ホリスティック医学とホリスティック健康学について

人体に備わっている健康維持のためのシステム

私たちの身体は―「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」「免疫システム」「自然治癒力」という3つの生体システムによって、健康が維持されるようになっています。こうした強力な生体維持システムがある以上、本当は私たちの身体は、めったなことでは深刻な病気にならないようになっています。よほど間違った生活をしないかぎり、健康的に一生を過ごせるようになっているのです。

よく手入れされた自動車は長い間、快適性を保って走ることができますが、人間の身体はそれ以上に、生体システムによって調和を保ち、健全に生きていくことができるようにつくられているのです。

深刻な生体システムの機能低下・・・多くの現代人の実情

私たちのまわりを見渡すと、多くの人々が深刻な病気で苦しんでいます。病気をもっていない人の方がむしろ珍しいというような現実が展開しています。大半の人々は、年を取れば病気になるものと思っていますが、本当は決してそういうものではありません。現在では、ガン・心臓病・脳卒中といった病気によって、国民のおよそ3分の2が死に至っています。病気をせずに長寿を全うし、老衰で死ぬといった人は稀なことになっています。本来、人間は健康であるようにつくられているはずなのに、どうして、これほど異常な事態を生み出してしまっているのでしょうか。

その原因は―「長期にわたって極端に間違った身体の使い方をしてきた」「限度を超えて有害なものを摂り続けてきた」、あるいは「健康維持のために不可欠なものを根本的に欠落させてきた」―このいずれかにあります。こうした自然に反した要因を積み重ねることによって、せっかく与えられている素晴らしい生体システムの機能を低下させ、病気になってしまうのです。完璧ともいえる健康維持システムが十分な働きをすることができなくなったために、病気が蔓延するという異常な事態を引き起こしているのです。

肝心なのは遺伝子ではなく「後天的要因」

現代医学は、遺伝子診断とか遺伝子治療といった方向に向かおうとしていますが、現代人の大半の病気は、遺伝子それ自体によって引き起こされるようなものではないのです。遺伝子診断における病気発生の可能性に惑わされるべきではありません。先天的に受け継いだ遺伝子以上に、私たちの健康を左右する決定的な要因があるのです。

さまざまな健康レベル

病気と健康の2つだけ―現代医学の立場

今、皆さんが、慢性疲労や偏頭痛・微熱などの不調を感じて病院に足を運んだとします。病院では、まず尿検査や血液検査・レントゲンなどのさまざまな検査を受けることになります。医師はその検査結果に基づき、あなたがどのような病気であるのかを判断しようとします。もし検査結果に異常がなければ、取り立てて病気はないと言われます。あなたがどれだけ不調を訴えても、検査結果に異常がないかぎり治療の必要はないと診断され、相手にしてもらえません。

実はここに、現代医学の「健康観」が端的に示されているのです。検査値に異常が見られたときのみ病気と考え、そうでないときには健康であるとするのです。こうした現代医学の健康観に従うかぎり、どのような人間も、健康か病気のいずれかに属することになります。「健康人」か「病人」かの2種類の人間しかいないことになります。

しかし実際には、検査に異常がなくても、病気が進行していることもあります。健康診断や人間ドックで異常なしと言われた人が、数カ月もしないうちに急死するようなことがたびたび起こっています。“突然死”で命を落とした人の中には、直前まで自分は健康であると信じていたというようなケースが多く存在するのです。

多次元的な健康レベル―ホリスティック医学の立場

こうした現代医学の「病気か健康か」という2分法的健康観に対して、最近盛んになってきたホリスティック医学では、健康について次のように考えます。健康にはさまざまなレベルがあり、病気というのは、その1つのレベルにすぎないというものです。ホリスティック医学の「健康観」では、人間の健康は1つの山にたとえて説明されます。

ホリスティック医学と現代医学の健康観の違い

●ホリスティック医学の観点から見た現代人の健康状態

ホリスティック医学の観点から見た現代人の健康状態

●現代医学の観点から見た現代人の健康状態

現代医学の観点から見た現代人の健康状態

上の図で、山の一番ふもとが死のレベル、少し上がったところが病気のレベルです。そして山を登れば登るほど健康レベルが上昇し、山の頂上は最高の健康レベルということになります。このように、これまでの医学の2分法的な健康観に対して、「グラデーション的・多次元的な健康レベル」を考えるのです。

このホリスティック医学の健康観によれば、これまでの医学は、山のふもと近くの低いレベルだけを対象としてきたということになります。現代医学には、ホリスティック医学のような「さまざまな健康レベルがある」という視点がないために、結局、死に至らせないことを目的とするものとなっています。健康に注目し、健康レベルをさらに引き上げようとする方向に意識が向かっていかないのです。

「早期発見を!」という的外れ

こうした視野の狭さのために、現代医学はいろいろな的外れをしでかすことになります。現代医学では、精密機器を用いた病気の早期発見の必要性を盛んに強調します。確かに早期発見自体は決して悪いことではありませんが、それよりも、もっと重要なこと、先になすべきことを見落としてしまっているのです。

その重要なこととは―「病気にならないようにする、病気を引き起こさないようにする」ということです。それこそが病気に対する根本的な対策であるはずなのですが、そうした当たり前のことが、「早期発見」の掛け声によって陰に追いやられ、無視されるようになってしまっています。現代医学には、こうした本質的な問題があるのです。

健康度をある一定のレベル以上にまで引き上げさえすれば、身体に備わっているシステムによって、体内の異常は、病気として外部に現れる前に修復されたり取り除かれることになります。最新の機器を用いて病気を早く見つけようとすることが重要ではありません。病気そのものを引き起こさないようにすることの方が、ずっと大切なのです。「もっと健康レベルを上げるにはどうすべきか」といった方向に、努力の向きを変えなければならないのです。現代医学は、そうした重要な観点を欠落させています。

十人十色の健康レベル

ホリスティック医学の健康観によれば、10人の人間がいれば、10通りの健康レベルが存在することになります。生体システムが完璧に働いて健康そのものの人がいる一方で、病気とは言えないまでも、不快な症状に悩まされている人がいます。生体システムの働きが低下して病気になったり、死の間際にまで至っている人もいます。つまり「人の数だけ、さまざまな健康レベルがある」ということなのです。

最高の健康レベルの人とは、生体システムが完全に良好な状態で働き、大病もせず、健康的に長寿を全うする人のことです。すべての人々が、この完璧な健康レベルと、最低の健康レベルである死の間際との間の、どこかのレベルに属することになります。

国民の3分の2が、ガン・心臓病・脳卒中で死んだり、国民の3分の1が何らかのアレルギー症状をもっているという現状を考えると、多くの人々がかなり低い健康レベルにあることは明らかです。まさに日本人の大半が、発病寸前の「半病人・半健康レベルにある」ということなのです。現代医学では病気とされないだけで、実際は、相当低い健康レベルにあるのが実情なのです。多くの人々が、いつ本当の病気に移行してもおかしくないような危険な状態に置かれているのです。

日本は病気大国

日本は世界で一番の長寿国であるから、日本人は世界で一番健康レベルが高いと考える人がいるかもしれませんが、それは間違いです。日本は確かに他国に比べて平均寿命は長いけれど、寝たきり老人の数は世界の中でも飛び抜けて上位にあるのです。病気大国と言われるアメリカよりも、はるかに多くの寝たきり老人・要介護老人がいるのです。日本のお年寄りは元気に老後を楽しんでいるのではなく、寝たきりになって生き続け、これによって寿命を伸ばしているだけのことなのです。

また乳児の死亡率が低いことが、名目上の平均寿命を伸ばすことになっています。数字のうえでは、我が国は世界の最長寿国ですが、それは決して、日本人が健康であることを示しているものではありません。

日本が健康大国であったのは、昭和30年以前のことであって、現在は他の欧米諸国同様、病気大国の仲間入りをしています。しかも、その健康レベルの低下のスピードは、他の欧米諸国に比べてずっと速いのです。まさに健康大国から病気大国へと、急降下しているのが実情です。

生体システムの働きを決定する「4つの条件」

人間は特別な健康法を講じなくても、ごく自然な生活をしていれば、健康維持のためのシステムによって健康に生きていくことができるようにつくられています。病気になるのは体質が劣化し、代謝異常が引き起こされ、生体システムの働きが阻害されているからです。

その阻害要因とは、具体的には―「極度のストレス」「不健全・不自然な食生活」「有害物質の体内蓄積」「運動不足」「過労・オーバーワーク」の5つです。

現代人、特に都会に住んでいる人々は、昔の人々と比べ日常的に多くのストレスにさらされています。生活それ自体が、ストレスをため込む原因となっており、生体システムの働きを阻害しています。物質主義・金銭欲望追及主義に洗脳された現代人の多くが、不必要な欲求不満を抱き、わざわざ無意味なストレスを生み出しています。

また食生活の欧米化によって、大半の現代人は必須栄養素の欠乏状態を引き起こし、細胞レベルの健全性を大きく低下させています。油や肉・砂糖などを大量に摂り続け、自ら不調を招いています。そして環境汚染物質や食品添加物など、さまざまな有害物質が体内に取り込まれ、いっそう体質劣化に拍車をかけることになっています。

さらに現代人の多くは、交通手段の発達や生活の機械化によって、体を動かすことが少なくなり、運動不足から全身の筋力低下を引き起こすようになっています。不規則な生活によって生体リズムを狂わせ、オーバーワークによって身体を酷使し、自律神経やホルモンなどの全身調節系に異常をきたすようになっています。

こうしたことが重なり合って、現代人の大半が、生体システムの能力を大きく後退させ、身体全体を弱体化させています。健康のための4つの条件を、ことごとく踏み外しているのが現代人なのです。そして当然の結果として、健康を損ない、病気を多発させることになってしまっています。

病気とははっきり診断されないまでも、日本人の大半が半病人というべき、きわめて低い健康レベル・病気寸前の状態に置かれています。いつ3大成人病(ガン・心臓病・脳卒中)や糖尿病・アレルギー・骨粗しょう症になっても不思議ではないのが、日本国民の実情なのです。

健康レベルを高め、生体システムが働けるようにするためには、こうした阻害要因を取り除けばよいのです―「ストレスをため込まない健全で安定した精神状態」「健全な食生活」「適度な運動」「十分な休養」を実践するということです。これらは、健康のための4つの条件と言えます。私たちが健康に人生を過ごすためには、この4つの条件をすべて満たすことが必要となります。

「健全な食生活」「適度な運動」「十分な休養」によって、体内に蓄積された有害物質はスムーズに排泄されるようになります。

健康のための4つの条件

  • ストレスをため込まない健全で安定した精神状態
  • 健全な食生活
  • 適度な運動
  • 十分な休養

体質劣化にともなうアレルギー急増の原因

やがて日本人の50%がアレルギーに

現代人の身体が急激に退化していることは、近年のアレルギーの急増によっても明らかです。現在、猛威を奮っている花粉症やアトピー性皮膚炎は、30年前には珍しい病気でした。しかし今やアレルギーは、現代人にとってあまりにもポピュラーな病気となっています。アレルギー患者の数は、年々増加の一途をたどっています。何らかのアレルギーやアトピーを患う人の数が、国民の半分以上に至るのは、それほど遠くないものと思われます。

アメリカではすでに10年以上前に、アレルギー体質者が国民の50%を超え、そのうちの半分ぐらいの人は治療が必要だと言われてきました。そして代を重ねるごとに、アレルギーの症状はますます重症化するようになっています。こうしたアメリカの状況は、近い将来、日本でも確実に起きることになるでしょう。アレルギーの蔓延が騒がれていますが、今後はさらに、それが深刻化することになるでしょう。

アレルギー体質をつくり出す最大の原因は「食生活」

アレルギー性疾患の発症には、遺伝的要因と環境的要因が関係していると言われていますが、実際には「環境的要因(後天的要因)」が圧倒的に大きな原因となっています。食生活の悪化をはじめ、ストレスの増大、大気汚染・環境中の化学物質の増加などが、アレルギーを引き起こしているのです。これらがじわじわと現代人の身体にダメージを与え、体質を弱化させ、その結果、アレルギー体質をつくり出しているのです。

アレルギー体質とは、体質の劣化によって免疫機能が弱体化をきたし、IgE抗体が異常に多く生産されるようになった体質のことです。アレルギーの人は、普通の人の50〜100倍ものIgEをもっていることがあります。そのため、わずかなアレルゲンの体内侵入でも「アレルギー反応」を引き起こすことになるのです。もし体質が健全であるならば、免疫機能も正常に働き、IgEも大量に生産されることはなく、少々のことではアレルギーは発症しません。

間違った食生活がアレルギーに及ぼす影響は大きく、体質を劣化させると同時に、アレルギーの引き金となる「アレルゲン」そのものをもたらすことになります。そのため、大きなダメージを与えることになるのです。またストレスも急激にIgEを増加させます。そうしたときにアレルゲンが侵入してくると、容易にアレルギー反応を引き起こすことになります。

他の病気で身体が弱っていたり、疲れすぎ、睡眠不足などによって体調が崩れると、すぐにアレルギーやアトピーが発症し、体調がよくなるにつれ、それが治っていくという事実はよく知られています。これは、体質悪化とアレルギーに強い関連性があることを示しています。

そこから考えを進めていけば、体質そのものを強化すれば、アレルギーを抑えられるということが容易に理解されるはずです。事実、食生活の根本改善によって、アレルギー・アトピーを完全に克服することができるようになるのです。

アレルゲン除去だけでは駄目

現在では、アレルゲンになり得る物質はかぎりなく存在します。それらを1つ1つ取り除くといったような方法では、とうてい対応できません。食物中のアレルゲンを厳密に気にしていたら、食べるものがなくなってしまいます。

しかし体質自体をアップさせ、免疫機能の健全化を図るならば、少々のアレルゲンを取り込んでも、むやみに過敏な反応を引き起こすことはなくなります。体質の向上が、アレルゲン物質への根本的な対抗策となるのです。

アトピーにおける皮膚のバリアー機能の低下についても同様です。皮膚も体の一部である以上、身体全体が健康になれば、皮膚の機能も正常になり、外部からの物質を皮膚でしっかりと防御し、侵入を防ぐことができるようになるのです。

代替医療への注目と、ホリスティック医学の登場

現代医学から代替医療へ

最近では、現代西洋医学の問題点と限界が明らかになるにつれ、漢方薬や鍼灸・民間療法・健康食品・カイロプラクティックといった「代替医療」に注目が集まるようになってきました。「代替医療」とは、通常の病院で行われている現代医学とは別の医療の総称です。

1990年以降、アメリカでは代替医療にお金を投じる人の数が急増し、数年前から代替医療に払う治療費は、一般の医療に払う金額を上回るようになりました。これは多くのアメリカ人が、現代医学に限界を感じ、代替医療に拠りどころを求めていることを示しています。このような新たな動きが出てきた理由として、アメリカにおけるホリスティック医学の影響が考えられます。その結果、アメリカ人の中に全体的(ホリスティック)な健康観が行き渡ってきたのです。

ホリスティック医学では、心・食・運動・休養というトータル的な観点から健康を考えようとします。そして生まれつき身体に備わっている「自然治癒力によって病気は癒される」という共通理念に立っています。そうした考え方が、現代医学に限界を感じている多くのアメリカ人に理解され始めるようになったのです。

ホリスティック医学の登場

ホリスティック医学の萌芽は、1970年代のアメリカに溯ります。60年代から70年代にかけて、アメリカの医学は、それまで内部に抱えていた矛盾が一斉に噴出することになりました。国民の中に慢性疾患が蔓延し、国民医療費は激増して国民総生産(GNP)の10%を超え、軍事費を上回るといった異常な事態を迎えるようになりました。しかも皮肉なことに、膨大な医療費の投入にもかかわらず、慢性病は減少するどころか増加の一途をたどることになり、現代医学の限界は、もはや誰の目にも明らかになってきました。

こうした現代医学の矛盾は、現代医学の基本的な姿勢に起因します。現代西洋医学では人間を、どこまでも物質的な存在・肉体だけの存在と見なします。さらに肉体を機械の部品の集合体のようにとらえ、治療とはその部品を修理することであると考えます。また身体の部分に現れる症状は、有機体である身体全体のアンバランスを告げるシグナルであるにもかかわらず、部分に対する処置のみでよしとします。また西洋医学は、医学の対象から精神や心を排除し、それらを宗教や哲学に任せて、身体(肉体)の領域だけに専念してきました。西洋医学における目的は、健康のレベルアップや病気予防ではなく「病気と死を敵視する」という方向に向けられてきました。

このような現代医学の在り方に批判が浴びせられるようになり、人間を精神(心)を含む全体的存在ととらえ、そのうえで健康観・治療観を考えていく新しい医学(ホリスティック医学)が徐々に認知されるようになってきました。1970年代にアメリカで起こった「ホリスティック医学」という健康観の革命は、アメリカの広い層に受け入れられ、80年代になってヨーロッパ諸国や日本に広がることになりました。

ホリスティックという言葉は比較的新しい言葉で、1926年にジャン・クリスチャン・スマッツが彼の著書の中で初めて使った造語です。“ホリスティック”という言葉は、スマッツが造語するにあたって語源に選んだギリシャ語の「holos(全体)」に由来します。したがってホリスティック医学とは、一言で言えば「全人的医学」を意味します。

ホリスティック医学の4つの特徴

ホリスティック医学の特徴は、以下の4つに整理することができます。

  • 1) ホリスティック(全人的・全体的)な健康観に立っている
  • 2) 自然治癒力を治療の原点に置いている
  • 3) 心の存在と、心の力・影響力を大きなものとして認めている
  • 4) 霊・精神(心)・肉体の総合的な身体観に立っている

ホリスティック医学の価値観・病気観

ホリスティック医学の価値観 ホリスティック医学の病気観

人間の構成と、3種類のホリスティック性
・・・肉体レベルでのホリスティック性/心身レベルでのホリスティック性/三位レベルでのホリスティック性

ホリスティック医学が、現時点で明確な理論モデルをつくることができないのは、医学の対象である人間の身体が、そもそもどのような構成であるのかが分かっていないからです。共通の身体観・人間観が確立されていないのです。

現在ホリスティック医療を標榜する医師の中には、西洋医学と同様に、人間は肉体だけの存在と考える人がいます。また西洋医学の唯物主義に反対して、人間は精神(心)と肉体からなる2元の存在であると主張する医師もいます。また中には、人間は肉体と精神ばかりでなく、従来宗教で言われてきた霊魂のような高次の霊的要素を有していると考える人もいます。(※アメリカのホリスティック医学の権威ワイル博士や、日本の渥美博士がよく知られています。)

いつの間にかWHOが、健康の定義に新たに“霊的”という言葉を付け加えることを検討するような時代になっています。霊的という言葉は、これまでもっぱら宗教の用語でしたが、それが医学の中にも導入されようとしているのです。医学の根本的変革の動きが、少しずつ進展していることを感じさせられます。

霊的とか霊魂といった言葉は、今や最新の医学の分野とかかわりをもとうとしています。日本ホリスティック医学協会では、「人間は肉体・精神・心・霊魂の総体である」との見解を示しています。“霊魂”は、ホリスティック医学関係者の間で最も議論の対象とされるテーマであることは言うまでもありません。

3種類のホリスティック性

3種類のホリスティック性

図で示しましたが、人間が三位一体の構成要素から成立しているということになれば、3種類のホリスティック性(全体性・トータル性)が生じることになります。

霊・精神・肉体の3要素にわたる全体性・トータル性を考慮すれば、霊・精神・肉体の3次元のホリスティック性が成立します。伝統医学や宗教医学などは、こうした立場に近いと言えます。スケールの点に限って見れば、これが最も広範囲のホリスティック性のレベルということになります。

次に精神(心)と肉体の2要素にわたるホリスティック性が成立します。心身医学や多くの民間療法などは、これに該当します。

さらに肉体次元に限定されたホリスティック性も成立します。ハーブ療法や手技療法などの代替医療は、肉体次元でのホリスティック医学ということになります。(※現代西洋医学は、肉体次元での反ホリスティック的な医学と言えます。)

真のホリスティック医学とは

同じホリスティック医学を標榜していても、身体の構成要素をどのように考えるかによって、その内容は全く異なるものになります。さまざまなホリスティック性のレベルが成立することになります。ホリスティック性のレベルが高ければ高いほど、より根本的な医学になることは言うまでもありません。

本書での「ホリスティック医学」とは、霊・精神・肉体の三位一体の身体観に立ったものを指しています。このレベルにまで至らないかぎり、本当のホリスティック医学とは言えないと考えています。「真のホリスティック医学」は、“三位一体”の身体観のうえでのみ成立するものなのです。

本当のホリスティック医学の本質を、別の言葉で言い表すならば―「霊的要素を取り入れたところに成立する医学」ということになります。現代西洋医学の最大の特徴は“唯物主義”です。真のホリスティック医学は、医学に霊的な要素を導入することによって、従来の唯物医学に真正面から挑戦します。医学の中で、“霊魂”といった従来の宗教のテーマが論じられるような動きがあるのは注目すべきことです。ここまでくると真のホリスティック医学は、宗教と医学の高次元の統合にまで至ることになります。

真のホリスティック医学

(三位レベルのホリスティック医学)

真のホリスティック医学

「ホリスティック健康学」と、健康実現へのアプローチ

ホリスティック医学の身体観・健康観に基づく“健康学”を―「ホリスティック健康学」と言います。人間が霊・精神・肉体の3次元の構成要素から成り立っている以上、真の健康を得るためには、霊・精神・肉体のそれぞれに対する働きかけが必要となります。

世間一般に見られる健康法でのアプローチは、その大半が肉体次元、よくても精神次元どまりです。しかし、それでは身体全体の健康は確立されません。

3つの次元の健康法・治療法

〈霊的レベルへのアプローチ〉

ホリスティック健康学における“霊的レベル(次元)”へのアプローチとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。結論を言えば―「高次元の価値観・人生観・世界観に立って純粋で利他的な行為を実践し、質の高い霊的状態をつくり出す」ということです。そうした私利私欲を拭い去ったところから生じる至福の思い・無上の喜び・奉仕人生に対する生きがいこそが、まさに霊的レベルが健全な状態にあることを示しています。人間がこのような状態に至るとき、その人の霊的領域(高次の心)は、最も活性化されることになります。

大気中から取り入れられた「霊的エネルギー」が、その人の“霊的領域”を満たし、身体全体に対する「根源的な生命エネルギー」となります。これが霊的に健全であるということですが、そうした状態を常につくり出せるようになるためには、長い期間にわたる自己克己の歩みと、純粋な利他的行為の実践というプロセスが必要となります。つまり本人の日頃の内省的努力と、奉仕の実践による霊的成長が不可欠となるのです。「霊的成長」は自分自身の努力によってなすものであり、人まかせで達成できるものではありません。それは人生をかけて少しずつ獲得していく最も難しいことなのです。この霊的領域での健全化・向上とは、実は多くの宗教で言われてきた“魂の成長”に他なりません。

残念ながら大半の現代人は、この肝心な霊的部分に多くの問題と未熟さを抱えています。霊的健全さからは、大きく懸け離れています。そのためほとんどの人々が―「根源的な生命エネルギー」を枯渇させることになっています。

霊的部分に対する治療は、一般に言う“エネルギー療法”の類に頼らなければなりません。その中で最も期待できる治療法が、「純粋なスピリチュアル・ヒーリング」です。(*現在では「スピリチュアル・ヒーリング」の名称で行われる治療が流行していますが、その大半が金銭目当ての不純なもので、本物のスピリチュアル・ヒーリングとは認められません。)よく知られた“気功治療”も代表的なエネルギー療法ですが、現実的にそのエネルギーが患者の霊的部分にまで届くことはありません。中途半端なレベルにとどまっています。

〈精神レベルへのアプローチ〉

精神レベルでの健全な状態とは、不安や恐れ・心配などのマイナスのストレスがなく、平静でゆったりとした心理状態を保っていることを言います。しかし実際には、現代人の多くが、何らかの不安や恐れ・心配を抱え込んでいます。現代社会には絶えず不安がつきまとい、心の安らぎ・平安を維持することが難しくなっています。不安や恐れなどのストレスによる感情的な乱れは、健康に大きなマイナスを及ぼします。それは、霊的領域から流されてくる「生命エネルギー」の流れを遮断することになるからです。

現在の“心身医学”では、こうした精神状態の不調和に対して、瞑想や暗示・音楽・薬物などを用いたさまざまな治療を施します。心身医学はそれなりに成果を上げていますが、精神レベルの完璧な治療からは、ほど遠いのが実状です。

一方、世の中には、いつも明るい健全な精神状態を維持している人々がいます。ストレスを上手に解消し、不安や恐れとは無縁な人生を送っています。そうした人々に共通するのは―「確固たる人生観・信念・生きがいをもっている」ということです。明確な目的に向かって毎日の生活を完全燃焼している人間の精神状態は、マイナスのストレスからは無縁なものとなり、溌剌としています。

このような現実を見ると、精神状態の安定には、霊的レベルでの内容が大きく影響していることが分かります。精神レベルでの健康を維持するためには―「より高い人生観・価値観・信念に基づく生き方をするのが一番よい方法」ということになります。

したがって単に精神レベルだけに焦点を合わせて、さまざまな治療法を施しても限界があります。広い視野・崇高な価値観・純粋な奉仕精神と、そこからもたらされる“喜び・生きがい”こそが、健康にマイナスとなるストレスから私たちを解放してくれることになるのです。つまり精神レベルの健全性を保つためには―「瞑想などの方法論より、ものの考え方・価値観の方が重要である」ということなのです。“精神レベル”へのアプローチは、精神療法的な面だけでなく、霊的な面からも行う必要があるのです。

〈肉体レベルへのアプローチ〉

“肉体レベル”での健全化・正常化のためのアプローチは、すでに世間一般に“健康法”として行き渡っています。その代表的なものが本書で取り上げている「食事療法(栄養療法)」です。それ以外にも運動療法や手技療法・温泉療法・水療法・光線療法・ハーブ療法・アロマセラピーなどがあります。

「ホリスティック健康学」はホリスティック医学に基づく健康学で、人間の3次元の構成要素すべてに対するアプローチを目的としています。

ホリスティック健康学におけるアプローチ

ホリスティック健康学におけるアプローチ

3次元への同時アプローチ

ホリスティック健康学における1つの重要な点は、3次元へのアプローチは、常に同時に並行して行われなければならないということです。霊・精神・肉体という3次元に対するトータル的アプローチ、ホリスティックなアプローチが必要であるということです。

世間一般に見られる健康法の多くは、単に“肉体レベル”に対するアプローチだけにとどまっています。ある1つの手段を強調し、それを実行することで健康が得られると言いますが、間違っています。

ホリスティック健康学では―「常に3次元を対象とした健康法が、同時に行われなければならない」と考えます。本書で取り上げる「ホリスティック栄養学」は“肉体次元”での優れた治療法ですが、他の次元のホリスティック療法と併せて進められなければなりません。ホリスティック栄養学だけで健康を確立することはできないのです。

心・食・運動・休養の比率は、「4:2:2:2」

先に4つの健康の条件について述べました。健全な心・健全な食・適度な運動・十分な休養は、人間が健康であるための4つの柱であり、必要条件です。では、これらが健康に及ぼす影響は、どの程度のものなのでしょうか。結論を言えば―「4:2:2:2」の比率になります。

心・食・運動・休養を、人間の3次元の構成要素と照らし合わせて考えてみましょう。まず「食」と「運動」が、肉体レベルの健康状態を決定的に左右することは明白です。しかしそれらは肉体レベルだけに限定されるものではなく、精神レベルにも少なからず影響を及ぼしています。次に「休養」も肉体レベルだけでなく、精神レベルに影響をもたらすことが分かります。

さて、もう1つの要因である「心」ですが、それは厳密に言うと人間の有する心的要因のことを意味しています。心的要因は、人間の「霊的レベル」「精神レベル」という2つの構成領域に存在し、この部分の健康状態を決定します。当然、心の健全さは、身体全体の健康状態を大きく左右することになります。

こうしたさまざまな点をトータルして考えたとき、健康全体に対する心・食・運動・休養の影響力の割合は―「4:2:2:2」になるということです。「ホリスティック健康学」は、心・食・運動・休養によって健康レベルが決定されるだけでなく、それら1つ1つの要因が、どのくらいのウエイトをもっているかについても明らかにしています。

健康全体に対する心・食・運動・休養の影響力の割合

*4つの部分が完璧になったとき、完全な健康が実現します。それぞれの要素は、毎日の生活で常に平行して進行しなければなりません。

心・食・運動・休養の4つの条件を同時に満たす

人間が健康であるためには、心・食・運動・休養の4つのうち、どの要素も欠かしてはなりませんし、それらのすべてを同時に高める方向に努力しなければなりません。どれか1つの要因が欠けても、健康を手にすることはできません。ましてや1つの要因だけにこだわり、それのみを徹底したとしても、健康を手にすることはできません。

世間では、“食だけ・運動だけ”の健康法が多く見られますが、派手な宣伝文句とは裏腹に、いつまでたっても健康は手の届かない理想にとどまっています。食事療法に一生懸命に取り組むのはよいのですが、それと同じくらい運動にも熱心に取り組まなければならないのです。食事療法だけに専念すると、結果的にはその努力の多くが無駄になってしまいます。

ホリスティック栄養学は―「ホリスティック健康学の20%の部分の完璧性を目指すもの」であることを忘れてはなりません。ホリスティック栄養学は“食の完全性”を目指しますが、それとともに、健全な心・適度な運動・十分な休養を同時に追求することを前提としているのです。

心の影響力を重視する「ホリスティック健康学」

ホリスティック健康学の際立った特徴は、「心の要素をきわめて重要視している」ということです。“心の健全さ”がないところでは、健康を確立することは不可能であると考えるのです。心の影響力は、私たちが考えるよりずっと大きいものです。

世の中には、いろいろな健康法やホリスティック関連の書物があふれています。その中で“心”が健康に最も大きな影響力をもっていると断言しているものは、それほどありません。食生活の指導書の中には、心の健康の大切さに触れているものはありますが、心について正しく述べているものはめったにありません。

心は、食生活や運動よりも、はるかに大きな影響力・広範囲の影響力をもっています。本書で述べるホリスティック栄養学は、たいへん優れた“食”への対処法であり、最高の食事療法と言えますが、それでもその影響力は「心」には及ばないのです。


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