キャスティング

 

 

桃太郎 ・カイエン ギルの父親。
犬   ・天命 ギルの師匠。
雉   ・御名 カイエンと天命の仲間。
猿   ・キュアン ギルの兄。
鬼   ・ギル 大部屋やあちこちに登場

 

 

 

 

 

 

 

 

昔々、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯へ行きました。

おばあさんは川上から流れてきた大きな桃を拾い、家へと持ち帰りました。

早速、帰ってきたおじいさんと共に包丁で大きな桃を切ってみると、

中から男の子が出てきました。

桃から産まれた男の子に、おじいさんとおばあさんはカイエンと名づけると、強く大切に育てました。

丁度その頃、町では鬼が暴れていて、町人たちは大変困っていました。

その事を知ったカイエンは、おばあさんにキビ団子を作って貰うと、鬼退治へと向かいました。

 

鬼退治へ鬼が島に向かうその途中、一匹の猿がカイエンの前に現われて言いました。

「よぉ!そのキビ団子くれねぇか?」

「・・・・・・。」

カイエンが黙ったまま猿を見ていると、

「くれんのか?くれねぇのか?」

少し怒った口調で猿に言われ、カイエンは袋からキビ団子を一つ取り出し、猿に渡しました。

「ありがとよ。お礼に鬼退治に連れてってやるよ。俺様の名前は天命だ、覚えとけよ。」

そう言うと猿は歩き出しました。

何時の間にか、鬼退治に連れて行く自分が連れてかれる立場に逆転してしまったカイエンは・・・・。

「・・・。」

結局は何も変わらないので気にせずに、猿。もとい天命の後ろを歩いていきました。

 

しばらくすると、今度は犬が現われました。

「すみません。良い匂いがして来て…。キビ団子、一つ頂けませんか?」

無言でキビ団子を渡すカイエンと、“ありがとうございます”と頭を下げる犬を見ながら、天命が言いました。

「お前も鬼退治に行かねぇか? 面白いぜ?」

「鬼退治?鬼退治に行く途中なんですか? それなら是非私も連れていって下さい。私の名前は御名と言います。よろしく。」

犬の御名が増え、三人で鬼退治へと進むカイエン達の前に現われたのは雉でした。

「…キビ団子が欲しいのだが。」

カイエンからキビ団子を貰い、それを食べた雉は礼を言いました。

「ありがとう。私は名はキュアン。何かお礼がしたいのだが…。」

「・・・・・。」

またも無言でいるカイエンに変わり、天命が雉に話しかけます。

「それじゃあ、お前も鬼退治に来るか?」

こうして 猿の天命と犬の御名と雉のキュアンと共に、カイエンは鬼が島へと乗り込みました。

 

 

鬼が島に辿りついた四人は、島にある洞窟の奥に向かい進んでいきます。

途中、鬼の手下が四人を食い止めようと襲い掛かって来ましたが、その全てを四人はあっさりと返り討ちにし、鬼の手下はすぐに逃げて行きました。

「見つけたぜ、鬼!!」

洞窟の奥にいた鬼に天命が声を掛けると、

「卑怯だ!どうしてその四人で来んだよ!?」

と、何故か鬼は混乱してそう言いました。

「私達が出会ったのは偶然ですよ。」

にっこりと笑う御名に、

「嘘付け。ぜってー仕組んでやがる。」

と、じりじり後ず去りながら鬼が言い返せば、

「仕組んでなどいない。」

と、キュアンが鬼の言葉を直しました。

「そーいや、お前。名前は?」

気楽に問い掛ける天命に、

「……ギル。」

苦い顔で鬼が答えます。

「ギル、と言うのですか。」

「初めて知ったな。」

「帰ったら皆に、お前の名前教えといてやるよ。」

「……死ね。」

最後に呟いたカイエンの言葉が終わるや否や、四人は同時に飛び出しました。

 

・・・洞窟中に、ギルの悲鳴が響きます・・・。

 

「・・・うぅ〜…。」

「何、悲しんでんだよ。殺されなかっただけましだろーが。」

「生きていると、その内良い事がありますよ。」

ぼろぼろになって倒れているギルを慰める天命と御名。

カイエンとキュアンは後ろで帰り支度をしています。

「また町を襲ったりしたら、もっと酷い事になりますからね?注意して下さいよ?」

「…はい・・・。」

御名の優しい忠告に、ギルは泣きながらも返事をしました。

帰り支度を終えたカイエンが、倒れ込んでいるギルの前にキビ団子が入っている袋を置き、

「・・・帰るぞ・・・。」

と、一言三人に告げると、四人は洞窟から去っていきました。

今だ倒れ込んだまま動けずにいるギルは、心の中で、

(もう、二度と来んじゃねぇ!!!)

と、強く。 本っっ当に強く願っていましたとさ。

 

めでたし・めでたし。

はいっ、戻る。

桃たろ。