〜再会〜
「困ったな〜・・・。」
目の前には、土が剥き出しになった大きな崖。
「どうしようかな?」
その上には俺の弟が頑張っているはずだ。
まあ、うちの弟可愛いけどエルフと人間のハーフで、魔法とか使えるみたいで、色々召喚しては魔物と戦って生計とか立ててくれる時もあるから、その辺は良いんだけど…。
単なる人間、若干20!人生これからっ!って感じな俺なのに、どうやってここから弟と合流すれば良いんだ?
事の発端は・・・。
はい、そうです、すいません。俺が原因だと思います。
俺がレイルの後をおもしろ半分でついてったら、狙ってた魔物に逆に狙われちゃって、逃げようとした俺だけ崖から落ちたんだよねぇ〜・・・。
う〜ん、どうしよう。
とりあえず、レイルの方が終るまでここにいようかな?
崖の上が逆光になっているのもあって、俺のいる所からはレイルの様子が全然見えない。
人の弟に怪我させたら、例え魔物でも俺怒るぞ!
せっかく出来た、待望の弟なんだからな!
異母だけどね。
まあ、異母であった方が良かったのかな?
幼い頃から一緒にいたら、きっと二人共今のように笑ってなかったような気がするから。
俺に弟がいる事を知らされたのが、何ヶ月か前。
その直後にその弟とご対面〜!だったけどね。
驚きより先に嬉しかったな。
俺、兄弟欲しかったし。
それも弟か妹。か〜わいんだよね。
腕組みしながら、にこにこと崖を見上げる黄緑色の髪をした男がいたら、俺だと思って。
俺特性のキーホルダー安くしとくから。
まあ、そんな感じで空を見上げるように立っていたら、
急に空が曇った。
と、言うか俺の真上に暗くて大きい影が出来たんだ。
「?」
おかしいな、何だこれ?大きな物体が空から降って・・・・。
ずどんっ!って音を立てながら、俺の目の前に、俺をこんな所へ追いやった張本人。
いや、この場合、張本魔物?
が、立ちながらこっちを見ていた。
・・・・・・ピンチ?
大きな口からおっきな牙を2本突き出し、ふっとい腕とぎょろぎょろした目がすんごい不気味。
うっわ〜・・・。
見た目からして嫌な魔物〜・・・。
そんな事を俺が考えていたのを知ってか知らずか・・・。
よりにもよって、魔物は目の前にいた俺を抱えてその場から走り出したっ!!
「え?え?え?」
「兄さん!!」
遠くでレイルの声が聞こえました。
どーこーに、行くのでしょう?
こういう場合、この魔物の子供の餌になる確立が一番高いよね〜・・・。
昔と違って、俺も大分肝が座ってきたみたいだ、怖いけど怖くないんだわ、何故かこれが。
「ねぇねぇ、離してもらえませんでしょうか?俺、帰りたいんですけど。」
魔物の片手に掴まれたまま、俺は一応自己主張してみた。
案の定無視された。
と言うか、人間の言葉理解できるのかな?
ぐすん。レイル、先立つお兄ちゃんをお許し下さい。
まだ、会ってから一年たってないのにね。
「お前の子供に食われたら、お前の子供を呪うからなっ!」
・・・。ぶーぶー。人間の言葉くらい理解しろよー。
魔物の手の中で揺られる事・・・。
つーか、酔った・・・。
き、気持ち悪い・・・。
俺がうーうー、唸っていたら、いきなり魔物が走るのを止めた。
それだけでなく、警戒して唸っている。
首を一生懸命伸ばして、前を見たら、
あれ?
向こうも魔物の手の中の俺を発見し、嫌そうな顔をした。
酷いなぁ。
「助けてよ〜!キュアンの弟その1!!」
「その1じゃねぇ!」
酷い。茶色い髪をしてバスターソードを構えている男の子は、俺の言葉に打てば響くように返した。
いかにも、そのまま死ぬか?って雰囲気さえ醸し出してる・・・。
「助けてよっ!俺、一般人だよ!?なんの力も無いんだよ!?助けるでしょ?普通!」
じったばったと暴れてみるが、依然魔物は構えを解かないキュアンの弟を警戒してる。
「少しは黙ってろ、死にてぇなら別だけどよ。」
青い目で睨まれた。
それからはあっと言う間だった。
あっと言う間に魔物が倒れて、俺は自力で力を無くした魔物の手から抜け出した。
キュアンの弟その1に、抜け出すの手伝って、って言ったら断られた。
ようやく抜けだし、腹をパタパタとはたいていると、何とキュアンの弟その2まで現われた!
「あ!キュアンの弟その2!!」
「げ、何でこの人いんの?ギル」
「知るか。魔物に捕まってたぞ。」
うわぁ。ちゃんと双子揃ってる!
いいなぁ、双子も良いなぁ。けど、俺にはレイルがいるし。
「ちゃんと良い子に育ってるみたいだねぇ。良かった良かった。」
「頭を撫でるなっ!」
「ちょっ!レイルは何処にいるのっ!?」
二つの茶色い頭をかいぐりかいぐりしてたら、二人同時に逃げられた。
青と赤い目で左右から睨まれちゃった。
そう言えば、ここの兄弟って目が宝石みたいだなぁ。
新しい発見だな!
今度キュアンにあった時に報告しないとっ!
うんうん、と俺が頷いていると、
キュアンの弟その1とその2が二人同時に拳を握り締めた。
何かに耐えているようだけど、何かあったのかな?
「どうしたの?」
「どうしたじゃねぇよ、レイルは何処行った。」
レイル?レイルは・・・。
「しまったあぁ!!」
崖の所に置いて来ちゃったんだっ!!!
迎えに行かなきゃ!!
でも、ここ何処っ!!?
オロオロする俺に対し、キュアンの弟二人はため息を付き、何かを取り出した。
キュアンの弟その1の手の平にある、小さな黒い物体は、次第に大きくなり、パタパタと自ら空を飛び出した。
って、言うか、可愛いっ!
何これっ!?
「うわ、可愛い!何?この黒いの。生き物?」
「ルクだよ。レイルの召喚獣の1つ。ギルが貰ってきたんだ。」
ひよこ饅頭のような真っ黒いゼリーみたいな体に、半透明な羽根が付いてて、パタパタと飛んでる。
「これなら、レイルの居場所がわかんだろ。とっとと失せろ。」
「レイルにも会いたいけど、まだ仕事が残ってるし、さっさと行ってね?」
うわー、うわー。可愛い。
あー、移動し始めた。
「うん、それじゃあキュアンによろしくね!バイバイ!気を付けてねぇ〜!」
キュアンの弟その1その2に大きく手を振りながら、俺はルクの後を歩き出した。
いや、本当に可愛いなぁ、これ。
しばらく歩いていたら、レイルと合流できました。
レイルは半泣きになっていて、ちょっと可哀相だったかも。
ごめんねぇ、勝手にどっか行っちゃって。
こんなお兄ちゃんを許してね。
町の宿屋に戻って、詳しい話を聞かせたら、レイルもキュアンの弟その1その2に会いたかったって言った。
そうだね〜、みんな元気かな?
今度、リデル方面に行ってみようか?って言ったら、レイルが歳相応に頷いて、可愛かったよ。