第8話「カレーが好きなのだ 2」


カレーが大好きなのである。

しかし、僕が小さい頃の苦手な食べ物の条件として「熱い物」と「辛い物」があった。この2つの条件を満たす食べ物と言えばズバリ、カレーだろう。では何故、苦手な条件を完全に満たした食べ物であるカレーの事が、ドラえもんにとってのドラ焼きの様に好きになってしまったのだろうか。

実は学生時代、半強制的に週2回はカレーを食べさせられる環境に身を置いていた。学生時代、土曜日曜はパソコンの量販店でアルバイトをしていたのだが、この店の近くで食事が出来る店といえばココ壱しかなかったのである。厳密に言えば数十メートルでも足を伸ばせばうどんぐらいは食べられたのだが、その店はイマイチしんみりしているので好んで行くことは少なかったのである。よって、大学に入学すると同時に、アルバイトをする土日曜の昼はカレーを食べる日々が始まったのであった。

最初は普通の辛さもまともに食べられなくて、甘口ばかり頼んでいた。しかし小心者の僕は同じ店で同じ店員に「甘口」と頼み続ける度胸が無く、無理して辛さは普通を頼むようになった。また、バイト中の限られた休憩時間内で食事を済まさなくてはならないので熱さに慣れる以前に必ず食べなくてはいけなかった。そして数ヵ月後には、空腹になると「何か食いたい」ではなく「カレーを食いたい」と思うようになっていた自分がいたのである。

熱くて辛い物を食べ続けた結果、苦手を克服してそれを好きになってしまった自分がいるのである。苦手は克服できるんだ。それどころか好きにもなれる。そんな実体験をしているにもかかわらずちっとも冴えない今の自分がいるのということは世の中そんなに甘くないということです。

 

[]


日記に戻る ホームへ