faith11.75





 「…っふ……んぅ……っ」


 口づけを深くしながら寝台の上へと再び横たえたルルーシュの体は、傍目に
それと解るほどに、堅く強張っていた。


 不用意に触発しないようにと、背中側からゆっくりと伸ばした掌に、早鐘を打つ
ルルーシュの鼓動が伝わってくる。その緊張を気の毒に思いながらも胸の頂きま
でもう片方の手を這わせると、組みしいた体が跳ね上がり、過剰なまでの反応を
示した。

 快感による反応では、きっとないのだろう。異性との経験さえないであろう体
で、性を同じくする自分の欲を受け入れようとしているのだ。生理的な抵抗に身
を固くするルルーシュの胸の内は、これから彼にそれを強いようとしているロロ
にも容易に予想がついた。


 だが……突きつけられた衝動に頬を紅潮させ、口付けが解かれると同時に、そ
んな自らの容色をロロの視線から庇うかのように顔を背けながらも、それでもル
ルーシュは、制止の声を上げなかった。
 ただ黙ってされるがままになるその姿は、この行為を容認した彼の覚悟の程
の表れのようで―――仕掛け側であるロロの情動に、同種の覚悟を釘さしなが
らも後押しする。


 痛みを覚えさせないようにと慎重に、たどり着いた弾力のあるそれを指先で刺
激する。押しつぶしたり指の間で擦り合わせらりするうちに、わずかに芯の残って
いたそこは簡単に立ち上がった。
 見下ろしたルルーシュの表情は、相変わらずそむけられたまま埋めた枕の陰に
なって、その全てを見通すことはできなかった。ただじっとこの現状を受け入れよ
うとしているその従順さが、ロロの内面にわだかまった衝動を尚のこと駆り立て
る。


 これでは、次に自分が何をしようとしているのかその眼で確かめることもできず、
自分で自分の緊張を煽るばかりだろうに……思わず苦笑しながらも、そんなルルー
シュの覚悟を無視することなく、指で育てた胸の頂きに、ロロはその唇を寄せた。



 「…っ…ぁ……っ?」


 予想を違えることなく、突然自らを襲ったそれまでとは別種の感触に、ルルーシュ
の体が跳ねる。その喉奥から押し出された、意外の念の色濃い吐息交じりの声
に後押しされるようにして、ロロは咥えたそれを舌先でねぶった。
 同時に、もう片方の頂きにも指を添え、先ほどよりも強めに揉みこんでは刺激す
る。
 再びルルーシュから上がった声は、今度は明らかに、性的な色合いを感じさせる
類のものだった。


 「……気持ちいい?」

 いったん唇を離し、耳元でそう囁くと、頑なに逸らされたままの端正な顔立ちが、
更なる朱の色に染まる。顔を見せて、と続けると、その体にグッと力が込められた
のが分かった。
 嫌だと訴えんばかりのその意志表示に、ロロはそれ以上無理強いすることなく、
ルルーシュを宥めるかのように組み強いた体に手を這わせた。やんわりと撫でる
動きを繰り返すうちに、次第にルルーシュの強張りが解れてくる。

 「兄さん……ルルーシュ」


 促すようにその名を呼ぶと、それまで傍らの枕に押し付けるようにして隠されて
いたルルーシュの困惑した容色が、ようやくロロへと向き直った。
 目許まで赤く染めた、どこか泣きそうな表情で、それまで押し黙っていたルルー
シュが躊躇いがちに口を開く。


 「……俺は、いいから……」

 思うままに先に進めと言外に促すその水向けは、向けられた表情と全く噛み合っ
ていない。そこにルルーシュの精一杯の虚勢を感じ取り、返すロロの笑みも自然
ほろ苦いものとなった。

 「……うん。でも、今のままじゃ兄さん緊張しすぎてて、何やっても辛いだけだと
  思うから」

 もう少し、このままで―――言い置くと、ロロの手が再びルルーシュへと伸びる。
体内に燻ぶる先刻までの欲情の余韻を煽るように、含みを持たせた動きで這い回
るその手が、固く言葉を噤んでいたルルーシュの息を徐々に荒げていった。
 ルルーシュの体から完全に力が抜けたのを見計らって、紅く色づいた肌を伝い下
りた指が、新たに芯を持ち始めたその場所に、待ちかねたように絡みつく。


 「ふぁっ…は…っ」

 明確な意思によって育て上げられたルルーシュの兆しは、与えられた刺激に容易く
その熱を取り戻した。ぬめりを帯びたそれを尚も煽れば、ほどなくして組みしいた体に
力がこもる。
 逐情の予感に打ち震える性の証から、堪えることのできなかった先走りがどっと溢
れた。



 「…ぁ…あぁ…っ…」
 「兄さん……先に、進むよ?」
 「…んっ…ロ…ロ……?」
 「色々驚かせちゃうと思うけど、できれば気を楽にしてて」


 わだかまる悦楽に、半ば陶然となった様相のルルーシュに顔を寄せ、その紅潮し
た耳朶に吐息交じりの囁きを吹き込む。
 言葉に対してか、耳朶をくすぐった吐息に対しての反射的な反応だったのか、一
瞬その身を身じろがせたものの、ルルーシュは抗わなかった。

 進退の全てを委ね切ったその従順さに後押しされるように、先走りに濡れそぼる
ルルーシュ自身の滑りを指先に絡め、ロロの手が、それまで触れることを避けてい
た、奥まった秘所へと裏筋越しに伝い下りた。
 一瞬の躊躇いの後に、辿りついたその入口周辺を円を書くように指でなぞれば、
弾かれたようにその腰が跳ね上がる。


 「っ…!な…ぁ…っ」
 「ごめんね。最初は気持ち悪いかもしれないけど……」

 我慢して、と言い置くと、ロロは先走りの滑りを借りて、まだ固く閉ざされたその
場所に、這わせた指先を潜り込ませた。

 「んぁあ…っ」

 腰を跳ね上げ、体内に入り込んできた異物を押し戻そうとする、内と外からの抵抗
を覆いかぶせた上体で抑え込みながら、ロロの指先が、奥まった場所の更に先へと、
慎重に押し進められていく。
 反らされた喉奥から放たれた悲鳴のような声には、明らかな嫌悪の色が滲んでい
た。


 「…は…くぁ…っ…や…っ」
 「気持ち悪い?ごめんね、もう少し……」
 「はぁ…っ!よせ…っ…やめ…っ」

 言葉とは裏腹に、添えられた指をもう一本ルルーシュの中に潜り込ませたロロは、
嫌悪感に身を固くする彼の内部を解きほぐしにかかる。二本の指を中で押し広げるよ
う動かすと、震えを帯びたルルーシュの手が、耐えられないと訴えるかように自らの口
元へと持ち上げられた。

 本来受け入れる機能など持たない器官を、常であればありえないやり様で中から押
し広げているのだ。身の内から湧きおこる生理的な嫌悪は筆舌に尽くせないものがあ
るだろう。
 血の気の引いたルルーシュの容色はきつく歪められていて、嘔吐の発作を堪えよう
とでもしているかのようなその様子に、ロロは体内に埋め込んだ指の動きを止めた。

 「……大丈夫?」
 「……っ」
 「無理?吐きそう?我慢できないほど辛ければ、ここで止めるから……」


 それは、ルルーシュの更なる覚悟を煽るために口にした、揶揄ではなかった。本来
男を受け入れるようにはできていない体にこれ以上無理強いさせることで、ルルーシュ
の中に拭えないトラウマを残すことだけはどうあっても避けたいと思う。


 向けられた言葉を、己の内でどう咀嚼したものか……ゆっくりと開かれたルルーシュ
の双眸が、及び腰にロロへと向けられる。味わわされた衝動を物語るかのように、そ
の目尻から押し留められなかった滴が溢れ落ちた。

 もうやめよう、やめてくれと……そう言われるのだろうと、どこかせつない思いでロ
ロは覚悟した。自分の中で、膨れ上がった欲がどれほど叫ぼうとも、相手に苦痛を
強いるだけの、完全に一方通行の行為なら意味がない。

 だが……再び視線をそらせてしまったルルーシュは、小刻みにその総身を震わせ
ながらも、拒絶の言葉を返さなかった。


 「……いい、から……続けろ…」
 「兄さん?」
 「続けろ!何度も言わすな!」


 叫びと同時に、新たな滴がそのすべらかな頬桁を伝い落ちる。それがどれほどの
思いでもって成された叫びであったのか、否応なく思い知らされ、ロロは我知らず
息を呑んだ。



 兄の苦痛を慮って、自分から手を引くことは簡単だった。後は自分が、自ら煽り
上げてしまったこの衝動を宥めればいい話だ。そうすれば、この先の行為で彼の
心身を傷つけずにすむ。
 だが……

 一度は一線を踏み越える覚悟を固めたとはいえ、体を重ねる行為が自分達に強
いる勇気は、想像の域を超えていた。ことに、自分を受け入れなければならないル
ルーシュにとっては、それはどれ程の衝動との戦いであった事だろう。


 そのルルーシュが……明らかな苦痛に顔を歪めながら、それでも涙交じりに、行
為の続きを要求していた。


 何度も言わせるなと叩きつけられた以上、もうこれ以上、彼の意思を確認するこ
とはできなかった。彼は、自らの意志で、自分達が作りだそうとしているこの関係
を選んだのだ。
 ならば―――あと必要とされるのは、自分自身の意志だけだ。ロロの選んだ進
退で、この先の自分達の相関は形を変える。



 兄の為だと言い繕って、自身の決断から逃げることは、もうロロには出来なかっ
た。



 「……うん。ごめんね」



 体内に埋め込んだ指を再び動かしながら、ロロはルルーシュの耐える苦痛を少し
でも和らげようと、その快感の中枢である場所を探り当てるように内壁をなぞり上
げた。知識として身につけているというだけで、実地で試したわけではなかったそ
の場所を指先で探り当てるのは容易なことではなく、見当違いな場所を迂闊に刺
激しては、ルルーシュに反射的な悲鳴を上げさせてしまう。
 焦りに無意識の汗をかきながら、その内部を根気強く慣らし続け……ロロの指先
が、ようやっとそれまでとは幾分感触の異なる部分を探り当てた。

 様子を見るかのように二、三度軽くなぞってみれば、ルルーシュの体が僅かに跳
ねる。その反応に後押しされ、今度は明確な意志で以て、触れたしこりのような場
所を指先で強く押し上げた。

 「…ああぁ…っ!?ぁや……な…っ」

 全身で大きく反応を返しながら、ルルーシュの喉奥から堪え切れなかった悲鳴
が漏れる。明らかにそれまでとは色合いの異なる艶めいた声に内心胸を撫で下
ろしながら、ロロは更なる刺激を与えるように、探り当てた快楽の中枢を二本の指
で挟み込み、爪先で引っ掻いた。


 「驚かなくていいよ。誰でもこうなるから……」
 「はぁ…っ……ロロ…や……んあぁ…っ」

 ルルーシュから上がる喘ぎが次第に切迫したものとなっていき、連動するように、
立ち上がった彼の性の証が小刻みに震えだす。射精の衝動が彼を限界まで追い
上げているのは、明らかだった。

 反らされた喉奥から余裕のない悲鳴が上がり、脈動するルルーシュのものがド
クリと跳ねる。
 その刹那―――伸ばされたロロの手が、逐情を阻むようにその根元をきつく握
りしめた。


 「ぅあ…っ…は、なせ……はな……ああぁ…っ」

 吐精の瞬間を阻まれたのだ。その身を焼く衝動は筆舌に尽くせないほどだろう。
性を同じくする者として、ルルーシュの味わわされた苦痛を容易に理解していな
がら、それでもロロは、ルルーシュを放さなかった。


 「は…っあぁ…っ…ロロ…っ」
 「ごめん、苦しいよね?でも今いっちゃうと、この先持たないと思うから……」
 「んぅ…っ…や…よせ……っあ…っ」
 「ごめんね」

 短く詫びると、体内を駆け巡る熱に理性を飛ばしかけたルルーシュの下肢を、
割り込ませた自身の体で大きく開かせる。そのまま彼が我に返る間を与える
ことなく、取り出した自身の情欲を、引き抜いた指と入れ替わりにひくつく場所
へと押し当てた。
 後腔に感じる熱に身を竦ませたルルーシュの動揺を敢えて無視して、あてがっ
たものを一息に押し入れる。


 「ぅあああ…っ」

 身を焼く衝撃に見開かれた若紫の双眸から、堪え切れなかった滴がどっと溢
れた。引き千切らんばかりの勢いで、傍らのシーツを手繰り寄せた震える手が、
彼の味わわされた衝動を物語る。


 「…あ……ぁ…っ」

 内臓を押し上げられる衝動と痛みに、ルルーシュの総身が小刻みに震えを帯
びる。同時に、押し入った欲望を拒絶するように押し戻そうとする内部の締め付
けに、仕掛けたロロの額にも汗の粒が湧いた。

 「…っ…ごめん兄さん……ゆっくり息を吐いて、力抜いて…」

 強張ってしまったルルーシュの体に宥めるようにその手を這わせ、挿入の衝
撃で幾分勢いを失ってしまった彼自身を緩く握りこんで刺激する。やんわりとし
たその動きに促され、ルルーシュが咄嗟に飲み込んでしまっていた息を吐き出
すと同時に、ロロは中途半端に埋め込んだままだった自身をその際奥まで押し
進めた。


 「っひ…ぃ…っ…」
 「ごめんね…できるだけ苦しくないようにするから……大丈夫?」
 「…ぁあ…っ…だいじょ……じゃない…っ」

 激しく首を打ち振る汗に濡れた髪が、シーツの上でバサバサと音を立てる。
その動きに引きずられたように、その眦を押し上げる滴が空へと飛び散った。

 それまで経験したはずもない身を焼く痛みは、どれほどの衝動でもってルルー
シュを苛んでいることだろう。それでも、大丈夫じゃないと言いながら、制止の
言葉だけは口にしないルルーシュの胸の内を思い、ロロは感傷めいた痛みに
ぐっと奥歯を食いしばった。

 どうあってもルルーシュの体に負荷をかけると解っている行為なら、せめて
少しでも彼の苦痛を軽減してやりたいと思う。
 握りこんだ手の中で徐々に固さを取り戻していくルルーシュの熱を煽り、無
防備に晒された胸の頂きを押しつぶすようにして刺激する。そうやって苦痛以
外の感覚を与え続けているうちに、固く強張っていた体からようやく力が抜け
ていった。

 連動するように弱まった内壁の締め付けを逃さず、ゆるりとした腰使いでロ
ロも埋め込んだ自身を律動させる。瞬時に跳ね上がった腰を抑え込みながら、
彼の快楽の源である場所を再び探るように、その内部に自身を擦りつけた。
 断続的に突きあげられる衝動を懸命に耐え凌ごうとする、ルルーシュの汗と
涙に濡れた容色が胸に痛い。深い意図があった訳ではなく、誘われるように
その濡れた眼許に唇をよせかけて……組み強いたルルーシュから、突然切
迫した喘ぎが上がった。


 「っ…兄さん?」

 繋がった体勢のまま上体を倒したことで、ルルーシュにいらぬ衝撃を与えて
しまったかと身を起こす。と、再び悲鳴じみた声を上げたルルーシュの様子に、
その身の内で何事が起こっていたのか、ロロはようやく合点した。

 慎重に角度を変えながら、再びルルーシュの中に自身を押し入れる。と、
されるがままに投げ出されていた足が、膝先から大きく跳ね上がった。

 「……良かった。ここ?」
 「あっ!…あ…や……ぁ…っ」
 「大丈夫みたいだね……動くよ?」

 狙った動きで集中的にルルーシュの弱点を突きあげると、泣き濡れた表情
で喘ぎを放ったルルーシュの腕が、シーツをもぎ離して覆いかぶさるロロの背
へと回される。限界の見えた悦楽の程を訴えるように、汗に滑る背を通って
首裏へとしがみついてきたその姿に、ロロの身の内にわだかまる欲も一息に
臨界へと押し上げられた。


 「んぁあ…っ……は…っ…ロロ…も……ぁや…っ」
 「うん……いいよ、いって?」


 抱き合った互いの体に挟まれたルルーシュの欲望を、腹で押しつぶすように
して刺激する。絞り込むように自身を締め付けてくる内壁の動きに自身も限界
を悟りながら、ロロは小刻みに痙攣を繰り返す腕の中の体に、最後の引導を
与えるべく埋めた自身を大きく抉りこんだ。

 「…っひ……っ?」

 ルルーシュの全身が硬直し、逐情の予感に、投げ出された足が爪先までピ
ンと反らされる。


 「…っ」
 「―――っや……ぁあああああ…っ」

 きつく締めつけてくる内壁から咄嗟に自身を引き抜くと、その刺激が後押し
になったルルーシュの欲望が、それまで堪えに堪えていた悦楽を弾けさせた。
 自らの胸や腹を欲の証で汚すルルーシュの痴態に誘われるようにして、最
後の自制で限界の瞬間を堪えたロロの情欲もまた、ルルーシュの腹に白濁
としたものを放つ。




 どちらのものともつかない荒い息遣いの音が、情交の予熱にわだかまる
室内の空気に浸透した。
 すぐには口も聞けないほどの衝動に大きく息を弾ませながら、ロロは組み
強いたままのルルーシュと思いだしたように視線を交わす。


 「…っ…にいさ…っ…大丈夫…?」


 同じように荒い呼吸を繰り返しながら、それでも辛うじて意識を保っていた
らしいルルーシュは、茫然とした様相で、ロロを通り過ぎたその視線を空に飛
ばしていた。
 改めてその名を呼ぶと、初めて経験する性交の余韻に、生理的な涙に濡
れたままの双眸が、ゆっくりとロロへと向けられる。

 その口元が、何事かを形どるようにわずかに震えた。

 「兄さん?」


 言葉にならないその声を聞き返そうと、震える唇へ耳を近付ける。
 だが、極限の困憊状態にあるルルーシュには、それ以上行動を起こせる
だけの余力がなかった。

 苦笑を思わせる動きで僅かにその口元を歪めながら、それまで曲がりな
りにもロロへと向けられていたルルーシュの双眸が、ふと遠くなる。
 その変化に気づいたロロが再度名を呼ぶよりも先に―――その瞼を閉ざ
したルルーシュは、既に自らの意識を手放していた。




                            TO BE CONTINUED...


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