第78話「ディズニーも好きなので」


「竜禅寺課長、ちょっと良いですか?」

 

「ん?あぁ、勝俣くんか。それよりこのパソコンの画面を見てくれよ」

 

「は、はぁ。何でしょう。え〜と『はなのび』ですか?」

 

「実はな、今度家族サービスでデズニーランドに行く事になったのだよ」

 

「はい、ちょっと待ってください。ディズニーランドに行くのであればまずその言い方を直しましょうよ」

 

「う。デズニーランドは駄目か?そうか。デズニ・・・デ、デ、ヂズニー・・・ディズニーランド!」

 

「ごめんなさい。なかなか難題だったようですね。ところで家族サービスと『はなのび』はどんな関係が有るんですか?そもそも『鼻伸び』って?」

 

「あぁ、我が家は皆初めてディズニーランドに行くのだがな」

 

「うあ。今時ちょっと珍しい御家庭ですね」

 

「そうなのだよ。経験が無いから分からんのだがな、噂ではとても混雑すると言うではないか」

 

「そうですね。乗り物に乗るのに2時間待ちとかになったりしますからね」

 

「勝俣くん、乗り物じゃなくてアトラクションだよ」

 

「く・・・課長に分かり易く喋っただけなのに」

 

「そうかそうか。私もな、ちょっとは勉強したのだよ」

 

「勉強ですか」

 

「そうだ。混雑するのであれば綿密に計画を練る必要が有ると思ってな」

 

「そうですね。それが賢明ですよ」

 

「で、色々なホームページを見ていたら『はなのび』に辿り着いたのだがな」

 

「そうですか。見たところちっとも冴えない個人サイトの様ですが何か良い情報でも有りましたか?」

 

「いや、全然無い。このサイトは駄目だな」

 

「そうですか。やっぱり。管理人は勝竜?きっと中日ファンなんですよ、こいつ」

 

「馬鹿にするな!」

 

「ひい!すみませんでしたぁ!」

 

「・・・あ、いや、取り乱してしまった。私も勝俣くんと同じ意見のはずなのだが」

 

「はあ。おかしいですね。それより何の話しでしたっけ?」

 

「そうそう勝俣くん。いろいろなディズニー関連のサイトを見て回ったのだがな、ひとつ気になる単語があるのだよ」

 

「はあ。何でしょう」

 

「インパとはどう言う意味なのだ?」

 

「インパですか。ディズニーランドに行く事や入園する事を意味しますね」

 

「勝俣くん、即答かね。詳しいのだな」

 

「任せといて下さい。そもそもインパとはイン・パークの略で、パークはディズニーランド自体を指します。パークにインすると言う意味から来た造語ではないかと考えられますよ」

 

「ほほぉ。詳しいな。しかし何故パークなのだろう。ランドなのだからイン・ランドで略して・・・」

 

「わー!それは言っちゃいけませんよ!」

 

「そ・・・そうか?ふむ。そう言えば勝俣くん、私に用事があったのでは?」

 

「あ、はい。実はこの連休に僕はディズニーシーに行って来たんです。で、皆へお土産を買ってきたので配ろうと思ってまず課長の所に来たんですよ」

 

「なんだ。そうだったのか。そうか。シーか」

 

「はい、シーです」

 

「イン・シー?」

 

「いえ、シーの場合はイン・ポートと言います。港だからですかね」

 

「なるほどな。あ、その缶がお土産か?皆に配るより私が皆に呼びかけてここに取りに来させよう」

 

「え?あ、そうですか?」

 

「おーい、皆聞いてくれー」

 

「なんか恥ずかしいかも」

 

「勝俣くんがインポだったそうだ」

 

「わー!大声で間違った略称を使わないで下さいって!」

 

[完]


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