笑の大学
何年か前の正月だったと思います。深夜番組でとある舞台劇を放送していました。
その舞台は堅物な検閲官と劇作家を演じる2人だけで繰り広げられる物語でした。これは三谷幸喜の香りがぷんぷんするなぁと思いながら大変興味深く見ていたのですが、深夜番組だっただけに途中で意識を失ってしまい、最後どうなったかは分からず終いでした。一体この舞台はどんなお話しだったのか、そして検閲官と劇作家はどの様な結末を迎えたのか。それが気になって仕方なかったのですが、その舞台というのがこの映画の原作になった三谷幸喜による『笑の大学』だったのです。
登場人物が2人しか居なくて、しかもその2人の会話を主軸にして進む舞台劇を映画にするだなんて、とんでもない事を考える人がいるもんだと感心し、同時に心配をしていました。密室で繰り広げられる2人の会話を面白さの主軸としたこの物語を、映画などという大舞台に持ち込んで映像として表現するに耐えられるのか?テレビ放送を見ている途中で意識を失ったにわかファンの癖に随分と偉そうな心配をしていたものですが、出来上がった映画はその心配をかなり上質に払拭していました。
脚本家である三谷幸喜は、この作品はコメディではないと言っていますが、やはり笑える所は笑えます。その笑わせ役を主に買っているのが、堅物検閲官・向坂。演じるは役所広司。そして検閲官に振り回される劇作家・椿を演じるのはSMAPの稲垣吾郎。椿の方は、概ね大げさな演技をしていれば椿を演じる事が出来たのだと思うのですが、問題は向坂。この役は非常に難しいと思っていたのですが、役所広司はしっかり演じきっていたと思います。ああも上手く観客の笑いを誘い出すのは、さすがプロの仕事だと感心しました。
この映画、最後はどう解釈したら良いのでしょうかね。映画を見ただけならハッピーエンドなのですが、パンフレットを読むと決してそうではなさそう。あまりにも悲しいではないか。って言うか、映画と舞台版はラストが違うらしいので、結局舞台版がどうやって終わるのかは謎のまま。ともかく、良い劇を見たなぁと満足しました。
2004年10月31日鑑賞