第33話「カレーが好きなのだ 5」


 カレーが大好きなのである。

 ところで、僕はあれこれと色々な物を食べたいとは思わず、気に入った物をひたすら食べ続けるタイプなのだ。どこかに出掛けた時も、新しい知らない店にチャレンジする事は少なく、大抵は知っているファミレスに入ってしまうのだ。少なくともファミレスならば、味を知っているし、知っている店ならばそれ以下の料理は出て来ないと言う安心感があるからだ。

 

以前もお話ししたが、僕がカレーを頻繁に食べる様になったきっかけは学生時代にしていたアルバイトである。

つまり、毎週2回以上は同じココ壱でカレーを食べていた訳なのである。あれは週2回ココ壱生活が2年目を経過した頃だっただろうか。存在するメニューは全て食べ尽くした僕は、例のごとく大抵の日は毎回同じメニューを頼むようになっていた。

僕はここで1つの実験を思いついたのである。そして翌日早速その実験を敢行した。

 

バイトで昼休みの許可を貰うと、僕はいつもと同じ様にいつものココ壱に行き、そしていつもの様にカウンターに座り、水とおしぼりを持ってきた店員に向かっておもむろに言うのであった。

 

「いつもの」

 

そう。「いつもの」である。高級料理店などに婦女子を連れて行き使用すると、好感度急上昇の「いつもの」なのである。あら、この人はいつもこんな高そうなお店に来ているのね、なのである。しかし僕ら庶民には普通言う機会の無い台詞である。ついでに言えば披露する相手もいない台詞なのである。憧れの「いつもの」なのである。

 

 ココ壱の店員は僕の台詞に

「いつものですね。しばらくお待ちください」

と言って去って行った。あれ?え〜と、これ、実験成功ですね。毎回毎回同じメニューばかり頼んでいる事は店員さんも認識していたみたい。これで、いつ婦女子を連れ来ても大丈夫ですね。

 そして僕は数十秒後には出てきたポークカレーの2辛と生卵(注)を食べ始めるのでした。しめて490円。

 

[完](注)現在生卵は終了しております。


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