第44話「何をしたら良いですか?」
先日『ホテルビーナス』と言う映画がで新人監督部門の最優秀賞を受賞している。 僕はこの映画を観ていないので、一体何が良くて評価されたのかは知る由も無いのだが、いつも疑問に思っている事がある。「監督賞」とは、誰が一体どの様な基準で審査しているのだろうか・・・と。
例えば、カレーに対する情熱以外は持ち合わせない無気力な会社員である青年が突如映画監督を命じられたとしよう。普通に考えたら、この時点で映画の完成すら危ぶまれるだろう。しかし、その監督の周りには、最高の脚本、最高の出演者、最高のスタッフ、そして撮影中の弁当として最高のカレーが集結したとする。そして撮影はクランクインした。
監督は普段、普通かそれ以下のカレー好きな会社員であり、映画製作の事は何も分からないのだが、それなりに指示を出しながら撮影をしようとするのだ。 しかし、助監督に「あー、そこはそうじゃなくて、こうやって指示を出してくださいよぅ」と言われるから、それに従う。 カメラのアングルを決めたら、カメラ監督に「ここはこうやって撮る方が効果的ですよ」と言われ、それに従う。 衣装に関する知識なんて持ち合わせていないから悩んでいると、衣装デザインの人が勝手に進めてくれる。 照明の当て方はこれで良いだろうと工夫していると、照明さんに「誰だこんなイタズラをしたのは」と言われる。 出演者達は、脚本を読んだだけでほぼ完璧に役を掴んでいるので、口出しが出来ない。 音楽に関しては、イメージの注文すらしないで出来上がってしまっていた。 編集はディゾルブばかりかけて怒られてしまった。
結局のところ、監督は毎日何もせず、ただカレーを食っているうちにとうとう映画が完成してしまったのである。 スタッフ、キャスト共に最高のチームで作った映画だけに、公開したらそれはそれは大ヒットをした。
この場合、映画は多大な評価を得るだろう。しかし、この映画を観る限り、監督が何も出来ないシロウトだと言う事は伝わらない気がするのだ。監督賞の審査をする人も、映画しか観ていないとしたら伝わらないだろう。だから、当然監督へ対する評価も高まるはずである。 そして青年は意味も分からず監督賞を受賞してしまったりするのかも知れない。 監督賞を、どんな基準で審査しているか、僕は知らないからこんな妄想をしてしまったのですが、実際どうなんでしょうね。作品からかもし出される監督の功績オーラなんてのが、見る人には見えるのかなぁ。
あ、『ホテルビーナス』のタカハタ秀太監督だ駄目だって言っている訳ではないですよ。マジで。あの映画観ていませんから。
[完] |