第17回世界空手道選手権大会

期 日:平成16年11月18日(木)〜21日(日)
会 場:メキシコ・モンテレー市 アリーナモンテレー

2年に1度行われる空手の祭典、第17回世界空手道選手権大会がメキシコ・モンテレーにて盛大に開催された。
メキシコにて世界大会が行われるのは、1990年の第10回大会以来、7大会ぶりのことである。

前回のスペイン大会では新ルールで初めての世界大会であり、日本はメダルが形で4つ、組手においては高橋優子選手の1個とやや不振に終わっていた為、今大会では前回を上回る結果を出すべく、最強の選手団を送り込んだ。

11月12日(金)13:00 成田ビューホテルに全国から集結。恒例の成田強化練習をジャスコ体育館で3時間ほど行う。
前田利明監督をはじめ、山本英雄・香川政夫組手コーチ、そして急遽形コーチに召集された佐久本先生と男子12名、女子8名の計24名の選手団がいざ、メキシコへ向かう!


日本選手団 出発前、ジャスコ空手道部道場にて

11月13日(土)13:00成田を出発。
メキシコへは直行便はなく、一度アメリカのダラス空港にて乗り継ぎモンテレーへと行く。
アメリカは一連のテロの影響から、セキュリティーが厳しい。成田からスーツケースの鍵はかけられず、ダラスでは入国審査時には両手人差し指の指紋採取と写真撮影、ダラスから出国時には上着と靴も脱がされ、パソコンも取り出しチェックを受けた。成田から18時間ほどでホテルにチェックイン。
メキシコは異常に寒く、吐く息も白くなるほどである。11月とはいえ、メキシコである。持ってきた短パンは不要だとすぐ思った。また、半そでしか持ってきていないため、長袖が必要になることは誤算であった。


夕方18:50 ロビー集合。ホテル近くにレストランにおいて役員、審判団、選手団の結団式を行った。
ここモンテレーにはメキシコ糸東会でWKFの審判でもおなじみの村山邦夫先生が在住しており、今大会では練習会場の手配やいろいろ面でお世話していただいた。また、ドミニカ糸東会で同じく指導に携わっている亀谷さんも同席して盛り上げてくれた。亀谷氏は現役時糸東会のナショナルチームに在籍していてともに代表として海外遠征を共にした仲である。また、メキシコ在住の剛柔流の中村先生も同席していただいた。

     健闘を祈り、日本チームの結団式

      
      村山先生直筆の横断幕                        食欲旺盛な若井選手・高橋選手

地元料理のタコスや子やぎの肉などで満腹。旅の疲れもあり、23:30就寝。

11月14日(日)小雨
6:30起床。7:00ホテル内にある、テニスコートでストレッチと軽めのジョギング。
すでに外国人が軽快に走っている。よく見ると、海外の選手ではなく、顔見知りのレフリーであった。よく走り込んでいるであろう、その姿には感心する。
朝食はバイキング。メインがオムレツとタコスであったが、ほとんどが人気のオムレツに並んでいる。具沢山でチーズいっぱいでおいしかったが、胃もたれをおこしてしまう。


11:00 ロビー集合。
村山先生の道場をお借りして稽古を行う。通常であれば連盟の用意した施設で他国の何チームかと隣りあわせでやらなければならないが、今回は村山先生のご好意により、日本チームに特別練習場所を提供して頂いた訳である。静かで雑念がなく、集中できる環境の中での稽古はうれしいものだ。また、専用にバスも用意頂けたことにも感謝したい。
   村山先生の道場での日本チーム

初日稽古は香川コーチの基本をみっちり30分。慣れない動きに下半身が張ってしまった。その後、形と組手に別れ、それぞれの調整。この日は70%の調整。佐久本先生から「試合当日に100%に持っていければ良い」という言葉をかけれられたが、気がのってきてついつい試合モードになりかける。初日としては体の動きを確かめる程度。14:00終了。

昼食は日本食レストラン「天風」へ。メキシコでもジャパニーズフーズは人気で込んでいた為、みんな食べ終わるまで2時間もかかった。個人的に来たいところである。
ホテルに戻り、ベッドでうとうとしていると、もう夕食の時間。この日はイタリアンレストランに行くことに。野菜スープとパスタをワインで乾杯!20:30 ホテルに戻る。練習から昼食に費やす時間が長かった為に、とても1日がはやく感じた。バスタブいっぱいにお湯をはり、持参した「温泉の元」を混ぜ入浴タイム。今夜は草津の湯。やっぱり風呂がいい!000就寝体調:睡眠が欲しいところ。
                                            一汗かいて、いい調子だ!

1115日(月)小雨
630起床。今朝も雨のため、7時朝練は体操のみで朝食をとる。
1100ロビー集合。本日は形と組手選手は別メニュー。形選手は昨日に引き続き、村山先生の道場をお借りして稽古した。


やはり静かで集中できて良かった。
各形を5070%で2回ずつ打つ。佐久本先生から3日後の18日に最高の演武に仕上げるよう指示があった。試合モードでどうしても極めようとする意識が強くなり、力みがち。それよりも立ち方、技のコースをいまのうちに確認する事が大事であると、「ほっとする」ありがたいお言葉である。分解も部分的にチェックした。1400いい感じで終了。
      佐久本とコーチと形選手団

ホテルに戻るとみんなで散歩。平日だというのに若者が多かった。
昼食は昨夜と同じメンバーで同じイタリアンレストランへ迷わずタクシーを走らせる。アンチョビ、ガーリックとソーセージのピッザがうまかった。
昨夜から耳がつまり、中がボヤー、とするので乾杯のビールは控えた。
結局今日も昼食が終わるのが1630。胸焼けもするので夕食は食べずホテルにおとなしくしていた。洗濯が溜まったため、バスタブで洗濯した。
体調:首筋が少々痛みあり。右足親指、ウォーミングアップ時に突き指。2130就寝。

1116日(火)曇りのち雨
600起床。久しぶりに睡眠を8時間とり、快調。今朝は比較的暖かで寒い朝ではなかった。いつものように玄関外でストレッチ。朝食も同じオムレツ。
1015形選手で9階エレベーター踊り場へ集合。ストレッチ。練習時間を有効利用するため、早めにストレッチを済ませるためである。
1045ロビー集合。1100にいつものバスが来て形選手のみ村山道場へ。各形を2回演武。同じメニューだが、徐々にペースを上げていく。力みすぎか、昨日よりも息が苦しい。極めようとして上半身の硬さと呼吸を忘れがち。1300終了。

    
   佐久本先生と7連覇を目指す3兄弟!             念願の初優勝を狙う沖縄チーム!

ホテルに戻ると選手登録のため、パスポートと試合用の道着を預ける。その日のうちに
IDカードが手渡された。試合会場を見ておきたかったが、今回はセキュリティが厳しく、会場を開放してくれないようだ。昼食にカップラーメンを食べたが、うまくないので1階のバイキングへ。朝食と同じ場所だが、昼はステーキを焼いていて、うまかった。満腹。この時点で1630。メキシコに来てから練習時間の絡みで、昼食のリズムが狂い、必然的に夕食時間にも影響が出る。今夜も夕飯は食べなかった。昼食後、隣にあるショッピングセンター「RIVA POUL」にてしばしショッピング。夜は日本から持ってきた練習ビデオをテレビにつなぎ、形と分解のチェック。パソコンもあるのでDVDに焼いたものを見たりもした。忘れかけていた技のチェックができるので便利である。
体調:右足親指、また突いてしまった。少し腫れている。でも体は良く動いている。
2330就寝。あと2日。今までの練習を思い出し、全力を尽くそう!

1117日(水)雲り時々晴れ
今朝も暖かな朝であった。今日の朝練はテニスコートで行った。ストレッチと軽めのランニング。だが試合を明日に控え、選手に徐々ではあるが緊張感を感じる。お馴染みの朝食を済ませ、本日の稽古は選手の提案を佐久本先生に聴き入れて頂き、930集合、1200までとさせていただいた。連日のペースでは食事時間が不規則になる傾向があった為、大変助かった。


練習開始前、佐久本先生より「やることは十分やってきた、あとは思い切りやるだけ」と言われ、選手にリラックス感とやる気が出てくる。形選手全員でスクラムを組み、気合いを入れた。内容も各選手のペースに任されたので、良い感じに調整できた。
そして稽古の終わりになんと、佐久本先生自ら棒術とアーナンの形を披露して頂いた。こんなことは一生に1度あるかないかの体験を固唾を飲んで見学した。うれしいことである。いつにないチームのまとまりを感じる。
 世界の佐久本”アーナン”を演武して頂く

ホテルで昼食を済ませ、
1700監督の部屋へ集合し、注意事項を聞く。いったん部屋に戻り、組み合わせ抽選結果を待つ。今年男子の団体形エントリー数は16チームであった。夕食は3兄弟で明日の戦いを前にバスタ料理とビールで乾杯!このためにはるばるやって来たのだ。明日は必ず、金メダルを獲るぞ!
体調:のどに軽いタンが絡む程度。足の親指は大分良い。伸一先生に治療をしてもらったら、目と足と腰の痛みが消えた。2330就寝。

11
18日(木)晴れ
630起床。昨日までの曇り空がうそのように晴れ渡り、すがすがしい気分で朝を迎えることができた。バイキング朝食を済ませ、いざ出陣!

午前の女子団体組手から大会がスタート。
日本はいきなり強豪、スペインとの対戦。藤原菜希・高橋優子・荒賀知子で望むも初戦敗退。同じスピードならリーチのある外国勢にポイントを取られてしまう。国内では経験できない状況での試合運びが重要ではないかと思う。
試合開始2時間前に団体形のアップを始める。今大会はうれしいことに長谷川スクールから応援に駆けつけてくれた、片田貴士・入田佑・内海健治・河野仁志・大木格らの生徒と共に、道場の稽古と同じようにアップを行った。
試合は1回戦 対イラン(5−0)、2回戦 対オーストリア(5−0)、準決勝 対フランス(3−2)と勝ち進む。

    
    決勝戦は予想通り、イタリアとの対戦                 チャタンヤラ・クーシャンクーで臨む

決勝戦は予想通り、イタリアとの対戦となった。我々はチャタンヤラ・クーシャンクー vs イタリアチームはヨーロッパで流行の松涛館のガンカク。結果は(0−5)完敗である。今回分解は前回のスペイン大会の内容に応用技を磨き、アクロバットのバリエーションを加えて仕上げてきた。アクロバットには賛否両論あることは重々承知した上で、今大会に望んできた為、アクロバットを取り入れたことを後悔してはいない。作品的には分解の中に物語を作り上げ、一つ一つきっちりというよりも、起承転結の流れを表現して、3兄弟の良さを引き出せた分解であった。ただ、競技としてはもっとシンプルに、そして一つ一つの技をはっきり、分かりやすくすることも必要ではないかと思う。

     
応援に駆けつけてくれた入田・河野・大木・片田・内海選手            

今後の課題ができた。これも貴重な経験である。表彰式、イタリアチームの健闘を称え、いつもより1段低い表彰台に立った時、初めて敗れた者の気持ちが分かった気がした。いつも海外のチームはこういう想いでいたんだと。そして勝ち続けていた時には考えなかった、自分たちの反省点を何度も考えさせられた事は良い体験であった。
この貴重な体験をこれからの日本チームに生かしたいとも思う。


1119日(金)晴れ
730起床。今日は男子団体組手と男女個人形。
団体組手は1回戦 強敵イングランド。

    
     日本団体組手メンバー                先峰 松久選手 個人戦では惜しくもベスト8    

先峰 松下功が善戦するも1敗。次峰 永木伸児は順調に勝ち。中堅 松崎沢宣は積極的な攻撃を見せるが、相手も合わせがうまく2敗。あとがない日本は副将 平山真也も敗れ、大将 樋口大樹を待たずして
13で初戦敗退。

    
     中堅 松崎選手                     副将 平山選手

レパチャージ(敗者復活戦)を望むも準決勝でイングランドはフランスと
23で敗れた為、この時点で日本は男女ともに1回戦敗退に終わる。
ファイナルはフランス対スペイン。フランスは相手のフットワークの動きに合わせて逆のリズムで対抗。何の抵抗もできないまま突きを受けていたイングランド選手が印象的であった。



男子個人形に出場した土屋秀人選手
は全日本チャンピオンらしい、堂々たる演武を打つも世界ルールの前に敗れてしまう。
土屋選手ほどの逸材は国内では誰もが認めるが、世界においてはそれ以上のパワーを持つ選手はごろごろしているのだ。試合を見ても決して調子が悪かったのではないと思う。 海外ではゴールデンリーグ(ヨーロッパを中心に行われ、ランキング付けもある5つのオープン大会)などの大会に積極的に参加し、技を競っているのだから、海外選手の技術レベルはあがっていると感じた。またジャッジする審判もヨーロッパ中心の試合を経験しているため、技の重厚さよりも、スピード・パワーがどれだけあるかが勝負どころでなないかと思う。
        個人形出場の土屋選手

ではもし自分だったらどう戦うか?考えさせられる。スピード・パワーに勝る外国勢に対して、同じ要素だけで勝負するのではなく、自分の持ち味を発揮して、より正確で極めのある技と、日本らしさ、たちふるまいなどの風格、etc…課題は多い。

※続きは随時アップします。(すみません)