「白い蛇」と、言うらしい。


キャスト
 
     召使い : ファルマ・ファールス  小説登場予定なし。

 3匹の魚  :  リク   小説登場予定なし
             ラティス  小説登場予定なし
               リオン  大部屋にこそっと・・・。

アリの王様  :  クガイ  fateに登場
   白アリ  :  ハクロ  fateに登場

       子ガラス  :  レアン MIND SPIRITに登場
             カイン  どっかにいます。
                   ギル  大部屋その物語に登場

    王女 : カノト  どっかにいます。
姫の付き人 : マトリ  どっかにいます。




ある所に、お城の召使だったファルマと言う男がいました。
 
ファルマが前にいたお城の王様は、おかしな食事を取る人で、
毎日お昼になると蓋を被せた深皿が置かれ、。誰もいなくなってから
王様は一人きりでその皿から食事を取っていたのです。
勿論、誰も王様の食べている料理を知る人はいません。
 
そんなある日、ファルマは王様から深皿を下げるように言われました。
王様がいつも何を食べているのかを知る、良い機会です。
ファルマは、痛む良心を抑えながら、深皿を自分の部屋まで運び、その中身を見たのです。
深皿の中に入っていたのは、白い蛇でした。
一瞬、呆気に取られたファルマでしたが、その白い蛇を見ていると、何故だか食べたくなってきました。
「これは、王様の食事だ」と、心の中で食べようとする心を押し留めようとするのですが、
体はその意思に反して、白い蛇に手が伸びていきます。
そして、白い蛇の肉がファルマの口に触れたのです。
 
 
「やはり、その事が原因だったんだろうな・・・。」
 
一頭の馬の背にまたがり、ファルマは行く宛ての無い旅に出ていました。
 
ファルマが白い蛇に触れた次の日、お城では大きな騒ぎが起きてしまいました。
お妃様が指輪を無くしてしまったのです。
しかも、その容疑はファルマに降りかかって来ました。
もちろん、指輪を盗った覚えの無いファルマは慌てましたが、王様たちは聞く耳を持ってくれませんでした。
自分が犯人で無いなら、本当の犯人を次の日までに捕まえないと、お前を死刑にする。
と、言われてしまったのです。
 
誠意を尽くして来た人たちに疑いの目を向けられ、ファルマは酷く落ちこみました。
仕事をする気力も無く一人中庭に出てみると、水辺に鴨が数羽、羽根を休ませていました。
何とも無しに、ファルマがそれを眺めていると、急に鴨が喋り出したのです。
「胃袋が重たい、妃の指輪を食べてしまったんだ・・・」
ファルマは悩みましたが、本当の犯人を王様の前に出しました。
その褒美として、ファルマは一頭の馬と旅金を貰い、城を出たのです。
 
 
 
白い蛇に触れたことで、動物と会話が出来るようになったファルマは、
王様から貰った一頭の馬と話しをしながら、人があまり通らない街道を歩いて行きました。
 
たまたまファルマが大きな池の側を通った時でした。
葦の茂みに3匹の魚が引っ掛かっていました。
 
「う〜ん!う〜ん!尻尾が抜けない〜!!水の中に戻らないと、干からびて死んじゃうよ〜!!」
「しくしく・・・元はと言えば、ラティがこんな所に来たいって言うから・・・。」
「何で、俺に所為になるの!?最初に草に引っ掛かったのはリオンで、俺じゃないっ!!」
「うわ〜ん、ごめんなさーい!!」
 
びちびち、びちびち、
葦の茂みから抜け出そうとしている、オレンジと青と緑の魚は、一生懸命もがいていました。
 
「大丈夫か?」
 
何だか可哀相に思えたファルマが、馬から下り、魚たちを順に葦の茂みから池にかえしてやりました。
すると、魚たちは喜び、今度は池の中で跳ねながら、
 
「ありがとう!」
「ありがとう!このご恩は忘れないから!」
「ありがとう!いつか恩返しをするね!」
 
と、嬉しそうにファルマにそう言いました。
そんな魚たちを、微笑みながら見送ったファルマは、
魚たちが完全に見えなくなると、また馬に乗り、街道を進んで行きました。
 
 
 
次の日、
ファルマが、街道から外れた場所で昼食を取っていた時でした。
木に繋いでいる馬の足元から、何か声が聞こえて来るのです。
「・・・おい。邪魔なんだよ。」
馬の足元をよくよく見ると、そこには王冠とマントを付けたアリの王様がギロリとファルマを睨んでいました。
 
「・・・え?」
「てめぇの、馬の脚が邪魔なんだよ。前に進めねぇじゃねぇか。」
「あ、すまない。すぐに退かすから、ちょっと待っていてくれ。」
 
黒いアリの王様に言われ、ファルマはすぐに、なるべくアリを踏まないように
静かに馬を退かしました。
 
「ふん」
「クガイ様!お礼を言わなければダメですよ!?
ありがとうございます。旅の人。このご恩は一生忘れません。
いつか必ず恩返しをさせて下さい。」
「いや、そんなこと。」
 
王冠とマントを付けた王様アリの後ろから来た一匹の白いアリが、
ファルマの前で深深とお辞儀をし、丁寧にそう言いました。
 
アリの進路を勝手に塞いでしまった自分が悪いと思っていたファルマは、
その白いアリの丁寧さに慌てました。
しかし、白いアリはファルマの様子など気にもせず、
勝手に先に進んでしまった王様アリの後を、一生懸命に追っていってしまいました。
 
アリの一行が見えなくなると、
ファルマはまた馬に乗り、街道を進みました。
 
 
街道を進んで行き、ファルマは暗い森に入っていきました。
 
すると、どこからか声が聞こえてきます。
 
「いい加減、てめーらのお守なんざご免だな!」
「ちょっと、大人がそんなこと言って良いの!?」
「俺はお前等の親じゃないんでね。」
「確かにそうだけど、アンタに見放されると、俺ら死ぬんだけど。」
「そうだよ!子供を殺す気!?ギルも何か言ってこのじじいを引きとめてよ!」
「何でだ?むしろありがてぇ。」
「ほらな、つーわけだ!ここでおさばらだな!」
「ちょっと!この人殺しー!!」
「お前らはカラスだろーが!」
 
ちゅどーん!!
 
森の奥から、そんな叫び声と火柱が上がりました。
ファルマは気になり、火柱が上がっている所へ近づいて行きました。
 
「あんの、赤髪のじじぃ!僕たちを本気で殺す気!?」
「もともと、天命には俺らを育てるつもりは無かったんじゃねーの?
つか、巣から落とされたし。
俺ら自力で、まだ餌も取れねぇんだぞ?」
「まあ、このままじゃ飢え死にが妥当か?」
「悠長に何いってんの・・・。餌を取る所か、飛ぶことさえ出来ないんだよ?」
「じゃあ、他者の餌か、俺ら。」
 
「あの・・・。」
 
『何?』
 
声をかけたファルマは、声を合わせた3匹の子ガラスの側に寄っていきました。
 
「私はファルマと言う旅の者だが、こっちから火柱が上がったのを見て・・・
どうしたんだ?」
 
ファルマのその声に、キラーンと目を光らせた2羽がいましたが、
人の良いファルマは、それに気付きません。
 
「それがさ、育ての親にたった今見捨てられて、僕たち今すんごくお腹が減って死にそうなんだ。
何か食べ物持ってない?」
 
「食べ物が無いなら、金目のもんでもかまわねぇんだけど?」
 
茶色と銀の目をした子ガラスに側に寄られ、ファルマは困ってしまいました。
食べ物もお金も、ファルマは欠片すら持っていないのです。
道行く困っている人々に、助けになれば、と食べ物やお金を渡していたら、
あっという間に、全てを使い切ってしまったのです。
 
「・・・すまない、食べ物もお金も、少しも残っていないんだ。
他に何か、私が持っているものであれば、渡す事が出来るんだが・・。」
 
「じゃあ、馬。」
 
悲しそうな顔のファルマから、少し離れた所にいた藍色の目をしたカラスが、
間髪いれずにそうファルマに言いました。
 
「何も無いんだったら、馬肉よこせ。」
「・・・。あの馬を?しかし、それは・・・。」
「あ、いーねそれ。馬刺しかぁ・・。美味しそうだね。」
「確かに、肉付きよさそーだし。」
「え?あの、ちょっと待ってくれ。まだあげるとは・・・」
「あんたの馬だろ?あんたがくれるっつんだろーが。」
「しかし、今まで一緒にいたのを、そう易々とは殺せない。」
「馬一匹で、僕たち3匹の命が助かるんだよ?」
「しかし、お前たち3匹とも強そうだが。」
「うわ、どう言う意味?」
 
ファルマがチラリと馬を見れば、
馬は心得ているのか、ファルマを見て小さく首を縦に動かしました。
自ら、カラスの餌になるのを望んでいるようです。
ファルマはその様子に決心しました。
 
 
美味しそうに馬肉を食べる子ガラス3匹を、
ファルマは複雑な思いで眺めていました。
しばらくして、満腹になったのか、子ガラスたちがお礼を言って来ました。
「ありがと、おかげでお腹いっぱいだよ。」
「一応、この恩は覚えておくから。」
「どうも。」
ファルマは、3匹の子ガラスに分かれを告げると、また街道を歩いて進んでいきました。
 
 
やがて、ファルマは大きな町に辿りつきました。
 
町では今、このお城のお姫様の婚約の話しで持ち切りでした。
何でも、お姫様と結婚したい人は、お姫様の出す課題を成し遂げなければならないのです。
しかも、その課題に失敗すると、命を失ってしまうらしいのです。
今まで、何人もの王子たちが挑戦し、そして亡くなって行きました。
 
そんな噂と、実際にお城の前に立ててあったおふれを見て、ファルマは
 
「・・・面白そうだな。」
 
と、思い、成功すれば、お姫様と結婚。
失敗すれば、死んでしまう。
そのお姫様の出した課題に挑戦してみることにしました。
 
 
兆戦してみたいと、言ったファルマを、
お姫様のいるお城の者は、海辺へと連れて行きました。
そして、一つの小さな指輪をファルマに見せると、それを海の中へ放り投げ、言いました。
「今投げた指輪を取ってくるように。もし指輪を持たずに海から上がってきたら、また海へ突き落として、そこで死んでもらうぞ。」
 
そうして引き上げていった城の人達がいなくなると、
海辺に立つファルマの前に、
あの、葦の茂みに引っ掛かっていた3匹の魚が現われました。
その中の緑色の魚が、口に加えていた貝殻をファルマに渡すと、
3匹はニコニコ笑いながら海の中に帰っていきました。
ファルマが渡された貝を開くと、そこにはあの指輪が入っていました。
 
 
「え?課題をクリアした人がいる?」
「おう。なんでも海に放った指輪を拾ってきたらしいぜ?
どうすんだよカノト。これでお前は結婚しなきゃなんねーぞ?」
「うるさい、笑わないでよ。冗談じゃないわ、何それ。
そんなこと出来る人が入る訳ないじゃない。人間なの?その人。」
「人間だってよ、しかも一般人。」
「一般人!!?嫌よそんなの!金持ちじゃなきゃ、嫌!!」
「・・・嫌って言われてもなぁ・・・。」
「いーから!次の課題もクリアしないと、ダメだって言ってよマトリ!」
「はいはい。わっかりましたよー。で?次の課題って?」
 
 
「・・・庭にばら撒かれた、黍十袋を全て拾う?一晩で?」
 
一人、草むらの中に立たされたファルマは、
隣に置いてある空の十の袋を見て、困り果てていました。
取り合えず、一つでも多く、と黍を拾っていると、
前に、馬の脚が邪魔だから退かせと言った、アリの王様が現われました。
 
「ついに、私達の出番ですね!いつかのご恩、ここで返させていただきます。」
 
そのアリの王様の隣にいる白いアリがそう言うと、
一体何処にいたのか、地面一面黒く染まる程の大量のアリが現われました。
 
あまりの多さに、ファルマが動きを止めている間にも、
アリたちは一生懸命に黍を運び、何と一晩のうちに全てを拾いきったのです。
 
 
「何ですって!!?拾いきった!?」
「おう。すげーもんだな。お前、諦めた方が良いんじゃねぇの?」
「・・・。一体、どんな人間なの?」
「あ?興味ある?」
「当たり前じゃない。普通は出来ない課題を出してるのよ?それなのに・・・。」
「んじゃ、ちょっと顔でも見てみれば?」
「・・・そうね。」
 
 
こうして、ファルマはカノト姫の前に連れて行かれました。
出される課題の方にしか興味を示さないファルマは、
成功すると、「カノト姫と結婚」 と言うことを忘れています。
元々嘘をつけない性格の上に、とんでもないお人好しです。
ファルマは始めて会ったカノト姫に、微笑みながら自己紹介をしました。
 
「・・・よし。OKv」
「待て。何がOKだ、カノト」
「?」
 
唐突に機嫌の良くなったカノト姫の話しを、
ファルマは不思議に思いながら、聞いていました。
 
「最後に、もう一つだけ課題を出させて欲しいの。
命の林檎。これを私の元に持ってきて。
大丈夫よ、貴方なら出来るから。だぶんv」
 
「は、はあ・・・。」
 
カノト姫の笑顔に、何故かファルマは曖昧な返事を返してしまいました。
 
 
 
「さて、命の林檎か。一体何処にあるんだろうか・・・。」
 
一度お城を出たファルマは、命の林檎をどうやって捜し出そうかと、悩んでいると、
 
「よお。」
 
と、あの助けた子ガラスの1羽が、くちばしに何かを咥えながらやって来ました。
子ガラスは、持ってきた林檎をファルマに渡すと、すぐに何処かに飛んでい行ってしまいました。
子ガラスが持ってきた林檎は、命の林檎でした。
 
 
「よっしゃ!思ってもいなかった男ゲット!」
「・・・可哀相にな、あのファルマって奴・・・俺、同情しちまうよ。」
「なーに、言ってるのよ。一国の王になれるのよ?誰もが羨む生活が出来るのよ?
これのどこに同情するのよ?」
「お前と結婚する事に同情。」
「あんた、本当に失礼ね。」
 
 
こうして、ファルマとカノトの結婚式が挙げられようとしていました。
が、
慌てたのは、当の本人であるファルマです。
「成功すれば結婚。」
と言うことをすっかり忘れていたファルマは、どうしようかと思い悩みましたが・・・。
 
自分に宛がわれた、部屋の窓の鉄格子を見て、
何となく逃げるのを諦めたようでした。
もともと、そう言う約束事と言うこともあって、
ファルマはそのままカノト姫と結婚し、国の王様になりました。
 
 
めでたいんだか、めでたくないんだか・・・・。
 
おわり。
 
 
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