23話(ユウナ+ハイネ)


 まずは前半戦、カガリのAA内部での回想とか、色々くるものはあったのですが、一番
印象に残ったのは実はユウナ(笑 いや、いままでどちらかというと、典型的?三枚目
キャラの彼を生暖かい目で(こら)見ていたのですが、今回はじめて、彼という人物に注
目してみたい気分にさせられました。
 確かに自己愛激しいし、むらっけはあるしで、国家元首の代役は無理だろお前、みた
いな彼ですが、やはりちゃんと元首(代理)としての意識を持って戦場に出てるんだなぁ、
と。

 あれです、あの「今更はいそうですかって、やめるわけにはいかないんだよ!」…やろう
としていたことはとんでもないわけですが、あの一言に、不覚にも唸らされました。自分が
今国を背負っているって言う意識がちゃんとあるんですねぇ。とはいえ、その直後に「僕の
カガリがー(以下略)」だの「早く打てよ!じゃないとまた言われちゃうじゃないか!」だの、
あの状況で数々の迷台詞が飛び出す辺り、結局は命と立場惜しさの言動であることが露
呈しているわけですが(苦笑) でも行動の是非はともかく(っていうか、あからさまに非だ
ろ)、気持ちだけは元首代理としての自覚があったからこその台詞だったのではないかと
思います。
 頭角に立つものには、(いや、立つものだからこそ、か)退く勇気も必要ですけどね。
 あのシーンを見ていて、その物言いが無性に懐かしい感じがしたんですが、放映後にやっ
と気付きました。種終盤で大暴れしてくれたアズラエルを髣髴とさせられたんです。
 ヤキン・ドゥーエ戦での「あんなものを、あそこに残していくわけにはいかないんだよ!!」
…これだ!これに似てたんだ!
 あのときのアズラエルを髣髴とさせられるような片鱗をユウナが持っているのだとしたら、
もしかしたら展開如何では、彼も化けるのかもしれませんね。って、自分で書いていて、か
なりありえない気もしますが(汗


 気を取り直して、23話後半戦。後半戦一番の衝撃といえば、やはりハイネ。彼の死に
様を目の当たりにした瞬間は、もう悲しいとかそういう感覚を飛び越して、ただただ絶句す
るしかありませんでした。
 欠番が決定していたのは、以前から噂に聞いて知っていたんです。キャストが西川さん
である以上、嫌な言い方ですが、番組に長居できないキャラになってしまうだろうということ
も解っていました。
 でも、それがまさか、あんな死に様になってしまうとは思ってもみませんでした。

 人は、死んだらそれっきりです。その生涯の舞台が2次元だろうが3次元だろうが、基本
的にそれは変わらない。2次の世界では、その作品の世界観によっては例外的な「現場復
帰」が許されるケースもありますが、それは非常に稀な例です。
 そして、当然ながらガンダムの世界に、そういった「現場復帰」はありえません。戦場を舞
台にしている以上、そこは非常にリアルな仮想現実が待ち受ける世界。登場するキャラの
誰もが、死んだらそれきりだと肝に銘じているからこそ、怒りもするし怯えもする。
 その覚悟が、人の持つ無限の可能性を引き出すこともあれば、極限状態に置かれた人間
の醜さを曝け出しもします。そして、その両極に位置する感情を、良くも悪くも浮き彫りにして
くれるのが、ガンダムの魅力の一つであると思っています。

 前置きが長くなりましたが、そこで今回のハイネの死に様です。
 視聴者がメディアから受ける「ショック」には様々なタイプがあると思いますが、「愕然とした」
「呆然とした」…これも、一つのショックの形でしょう。今回のハイネの一件は、個人的主観で
申し訳ありませんが、まさにこのケースだったのではないかと思います。

 「まさかこの人が、こんな事で(こんなところで)…」視聴者にそう思わせたのなら、それは狙っ
てショックを与えた製作者サイドの(嫌な言い方ですが)成功例の一つです。ですが…
 すみません、けして非難をしたいわけではないんです。ですが、どうしても考えてしまうのです
よ。
 ハイネは本当に、そういった意図をふまえて作られ、そしてあそこまで立ち上がったキャラであっ
たのかと。


 つまり、逆を返せば、「何故それがハイネでなければならなかったのか」更に言うなら、「それが
ハイネである必要があったのか」というところに、釈然としないものを個人的に感じているわけです。

 死んでしまえばそれきりの、その死に様に、良いも悪いもありませんが…でも、あれはハイネの
受け持つべき役どころではなかったような気がするのです。
 戦渦に巻き込まれ、身の回りに当たり前のように存在した、親しい人達が消えていく。それによっ
て、残された者たちが背負わなければならないものも増えていく。そんなふうにして、背負わされた
ものが自分の許容量を超えたとき、その人の中で、何かが壊れます。
 それは、理性であるかもしれないし、今までその人が培ってきた価値観であるかもしれない。でも
いずれにせよ、その喪失が、その人がなんらかの変貌をみせる引き金となることは、否めません。

  前作種において、その引き金となったキャラクターがニコルとトールでした。それだけ近しい、親し
い存在が、自分の目の前でああまで壮絶な最期を晒す結果になったからこそ、気の置けない親友
同士だったキラとアスランが、互いに殺意を抱くまでの精神状態に追い込まれていったのでしょう。
  Dがその続編として描かれている以上、今後の展開のためには、そしてその先に予定されてい
るはずの大団円を向かえるためには、また種の時と同じような障害を乗り越えることが必要不可欠
です。その為の引き金となったのが、今回のハイネであると、製作者サイドの意図をそう穿つことは
簡単ですが…。

  でも、しつこいようですが繰り返します。それがハイネである必要が、ありましたか?彼というキャ
ラクターの散り様は、前作のニコルやトールと同じだけの重さを持っていましたか?



 兄のように慕っていたアスランを「敵」の刃からかばうために、自分が助からないと知りながら、ニ
コルは自ら、対峙するMSの間に割って入り、そして散っていきました。そこには、何をおいてもアス
ランを守りたいという彼の強い意志と覚悟がありました。
  友人のキラにばかり戦わせることが忍びなくて、自らも戦場に出ることを選んだために、まだほん
の駆け出しのパイロットに過ぎなかったトールは、戦闘の巻き添えを受けて散っていきました。彼の
死に様は、先走りすぎた思いが戦場という現実を凌駕できなかった、その虚しさと憤りを、視聴者の
中に残しました。

  では、ハイネの場合はどうでしょうか。同じでしたか?これは私の主観に過ぎませんが……同じで
は、なかったと思います。
  勿論、主要キャラクターもストーリー展開も前作とは違うのだし、全く同じ感銘や衝撃を受ける必要
などないわけですが。ただ、キャラクターの生き死にを転機に、残されたキャラクターの成長を促したり
変貌を狙う意図があるのなら、相応の重みを見せて欲しいと、個人的には思うのです。
  「まさかこの人がこんなところで(こんなことで)…」視聴者にそう思わせるのも、れっきとしたショック
の形。まさかの展開を見せ付けるからこそ、ガンダムシリーズが命題としてきた「戦争」への衝撃や厭
悪が際立つ結果となることもあるでしょう。

  ……でもごめんなさい。どうしても思ってしまうんです。これは違う。ハイネは違う、と。



 ハイネは、前作種でのヤキン・ドゥーエ戦を戦い抜き生き残り、そして今作Dではフェイスの称号まで
受けた、ザフト軍有数の英雄です。そして公表されていないので定かではありませんが、現在ミネルバ
に乗艦している赤や、同じフェイスのアスランとは、それなりに年が離れているでしょう。
 つまり、それだけ実戦経験が豊富な「ベテラン」であるということです。
  そして当然ながら、心底ポジティブなものの考え方をする彼が、生き急いでいたとは到底思えません。

 あれだけ泰然と構えて戦場へ出て行った彼が、死を覚悟するほど(もちろん戦場に出る以上、いつで
もその覚悟は持っていなければならないのでしょうが)あの場が深刻な状況であったとも思えません。

 それだけ前向きな思考回路を持ち、且つ、幾多の激戦を生き延びてきたベテランエリートが、あの程度
の(というと言い方が悪いですが)戦局で、周囲の様子も満足に把握できなくなるほど、我を失ったりする
ものでしょうか。……それはありえないと、私は思います。


 戦場という、異常な興奮状態を強いられる環境で、時として頭に血が上ってしまうのは仕方がない。
 ですが、それを理性の力で抑え、冷静で的確な判断を下してきたからこそ、今日のフェイスにまで上り詰
めた彼があったのではないでしょうか。
 眼前のフリーダムに気をとられ、今まで対峙していた敵(ステラ)が、まだ自分の背後にいることさえ失念
してしまう。手遅れになる距離まで、背後から敵の接近を許しておいて(結果として、ハイネから割り込んだ
形になってしまったわけですが)、なおかつ攻撃を受ける寸前まで、その存在に気付けない。

 ―――そして、致命傷を自ら確信した瞬間、半ば呆然とした、信じられないといった表情で、散っていく……
自分の最期を悟らされて、それでも悔しいだとか無念だとか、そんな激情を垣間見せる余地すらなく。ただあっ
けなく。

  ……ごめんなさい、非難したいわけではないんです。製作者サイドの意図が那辺にあるか憶測の域を出な
い以上、これはファンの主観を押し付ける、穿ったものの見方であるとわかっています。
 でも……これが、引き金ですか?そのために、ハイネはあんな納得の行かない形で死んでいかなければな
らなかったのですか?それでは、あまりにもやりきれないです。

  ハイネというキャラクターに関する制作上の裏事情(とは言わないか…表においてあるんだし…)を知ってか
ら、私の中で、やりきれない気持ちは更に大きくなりました。だったら何故、ハイネというキャラは必要だったん
だろう……

 セリフつきでの登場は、ほんの数話分。たったそれだけの出番の中で、あれだけ鮮烈に、その存在を印象づ
けていったキャラクターであるからこそ、その散り様は惜しまれながらも納得のいくものであってほしかったと、
心底思います。



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