だれやドレッシングなども、酵素の供給源となります。

さらに忘れてならないのは“刺身”です。刺身に大根やタデ・大葉などのツマをたっぷりそえれば、酵素もオメガ3脂肪酸も同時にしっかり摂ることができます。(※果物も優れた酵素源ですが、食事には加えません。あとで述べるように“間食”として摂ります。)

動物性食品について―多過ぎないことが大切

ここでの動物性食品とは、肉ではなく「魚貝類」を指します。魚の食べ方として最も優れているのが、刺身や酢の物などです。アサリは味噌汁の具として最高ですが、魚貝類は生でも煮ても焼いても、おいしい食品です。

しかし動物性食品は、少量に抑えるべきです。1日に摂っていい量は、中サイズのアジなら1匹、小さめのサケの切り身なら2切程度です。こうしてみると食事全体の中で動物性食品の占める割合が、いかに少ないかが分かります。これまでの食事と比較して、ずいぶん動物性食品を減らさなければならないことが理解できるはずです。「動物性食品は食事全体の10%以下にとどめる」というのが原則であり、同時に分かりやすい目安です。

“卵”については、健康な人でも1週間に1〜2個以上は摂らないようにします。卵は安価で手軽に調理できるため、現代人は明らかに摂り過ぎています。アレルギーの人にとっては卵がアレルゲンになることが多く、避けることが必要です。

“牛乳”については、すでに述べたとおりです。栄養豊富なよい食品という考えを根底から変えなければなりません。牛乳は卵と同じようにアレルゲンになるだけでなく、脂肪(バター)が大量に含まれ、生活習慣病・成人病を引き起こす原因になります。日本人の多くは乳糖不耐症のために牛乳を摂ると下痢をしますが、そうした人には牛乳はいっさい必要のない食品であるどころか、健康に大きなマイナスをもたらす“悪い食品”なのです。

これまで牛乳は優れたカルシウム源のように言われてきましたが、むしろ多くの弊害を生み出しています。牛乳からカルシウムを摂取しようとするのは、時代遅れの間違った考え方です。もし子供がアレルギーの場合には、学校給食の牛乳も避けるようにしなければなりません。卵も牛乳も肉類同様、できるかぎり控えた方がいい食品なのです。

では“ヨーグルト”などの発酵乳製品はどうかということですが、これについてもすでに述べたとおり、無条件に勧められるものではありません。ヨーグルトに頼って腸内環境を改善しようと毎日、大量に摂るとするなら、「食事全体のバランスを崩す」ことになってしまいます。ヨーグルトだけで脂肪やタンパク質の必要量が満たされ、他の必須の食品を摂る余地がなくなってしまいます。

日本には多くの優れた「発酵食品」があり、それらを上手に食事に取り入れるなら、食事全体のバランスを保ったまま腸内環境をよくすることができるのです。日常摂取する食品の構成が日本と全く異なる習慣をもつ人々においては、ヨーグルトを無理なく食事の中に組み込めるかもしれませんが、日本人がそれをすると、他の食品の構成をすっかり変えなければならなくなります。

時々の楽しみとしてプレーン・ヨーグルトを摂るだけなら問題はないでしょうが、“乳酸菌が多い”という1つの長所だけを取り上げて、ヨーグルトの大量摂取を勧めるのは賛成できません。

健全な食事・正しい食事とは――「1つ1つの食品が、全体の中にうまく溶け込み、バランスを保っているもの」を言います。ある食品を加えることで食事全体のバランス・食品構成が狂ってしまうなら、それはよい食品ではなくなってしまいます。


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