ヴィレッジ(原題:THE VILLAGE)

 


 B級テイストがぷんぷんする素材を見事にA級映画に料理して僕らを楽しませてくれるシャマラン監督の最新作の登場です。

 

 今作、予告編を観て抱いていたイメージでは、舞台となる「村」は森と隣接しており、その森には何か恐ろしい化け物が住んでいるのだが、村人や森に住む「彼ら」の生活は、お互いの領域に立ち入らないという協定の上に成り立ち、一応は平穏に過ぎている。しかし、何かをきっかけに協定が破られ、村に「彼ら」がやって来るから、さぁ大変といった感じだった。

 

 しかし実際観てみると、舞台となっている「村」はなんと、森に完全に囲まれており、「彼ら」のテリトリーに囲まれていることになっているのだ。つまり、数十人いる村人は、完全に自給自足を強いられている事になるのだが、これがどうしても僕には不可能に思えて仕方が無いのだ。

不可能だと思う理由は例を挙げればキリが無いのだが、そもそも立ち入る事の出来ない森のど真ん中にどうやって村が発生したのかが疑問なのだ。この疑問に関しては映画の中でちゃんと説明されるのだが、こういう疑問を観客に抱かせる時点でこの映画は既に失敗なのではないのだろうか?ラストにどんでん返しで今まで信じていた物が一気にひっくり返る事はもう周知の事実となっているのだけど、そういう展開であるならばなおさら物語の主軸に関して観客に疑問を持たせるような作りではいけないと思うのだ。

 そりゃー、ラストのどんでん返しではそれなりに驚きましたけどね、「村」の設定をもっと緻密に作りこんでおかないと、観客は「実はそうだったのかー」ではなくて「なるほど、そうじゃないと説明付かないよね」としか思いません。

 

 前作の『サイン』は特に賛否が分かれたと思いますが、僕は前作でこの監督の作品が大好きになりました。

B級映画に使われる素材を、B級映画の香りをぷんぷんと残したままA級テイストに作り上げてしまう手腕に僕は惚れ惚れです。

その「魅せ方」は今回も健在で、物語はともかく、非常に楽しく観る事が出来ました。

 

 精神異常者のノアを演じる俳優が、妙に良い演技をするなぁと思っていたら、『戦場のピアニスト』でアカデミー主演男優賞を獲った、エイドリアンだったんですね。納得です。あと、ヒロインのブライス・ダラス・ハワードも良かったです。

 

 ちなみに余談ですが、この映画を観に行く前日にDVDで観た韓国映画『純愛中毒』も、ラストにどんでん返しが待っているのですが、この映画同様に主軸が弱すぎて、どんでん返しの後には「えー」という感想しか沸いてきませんでした。

 

2004年9月23日鑑賞


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