ホリスティック栄養学と新・伝統食主義について

ホリスティック栄養学とは

ホリスティック栄養学という言葉は、一般にはあまり聞かれません。「ホリスティック栄養学」という言葉には―「ホリスティック医学の栄養学的な一分野」という意味と、「栄養素を用いた肉体次元のホリスティックな治療法」という2つの意味が含まれています。

ホリスティック栄養学は、文字どおりホリスティック医学の中における栄養学的分野です。ただしここでのホリスティック医学とは、どこまでも霊・精神(心)・肉体を対象とした真の意味でのホリスティック医学です。そのホリスティック医学の肉体次元の分担を受けもつのが「ホリスティック栄養学」なのです。そうしたホリスティック栄養学の定義からすると、人間を肉体だけの存在と考える一般的な栄養学や栄養療法は、本書で言うホリスティック栄養学の中には含まれません。

ホリスティック栄養学は、栄養素の働きを用いて肉体次元でのホリスティックな治療法を進めます。患者の肉体の健康レベルをトータル的(ホリスティック的)に向上させるのに、栄養素はきわめて重要な役割を果たします。

現代人の生体システムを退化させている最大の原因の1つが、間違った「欧米型の食生活」にあることは、これまで何度も述べてきました。不健全な食生活が、健康維持のために必要な栄養素を枯渇させ、さらに肉体にとって害毒となるような有害物質を蓄積させています。その結果、多くの人々は生体システムの機能を低下させ、慢性疾患で苦しむようになっています。現代人は食生活の狂いから、“細胞レベル”での栄養状態を悪化させ、肉体全体の健康レベルを低下させているのです。

ホリスティック栄養学は、食生活の根本改善を図り、食の栄養状態を強化して、さまざまな肉体次元の問題を栄養学的側面から積極的に解決しようとするものです。そして、すでに発症している肉体的欠陥を、栄養学的手段を講じて“細胞レベル”から治そうとするものです。ホリスティック栄養学は―「肉体をつくる素材(細胞)の健全化を図る」という面からの医学なのです。人体を構成する最小の構成要素である細胞の健康レベルアップを図ることは、肉体次元における最もホリスティックな対処法となります。

ホリスティック栄養学は、将来ホリスティック医学における中心的な医療になると予想されますが、もちろんそれだけで完全な健康の確立・病気の克服が実現するわけではありません。身体全体の健康を確立するためには、他に「適度な運動」「十分な休養」「ストレス対策」といった努力を欠くことはできません。

次から、そのホリスティック栄養学について見ていくことにします。

ホリスティック栄養学は、ホリスティック療法の1つ

ホリスティック栄養学は、霊・精神(心)・肉体という身体の3要素をトータル的に対象とした「真のホリスティック医学」の一部としての役割を担っています。

ホリスティック医学の視点に立てば“栄養療法”は欠くことのできない肉体次元の治療法ですが、それ以外にもスピリチュアルヒーリングや気功・瞑想法・呼吸法・心理療法・ハーブ療法・運動療法など、たくさんの有効なホリスティック療法があるのです。

つまりホリスティック栄養学は―「数多くあるホリスティック療法の1つ」ということなのです。そしてホリスティック医学は、それらを複数併用して治療を行う医学であるということです。ホリスティック栄養学だけで、あらゆる病気を治すことができるというわけではありませんし、ホリスティック栄養学は、それを目標とはしていません。

ホリスティック栄養学は“栄養学”という名前をもっていても、ホリスティック医学の一部分としての位置づけが優先されます。つまり食事だけを完璧なものにしても、それだけで健康にはなれないということを自ら認めているのです。先に述べたようにホリスティック栄養学は、健康全体の20%を占める“食”の部分を完璧にしようとするものなのです。

確かにホリスティック栄養学は、相当に効果的な治療法であることは事実ですが、それはどこまでも、その他の優れたホリスティック療法と組み合わせた中で、より高い治療効果を生み出し、全体的な健康レベルのアップに貢献しようというものなのです。

ホリスティック栄養学の基本的な考え方

細胞の健全化を図る

 ホリスティック栄養学が、肉体次元のホリスティック的治療法であるというのは、人体の最小の構成単位である細胞に働きかけることを目的としているからです。現代西洋医学のように、1つ1つの臓器に注目するのではなく、人体を構成するすべての細胞を健康にすることによって、全身の健康レベルを引き上げようとします。

適切な栄養素の補給

さて、その細胞の健康ですが、それは細胞形成の素材であるさまざまな栄養素によって左右されます。素材が悪ければ、それによってつくられる細胞の質が悪くなるのは明らかです。問題はどのようにして、細胞の健全化に必要な栄養素を適切に補給するかということです。

結論を言えば、細胞に必要な栄養素は、毎日の食事から摂取しなければなりません。もし不足があるときは、それを補うようなサプリメントなどを用いるということになります。栄養素補給において最も大切なことは―「毎日の食事を、必要な栄養素を十分に含んだものにする」ということです。

もし、これまでの食事が間違っていて細胞が栄養素不足の状態にあるなら、悪い食事を改めることが、ホリスティック栄養学による治療の第一歩となります。ホリスティック栄養学では、“まず何よりも食生活改善から”ということなのです。

本当の食生活改善とは―欧米型食事から伝統食に戻すこと

現代の慢性疾患の蔓延は、欧米型の食事に起因しています。それは欧米型の食事が普及するにともない、いずれの国においても共通の病気が出現することから明らかです。栄養学的に見るとき、肉食を中心とした欧米型の食事は、深刻な必須栄養素の欠乏を招き、肉体を形成する細胞の弱化を引き起こします。欧米化した“狂った食生活”が現代病の大きな元凶なのです。

現代人が健康を取り戻すためには、間違った食生活を改め、かつての健全な食事である「伝統食」に戻すことが必要です。これは食の基本的な改善そのものであり、ホリスティック栄養学を実践するうえで最も重要な点なのです。

科学的に伝統食を理解する

食生活改善を心がける際に考えなければならないのは、ただ単に昔の食生活(伝統食)の真似をすれば、すべての問題が解決するわけではないということです。

食生活を取り巻く環境は、現代文明の発展によって昔とはすっかり変わっています。異なる環境の中で、かつての食事の栄養状況を取り戻すことは、すでに不可能なのです。できるかぎり伝統食に戻す努力はしなければなりませんが、単なる表面上の真似ではなく、科学的な知識を手がかりに、合理的に進めていかなければならないということです。伝統食の栄養学的内容を、科学的に分析・解明することによって、効率よく伝統食を回復し、さらに伝統食の長所を強化することができるのです。

また世界各地の伝統食の共通性を明らかにすることによって、「地球レベルでの共通伝統食」の実現が可能となります。

このように過去の伝統食をただ真似るというだけでなく、科学的な栄養学の知識を導入することによって、伝統食をさらに高次元に高めた形で取り入れることが可能となるのです。この意味でホリスティック栄養学は、「新伝統食主義・高次伝統食主義」と言えます。ホリスティック栄養学は、従来の伝統食への回帰を図ると同時に、最新の科学の一分野である生化学の研究成果を積極的に取り入れています。

こうした知識の土台の上で、ホリスティック栄養学は、伝統食を栄養学的に強化する方法として、サプリメントなどを用いるのです。

たえず進歩・変化していく栄養学的知識

いかなる科学も、新しい発見にともない古い理論や常識が否定され、より高い次元へと進歩していくものです。生化学もそうした科学の一分野である以上、同様のプロセスをたどることになります。古い栄養学的知識(*その当時は常識と思われていたもの)が、新たな発見によって否定されることがあるということです。

生化学は、ここ20年にわたってすさまじい勢いで発展してきました。次々と新しい発見がなされ、それまでの常識が覆されるというプロセスをへて、日進月歩の発展をなしています。

ホリスティック栄養学は、最新の生化学的知識を積極的に導入していく以上、それにともない常に小幅な変更は避けられません。サプリメントやハーブといった栄養学的補助手段に対する評価・見解は、現在でも最終的な結論に至っているわけではありません。「伝統食に戻す」という路線は変わりませんが、その補助的手段においては、科学の発展につれ、今しばらく変動する可能性があるということも頭にとどめておかなければなりません。

ホリスティック栄養学の治療観

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