申し上げますが此れにはオリジナルキャラクタと、些少の暴力行為の記述があります。
苦手な人はお引き換えし下さい。どうぞよろしくお願いいたします。 夜は終夜、淫楽をのみ嗜んで 濛濛と立上る白い湯気は俄に視界を悪くした。 シャワーを止めると、「あ、」と声を上げた。 白い小さなタイルが整然と並ぶ床には、跫が四つ見えた。 「それ、」 諾、と深津一成は後輩である沢北栄治の目線を追い、自身の跫に辿り着き、頷いた。 「…落とし忘れたピョン」 深津の跫の爪は決して人間の物には見えなかった。 タイルの四つの跫。その内の双つの跫、十本の指が藍に染まっていた。睨むわけでも無く、暫し自分の跫を凝視すると、僅かに深津の唇が歪んで、跫の向きは変わった。浴室の戸は開かれ、脱衣所へ姿を消した。 思えば、深津と風呂場で会ったのはそれが初めてだった。 二年の深津一成は同輩の河田雅史と並んで双璧と呼ばれる程の人物だった。的確なプレーに動じない精神力。次善の策を弄す強かさ。その癖、為人は好い加減な物で、人を揶揄することに長けている。 況して、語尾には「ピョン」が付くのだ。 その深津に傷を見つけたのは、藍色の爪を見てから一ヶ月が経った頃だった。 あれから、再び風呂場で深津に出会うことはなかったし、彼は兎角人前で着替えをすることは器用であったから、傷を見つけたことは本当に偶然だった。 朝練習後の部室で見た深津の脇腹に出来た裂傷。 生々しいものではなく、時間を経過した代物に見えた。 「深津さん、どっか引っ掛けたんですか?」 「ピョン?」 動揺する様子も見せず深津はシャツを引き下ろした。脇腹は簡単に閉じられる。 「結構ドジっすね」 「そんなこと有るわけ無いピョン」 意味が解らなかった。 「は?」 「授業遅れるなよ」 アディダスのバッグを肩に掛け、深津は先輩の高林と並んで歩み出した。高林は三年のセンターである。身長は190cmを越え、バスケをするにしては些か細い肢体をしている。怜悧な糸目で、片方だけが二重だった。短く刈った頭が、あれほど野卑に見えるのも、珍しい。 沢北は三年の先輩を見比べる度にそう思っていた。 しかも、彼は深津を気に入っていて、いつも二人は傍にいる。 目を封じられ、口の奥まで押し込められたそれに舌を絡める。咽喉に擦り付けられる刺激に嘔吐感をもよおすが、「吐くなよ、」と戒められた。 撲られた頬が腫れ、口に異物が侵入することは、酷く辛い。 痛みに歪む顔に、恍惚としているに違いない。 閉じた瞼の中にそれを想像して猛る。然しそれは想像と云うよりもローターの強度が増した為だろう。 下腹部が震える。 腸壁向うの前立腺を直接鷲掴みにして貰いたいと、思うのだが、到底有り得るわけも無い。 「今日はオリーブオイル」と言って、薄黄色い透明な蕩蕩な液体を高く上げさせた臀に浴びせるように塗りたぐる。 彼は通常食事として口に入るものが、臀にも入ることに、彼は異様に興奮して歓んだ。 オイルに塗れた一指し指をゆっくりと擦り付け、押し込み、また抜き出して、中指を増す。両指を開いてピースの形にするとその間にまたオイルを垂らした。 何度同じことをしても其処に異物が入り込むときに、背筋が震える。 どす黒い痣に少しだけ爪を立てて、それを無情にも制止させる。 ぐずぐずにする。 「あ…ピョ……んン……ぬん…」 やがて指が動くほどに、粘り気のある水音を発てるようになった。 そして、オイルに漬したそれを押し込んだ。 「あとでオリーブオイルと混じった俺のも其処から出してやるから全部呑めよ」 言葉に、思わず、そそり勃った。 同時に紐で器用に括ってあり、そう簡単にいけるようにはなっていない。 腹は人には見せられない。裂傷と火傷の痕で酷いことに成っているからだ。 余り道具を使うことはない。ローターで揺すってみたり、紐で結んだりする程度で、大抵は足技かベルトである。足技が得意なのだ。 「……はっ……」 咽喉の奥に押し込まれた其処から、直接食道へ通された。 競返りが口の中に拡がり、噎せた。 咳をすると、漸く口の中から退去する。 「いい顔してんなあ」 真赤に腫れた左の頬。口内は裂けているはずだ。 血の味は、雄臭さに、掻き消されている。 「ピョ…ン…」 「そうだな、そっちのが『ベシ』よりそそるぜ」 最近『ベシ』から『ピョン』に変えたばかりだった。 胸の突起を爪で摘まれた。 「あ…ピョ……」 「笑うなよ」 口角は持ち上がり、笑みの形に似る。然しそれは筋肉が強張っているだけで、笑っているわけではない。 「出てるぜ。…今度医者の息子からカテーテル貰うか、」 そう言って、笑った。先走りの溢れた処から紐を解く。腰が揺れた。 「そんな嬉しいのか?変態だな、お前」 ジュと音がして、胸に冷たい感触があった。 そして、次の瞬間には「あっあピョっっ…ああーっっーーっ」と奇声が発せられた。 「馬鹿野郎、いってんじゃねえよ」 声は快活に嗤った。 二月になると在校生の練習は続くが流石に試合数もめっきり減り、三年はそれぞれの進路に従い寮を出て新たな新生活の場へ旅立つ。 高林は関西の大学に決まったらしかった。 「沢北、」 寮の廊下で呼び止められて、沢北は些か気色ばんだ。 深津が此の先輩と仲が良かろうと少しだけ、沢北は近付きたくないものがあったからだ。 「お前、深津の跫気付いたんだってな、」 何のことを言っているのか解らなかった。 「ずっと前だよ、風呂場で」 「ああ…はい」 「似合ってたか?」 「人の色には見えませんでしたよ」 「あれ、俺が塗ったんだよ」 「先輩が?」 「諾」 笑い方が厭だった。 「来いよ」 「は?」 「俺の部屋。好いモン見せてやるぜ。今日は最後の晩餐だ」 そういって高林は下卑て笑った。 卒業式の二日前だった。 深津が頬を腫らして現れたとき、「俺の肘鉄がクリティカルヒットしてな」と言った高林の言葉を誰も疑わなかった。 二人は仲が良かったし、180cmと190cm代の大男が寮の狭い一室に入ればそういうことも多分に有り得るだろうと誰もが経験則的に知っていたからだ。 訪れた部屋は寒かった。此の真冬に余り設定の高くない暖房が入っただけで、他の部屋には常備されている電気ストーブさえ見当たらなかった。 外には未だ雪が見えるのに。 殆どのものは片付けたのか、すっきりとした部屋だった。寝台と冷蔵庫、机以外は何も無い。教科書の類も雑誌も洗いざらい無くなっていた。部屋の端にナイキがあるだけで、殆ど生活のものは片付けられていた。 「カーテンは開けとくか。最後の記念だ」 と高林は言った。 高林の部屋には沢北と深津がいた。 余りにも自然に其処に居る深津に、沢北は違和感さえ憶える。 「深津、そろそろ脱げよ」 思わず耳を疑い、沢北は言葉の主を見た。 「た…高林…さん?」 「ピョン、」 深津は余り気にした様子は無かった。 「沢北電気消せ」 妙な命令に少し戸惑ったが、沢北は近くの壁を触り電燈を消した。深津が着ていたざっくりとしたくすんだ緑色のセーターを脱いだ。 その下から唐突に現れた肢体。 「それ、どう…したんですか!?」 外界の月の光が僅かに注ぎ込む薄闇の中で、浮かび上がった深津の躰は、傷だらけだったのだ。 「どうした?予想もしてなかったって顔だな」 「高林さん、沢北は本当に何にも知らないピョン」 「お前のポーカーフェイスも恐ろしいもんがあるな。あんな淫乱のくせに」 躰の一面を覆う青黒い痣、最早古くなった裂傷、何処か新しい火傷。ユニフォームに隠れてしまう範囲に広がる、 傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷、傷―――――― 「男に使う言葉じゃないピョン」 「なんだよ、本当のことだろう?」 高林が沢北を射抜かんとするほど強く眼光を放った。 「気にしなくていいピョン。沢北」 「な…何がです…」 声が震えた。その筈だ。高林の手は深津のジーンズの前を外し、中からそれを取り出したからだ。 「嫉妬したんだピョン。高林さんはお前に」 「何でです?」 「あの時、コイツの爪に気付いたのはお前だけだったんだよ。そりゃ、疑いたくなるだろう?」 肯くことも出来ない。 深津は高林の座る寝台に膝を乗り上げて、膝立ちで高林に跨っていたからだ。そして高林の手が腰からジーンズの中へ入り、臀を剥いた。 打たれた紅い筋の残る臀部。 紅い筋は盛り上がり、幾十もの蚯蚓が臀の上を這っているように見えた。 「冷蔵庫からワセリン出せ、沢北。でお前のベルトと、深津のでコイツの足首と手、縛れ」 何が起こるのか、 沢北はぞ―――――と高揚を憶えた。 「ルーターは…今日は二人居るから要らねえな」 高林は色色喋った。まるで、甕の水を移すように、沢北に自分と深津の色色なことを饒舌に話した。 「人を撲るのは嫌か?」 当たり前のことを訊いた。 言い澱んでいると「癖になるぜ」と妖しく嗤った。 薄らと汗を掻いていた。 深津は本当に痛がっていた。悲鳴を噛み殺して、苦しい顔は本物だった。だが、苦しいほどに、彼の雄芯は如実な反応を見せる。 体育館で暴れた後に直で此処につれてこられ、躰も洗っていない。 だのに深津は咥えた。 酷く巧みで、沢北はあっと云う間に果てた。 「早えぞぉ、沢北。って気にすんな。コイツが旨いだけだからよ。俺がそう、仕込んだんだ」 「ん…ピョン…」 深津は舌で自分の唇を一舐めした。 紅い舌が口から溢れた精液を搦め取って往く。 「後ろもやってみろよ、俺がぐずぐずにしといたからすぐに入る」 持ち上げられた臀部。普段小さく窄まった其処が広く開くのか、と驚いた。そして、中は、酷く、甘い。 先まで其処には高林自身がいたのだから。 根元まで入ると、深津がゆっくりと動いた。 筋肉質な腰を揺らす。 彼は、何処が、自分の泣き処なのか、解っているのだ。 そしてどうすれば相手を擽ることもできるのか。 それも凡て高林が―――――― 深津に沢北はきつく絞られる。深津は其処を刺激され「ピョ……あぁ…ん…」とその鼻に抜けるような吐息ともつかぬ声に怒張が増した。 「さてお楽しみはこれからだ」 高林はムースを持ち出した。 整髪料である。 短く刈った頭は触れば指の腹を突き刺さる。それは山王のバスケ部に居る限り、例外はない。だのにその短い髪の何処に使うものか、ムースは軽かった。 シトラスの香りと小さく書かれたそれを数度振ると仰向けになった深津の胸に盛り上げるように掛けた。 白い気泡で出来上がった、ムースの山。 青い百円ライターを近づける。 ライターを何の為に所持するのか。 例えば煙草を吸うにしても、躰を動かす者に百害あって一理もないはずだ。 何に使うのか。 自明だ。 それは此の為に買ったのだ。 一瞬、火が――――――上がった。 腕と跫を縛められた、深津の躰が跳んだ。 「ピョーーーンーーっっン」 啼いた。 ムースの缶の背面には赤い文字で大きく火気厳禁と記されていた。 皮膚が燃える臭いがした。 「深津さん!」 これは…犯罪ではないのか? 声を上げると高林の手が伸びてきて、沢北の口を塞いだ。 焔と深津の精液の臭いがした。 「見ろよ、」と高林が深津の下腹部を指差した。 「ほら勃って来ただろう?」 深津の呼吸が小刻みで震えていた。腰が寝台に擦り付けるように揺れている。 「コイツはな、こういう奴なんだよ」 深津の顔が紅潮している。 恥ずかしさや、怒りにではなく、淫らに―――――― 「跫開けよ」 軽く言うと従順に、膝を開く。 沢北は高林からムースの缶を渡される。 「コイツの此処に、ピアスでもさせようと思ったんだけど」 「……此処……?」 「諾。コイツの所有者が誰だか解らせる為に。だが、流石に抵抗してな」 「し…嫉妬に狂った男の言葉以外…な、なんでもなかったからだピョン」 少し苦しそうだったが、深津の威勢は飽くまでも変わらない。先輩後輩の域から他のものにもなっていない。 「そんなことしなくても…自分が誰の所有か解っていれば好いピョン」 目の端が薄らと紅い。 「可愛いことを言う」 笑った。 所有と云う言葉に顔が顰まる。 それは人の尊厳を無視した言葉ではないのか。隷属を差すものではないのか? 然しもっとも解らないのはそれを深津が許容しているということである。 沢北は下腹部の茂みにムースを落とした。 深津の躰が震えた。 顔は脅えていた。否、笑っているのか――――――。 高揚した顔はどちらとも付かない。 雄芯まで火傷するとも限らないのに、そんな恐怖に一層そそり勃ち、それは腹に付くまでになった。 そして火を着ける。 深津は叫んだ。 そして、茂みは燃え果て、散り散りと、吐精した。 痛みに喘ぐ深津は淫らだった。 猛る―――――― 卒業式はしめやかに行われた。 バスケ部の卒業生の中には卒業式に出られない者も居た。早速進学先の部活に合流しているのだ。 高林もその一人だった。 だから主賓の欠けた部の壮行会は毎年盛り上がらないらしいのだ。 沢北は卒業式の間中、深津を探していた。 あの夜に見た深津は一体なんだったのか、一日経った今も理解が出来ないでいる。 身の上の不知火に悶えて淫蕩に耽る深津が、忘れられなかった。 喘ぐ声が白昼の最中に思い出される。 式が終わり、散り散りに出て往く人波を縫って、沢北は深津を捜した。河田や一之倉や野辺と共に居るかと思ったが、其処にも姿は無かった。 立ち止まると、桜の未だ芽吹かぬ黒い樹の陰から、腕が現れて沢北を攫った。 背が黒い皮に叩き付けられる。 其処に居たのは、深津だった。 その耳に口をぴったりと着けて、囁く――――― 「人を所有するってどんな気分か知ってるピョン?」 息が沢北の耳を擽った。 躰が粟立つ―――――。 そして、強請るように僅かに低い位置から深津はキスをした。 28/07/05 色色すみません。 何を言って良いのかもわかりませんが… つか、 御免なさい。 深津が2年生の話なのでベシにしようとおもったんですが ピョンのが煽情的なので此方を使わせていただきました。 これに関しては苦情を受け付けません。 悪しからず。 では。 ↑previous |