第40話「教師に憧れますか?」


僕には3歳上の姉がいる。

自慢じゃないが、姉は教師である。年に何度か、両親が旅行に出掛けたりすると、僕は姉と1つ屋根の下で過ごす事になる。見方を変えると、女教師と1つ屋根の下である。羨ましいですか?そうですか。自分は別に何とも思いませんがね。

以前、両親が旅行に出かけた時、冗談半分で友人の携帯電話に『両親が旅行に行くから今夜は女教師と2人きりだぞ』とメールを送ったら、『奇遇だな。家は両親が法事に出掛けたから男教師と2人きりだぞ』と返事が来た。そうだった。その友人の兄も教師だったのだ。こっちの方がネタとしてはオイシイではないか。くそ。悔しいから別の友人にも同じ内容のメールを送ったら、『じゃあ家の両親が旅行に行ったら、俺は女子高生と2人きりだな』と返って来た。ちくしょう。こっちの方は羨ましいじゃないか。女教師より女子高生でしょ?やっぱ。

 

随分と話しがズレた。元に戻そう。僕には姉がいる。そして教師なのである。

 

教師になりたいと切望している人がこんなサイトを見ているとは思えないが、身内に教師を持つ人間として、教師とはこんな人間であるというのをお教えしよう。

ある時、年頃の女性らしく姉はクッキー作りに勤しんでいた。僕が見た時はクッキーの型を作る段階まで進んでいた。平らに延ばした生地に型を差し込んで抜いていく。そして型を抜いて余った淵の生地を姉はどうするのか見ていたら、生地を円筒形に延ばし始めたのだ。正確には円筒形ではなく、薬のカプセルを細長くした感じと言えばわかっていただけるかも知れない。両手を擦り合わせて作るあの形だ。そういう形を作る事自体はまぁ何ら問題ない。問題は作るときの発言である。姉は何を血迷ったか、その細長い型を作りながら「うんこうんこ〜」と嬉しそうに言っていたのである。教員免許を持った年頃の女性がクッキーを作りながら「うんこ」である。そして、その「うんこ」共々クッキーを焼き始めるのであった。

 

そして焼きあがったクッキー。やっぱりと言うか、普通の形のクッキーは味見をする権利すら身内にはほとんど与えられなかった。分けてもらえたのは「うんこ」である。見立てた物に関しては特に考えずに僕が食べてみると、姉はこう言った。

「やーい、うんこ食べてやんの!」

 

そういうもんみたいですよ。教師って。そんな教師は今日で29歳。

ハッピー・バースデイ姉。独身最後の誕生日。

 

[完]


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