第25話「2000/9/11」


 2000年9月11日。その日、集中豪雨が東海地方を襲った。

本州付近に停滞していた前線と台風14号の影響で、2日間で数か月分に匹敵する雨が降った。

 

 名古屋を流れる一級河川の庄内川が決壊し、西枇杷島地区が水没した様子はニュースで繰り返し放映された。

このショッキングな映像は、おそらく東海地方人には記憶に新しいだろう。当時大学生だった僕も、通学時は西枇杷島地区を電車で通過していた為、ニュースで報道される見慣れた景色が水没した様子に少なからずショックを受けた。更には卒業した高校がその近所だったため、同級生も西枇杷島地区には何人か住んでいたのである。

 

ところで、これだけの雨が降れば当然交通機関にも影響が出てくる。

名古屋駅にはJR、名鉄、近鉄の3鉄道が乗り入れているのだが、このほとんどが9月11日の夕方から機能しなくなった。

と言う事は、帰る術を無くした人達がかなり大勢いた、と言う事である。実際、当日駅にて寝泊りを強いられた人が結構いた様だ。

当時名古屋市内に勤めていた姉と父は、携帯電話がなかなか繋がらない中、なんとか合流に成功し、2人揃ってタクシーで帰宅した。道中、タクシーのドアの高さからちゃぷちゃぷという音が聞こえたと姉は語る。

 

さて。西枇杷島地区のニュースに心を痛めていた僕は、一体どこで心を痛めていたのでしょうか。そしてどこで22歳の誕生日を過ごしていたのでしょう。

実はその日、午前中大学に行き、用事を済ませ、その後遊びに出掛け、気付いた時には電車が止まっており、帰れなくなっていたのである。

もう帰宅が出来ない事に気付いた時にいた場所は三重県の鈴鹿市。名古屋までの交通手段である近鉄が、四日市駅まで何とか動いていると言う状況で、名古屋までは運行しておらず、もう自宅どころか名古屋へすら戻れなかった。

よって・・・僕は・・・バケツをひっくり返した様な大雨の中、行き場を失い・・・呆然と立ち尽くしたのでしたが・・・たまたま近所にあった・・・・大学の後輩の女の子の・・・実家に・・・泊めて貰ったのでした。

 そこでニュースを見、誕生日を過ごしたのです。

 

いやはや。はっ。お父さんですか。この度は大変お世話になります。あ、お母さんですか。いつもお世話になっております。あ、パンツ?え?旦那様の為に購入したのだけど、犬キャラが描いてあるパンツなど履いてくれないから僕にいただけるんですか?は。ありがたく頂戴いたします。うわあい、ぴったりだ。

 

 気疲れで過ごした僕の誕生日伝説、2年目でした。

 

[完]か?


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