2007ニュージーランド遠征

期 日:平成19年4月9日(月)〜18日(水)

場 所:ニュージーランド:ワンガレイ・クライストチャーチ・ウェリントン

報告者:長谷川行光


今年初の海外遠征は緑と羊とステーキの国?ニュージーランドである。
ニュージーランド糸東会のボブ先生とは長い付き合いになる。
昨年の糸東流世界空手道選手権大会に出場したあとのホームステイでは長谷川スクールが迎えた経緯もあり、親睦を深めている。そのボブ先生の要請もあり、遠征が決まった。


4月9日(月)PM6時15分、成田発オークランド行のJAL便に搭乗。今回も単独セミナーである。
この週末にはニュージーランドオープン大会も視察予定である。

オークランドへはクライストチャーチ経由でおよそ13時間で到着。
ちなみにニュージーランドの漢字は新西蘭と書き、略して「新」というらしい。
今回で4度目の「訪新」である。



出国手続きでは、今年の3月1日からテロ対策で100mlを越えるペットボトルなど液体の持ち込みが禁止されていた。液体には歯磨き粉やジェルなども含まれていることに驚いた。

早速、搭乗手続きのX線のところで、国内で買ったのであろう、高級ウイスキー数本を没収される外国人がかわいそうであった。「オー、マイガーッ!!」
http://www.narita-airport.jp/jp/whats_new/070209.html

さて、楽しみの機内食はビーフステーキorシーフードドリアで、迷うことなく前者を選ぶ。
退屈な機内での重要な過ごし方でもある、エンターテーメント映画鑑賞は、4/20公開予定のロッキーザ・ファイナルとハッピーフィートであっという間にすごせた。驚いたことに最近のは各座席にタッチパネル式ディスプレイで、それぞれが独立しているため、巻き戻し、早送り、一時停止機能もついているので、どんな場面も見逃さないところがうれしい。

4月10日(火)AM11:00 オークランドに到着後、ボブ先生の出迎えを受け、そこから車で2時間あまりのボブ先生宅へ。夜はオリタ夫人が肉厚ラムステーキとワインを支度していただき、疲れを癒すかのようにおいしくたいらげた。いつも思うが、日本でラム(ジンギスカン)料理といえば、ちょっとにおって、癖があるように思うが、こちらは全くそんなことはなくおいしいのだ。

4月11日(水)晴れ
8時起床。昨夜の雨も上がり、緑の自然に囲まれたここワンガレイの朝は本当に空気がうまい。裏山の木々から立ち上る朝もやの向こうに、さらに浮かぶ青い空に向かって深く深呼吸・・・心が洗われる。
ブレイクファーストはいつものトーストに、紅ティー、
「欧米か!」
・・・さて、いよいよ指導が始まる。

ここから2日間、指定形とそれぞれの自由形の指導を行う。
午前、2時間半、午後3時間、みっちり、いい汗をかいた。
細かな技の意味を教えながら指導すると飲み込みが早い。
あとは忘れずに回数をこなせればいいのだ。

   自然の中、食べ物も空気がおいしい

稽古の後、シャワーを浴び、ふかふかのソファーに座ってのキウイビールがたまらない。
こちらではニュージーランドのことを「キウイ」と呼ぶ。
夕食までの時間をリビングで団欒。
この時間帯、こんなにゆっくり出来るのも日本では味わえない、貴重な体験だ。

なんちゃって!
あくる日、タクシーでダウンタウンにある、ジャパニーズレストランに行った。
驚いたことに、タクシーの後部座席でも皆、シートベルトをしていた。
こんなところも日本とは違うなと思い、それを見た私もなにげにシートベルトをつけた。というよりせざるを得なかった。と同時に少し恥ずかしかった。 近いうち、日本でも後部座席シートベルト義務になるらしい。

ここのレストランでは日本人が経営しているとの事前情報であったため、メニューは私に託されていた。
2日ぶりに使う日本語で、「こんばんはー!」と言うも返事が返ってこない?
別の東洋人に「おすすめありますか?」も通じない。
やはり・・・韓国人が経営するなんちゃってジャパニーズレストランだった。
結局、注文も英語。でも肝心の味は悪くない。天麩羅の揚げ方にしても、ギョウザも日本のそれとは違うがカリッとしていてうまいのだ。客は皆、外国人ばかりだが、やはりどこに行ってもジャパレスは儲かるのだろうと思った。
       ジャパニーズレストランで

ワインも程よく効いて、満腹。
店を出るとき「カムサムニダー!」と心の中で思ったが、英語であいさつした。
ニュージーランドは南半球である為、当然星空が日本とは違う。
夜空も本当に黒いので、大きく輝く星の周りにちりばめられた小さな星までも本当にきれいで思わず見入ってしまう。
「うわ〜、まるで星の宝石箱や〜!」と言いたかったが、ツッコミがいないのでまた心の中にそっとしまっておいた。
キウイに教えてもらったサザンクロスを見ながら、日本の方向に向かって家族や友人の顔を思い出す。なんか頑張ろうという気持ちが湧いてくる。明日も気合いだ!

食文化の違い
4月13日(金)。ここ北島のワンガレイから南島のクライストチャーチまで飛行機で移動。ニュージーランドオープン大会視察のためである。

オークランドからクライストチャーチまでは約1時間ほど南に下る。当然南半球であるから、この時期、南下するほど寒くなるのではあるが。本当に秋から一気に冬になってしまった気がした。冷たい南風?が肌を刺す。町行く人はみなジャンバーやコートをはおっていた。

散歩を兼ねて近くのSUB WAYに買い物。
&小腹がすいたので大会に出場する生徒たちとバーガーショップで軽食。と言ってもやはり体格の違いか?食べる量が違う。20pはあるビッグサンドをおいしそうに頬張っている。「Youたち、さっき昼食のMacハンバーガー3個も食べたばかりだろうがー!」
日本の同世代と比べても明らかに食文化が違いすぎる。外国人の体格に勝ることは容易ではないと思った。
スポーツ選手にとって食べることもトレーニングなのだ。まあ、きちんとカロリー消費したトレーニングしていることも前提ではあるけれど。
これに甘んじると、「メタボ症候群にウェルカムされるぞ!気をつけろ!」
         食欲旺盛な少年たち

夜は、近くのレストランであっという間にディナー。
今夜もフィレステーキ。またしても肉厚で肉汁が滴り、申し分ない。しかも\1,300と価格にも満足。やばい、あきらかに食事のリズムが狂ってきた。これを機会に強い意志をもって肉体改造するしかない!。とも考える。
遠征の中間時点に来たため、日本から持ってきたとっておきの真空パック漬物を刻み、冷蔵庫に。あとはおーいお茶があればいい。


ニュージーランドオープン大会
4月14日(土)〜15日(日) の2日間大会が開催された。
来賓という形で招待を受けた為、ブレザーに着替え8時に試合会場であるYMCAにタクシーを走らせる。
が、しか〜し、9時開始予定だというのに人がいない。
会場の体育館には関係者らしき人が3,4人。でもコートはない。「本当に大会会場?」と思ったが、少しずつ人が集まってくる。どうやら間違ってはいないようだ。そしてマットも運ばれてきた。

「今から会場作り?まじで??・・・」しかも選手と先生方が一緒になってコートを作っているのだ。そう、3年前にも同じような光景があったので、これもキウイスタイルだな。とすぐに納得。

結局10時過ぎ、準備も整いニュージーランドオープン選手権が開幕。
大会初日は14歳〜大人までの各階級の形&組手試合だ。

形はやはり、パワーを意識した、オーバー(無駄)な動きと息吹が多く、結構自分流にアレンジしているようだ。
特にアーナンは全流派の上位陣は準決勝か決勝で必ずと言っていいほど用いる、はやり形だ。それにしても同じアーナンでもまちまち。これを判定するほうも難しいほど。
           団体形分解

組手は昨年世界5位で、重量級の選手に期待ていたのだが、バレーボールに行ってるとのこと?。
「なぜバレーっ?って思ったんデ・ス・ヨ! 」
「そしたらぁ、あっそう!」
「彼女バレーボールでもナショナルチーム選手なんだって!」
「はぁ〜い、ついまて〜ん!」
・・・そんなことは思わなかったが・


いよいよ私の演武の時間を確認。午前の終わりに演武ということなので、道着に着替えウォーミングアップ。しかし、一向にお呼びがかからず、「またー?」と思っていたら。やっぱり、ビンゴ!!
昼食後にやるそうだ。やっぱりね。これもキウイスタイル。

海外にきたら、絶対に日本と同じ感覚でいては生きていけない。
イライラしたほうが負けである。

ようやく出番だ。紹介を受け、拍手をもらいコートに立つ。気分は上場!

            連盟レアル会長と

今回は指定形のセイエンチンと自由形のマツムラバッサイを演武。
静まり返った会場から、道着の音だけが響き、観客全員がこちらに注目していることが良くわかる。2つの形とも、いつにないほど上出来。そしていつまでもこの場にいたいような心地よさだけが残る。

最近思うことがある。
試合前、体が思うように動かなく、たとえ調子が悪かったとしても試合の中での心の調子でパフォーマンスがかわる。
試合は体調だけではなく、心の調子で決まる要素が高い!
逆に試合前、調子が良くても結果が出ないときにはそこに問題があるのだ。
試合の結果ばかりを考えてしまうことより、今回のような「気分上場」で出来ることが大切だと思う。

大会2日目は13歳以下の子供達の大会だ。
表彰式のメダル授与のプレゼンターとして協力依頼があったので、喜んで引き受けた。

   
               出口先生と                   ボランティアで大会運営していただいた日本の皆様

ランチタイムにクライストチャーチ在住の出口先生のお宅に招待されたのだが、これがものすごい豪邸で驚き。
敷地が200m×400mで中には羊を飼い、ゴルフの練習場も備えてある。
上品な奥さんの食事のもてなしを受けたが、急な訪問にも関わらず、おいしい和食を用意していただいた。もちろん、ご飯と味噌汁はおかわり。これがまたうまい!。久々の和食に胃もすっきり。
その後、クライストチャーチの街中を案内、散策し、本当に親切にしていただいて感謝です。自分も、人に感謝されるようになりたいと思った。


夕方、会場からホテルに戻るタクシーを待っている際の夕日がまたいい。
山が無い(遠い)クライストチャーチでは、真横に近い地平線から差込む夕日が作る影がおもしろい。※注)写真の影は実際の足の長さではありません。

今夜は現地の出村先生と、大会運営のボランティアの日本人の人たちとチャイニーズレストランでディナー。考えてみればこの4日間、全く日本語で会話していなかった。
口が疲れるほど会話をして、違った意味で楽しいひと時を過ごせた。
でもやはり、感じたことは「もっと英語を話せれば旅は3倍おもしろくなる!」


サルサバーを探せ!
クライストチャーチ最後の夜なので、地元の空手の先生にシティに連れて行ってもらうことに。
最近始めたサルサを踊ってみたくなったのだ。
サルサバーはあるかと尋ねると、日曜日はやって無いらしい。仕方なくバーで飲んでいると、なんとサルサができる女性がいたので、話をしてみる。しかも、店の人にサルサの曲をリクエストするもないらしい。でも違うラテン系の音楽で勝手にサルサを踊る。いい汗をかけて一安心。先週の日本でのレッスンの復習をする。
やっぱり気持ちいい!

セミナー
4月16日(月)〜17日(火)大会終了後の2日間はセミナーを行った。
初日はクライストチャーチでのオープンセミナー。
今回は指定形ということで、午前中にセイエンチンを、午後にバッサイダイをそれぞれ2時間ずつ、合計4時間、大会後の疲れをよそに精力的に行う。
参加者は大会上位に残った選手と指導者が30名ほど。


指定形はやはりビデオでしか見たことがないらしく、みな真剣に見、耳をかたむけてくれた。もちろん私の聞き取りにくい英語だが、シンプルすぎる単語と実際に見せるという、ボデェランゲージで、それなりにできるものだ。
本当に基本が一番重要であることを再認識してくれたようで、次回レベルアップしていてくれることを期待しよう。
        オープンセミナー参加者と

緊急事態発生!
セミナー終了後、急いで空港に向かう。次のセミナー先であるウェリントンへ移動するためである。そして事件が起こった。
17:30発の便がなかなか飛ばない。来る時も平気で1時間遅れたので「まただな!」ぐらいな気持ちでゲートで待つ。しかし2時間経ってもゲートがクローズ状態。搭乗ゲートも二転、3転。結局、飛行機のトラブルで私たちの便のみフライトキャンセルに。
「アン・ビリーバボー!」搭乗予定客はみなブーイング。韓国サラリーマンらしき人がカウンターの中まで入り込んで係員と激しくもめている。きっと大事な仕事があったに違いない。


結局、翌日のフライトになったので、空港近くのホテルで宿泊することに。
しかも、今大会にウェリントンから参加した女性選手のマラマも一緒に3人で泊まることとなった。
こっちは3人とも3時間も待たされて、「アングリー&ハングリーだ!」
昨日食べたレストランで、おそらく最後のビーフステーキを迷わず注文。やはり、「まいう〜!」
満腹になったところでバスタブに、持参してきたバブを入れ入浴。
「人生色々あるもんだ、これも経験!」と自分に言い聞かせる。
苦境に立たされた時はとりあえず、おいしいものでも食べよう!

翌朝、4時。空港にまた移動。
しかもウェリントン直行ではなく、オークランド゙経由だ。九州から北海道経由で東京にいくようなものだ。
しかし、これだけではすまなかった。オークランド゙からの乗り継ぎ便がまさかの、また欠航!エンジニアリングトラブルらしいが。 絶句!
昨夜から一緒のツーリストも、まさかの2日連続の欠航に「アン・ビーバボー!」。
私もこんな状況におもわず叫んだ言葉は、「どんだけ〜!」

結局、ニュージーランド航空から急遽、カンタス航空に乗り継ぎ、国内なのにおよそ5時間をかけてAM9時半。ウェリントンに到着。
ある意味貴重な体験をした。

ウェリントンは始めての訪問であったが、港にヨットハーバーがあり、小高い丘の上にパステル調のカラフルで広いペンションのような家が建ち並ぶ。景色が実にいい。また、ここは強い風と地震の多い町だという。
   
        ウェリントンの町並み      

午後開始のセミナーの空き時間に博物館に連れて行ってもらうことに。そこでマウリ原住民や、ヨーロッパ諸国の移民の歴史を知ることができ良かった。
昼食はジャパニーズレストラン「SAKURA」寿司セットを注文。大会遠征中なら体調を考え、絶対に食べないところだが今回は迷わない。生魚も結構うまい!

2時間のセミナーを終え、急いで空港にとんぼ返り。
このままオークランドに戻り、今夜は空港近くのホテルに宿泊。
とてもハードで長い1日であった。

シャワーを浴び、疲れを回復させるため、ディナーは、もう食べないであろう、と誓ったビーフステーキ。とろけるようなやわらかい食感と、味付けが最高で、一番おいしかった。グッド、チョイス!
こちらに来て、普段の1年分以上のステーキを食べたと思う。

所感
大会の観戦、セミナーを通じて、
地味な基本の反復練習は苦手なようだ。もう少し体力をつけておくようにアドバイスしたが、まあ、無理もないか。
筋力はあっても持久力不足か。

しかし、外国人特有の骨格や筋力を持っているだけで有利なことは言うまでもない。
こちらの選手はまだ、日本人の説明する細かな指導ははっきり言って受けてない(知らない)と思う。

だから何を重点的に練習するかと言えば、判定基準にあるスピードやパワー、極めの強さになると思う。たとえ技術が上回っていても、今のルールからするとスピードとパワーがある選手には評価が変わるケースもあると思う。

例えば茶帯技術レベルの外国人が黒帯の日本人よりスピード、パワーを見て良い評価をする審判がいてもおかしくはないと思った。
日本国内の大会はそういうことは少ないと思うが、特に国際大会では気をつけるべきだ。

     

いや、選手はもっと体力をつけるべきだ。
海外の選手に日本人の技術が身についたら苦戦を強いられるであろう。

これからの日本人は今まで以上の努力が必要である。
世界の技術力がアップしている現状、体格的に不利な日本人は何をすればいいのか?再度考えさせられた。