第7話「片仮名で話そう」
「勝俣くん、ちょっと肩を揉んでくれたまえ」
「竜禅寺課長、どうしたんですか出し抜けに。パワハラですか?」
「ぱわはら?なんだねそれは」
「パワーハラスメントの事ですよ。暴力をふるうみたいに、権力をふるう事を言いますね。部下に肩を揉ませるなんて今時流行らないですよ」
「おぉ、そうなのか。悪いわるい。そんなつもりはなかったんだ。いやー、しかしカタカナ語はおじさんにはよくわからんな。この肩凝りの原因もな、なんだっけ、カタカナのアレのせいなのだよ」
「はぁ。アレですか」
「ほら、固い棒を握ってな、振り回すのだよ。そして白いのを飛ばしたりする・・・なんだっけ」
「はぁ。僕にはとてもいかがわしい遊びにしか思えませんが」
「何を言っているのだね君は。ほら、家には小学生の娘がおるだろう。娘に突然せがまれてな、一緒にやったのだが。棒を握らせたら娘は上手いのなんのって。白いのをガンガン飛ばすのだよ。周りの男達の羨望の眼差しは親として誇らしかったな。私はちっとも飛ばないのだが。トシだからかな」
「娘さんに何をやらせてるんですか!とツッコミたいんですけど、だいたい何をやってきたかわかりましたよ。娘さんは随分ボーイッシュな遊びをなさるんですね。しかし竜禅寺課長、あまりにもカタカナのボキャブラリーが少なすぎますよ。あ、ボキャブラリーってのは語彙の事ですよ」
「そうなのだよ。どうにも私はカタカナに弱くて。私は何て言う遊びをやってきたんだっけなぁ」
「今の部分だけ聞くと痴呆症みたいですね。ほら、あれですよ。思い出せますか?最後に”グ”がつくやつですよ」
「おぉ!勝俣くん、思い出したぞ」
「あ、良かったですね。さあ、何でしたか?」
「ペッティングだよ。娘とペッティングセンターに行って、娘にバットを握らせてな、そして娘はタマを自在に操るかのように・・・」
「ちょ、課長!声が大きいですよ!そんな大間違いを大声で話すと周りに誤解されますって」
「なんでだ?娘とペッティングするのがそんなにマズいのか?ん?どうだ?君も興味があるのか?娘の技を今度見せてやろう。今度の日曜はどうだ?」
「結構です!僕まで仲間みたいじゃないですか」
「仲間で何が悪い。今度の土曜はどうだ?」
「生憎です!土、日共に予定が入っています」
「ん?そうか。それは残念だな。ああそうだ勝俣くん!」
「なんですか!」
「私でもこれは知ってるぞ。予定がかち合う事をカタカナでは確か“予定がバッティングしている”と言うんだよな」
「上手い事言うなよ・・・」
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