第42話「ギブ・ミー湿布」


 大学生時代はパソコンショップでアルバイトをしていた。

大学生活を送った4年間、他のアルバイトは一切せず、みっちりパソコンショップ一筋で4年間も勤めていたら、何故だか18禁のゲームの仕入れに関してはほとんど僕に一存されてしまうようになっていた。別に18禁ゲームを好んでプレイする訳でもなかったのに、何故そうなったかは不明なのだが、僕の一言で仕入れたソフトが大抵売れ残る事無く売れて行く様子を見ていると自分でも不気味だった。人間、1つは他人より長けている物があると言うが、僕のそれは18禁ゲーム仕入れ能力だったのだろうか。神様、そうなんですか?この能力を更に磨いたらビルでも建つでしょうか?

 

さて、サポートセンターやパソコンショップに来たおかしな問合せを扱うサイトはいくつもあると思う。しかし、店員にもおかしな事を言う人はいるのである。今日はそんなお話しを。

僕が働いていた店では当時、パソコンの知識などほとんど持ち合わせないお姉さんが働いていた。そのお姉さんは基本的に事務仕事要因だったのだが、店が忙しい時はレジも打った。レジを打つだけなら難しい話しもほとんどされないから。お姉さんが店頭にいる時は大抵、レジ番としてカウンターの中にいた。ただし、カウンターにもやっかいな話しが持ち込まれる事はある。修理の依頼とか使い方が分からないという相談等である。その日もカウンターにいたお姉さんのもとに1人のお客さんがやって来た。そして、お姉さんとお客さんが何言か言葉を交わした後に、お姉さんは不思議そうな顔をしながらこちらにやって来た。

 

「あのー」

「はい?」

僕が答える。

「あちらのお客さんなんですけど・・・」

「どうしました?」

お姉さんはもう1度不思議そうな顔をして一瞬躊躇った後にこう言った。

「直貼りをやって欲しいとおっしゃるんですけど」

「へ?」

「直貼りです」

「じかばり?湿布でも貼るんですか?そんなサービスは無いなぁ」

 

一体何の事だろう。ある程度店頭スタッフとして経験を積んでいれば、お客さんが間違った事を言っていてもそれが何を言わんとするのかは把握できる物なのだが、この時はどう頭を捻ってもわからなかった。要領を得ないのでお客さんに直接聞いてみると、それは直貼りではなくリカバリの事だとわかった。OSの調子が悪いだかなんだかで再セットアップをやって欲しいと言う依頼だったのだ。

 

いくらパソコンの事が分からなくてもパソコンショップで直貼りはないでしょうに。

 

[完]


日記に戻る ホームへ