第18回世界空手道選手権大会遠征記

記 長谷川行光

前田ジャパン集結!
10月7日(土) 晴れ
14:00成田ビューホテル集合。
恒例の国際大会前の強化練習をJASCO体育館で行う。

稽古前、前田監督をはじめ、村瀬コーチ、香川コーチ、中山コーチの激が飛び、選手にも気合い入る。
約2時間半、世界大会前の最後の国内調整だ。つい3日前まで兵庫:のじぎく国体も重なっていたため、選手たちにどういう影響があるのか。
皆、気合いも入り、良い調整ができたと思う。
この日、荒賀、新井、佐藤、中鉢、の4名が学生選手権に出場している為、強化練習には参加できず、フィンランド入りも2日遅れとなる。
       出発直前の日本チーム



10月8日(日) 晴れ
11:00 成田を発つ。離陸直後、日本の本州上空は気流が不安定で、機体がかなりぶれた。昨夜見たTV、「決定的瞬間!!」の事故シーンが頭をよぎる。
ちょっとだけ、「ドキッ」としてしまった。

今大会の開催地であるフィンランドのタンペレ空港まではまず、デンマーク:コペンハーゲンまで12時間、トランジェットタイムが4時間、結局、タンペレ空港に到着したのは成田を出てから約18時間、現地時間にして10月9日の午前0時であった。

ホテルは4星と書いてあったが、建物全体が質素で、やはりバスタブが無く、シャワーのみは風呂好きの私にとってはちょっと不満。楽しみに持ってきた入浴剤「宿場の湯」が無駄になってしまった。
チェックインを済ませ、部屋で小腹が空いたため、夜中だというのに早くもカップラーメンが登場。


タンペレの町
10月9日(火) 曇り

AM9時起床。
タンペレはフィンランド第2の街といわれ、工業都市だが、質素で静かな感じである。

昨夜は気付かなかったが、街路樹は黄色く紅葉し、白く吐く息も一足早い晩秋を実感する。
また、町並みも電線が無く景観を大切にしているのだろうと思った。
「サクッ、サクッ」と落ち葉を踏みしめると思わず水彩用具が欲しくなる?

       早朝ランニングで体を慣らす

今日は、街を散策に行く。 今回の長旅はなぜか疲労感がある。睡眠ももっと取りたい。朝練は近くの公園まで走り、軽めに形の調整。午後は観光。景色の良い湖と、教会に行く。ムーミンがでてきそうな,のどかな湖と美しい森の景色が印象的だ。

そのまま、PM6時からの結団式まで近くのコーヒーショップでいつものあれで時間をつぶす。あれというのは旅の出需品、トランプ「大富豪」である。
                                           電線が無いので空が広い

PM6時、近くのレストランで、選手、役員、審判団が総出で結団式。選手のみジュースで乾杯。


前菜のサラダとアンチョビみたいなものは味が濃く、好みが分かれた。
メインはラムステーキ。癖が無くておいしい。
一番良かったのがデザートの、イチゴとアイスクリームのトーストか。

PM8時を過ぎ、選手は皆、眠そう。はやく帰って風呂に入りたい。
しかし、シャワーしかないので、仕方なくシャワーを浴びてビールで乾杯のやり直し。 疲れた。早く寝よう。

10月10日(火) 曇り
AM7時、朝練。 昨日と同様、ホテル前でストレッチ&ランニング。
     
稽古前、二瓶、中山コーチ、長谷川行、亀山、高橋、村瀬コーチ            稽古前、気合いの松久、二瓶

昨夜、1日遅れで応援団の伸一先生ファミリーと長谷川スクール生も合流。
9時半、練習会場に歩いて移動。10時より2時間ほど合同練習。
各国の練習時間帯が指定してあったが、うまく空きがあったため指定時間外の稽古ができてよかった。形選手はPM1時半まで練習した。

アクシデント!
大木選手の怪我の具合が日に日に良くなり、今日は形と分解ができるまでになった。
実は10日ほど前の兵庫県で開催された、のじぎく国体に組手試合で左肩を負傷(脱臼)し、出場も危ぶまれていたのだ。しかし本人の強い意志と伸一先生の手厚い治療で驚異的な回復をみせる。
一昨日、腹部までしか上がらない腕が、昨日、肩の上まで上げられるようにまで回復。本当に大木選手が出られることになり、ほっとしている。 と同時に、治そうとする強い気持ちと治療、栄養、睡眠で人間、何とかなるものだと感心させられた。
あとは我ら長谷川兄弟でフォローして行こうと思う。



日本戦士集結!
10月11日(水) 曇り


昨夜、学生選手権のため遅れた選手もタンペレ入りし、これで日本の出場選手全員が揃う。
AM7時半〜10時半まで最後の合同練習。

4人増えただけでなんか活気づく。
皆、気合いが入る事を感じる。
いい雰囲気だ!


           日本選手団集合!

昼は近くの日本食レストランを見つけたので早速行ってみることに。いつものように、とんかつやそば、から揚げ、味噌汁などそれなりのメニューはあるが味は期待できない。海外では日本の感覚で味を期待してはNGなのである。
「それっぽいなあ!」というぐらいの気持ちで構えていないと、たいていがっかりするものだ。
ところが、この店はなかなかの味でどれもうまかった。フィンランド人母と日本人の父を持つこの店のご主人は日本で12年間修行したということらしい。味噌汁に煮干でだしをとっていたところも気に入った。生ものである寿司は、試合が終わるまでまだ我慢!



その後、ベンツのタクシーをつかまえて試合会場を見学。
アイスホッケー場を使用して、広さは前回のメキシコ大会と同じくらい。横一列に4面のコートが並んでいて、大きなスクリーンがあった。また照明機材が充実していたので、
スポットライトの下で、気持ちよくなるに違いない。まさに世界大会といった感じ。


早速、下に降りてマットの感触を確かめる。海外のマットはほとんどが滑りやすく、四股立ちなどの立ち方も高めで、力をセーブしなければならないためだ。

しかし、低反発材でクッションが良く、滑りにくい。WKFのマーク入りの公式マットだった。
日本のマットよりもちょっと固めだが申し分ない。思い切り演武できる。
係員に注意されるまで何度か練習してみた。

今日は選手登録とドローイング。いよいよ対戦相手が決まる。明日は女子団体組手と男女団体形がスタート。
気合だー!


いざ、出陣!
10月12日(木) 曇りのち晴れ
AM6時半起床。目が覚めたとたん、程よい緊張感と同時に気合いが入る。
いよいよ待ちに待った世界大会がはじまる。


今朝は、こちらのデパートで購入した炊飯器でご飯を
食べる。
実は、スクール生のK・U氏が日本からわざわざ炊飯器を持ってきてくれたが、変圧器を通さぬまま「電源O〜N!」 当然ショート!! お見事!

持ち込んだ5Kgのコシヒカリも無駄にしないために、炊飯器を現地調達したのだ。互いに持ち寄った、梅干、のり、キューちゃん、ニンニク、サケとさんま、鯖の煮付けの缶詰をおかずに。結構豪華だ。
心地よい朝食を済ませ、バスに乗り込む。
                                       やっぱり米はうまい!  あれ、頭が黒い。
会場はセキュリティーが厳しく、一人一人手荷物検査とボディチェックしてからの入場。
9:00女子団体組手が早速始まった。


第一試合は、いきなり日本対フランス。
この大事な初戦を2−1で見事勝利すると、立て続けに勝ち進み、決勝戦にまで進出。

ファイナル、対スペイン戦を大将戦を待たずして2−0のストレート勝ちし、史上初の女子団体組手優勝!!
本当にすばらしく、感動した。よくやってくれた。 日本チームに弾みがでた。
  史上初!女子団体組手を制した新井、荒賀、佐藤

続いて、男子団体形が始まった。
結果は、準決勝でフランスに2−3でまさかの敗北。
パワーとシンクロの部分で勝敗が分かれたようだ。フランス応援団の歓声が沸く。
しかし気を取り直し、3位決定戦に臨む。対するは4年前の決勝戦で戦ったスペイン 。
互いにアーナンであったが5−0で3位確保。

1回戦 不戦勝
2回戦 対クロアチア(5−0)
3回戦 対ドイツ (5−0)
準決勝 対フランス (2−3)
3位決定戦 対スペイン (5−0)
この日のためにあたためてきた分解も披露できず、無念...である。
日本人の「技の正確さ」、「緩急」は評価できるが、国際大会においては「パワー」が判定を大きく左右するのではないか?
                                     銅メダル!長谷川行、大木、長谷川伸   
幻の金!

女子チームは順当に駒を進め、前大会と同様、フランスとの決勝戦である。
日本チームは今までにない、分解の完成度の高さに、観客も私自身も見入っていた。
沖縄チームも時より鳴り止まぬ拍手に、酔いしれていたに違いない。いつもよりも気が感じられ、余韻をかみ締めるように自然と間も多めになるものだ。
完全に「日本の勝利だ」と誰しもが思った。しかし、監査が何やらもめている。すると副審集合の合図が。
一瞬、会場は騒然。

結果は、日本の失格によりフランス優勝の宣告。
会場は何が起こったのかわからず、納得のいかない判定にブーイング。
失格の理由は分解時間5分以内に対するタイムオーバー。(測定時間5分8秒)
幻の金メダルとなった。
しかし、今までにない完成度の高さは誰もが評価していると思う。
3人の一人一人がイキイキとして、外人に負けない表現力と技のキレがあった。
  すばらしい演武で会場が沸いた!嘉手納、清水、金城

男子団体組手は1回戦、地元フィンランドを(3−0)でかわし明日の2回戦進出。
明日は個人形と男子団体組手。女子に負けないように頑張れ。ニッポン!

10月13日(金) 曇りのち晴れ

今日は男子団体組手と男女個人形。
団体組手は2回戦、対フランス。
昨日の女子のように強豪国をくだして勢いをつけたい。

先鋒 松久はリードした後、反則勝ち。
次鋒 本村、体格負けせず、プレッシャーをかけ完勝。
2−0とリードするも残り3名(志水、忠鉢、二瓶)も善戦むなしく2−3で敗退。惜しかった。結局、フランスもイギリスに敗れ敗者復活戦には出場できなかった。
1位 スペイン
2位 ボスニア・ヘルツゴビナ
3位 エジプト
3位 イギリス

                                       男子団体戦:中鉢、志水、本村、二瓶、松久

男子個人形は期待の片田が登場。
決勝戦、2004年と2002年の世界チャンピオン同士の対決は2−3でイタリア・バルデジに涙をのむ。



1位 イタリア
2位 日本(片田)
3位 ベネズエラ
3位 ペルー

できは90%だっただろうか。とても良い形が打てたと思う。
過去の経験から、大会では練習のベストの状態の70〜80%出せればいいほうだが。
世界大会では100%〜120%出し切る、テンションのあげ方と爆発的な力をつけなければ!
   惜しくも銀メダルのスキンヘッド片田!

   

女子形初出場の豊見城は準決勝、ベトナムに2−3で惜敗、3位決定戦もフランスに1−4で敗れてしまった。
ベトナムのナン選手は体格にも恵まれ、昨年見たときより雑さが少なく、いい仕上がりであった。

1位 イタリア
2位 ベトナム
3位 USA
3位 フランス

形は年々、レベルが上がってきており、どの国も格差が縮まる方向に来ていると思う。と同時に、パワー、スピードが判定基準に特に影響されていると思われる為、肉体改造も要求される。
日本の感覚と世界とでは基準が違ってきているようにも思う。
         気迫の演武 豊見城 5位! 

    

組手は世代交代で、若手が多く、どこが勝つか予測できない状態か。
明日は組手個人戦がはじまる。


組手個人戦!
10月14日(土) 曇りのち晴れ
今日から組手個人戦が始まる。

男子組手


-60Kg 粂田 1回戦敗退

1位イラン 

2位アゼルバイジャン

3位チュニジア

3位エジプト

         -60Kg 粂田


-65Kg 亀山 2回戦敗退

1位スペイン 

2位ベネズエラ 

3位クロアチア

3位インドネシア
        -65Kg 亀山


-70Kg 二瓶 2回戦敗退

敗者復活戦により、銅メダル!!

1位アゼルバイジャン 

2位ベルギー 

3位日本

3位イラン
       -70Kg 二瓶 銅メダル!


オープン 本村 2回戦 敗退

1位イタリア 

2位オランダ 

3位カザフスタン

3位スペイン

        オープン 本村

女子組手

-53Kg 荒賀 金メダル(2連覇)

1位日本(荒賀) 

2位イタリア

3位ドイツ

3位エジプト
 
   -53Kg 荒賀2連覇!個人団体W金メダル!



−60Kg 佐藤 

1位スロバキア 

2位カナダ 

3位日本(佐藤)、スイス

  次は金を狙え!-60Kg 佐藤



オープン 高橋 2回戦敗退

1位トルコ

2位メキシコ

3位スロバキア
        オープン 高橋


荒賀は個人、団体の2冠達成!見事!  相手が強くなればなるほど実力を発揮していた。
  
二瓶は思い切りの良い中段突きがさえ、佐藤も共に堂々の銅メダル。
金メダルのアゼルバイジャンはトリッキーな動きと凄まじい瞬発力の持ち主。アゼルには気をつけろ!

入賞を逃した選手も善戦したが、決して技術的実力差があるわけではなく、自分のペースをつかむ試合運びを行えば活路は開けると感じた。

明日は最終日。君が代をもう一度聞きたい!
  

10月15日(日) 晴れ
大会最終日
男子個人組手

−75Kg 松久 準々決勝敗退 敗者復活により銅メダル!

1位 イラン

2位 スペイン

3位 日本(松久)

3位 エジプト
     −75Kg 松久 銅メダル!


-80Kg 志水 2回戦敗退

1位 イタリア

2位 エジプト 

3位 カナダ

3位 イラン
        -80Kg 志水


+80Kg 忠鉢 1回戦敗退

1位 エストニア

2位 エジプト

3位 フランス

3位 イタリア
        +80Kg 忠鉢

女子個人組手

+60Kg 新井 銀メダル!

1位 フランス

2位 日本(新井)

3位 オーストラリア

3位 セルビア
     +60Kg 新井 銀メダル!

松久は準々決勝、スペインと対戦。駆け引きと蹴りの応酬で見ごたえのある試合。9-12ぐらいだったと思うが、松久のほうが外人ぽい動きであった。惜しい。
3位決定戦では気迫で勝利!

常にマイペースの新井。相手がどんなフットワークで仕掛けようが動じることなく、冷静だ。そして狙いすまして確実にポイントを取る。この日本的な試合運びで快進撃が続く。そして惜しくも銀メダル。新井のような試合をすれば日本はまだまだいける。
  
          他の選手も仲間の応援!                        松下、銅メダルに沸く、応援団

志水、中鉢ともに粘るが、あとわずかな駆け引きで涙をのむ。

4日間を通して、イタリアの活躍が目立つ大会となった。
また、イラン、エジプトが力をつけてきている。
スペインの組手は総合力で勝っているようだ。
フランスをはじめ、全体的に新旧交代が見られ、どこが勝ち残るかわからない状態。
アメリカのジョージとエリサは緒戦敗退で今回は特に目立つことは無かった。

今回、長谷川スクールからは伸一先生の家族と応援に来てくれた生徒がいて大変心強かった。
同じホテルに宿泊できた為、食事面や、荷物など、あらゆるサポートをしてくれて、とても感謝したい。
また、世界大会を我々と体験して、感じたことを、これからの自分の目標に役立てて欲しい。
そして、いつの日jか、この桧舞台で活躍してもらいたいものである。
  
     福田、長谷川伸一先生ファミリー、松浦            カメラに反応しいきなり応援する2人



                         日本選手団!
みんな、お疲れさん。2年後の東京で日の丸をかかげよう!

応援してくださった皆様、ありがとうございました。

                  日本チーム集合写真

番外編
ここからは、自由に写真を貼りたいと思います。

試合終了後、サヨナラパーティーを別のホテルに移動して行われた。が、すでに、帰国したチームや、参加していない国もあったようだ。パーティーではワンドリンクのみ無料で、食べ物もあまりなく、コーチの先生方の配慮で日本チームは早々と切り上げ、レストランで食事会を行う。

  
こういうの見つけるのが得意な内海。           ストレッチフェチ?の高橋&香川コーチ


食事会でのどうでもいい会話。
長谷川:「おい金城、今の日本の首相、誰なのか、フルネームで言ってみろ」

金  城:(まじめに間髪入れず、)「はっ、さっ、佐久本嗣男先生です!!」

長谷川:「@@・・・・・・」

豊見城:「それは[ 首相 ] じゃなくて,[ 師匠 ]だろ!!

嘉手納:「がっかりだよー!」
おちゃめな金城。分解は( )良かったよ〜!


  
これ、2枚とも根が生えている生の木を彫刻してあるんです。芸術的と思うのか?かわいそうに思うのかは、「自由だー!」
ちなみに、右写真、女性の彫刻の隣に生えてるのが大木です。 さぶ〜!(大木のリクエストに答えました)

  
試合会場はフィンランドだけあって、アイススケート場の氷のリンク上にコートが作られていた。
各試合は電光掲示板で運用されていた。


    大会マーク。これってチャタンの分解?