第46話「映画館で運試し」


  いわゆるシネコンタイプの映画館では、座席にカップホルダーがついている場合がほとんどである。

ポップコーンをかじりながらだとか、Mサイズのアイスコーヒーを啜りながら映画を観ようと思っても、このカップホルダーが無いと、上映中ずっとカップを手に持っていないといけなくなるので、それの果たす役割の重大さは良くお分かりいただけるだろう。

 

 しかしこのカップホルダーには困った特性も有るのだ。それは、カップホルダーが座席の左右に設置されている事に起因する。

例えば僕が1人でシネコンに行き、売店でMサイズのアイスコーヒーを買って意気揚揚と指定の席についたとしよう。そして、利き手である右手側のカップホルダーにMサイズのアイスコーヒーを入れようとしたら、そのカップホルダーが既に埋まっていたりする場合が有るのだ。これは、自分の右側に座った人がその人の左側のカップホルダーを使用した場合に発生する事態なのである。仕方無しに、自分のMサイズのアイスコーヒーを左側のカップホルダーに入れようとしたら、左側に座っている人がその人の右側のカップホルダーを使用してるパターンも充分想定出来る。すると、さっき買ったMサイズのアイスコーヒーは安住の地を見付ける事が出来ず、上映中、僕はずっとMサイズのアイスコーヒーを手に持っていないといけなくなるのだ。カップが結露して濡れて冷たいではないか。ぐすん。

 

 そしてふと、ずっと右の方に有る1番端の席を見ると、カップホルダーはその座席の右側についている事に気付く。つまりこれは、カップホルダーは各座席の右側についていると考えれば良いのかと思い、左の端の席を見ると、その座席の左側にもカップホルダーがついているのだ。つまりカップホルダーはどちらを使っても良い様になっているのか?あれ?と言う事は、横に並んでいる座席の数よりもカップホルダーの方が1つ多いって事じゃないか。座る人間よりもカップホルダーの数が多いのに、Mサイズのアイスコーヒーを手に持って映画を観ている僕って、相当不運?

 

 ちなみに、利き手側である右側のカップホルダーが埋まっていて、左側が空いているからと言って仕方無しに左側を使った場合、映画に集中している頭脳は注意しないと右側のカップホルダーに手を伸ばして、見ず知らずの人のコカ・コーラとか飲んじゃうから気をつけよう。マジで。

 

[完]


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