こ こが知りたい遺言・相続手続き


5-3 事 業承継対策(代償分割)

  • 代償分割の概要
長男を後継者に指名 し、会社事業や農業を継承させたいという場合には、その事 業用の不動産や株式、また農業用地の分散を防ぐ意味で、長男にそれらの財産を相続させたいということがあります。結果として、長男が多くの財産を相続する ことになります。このように、特定の相続人が、ある財産を相続で取得したとき、他の相続人にはその代償とし て金銭又は代物により支払うという遺産分割の方法を代償分割と言います。

相続税は 各相続人 が相続した財産 額に応じて支払うものですが、特定の相続人が多く相続したから、他の相続人の相続税についても支払 うといった場合は、相続人間で金銭の贈与があったものとみなされ、贈与税を支払わなければならなくなります。そこで代償分割を利用することにより、贈与税 を支払わなくても済むようにするこ とが可能です。代償分割を活用する場合は遺産分割協 議書に利用したことを書いておかなければなりません。

記載例:
● 相続人何某は、被相続人の遺産をすべて相続する。
● 相続人何某は、その取得した相続財産の代償として、相続人何某
    に対して現金何万円を本協議書の調印と同時に支払うものとする。
  • 代償分割の場合の相続税課税価 額

● 代償財産交付を受けた相続人
      (相続または遺贈により取得した現物の財産価額)
                                          +(交付を受けた代償財 産価額)

●代償財産交付した相 続人
     
(相続または遺贈により取得した現物の 財産価額)
                                               -(交付をした代償財産価額)

代償財産評価額は、原則は実際の支払い金額でですが、代償分割の対象となった相続税評価額と時価との割合比で評価することも可能です。ど ちらか有利な方を選ぶことが可能ですが、明らかに相続税の負担を不当に軽減しようという意図が認められる場合には、支払い金額が適用されます。
  • 相続税軽減事例(代償債務の評価方法の違いによる比較)
● 実際の支払金額を適用

相続人は妻・長女・次男の3人、相続財産は相続税評価額で4億円、時価5億円の土地とします。そして妻が相続財産の全て、相続税 評価額で4億円の 土地を相続し、長女・次男には時価5億円の法定相続分1.25億円をそれぞれ支払うものとします。

この場合、妻は相続財産4億円、代償債務2.5億円、課税価額1.5億円、配偶者特例控除1.6億円、相続税額は0、子供は代償 債権1.25億円、課税価格1.25億円、相続税率40%、控除額1700万円、相続税額 3,300万円、相続税額合計6,600万 円なります。この方法では妻の課税価額(1.5億円)は、配偶者の税額軽減の特例1.6億円全て を使いきれていないということになります。

●相続税評価額と時価 の割合比を適用

この場合、(実際の支払い金額2.5億 円)×(土地の相続税評価額4億円÷土地の時価5億円)=2億円となり、妻は相続財産4 億円、代償債務2億円、配偶者特例控除1.6億 円、課税価額4,000万円、相続税率20%、控除額400万円、相続税額は400万円、子供は代償債権1億円、課税価格1億円、相続税率 30%、控除額700万円、相続税額2,300万円、相続税額合計5,000万円とな ります。妻の課税価額は配偶者の税額軽減特例を使いきり、1,600万円の 節税となります。

  • 贈与税軽減事例

相続人が長男・次女の 2人で、相続財産の時価5億円の場合、ひとりに付き2.5億円が相続税評価額、相続税率40%、控除額0.17億円、相続税額0.83億円、相続税合計 1.66億円です。

●長男が総額の 99%、次女が1%を相続した場合

5億円 の遺産に対する相続税額は144.6百万円です。そして5億円のうち4.95億円を長男、5百万円を次女相続し た場合の相続税額は、長男は144.6百万円×4.95億円÷5億円=143.154百万円、次女は144.6百万円×5百万 ÷5億円=144.6万円となります。次女にとっては、5百万円相続して144.6万円の税金とられてしまうのでは納得がいかないでしょ う。そこでこの税金も長男が負担するという話になるのですが、これは単純に長男が負担して
しまえば贈与税の課税対象となってしましいます(150万円 以下は10%で14万円)。

そこで長男は税金代として150万円を代償財産として次女に交付します。すると長男の税額は144.6百万円× (4.95億円−150万円)÷5億円=142.72百万円、次女は144.6百万円×(500万円+150万円)÷5億円=187.9万円となります。 この場合、長男からもらった150万円を187.9万円から引いても次女37.9万円の赤字となるのですが、この不足額を長男に負担 してしもらっても、贈与税の基礎控除は110万円ですから、贈与税はかかりません。



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行 政書士  くぼあきら