第59話「ユニフォーム交換」


 

「暑いっすよね、竜禅寺課長。汗が流れっぱなしですよ」

 

「おぉ、勝俣君、久しぶりだな」

 

「え?何言ってるんですか?毎日会社で会ってるじゃないですか」

 

「おぉ、そうだったな。何を勘違いしたのか・・・」

 

「しっかりして下さいよ、課長」

 

「うむ、分かった。しかし本当に暑いな、勝俣君」

 

「そうですよ課長。日本の気候において正装がスーツだってのが間違っているとは思いませんか?」

 

「まったくだな。我々営業職の人間にとっては嫌がらせとしか考えられないな」

 

「今日の外回りはもう終わりましたし、早く会社に帰って涼みましょうよ」

 

「お、それより勝俣君、あそこに見えるのは健康ランドじゃないか?ひとっ風呂浴びてから帰らないか?」

 

「え、課長と入浴ですか?」

 

「大衆浴場に入るのがそんなに嫌かね?君は」

 

「いや、そんな事は無いです。大衆浴場ですもんね。しかし着替えはどうすんですか?」

 

「む、そんな物は今着ている物で良いだろう」

 

「え、下着もですか?今日は暑いですし、今履いているパンツをもう1度履く気にはなれないですよ・・・」

 

「お?そうなのか?私は気にならないのだがな。まぁ、着替えは私にまかせておきたまえ。とにかくひとっ風呂浴びて行こう」

 

「は、はぁ・・・」

 

 

 

「いや、勝俣君、生き返ったね。良い湯だった」

 

「はい、課長。そうなんですが、先程おっしゃった着替えの件は・・・」

 

「おぉ、そうだな。うむ。君は同じパンツをもう1度着用したくないと言ったのだよな」

 

「はい。そうです」

 

「よし、ではこれを履きたまえ」

 

「え、これって」

 

「そう、さっきまで私が履いていたパンツだ。君は同じパンツを履きたくないと言ったからな、私のと交換しよう。これでお互い違うパンツを履けるぞ」

 

「意味分かってねーだろ・・・」


[完]


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