第69話「こんばんは、無職です」


 皆さん、おはこんばんちわ。勝竜@無職です。

無職と言っても、昼過ぎまで寝たり、その後深夜まで自室に引き篭もってゲームやチャットをやったり、HPを更新したり、リレー小説を書いたりしている訳ではなく、毎朝7時半までには起床し、自分の身の回りの家事までは自分で済ませています。住んでいるのが実家とは言え、無収入の居候状態ですからね。無職は辛いよ。

 

もちろん就職活動もそれなりに行なっております。主な就職活動の1つとして、本屋さんへ行き、求人誌を買って来る等が挙げられます。なので、求人誌の発売日になれば、自転車を駈って本屋さんへ行きたいと思うのですが、実は、近所の人には僕が仕事を辞めて現在無職である事を伝えていませんので、少しだけ世間の目を気にして外出しなくてはいけません。無職は辛いよ。

 

とにかく、発売日は世間の目を気にしながら本屋に行くのです。そしていい加減顔を覚えられたかも知れない店員さんにレジを通して貰い、求人誌を受け取った後、ふとトイレに行きたくなったのでトイレをお借りしました。

用を足して水道で手を洗った後にふと、箱の様な物が水道の横の壁に取り付けられているのに気付いたのです。そうですね、ちょうど目線よりちょっと低いぐらいの高さでしょうか。そんなに大きくない箱です。おや?これは何だろう。ボタンの様な物は見当たりませんし、叩いても何も反応が有りません。どれどれ、と僕はその箱を下から覗いて見たんです。そしたら、うわ、顔に何か白い液状の物が降って来て顔面に附着したのです。な、な、何だこれは!僕は驚嘆し、慌てふためき、自我を失い、半狂乱になりました。どうどうどう。自分をどうにか落ち着けて、顔に附着した物を分析しました。泡ですな。これは泡だ。どうやら、手を洗う人が箱の下に手を翳すと、センサーか何かに反応して泡状になった石鹸を出す機械の様です。まさか男に生まれてきて、白い液状の物を顔面にシャワーされるとは思ってもいませんでしたが、もしかしたらこの顔面シャワー機は、無職の僕を陥れようとした罠なのかも知れません。無職は辛いよ。

 

 そんな事件にもめげずに僕は自転車を駈って帰路につきました。学生時代にアルバイトで4年間使い続けた道と同じ道を走ります。ふと気付くとバイクの音が後ろから徐々に近付いてきました。そして突如声をかけられたのです。げ、もしかしてこれはカツアゲか?ぼ、僕は無職で無収入ですよ?と思いつつ振り替えると、カツアゲとは対極をなす立場の人がバイクに跨って停まっていました。警察です。マッポとか言う奴です。葛飾区亀有公園前に勤める人が有名なアレです。「はい?」と僕が返すと、警察の人は「ちょっと自転車の名前の部分見せて貰っていいかな?あ、あと身分証明書と」と言いました。「あ、え?いや、この自転車は」「何だね?」「書いてある名前が僕の名前じゃないんです」「ほう」「母が友達から貰った自転車なんです」「ほう」「元は母の友達の息子の自転車なんです。だから、僕の物である証明は出来ません。防犯登録のし直しもしていません」しどろもどろ。「そうですか。とりあえず免許証見せてください。あ、26歳?今日はお仕事は休み?」「む、無職です。この籠に入っているのが求人誌です」「ほう」

 無職は辛いよ。

 

[完]


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