第54話「カレーが好きなのだ 7」


カレーが大好きなのだ。

沢山とはいかないまでも、数人の仲間達とカレーを食べるシチュエーションが想像出来るだろうか?

大学に入るまでの範囲で思い返すと、それは給食か学校行事のキャンプの時ぐらいしか思い浮かばない。しかも、給食の場合、カレーと言ってもお碗で食べる訳だし、キャンプの時は辺りが暗く、作りが雑なので、いつものカレーとは違う物なのだ。

 

 さて、今回のテーマ一体何なのか?それはカレーの食べ方である。

食べ方と一言で言っても、色々な意味が考えられると思う。「拙者はかれぇらヰすを箸でいただくでござる」と言う読者の方もいらっしゃるだろうし、「アタシはまず3週間煮込まないと食べませんよ」と言われる方もいらっしゃるだろう。しかし今回の「食べ方」の意味は「え、これ全部野菜で出来てるの?こんな芸術的な盛り付けされたら食えねーよ。どうやって食おう?」の「食べ方」である。皆さんは、目の前に置かれたカレーライスに、どうやって最初にスプーンを入れるだろうか?

 

一般的に、お店で出されるカレーライスを真上から見ると、カレーとライスがおおよそ半分ずつに見える様に盛り付けられている場合がほとんどの様に思う。しかし僕はこういう盛り付けのカレーに馴染みが無かったのだ。我が家のカレーライスは、皿に盛られたライス全体にカレーがかけられる。要するに、完全にカレー覆われている為、ライスの姿は見えないのだ。そして「いただきます」の声と共にスプーンが入れられ、容赦なく掻き混ぜられる。カレーとライスが完全に絡み合うのだ。僕はこう言う家庭環境で育ち、この食べ方が一般的だと完全に信じていた。だから、アルバイトを始めて、お店でカレーを食べる様になっても盛り付け方など無視して掻き混ぜてカレーを食べていた。これが僕の「食べ方」である。

 

 大学生時代のある日、学食にて数人の友人が偶然全員カレーを食べていた。もちろん僕も一緒である。

僕は何も気にせず僕の食べ方でカレーを食べていたのだが、突如友人の1人に言われたのだ。

 

「君って完全に混ぜカレーなんだね」

 

混ぜカレー?なんだそれは?と僕は思った。思いながら友人達を見ると、誰1人としてカレーとライスを混ぜずに食べている事に初めて気付いた。皆、スプーンで掬う分にカレーを絡ませて食べていたのだ。はっきり言ってこれには僕は仰天した。こんなカレーの食べ方が有ったのか? カレーとライスを満遍なく絡ませて食べる方法は、皿にも満遍なくカレーが付着する。しかし、その時の友人達の食べ方は皿全体が汚れる事は無いと言うメリットが有ったし、何より上品に見えた。どうでも良い事と思われるかも知れないが、十数年間思い付きもしなかったカレーの食べ方に僕はたいそうショックを受けた。マジで。

 

 そして僕のカレーの食べ方の矯正が始まったのである。1人の師匠の下で。

 

[完]


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