後記です。
当初、誰を相手にするかまるで考えずに書き始め、(榎木津にしようと思っていた)気が付くと青木で物語は固まり、なんだか長い話になってしまいました。
途中多忙な時間が入り、書くのをストップすることを余儀なくされたりしましたが、楽しく書いていたと思います。
稀に好きだと仰ってくださる人がいたりして、そうした人の一言に励まされつつも漸く書きあがりました。
つかメールを下さったYさまの御蔭だと思ってます。(勝手に)
本当に、ほんとに、ほんとに、ありがとうございました!!
モチベーションを持続できました。

ええ…と、そんな終わり方かよ!と腹が立っているひとも居ると思いますが、
………申し訳ありません。
でもそんな話なんです。

時間経過
関口失踪(S28〜29)

↓(10年?経過)

手紙が届く

関口死亡(9月)

関口宅(10月初)

鳥口の仕事場訪問(10月中旬)

中禅寺宅(10月末)
↓(11月の中旬に四十九日法要増岡は出ない)

薔薇十字探偵社へ榎木津と益田(11月30日〜12月初旬)

木場の勤務地近くの公園(翌日)

仙台へ(12月中旬?)

12月には雪降らないよ、とか仙台の方に仰られそうですね。すみません。
色色現実から乖離しているので、割り切ってお読み下さい。
増岡さんは仕事をしながらなので、機敏に動けません。なのでこんなに間隔があります。
あとでこうして補うって さ い あ く ですね…あ、はははははは.....
読んで下さり本当にマジで有難うございました。
そして映画不滅の恋も見てください。
素晴らしい物語です。
関口の青木への手紙を本当は製作しようと思ったんですが、本家本元のオリジナル、つまりベートーヴェンの手紙のあの情熱に匹敵するものが到底かけるわけはないので、書きませんでした。
つか、そのまま、下に此処にアップしておきます。

ではまた
28/11/05



ベートーベン 不滅の恋人への手紙

七月六日、朝――
私の天使、私のすべて、私自身よ。――きょうはほんの一筆だけ、しかも鉛筆で(あなたの鉛筆で)――明日までは、私の居場所ははっきり決まらないのです。こんなことで、なんという時間の無駄づかい――やむをえないこととはいえ、この深い悲しみはなぜなのでしょう――私たちの愛は、犠牲によってしか、すべてを求めないことでしか、成り立たないのでしょうか。あなたが完全に私のものでなく、私が完全にあなたのものでないことを、あなたは変えられるのですか――ああ神よ、美しい自然を眺め、あなたの気持ちをしずめてください、どうしようもないことはともかくとして――愛とは、すべてを当然のこととして要求するものです。だから、私にはあなたが、あなたには私がそうなるのです。でもあなたは、私が私のためとあなたのために生きなければならないことを、とかくお忘れです。もし私たちが完全に結ばれていれば、あなたも私もこうした苦しみをそれほど感じなくてすんだでしょう。――私の旅はひどいものでした。きのうの朝四時にやっと当地に着きました。馬が足りなかったので、駅馬車はいつもとちがうルートをとったのですが、まあなんともひどい道でした。終点の一つ手前の宿駅で夜の通行はやめた方がよいと言われ、森を恐れるように忠告してくれたのですが、それはむしろ私をふるい立たせただけでした――でも私がまちがっていました。もし私がやとったような二人の馭者がいなかったら、底なしにぬかるんだ、むき出しの田舎道のために、きっと馬車がこわれて、私は道の途中で立ち往生してしまっていたでしょう――エステルハージ(侯爵)は、別の通常ルートをとり、馬八頭で同じ運命にあた由、私の方は四頭立てだったのに。――とはいえ、幸運にも何かをのりこえたときいつも味わうような、ちょっといした満足を覚えました。――さて、外面的なことから本質的なことにもどりましょう。私たちはまもなく会えるのです。きょうもまた、この二、三日、自分の生活について考えたことをあなたにお伝えできない――私たちの心がいつも互いに緊密であれば、そんなことはどうでもいいのですが。胸がいっぱいです。あなたに話すことがありすぎて――ああ――ことばなど何の役にも立たないと思うときがあります――元気を出して――私の忠実な唯一の宝、私のすべてでいてください、あなたにとって私がそうであるように。そのほかのこと、私たちがどうあらねばならないか、またどうなるかは、神々が教えてくれるでしょう。――あなたの忠実な



七月六日、月曜日、夕方――
あなたは、ひどく苦しんでおられる、最愛の人よ――たったいま、手紙は早朝に出さねばならないことを知ったところです。月曜と――木曜、この日だけ、ここからKへ郵便馬車が出るのです――あなたはひどく苦しんでいる――ああ、私がいるところにはあなたもいっしょにいる、私は自分とあなたとに話しています。いっしょに暮らすことができたら、どんな生活!!!!!そう!!!!!あなたなしには――あちこちで人々の好意に悩まされる――私が思った、好意はそれに価するだけ受けたいものです――人間に対する人間の卑屈さ――それが私を苦しめます――そして自分を宇宙との関わりで考えれば、私の存在などなんでしょう。また人が偉大な人物とよぶものがなんだというのでしょう――しかしそれでも――そこにはやはり人間の神性があり――私からの最初の消息を、あなたが土曜日でなければ受け取れないと思うと、泣きたくなります――あなたがどんなに私を愛していようと――でも私はそれ以上にあなたを愛している――私からけっして逃げないで――おやすみ――私も湯治客らしく寝に行かねばなりません――ああ神よ――こんなにも親密で!こんなにも遠い!私たちの愛こそは、天の殿堂そのものではないだろうか――そしてまた、天の砦のように堅固ではないだろうか。――



七月七日、おはよう――ベッドの中からすでにあなたへの思いがつのる、わが不滅の恋人よ、運命が私たちの願いをかなえてくれるのを待ちながら、心は喜びにみたされたり、また悲しみに沈んだりしています――完全にあなたといっしょか、あるいはまったくそうでないか、いずれかでしか私は生きられない。そうです、私は遠くへあちこちとしばらく遍歴しようと決心しました。あなたの腕に身を投げ、あなたのもとで完全に故郷にいいる思いを味わい、そしてあなたに寄り添われて私の魂を霊の王国へと送ることができるまで――そう、悲しいけれどそうしなければならないのです――あなたには、あなたに対する私の忠実さがお分かりだから、いっそう冷静になされるはずです。他の女性が私の心を占めることなどけっしてありません。けっして――けっして――おお神よ、これほど愛しているのに、なぜ離れていなければならないのでしょう。それにしてもV(ウィーン)での私のいまの生活は、なんとみじめなことか――あなたの愛が、私を誰よりも幸福にすると同時に誰よりも不幸にしているのです――この年になると、波瀾のない安定した生活が必要です――私たちの関係でそれが可能でしょうか?――天使よ、いま郵便が毎日出ることを知りました――この手紙をあなたが早く受け取れるように、封をしなければなりません――心をしずめてください、いっしょに暮らすという私たちの目的は、私たちの現状をよく考えることによってしかとげられないのです――心をしずめてください――愛してほしい――きょうも――きのうも――どんなにあなたへの憧れに涙したことか――あなたを――あなたを――私のいのち――私のすべて――お元気で――おお――私を愛し続けてください――あなたの恋人の忠実な心を、けっして誤解しないで。

L 永遠にあなたの 永遠に私の 永遠に私たちの


出:『ベートーヴェン不滅の恋人』青山やよひ(河出文庫)