現代栄養学と最新の栄養学理論について

「古い栄養学」から、「新しい栄養学」へ

私たちの身体は―「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」「免疫システム」「自然治癒力」という3つの生体システムによって、健康が維持されるようになっています。こうした強力な生体維持システムがある以上、本当は私たちの身体は、めったなことでは深刻な病気にならないようになっています。よほど間違った生活をしないかぎり、健康的に一生を過ごせるようになっているのです。

よく手入れされた自動車は長い間、快適性を保って走ることができますが、人間の身体はそれ以上に、生体システムによって調和を保ち、健全に生きていくことができるようにつくられているのです。

古い栄養学

現在の日本では、栄養士や管理栄養士による、従来からのカロリー計算を重視する栄養学が中心的となっています。食品の中にどれだけ栄養素やカロリーが含まれているかを考える、食品分析栄養学が主流の座を占めています。そこではまず、人体を構成する材料やエネルギー源となる「炭水化物・脂質・タンパク質」が十分あるかどうかが問題とされます。 

一方、「ビタミン・ミネラル」に対しては、最近になってやっと関心が向けられるようになってきましたが、体の働きを調整する微量栄養素としての知識は、いまだに乏しいのが実情です。ビタミンやミネラルについては“欠乏症”の観点からのみ考えられてきました。例えば、ビタミンAが不足すれば夜盲症、ビタミンB1が不足すれば脚気、ビタミンCなら壊血病というように、ある栄養素の不足から生じる特定の病気を意識してきたにすぎません。そうした病気を引き起こす深刻な欠乏状態を“いかに回避すべきか”という点から、ビタミンやミネラルを考えてきたのです。

このような従来の栄養学を、「古い栄養学」と呼ぶことにします。古い栄養学には、細胞の健康度を上げるためには積極的にどうすべきかというポリシーは、まったくありません。当然のこととして、そこで取り上げるビタミン・ミネラルの種類も、わずかなものに限定されています。

現代社会では無意味なカロリー計算

古い栄養学においては、常に“カロリー表示”がつきものですが、それはほとんど意味をもちません。食品に含まれるカロリーは、加熱する前と後では変わります。また同じ食品を摂っても、それをどのくらい吸収できるかは、人によって異なります。つまり同じものを食べても、得られるエネルギーは人それぞれ違うのです。

現代の先進諸国において、食べ物に不自由し、カロリー不足で病気になるというようなケースは存在しません。逆にカロリーを摂りすぎて肥満になり、病気をつくり出しています。そうした状況から今では、ダイエットや病気予防を目的とした食事制限のために、カロリー計算が行われています。しかしそれも、代謝を進め、身体機能を高める微量栄養素についての知識が乏しい中では、むしろマイナスをつくり出すことになっています。カロリーだけを気にして節食することで、かえってビタミンやミネラルを欠乏させています。現在では、こうしたカロリーを中心とした栄養学は的外れであり、時代遅れと言わざるをえません。 

現代人は、欧米型の食事によって十分なカロリーを摂りながらも、身体の機能低下を引き起こし、多くの全身退化病を招いています。そこでは材料や燃料となる栄養素よりも、それらを用いて健康な細胞を生み出し、身体の機能を健全に働かせる「微量栄養素」に注目しなければなりません。ビタミンやミネラルといった機能性の栄養素こそ、重要視しなければならないのです。 

実際、炭水化物や脂質・タンパク質がいくらあっても、ビタミンやミネラルがなくては、新たな細胞もエネルギーも生まれません。微量栄養素が不足していては、「代謝活動」は正常に営まれないのです。食品中にどれだけ栄養素があるかを言う前に、その栄養素が体の中で、どのように利用されているかを知らなければなりません。

新しい栄養学

こうした古い栄養学に対して、20世紀後半には「新しい栄養学」が登場しました。新しい栄養学は、生化学を中心とした最新の科学的な研究成果に基づいた栄養学です。新しい栄養学は、科学性において古い栄養学とは比較になりません。また治療法としても、大きく質的にレベルアップしています。

生化学による新たな栄養素の発見・栄養素の働きの解明は、栄養学を飛躍的に進歩させることになりました。生化学の栄養素研究は、栄養素が細胞の機能を健全化し、身体全体の健康レベルをアップさせるための多くの知識をもたらしました。また細胞の健康を阻害する要因を取り除く、さまざまな栄養学的手段も明らかにしました。

従来の古い栄養学と、最新の科学的研究成果を導入した「新しい栄養学」の違いを整理すると次のようになります。

■古い栄養学

  • エネルギー源となるカロリー栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質)が中心
  • 食品中の栄養素を研究(食品管理栄養学・食品分析栄養学)

■新しい栄養学

  • 生理機能を調節する微量栄養素(ビタミン・ミネラル)を重視
  • 生体内での栄養素の働きを研究(臨床栄養学・生理栄養学)

新しい栄養学の分類

新しい栄養学は厳密には、導入する知識の広さにおいて、またそれが対象とするものの違いによって、「生化学栄養学」と「現代栄養学」、そして「ホリスティック栄養学」に分けられます。

〔生化学栄養学〕

生化学の研究成果を、そのまま栄養学的に展開したものが「生化学栄養学」です。(*これを“分子栄養学”と呼ぶ人もいます。)そこでは生化学によって明らかにされたビタミンやミネラルの働きを活用して、細胞の健全化を図ります。

実用的方法・治療的方法としては、栄養素を補充するためのサプリメント使用が大きなウエイトを占めています。食事改善について言及することはあっても、それほど強調しないのが普通です。

〔現代栄養学〕

人間の健康維持のためには、ビタミンやミネラルなどの栄養素以外にも、さまざまな要因が関係しています。最近注目されるようになった腸内細菌や食物繊維などもその1つです。これらに対する研究は、生化学以外の分野で行われています。健康をより広範囲に追及しようとすれば、生化学以外の研究成果も積極的に導入することが必要となります。こうした観点から多分野の科学的成果を導入した栄養学を確立することが求められます。ビタミンやミネラルといった栄養素の他にも、微生物など生命体の働きを活用することが重要視されます。

そこでは栄養素のサプリメントだけでなく、多くの補助食品が用いられることになります。また食事改善が大きなウエイトをもつようになります。こうした生化学を含んだ、一回り大きな栄養学を「現代栄養学」と呼ぶことにします。

〔ホリスティック栄養学〕

しかし人間の本当の健康を考えると、「生化学栄養学」や「現代栄養学」では、まだ十分とは言えません。肉体は人間全体の構成要素の一部であって、人間のすべてではありません。人間は単なる肉体だけの存在ではなく、「霊・精神(心)・肉体」から成り立っています。これらをトータル的に対象としないかぎり、本当の健康法とはなりえません。生化学栄養学や現代栄養学には、そうしたトータル的な観点がなく、対象を“肉体”に限定しています。物質次元の知識としていかに優れたものであっても、それだけでは肉体そのものも健康にすることはできないのです。生化学栄養学や現代栄養学に携わる研究者や専門家は、栄養条件を完璧なものにさえすれば、肉体の健康確立や治療は可能になると考えがちですが、それは間違っています。

人間が多くの構成要素から成立する以上、すべての要素をトータル的に扱い、全体のレベルアップを目指さないかぎり、完全な健康は実現しないのです。「ホリスティック栄養学」が生化学栄養学や現代栄養学と違っているのは、その点です。ホリスティック栄養学は最初から「本物のホリスティック医学の一手段」として出発します。それは数あるホリスティック療法の1つとして自らを位置づけし、他の療法と併用されることを前提としています。生命エネルギーを取り入れる方法(スピリチュアル・ヒーリングや気功)・瞑想法・呼吸法・心理療法・ハーブ療法・運動療法など、他のいくつかの治療法と併用されて、初めて大きな効果を発揮することができると考えているのです。

3つの新しい栄養学の共通性と相違点

「ホリスティック栄養学」と「生化学栄養学」と「現代栄養学」は理論的に重なり合う部分をもっています。しかしホリスティック栄養学と他の2つの栄養学では、考え方のスケールにおいても、自らの位置づけにおいても全く異なっています。当然、内容的にも受け入れられない相違点があります。

「ホリスティック栄養学」とは―「生化学栄養学・現代栄養学」の知識の一部をホリスティック医学の中に導入し、より広い体系の中にアレンジして組み込んだものです。ホリスティック栄養学は、生化学栄養学と現代栄養学の科学的知識の一部を、大きな枠組みの中に取り込んで成立した栄養学なのです。こうした意味で、3者には共通性があるのです。

3つの新しい栄養学の共通性と相違点

新しい栄養学のすさまじい発展と、エビデンスの問題

新しい栄養学は、最新の科学的知識を積極的に導入する

ここでは生化学を中心とする新しい栄養学の発展過程と、現時点での新しい栄養学が抱える“エビデンス”の問題を取り上げます。

新しい栄養学は、最新の科学である生化学や食物学・微生物学・分子生物学などの研究成果を取り入れた栄養学です。それは遠からず、前途有望な最新医学の一部分として、人類の健康のために多大な貢献をすることになるでしょう。

とはいっても現時点では、どこまでも歴史の浅い新分野であることには変わりありません。そのため十分な科学的実証性(エビデンス)を整えるまでに至っていないという問題点をもっています。その意味で新しい栄養学は―「科学的エビデンスを蓄積し、科学として、あるいは医学としての明確な立場を確立しつつある発展途上の新しい科学・新しい医学の一分野」と言うことができます。

新しい栄養学研究のすさまじい進展

Mレポートに端を発して急激に進展するようになった新しい栄養学は、現在までにそれほど長い歴史があるわけではありません。しかし、その数十年の間に栄養素に関する発見が相次ぎ、新しい栄養学はすさまじい勢いで発展してきました。栄養素についての知識は日進月歩のスピードで広がりを見せています。

1980年代までの栄養素に対する生化学の研究は、主に動物実験と培養細胞レベルで進められてきました。人間を対象とした疫学的調査研究も一部では行われてきましたが、研究規模としては小さなものでした。ところがそうした研究によってもたらされた栄養学的発見と情報は、積極的な臨床医たちによって活用され、現実に大きな成果を上げることになりました。

その後アメリカを中心に、大規模で厳密な人間を対象とした臨床調査(無作為割付・二重盲検)が進められるようになり、栄養素に対する研究体制はさらに充実することになりました。それまでの研究で明らかにされてきた栄養学的情報についての、本格的な追跡調査が開始されるようになったのです。

その結果が1990年代に入って少しずつ公表されるようになっています。ここにおいて現代栄養学は、さらに正式な科学としての段階に進んでいくことになりました。これまでとかく不足していると言われてきた「科学的エビデンス(科学的根拠)」が、新しい栄養学の中に着実に確立される時代に入ってきたのです。

栄養素をめぐるエビデンスの問題

現時点までの大規模な臨床研究で、明確な科学的エビデンスが実証されている栄養素は一部のものに限られます。栄養素の働きやメカニズムに対する厳密な科学的実証を得るには、今後さらに長い期間が必要とされます。これまでの動物実験や培養細胞レベルでの研究によって有効性が確認されたデータは膨大な数に上り、それを厳密で大規模な臨床研究を通して確認するには、何十年という期間を待たなければなりません。

動物実験や培養細胞レベルで明らかにされた栄養学の研究成果は、すでにその多くが臨床の現場で活用され、現実に大勢の患者の病状を改善させてきました。栄養素の有効性については臨床の現場では確認されてきましたが、それにもかかわらず科学として正式な認証を得るには、さらに厳格で大規模な臨床研究の成果が明らかにされなければならないと考える研究者や専門家がいます。従来の研究成果に否定的・懐疑的な見方をする人たちです。代替医療やホリスティック医学に批判的な通常医学の医師たちは、科学的エビデンスが明確にならないうちは「サプリメントなど用いるべきではない」と言います。生化学栄養学においてはほぼ常識となっている“サプリメント使用”の必要性を認めようとしません。

一方、こうした否定的な見解に対して、肯定的な立場をとる専門家や医師たちもいます。彼らは次のような点から、サプリメント使用に対して肯定的な見方をします―「現時点では“栄養素”の有効性についての科学的エビデンスはまだ不足しているが、今後の研究によって実証される可能性が十分ある」「すでに臨床の現場で治療実績を上げている事実がある」さらには「動物実験や培養細胞実験で効果が認められ、しかも副作用がほとんどない」などです。エビデンスだけに縛られて、すべてのサプリメント使用をストップするというのは、あまりにも大きな損失の可能性があると考えるのです。プラスの可能性を積極的に認め、評価しようとします。ホリスティック栄養学は、後者の立場を支持しています。

科学的エビデンスが現時点では実証されていないからといって、サプリメント使用に効果がないということにはなりません。有効性が期待され、実際に臨床の現場で効果を上げているサプリメント使用を、エビデンスが実証されるまで5年も10年も待つということが、果たして賢明な判断と言えるでしょうか。

この問題については最終的には、個人個人が、あるいは医師の1人1人が“自己責任”のもとで決断しなければなりません。批判的・懐疑的な見解に基づいてサプリメント使用を控えるのも、逆にプラスの可能性にかけてみるのも、最終的には1人1人の判断に委ねられることになります。

食事改善80%以上が、ホリスティック栄養学療法の原則

科学的エビデンスが現実に問題となるのは、主としてサプリメント使用をめぐっての場合です。現代医学で用いる化学的医薬品と、生化学栄養療法で用いるサプリメントやハーブは、「薬効成分を含んだ物質を用いる」という点で共通性をもっています。そのために厳密なエビデンスが要求されるのです。

この辺りの事情は、代替医療に属する鍼灸やカイロプラクティック・気功・ホメオパシーなどとは大きく異なっています。こうした代替医療には、医薬品や栄養素のような科学的エビデンスの検証方法が適用できないために、エビデンスがあまり厳しく要求されることはありません。

栄養学には、現代医学と同様のエビデンスが求められることは当然です。新しい栄養学は、常に自らに厳しい条件を課し、それをクリアしていかなければなりません。エビデンスの問題は、サプリメント使用の際にさまざまな制約をもたらすことになります。それが栄養療法に関心を寄せる多くの臨床医師に、後込みをさせることになるかもしれません。しかし栄養療法の本質を忘れさえしなければ、栄養素のエビデンスの問題は、それほど神経質になる必要はありません。すべては栄養療法の原則・基本を正しく守っているかどうかに行き着くのです。

ホリスティック栄養学における栄養療法の原則は、徹底した“食事改善”にあります。「欧米型の食事を、かつての伝統食に戻す努力が栄養療法のメインになる」ということです。それが治療法の80%以上の部分を占めることになります。この点が生化学栄養療法や、一般の現代栄養学療法との大きな違いです。メインの食事改善の補助手段・補強手段として、現代科学に基づくサプリメントやハーブの使用を導入するということです。「サプリメントへの依存度が低い」という点で、ホリスティック栄養学は、生化学栄養療法とは大きく異なっています。

ホリスティック栄養学の治療法全体の中に占めるサプリメントやハーブの割合は、わずか20%にも至りません。ホリスティック栄養学からすれば、食事改善のともなわない栄養療法は本来的に成立しませんし、食事改善を優先しない治療法は本物ではないということです。サプリメントやハーブだけに頼る栄養療法は存在しないのです。その意味で多くの生化学栄養療法と対立することにもなります。

もしサプリメントやハーブの使用だけでよし、と考える臨床医や治療家がいるとするなら、それは大きな間違いであるというのが、ホリスティック栄養学の基本的な考え方なのです。

食事改善をメインとするかぎり、エビデンスの問題はそれほど大きくない

サプリメントだけに頼って栄養療法を進める臨床医師にとっては、科学的エビデンスはきわめて大きな要因となります。場合によっては、新しいエビデンスの実証によって、それまでの自分の治療体系が根本から崩されてしまうような事態を迎えることも考えられます。サプリメントだけを重視する間違った栄養療法は、エビデンスをめぐって、いつなんどき深刻な事態に遭遇するかしれないのです。

食事改善をメインにして、サプリメント使用を補助手段とするホリスティック栄養療法においては、特別深刻な問題は生じません。仮にこれまでの栄養学の常識が覆されるような事態に至っても、結果的には補助的治療手段の一部分に修正や変更の必要性が生じるといった程度のことにすぎません。ホリスティック栄養療法の大枠・基本ラインが根本から崩されるようなことにはなりません。

ホリスティック栄養学は、先にも述べたように単独での治療(栄養療法)を目的としたものではなく、他の有効性のあるホリスティック医学の治療法と併用し、組み合わせて用いられることを初めから前提としています。それを考えると、単なる栄養素をめぐっての“エビデンス”は、それほど大きな問題ではないということになります。

現代人の栄養摂取状況・・・高タンパク、高脂肪、砂糖過剰、ビタミン・ミネラル不足、低食物繊維

工業化にともなう「食の欧米化」

Mレポートは、私たち現代人の間違った食生活が、ガン・心臓病・脳卒中・糖尿病などの生活習慣病を引き起こしていることを明らかにしました。間違った食事とは、一言で言えば「欧米型の食事」のことです。工業化に成功し、経済的に豊かになった国々においては、必ずこうした欧米型の食事が普及するようになります。

日本も昭和30年(1955年)頃から工業国としての道を歩み出し、それにともない国民の食生活は大きく変化するようになりました。それまでの、ご飯・味噌汁・豆・漬物・魚・野菜料理といった伝統的な食事が徐々に隅に追いやられ、欧米型の食事(洋食)がとって代わるようになりました。トンカツやハンバーグに代表される肉料理・揚げ物料理、カレー、スパゲッティー、ピザなどが毎日の食卓にのぼるようになりました。トーストしたパンにバターやマーガリンを塗り、ハムエッグにコーヒーといった朝食が好まれるようになったのです。

多くの人々は、洋食にすることは進歩的であり、これまでの伝統食を続けることは時代遅れであるかのように思いました。従来の日本食にはなかった欧米型の食事は、人々の目には、まさに新鮮で進歩的で、ハイクラスの食事スタイルであるかのように映ったのです。また国民の体力アップを目指して政府が行った牛乳や洋食普及のキャンペーンが、食の欧米化を後押しすることにもなりました。

こうして欧米的な食事は、昭和30年以降、あっと言う間に国民の中に浸透することになりました。そして多くの若者の食事は洋食がメインとなり、それになじめない年寄りだけが、これまでの日本食にしがみつくといった状況が展開することになりました。

世界中に広がる「欧米型食事」

経済発展にともなう「食生活の欧米化」という傾向は、日本にかぎらず世界中の至るところで等しく見られます。台湾・韓国・シンガポールといった日本に次ぐアジアの工業国でも、また近年経済発展の著しい中国においても、欧米型の食事はすさまじい勢いで普及し始めています。特に世界一の人口を抱える中国では、“肉食化”が急速に浸透しようとしています。こうした国々では、日本と同様に、若者や金持ち層が高価な欧米食に群がり、これについていけない年寄りや貧しい人々が、それまでの安価な民間食を食べ続けるという二極の構図ができ上がっています。

欧米型の食事を象徴するのが、外資系のファーストフードの世界的フランチャイズです。マクドナルド・ケンタッキー・ピザハット・ミスタードーナツといった世界的フランチャイズは、まさに欧米型食事の見本と言えます。発展途上国の人々にとって、こうした食事は一種の憧れともなっています。アメリカ資本によるファーストフードは、世界に冠たるアメリカの物質文化の繁栄を象徴し、多くの若者の中にアメリカン・スタンダードを植え付けるのに大きな役割を果たしています。

また欧米型の食事は、昔は一部の上流階級や金持だけに許されていた、ぜいたくな食事・宮廷料理と通じるものです。経済的に豊かになるにつれ、国民の誰もが“グルメ(美食家)”となり、かつては一握りの金持だけが食べていたのと同じ、ぜいたくな食事を求めるようになるということです。「よりおいしいものを食べたい!」という人間の食本能によって、欧米型の食事は、物質文化の発展と並行して世界中に広がろうとしています。

病気の元凶となる「悪い食事」――欧米型食事

こうした欧米型の食事が、人々に健康をもたらすのであれば何の問題もありません。しかし食生活が欧米化すると、どこの国においても、決まって「ガン・心臓病・脳卒中」が死因の上位(1〜3位)を占めるようになるのです。欧米化した食事と現代病・成人病との間には、はっきりとした相関関係が見られます。

Mレポートは、この点を明確にしたのです。欧米型の食事は、明らかに人々の健康にマイナスをもたらします。それは、まさに「悪い食事の典型」なのです。

欧米型食事の傾向

では、欧米型の食事の何が具体的に悪いのでしょうか。「伝統食」によって食生活が営まれていたときには、現在蔓延しているような病気は、ほとんどありませんでした。その伝統食と比べて、欧米型の食事には、どのような問題点があるのでしょうか。

悪い食事のモデルと言われる間違った傾向とは――「肉の多食」「脂肪の摂り過ぎ」「砂糖の摂り過ぎ」「野菜の不足」です。これがMレポートが明らかにした、欧米型食事の問題点です。これを栄養学的に分析すると――「高タンパク」「高脂肪(高脂質)」「砂糖過剰」「ビタミン・ミネラル不足」「低食物繊維」ということになります。このような栄養状況が、細胞機能を損ない、健康レベルを低下させ、現代病を生み出しているのです。

こうした食事は、どのような過程で身体を弱化させていくのでしょうか。最新の科学の一分野である現代栄養学は、「欧米型食事」が、どのようなメカニズムで病気を引き起こしているかを科学的に明らかにしつつあります。次から、それについて見ていくことにします。


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