第28話「ヤングメン駄目駄目」


まったく最近の若い者は駄目だな・・・

こんな台詞を言った事があるだろうか?言われた事も言った事も両方有ると言う人も多いだろう。

古代エジプトの遺跡からもこの台詞が書かれた物が見付かっていると何かで目にした事があるのだが、これが本当ならば人間は若輩者に対しては何らか憂う感情を抱く生き物だと言う事なのだろうか。または、自分より若い者が自分達の世代の人間より本当に劣っているからこの様な台詞を吐くのか。だとしたら、先人は物凄く優れた生き物だったと言う事になる。人類はどんどん劣化していると言う訳だ。もし人間がどんどん劣化しているのだとしたら、子孫を残す理由も無くなってしまうではないか。それはいけない。子孫は残すべきだ。少なくとも、子孫を残す為の行為は残すべきだ。

 

先日奇妙な祭りについて書いた後に思い出したのだが、近所には盆踊りの他にも奇妙な祭りがあったのだ。

それは毎年春にやって来る。文字通りやって来るのである。

僕の住んでいる町内の『こども会』のお話しである。『こども会』と言う単語がどこまで通用するのか知らないのだが、辞書にも載っているから一般的な用語として認識しても良いだろうか。

僕の住んでいる地区では、小学校の校区内をこども会の1つの大きなまとまりとして、それを幾つかのグループに分けている。このグループ毎のこども会の会費は、いろいろな方法で集めているのだが、その中で大きなウェイトを締めるのが、そのグループで回収した資源ゴミによるお金と春の祭りで徴収するお金である。

そう。春の祭りで子供たちが自分の地区を練り歩き、各家庭から会費を徴収して周るのである。

 

春の祭りの会費徴収システムについて詳しく説明しよう。

まずは、各グループのこども会で男子一団、女子一団の計二団を作り、それぞれが獅子舞に使う獅子の頭を持つ所から始まる。この獅子は基本的に頭に乗せたり被ったりはせずに手に持って歩く。この時点でちょっとおかしい事になっているが、ここはまだ突っ込み処ではない。

獅子を持った男子と女子の団体は、拠点を出発し、別々に行動する。そして自分の所属するこども会の地区に有る家を一軒一軒歩いて周るのである。各家庭から会費を徴収する為に。ちなみに、別々に行動するのは分業ではなく、単なる別行動である。

獅子の生首と小学生がやって来た家庭は、獅子の口にお金を入れてやる事になっているのだが、この時の金額に決められた額は無い。気持ちで入れれば良いのだ。

 

さて、子供達と獅子は、自分達の到着をどの様にして各家庭に知らせるのだろうか。

実は、玄関先で獅子の生首を持ち、子供達が一斉に「わっしょい」と叫ぶ事によって知らせるのである。「わっしょい」を連呼された家庭は、それで獅子と子供達が来た事を知り、お金を渡すのである。近所迷惑も甚だしい、なんとも迷惑極まりないシステムではないか。しかも、4月初旬の土曜日と日曜日に2日連続でやって来るのだ。何故2度も来てお金を取っていくのか?良く分からない。しかも別行動の男子と女子がそれぞれ2度やって来るのだから、合計4回もこども会に会費を徴収されるのである。

まったく、奇妙奇天烈な祭りではないだろうか?だいたい、獅子がいるぐらいでどこが祭りなんだかも疑問である。

 

今年の祭りの日にも我が家に獅子と子供達がやって来たらしい。

らしい、と言うのは、僕は自宅にいなかったから、来てもわからないのだ。

我が家はマンションなのだが、なんと子供達は玄関前のインターホンを押し、そこに向かって「わっしょい」を連呼するのだそうだ。なんと言う怠慢だ。しかも、今年はお金を準備しておくのが遅れた為、出て行くのにちょっと手間取っているほんの少しの間に留守と判断され、去って行ってしまったそうなのだ。僕が小学生の頃はそんな甘くは無かったと思うんだけどな・・・

 

 そう、僕らの頃は、何度「わっしょい」を連呼しても出てこない家庭に対しても、居留守の可能性を考え、執拗に「わっしょい」と叫び続けたものである。それこそ5分以上は粘っただろう。それでやっと渋々諦めていた。これが土曜日に続き、日曜日にも留守であろうものならその執拗さは更に増すのであった。

 室内に電気が灯いている等、居留守と判断されてしまっても仕方が無い家に対しては、もっと凄かった。何度「わっしょい」を連呼しても誰も出てこない場合、僕らは「わっしょい」を放棄して口々に叫ぶのである。

 

「お金を下さい」

呼び鈴の連打。

 

「この地域のこども会はこの様にして会費を集めているのです」

呼び鈴の連打。

 

「わっしょいと言われたら速やかにお金を出して下さい」

呼び鈴の連打。

 

「あなたの家は完全に包囲されている。」

呼び鈴の連打。

 

「居るのはわかっているんだ。おとなしく出てきなさい」

呼び鈴の連打。

 

だいたいこれが10分ぐらい続くのであった。今の小学生達にもこれぐらいやってもらいたいものだ。

まったく、最近の若い者は駄目だな。

 

[完]


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