あらしのよるに

 


 ある嵐の夜、雨宿りの為に廃屋に逃げ込んだヤギのメイ。

その廃屋に後から雨宿りの為にやって来たのはオオカミのガブ。真っ暗な廃屋の中で、メイはガブをヤギだと信じて話し掛け、メイがオオカミだと信じて話し続けるガブ。2匹は、お互いの顔が見えないのだけど仲良くなってしまう。「似た者同志ですね」と意気投合した2匹は、翌日同じ場所で改めて会う約束をし、顔を知らぬままその晩は分かれるのであった。

 翌日、約束の場所に現れたのは、食う・食われるの関係であるヤギとオオカミであることに2匹は驚くのだが、ガブはエサを目の前にしつつも友情を取ろうとする。2匹は秘密の友情を築こうとするのだが、その噂はたちまち広がり、互いの仲間にまで届いてしまう・・・

 

 この映画の原作となったベストセラー絵本は、(読んだことがないけど)2人が嵐の夜に約束をする所で終わっている(と思う)のです。しかし、続きが読みたいと言う要望に応えて雪の中のエピソードまでを5冊に分け出版。計6冊で完全完結だったはずなのですが、更に続きを読みたいと言う要望が多く、作者はそれでも続きを書くつもりはなかったそうなのですが、とある小学生から送られてきた1通のメールを読んで心を動かされ、7冊目を書いたそうです。

 その7冊分全てのエピソードを1本の映画にまとめた訳なのですが、6作目で完全完結していた物語に付け加える形で7作目を書いた事が仇になっていた様に感じました。原作者にとって、本来のクライマックスだった6作目の部分が一番の泣かせ処だと思うのですが、当然それが映画のラストに来ないのです。その後で付け加える形で書いた7作目のせいで、あれ、まだ続くの?って感じになってしまいました。

 

 ガブを演じる中村獅童とメイを演じる成宮寛貴。どちらも超絶好演でした。

特に、「ガブがメイを食べずに友情を貫き通す理由」を、成宮寛貴は声で充分に表現していたと思います。つまり、ガブの苦しみが観客に非常に伝わって来たと言う事ですね。中村獅童の芸の幅の広さにも驚きました。

 

 この映画、かなり高度な技術を使って作られていると思うのですが、その技術がしつこくなく、絵本の温かみを上手く表現できていると思います。

泣かせ処をもうちょっと工夫できれば、近年では最高レベルのアニメーション映画になっていたのではないでしょうか?少なくとも、最近のディズニーのレベルは超えていると思います。

 

2005年12月10日鑑賞


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