第四回目の会

 開催日時:2006年10月7日(土)12:00〜15:00

 場 所:銀座「CLUB−NYX」

 参加人数:15名

 テーマ:シャンパーニュ(Champagne)

 内容 ワイン:シャンパーニュ・白「シャノワーヌ・プルミエ・クリュ」
        シャンパーニュ・ロゼ「シャノワーヌ・キュヴェ・ロゼ」
        シャンパーニュ・白・辛口「ポメリー・ブリュット・ロワイヤル」
        シャンパーニュ・白・半甘口「ポメリー・ドライ・エリクシール」

    食 事:牡蛎のシャンパーニュゼリー寄せ
   (ランチ)鳥肉のソテー・クリームソース
        クレープ・パイナップルのせ

 Via Vino第四回を開催しました。今回は、これまでの会のアンケートで最も希望が多かった、シャンパーニュを楽しむことになりました。
 いくつか事情が重なって、参加予定の方のうち数名が残念ながらキャンセルとなりましたが、それでも15名の方々に参加いただき、シャンパーニュばかり4種類というあまり例のないセレクトで、楽しい会になりました。
 それではワインエデュケーター宇都宮氏の解説をぜひご一読ください。

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第4回目のワインについて
はじめに

 今回はシャンパーニュを取り上げました。アンケートで一番要望の多かったテーマですが、ある意味発泡性ワインであるシャンパーニュは、他のフランスワインとは楽しみ方や買われ方だけではなく、本質的に異る考え方に基づいて作られていると言えます。食事の最初から最後までシャンパーニュで通すという、なかなか普段は味わうことのない形でランチを楽しみながら、その違いについて考えてみました。
 ボルドーやブルゴーニュと同様、シャンパーニュも元来は土地の名です。飲むシャンパーニュはLe Champagne、地名の方は女性冠詞を付けてLa Champagneと呼びます。日本ではよく「シャンパン」「シャンペン」などと呼ばれますが、これは英語読みです。クラレットやバーガンディといった英語読みよりも、ボルドーやブルゴーニュといった現地でのフランス語読みが浸透しているので、「シャンパン」ではなくあくまで「シャンパーニュ」で通そうと思います。シャンパーニュはパリの東、ブルゴーニュの北にあり、四つの県からなりますが、シャンパーニュ生産の75%はマルヌ県にあり、その中心都市はランスとエペルネです。シャンパーニュはもともと「平原」を意味します。英語の辞書を引くと、champagne(シャンパン)のすぐ下にchampaign(チャンペイン:平野、平原)という言葉が並んでいます。実際標高は低く、北緯49°に位置し、平均気温は10℃程度で、まさにブドウ栽培の北限にあります。土壌は石灰質の豊富な白亜土壌で、ワイン用ブドウの生育に適しているだけでなく、古代ローマ人が道路を舗装する白亜を掘り出した後に残された広大な洞窟が、絶好の貯蔵庫になりました。

 シャンパーニュの発泡性ワインとしての最大の特徴は、ワインを作って瓶に詰めてから、瓶の中で2回目の発酵を行い、発生した炭酸ガスを閉じこめることにあります。これにより、普通の炭酸飲料では味わえないきめ細かい泡が楽しめるわけです。通常の炭酸飲料はガスを後付けで注入していますし、ビールも巨大なタンクで製造する関係上、発酵で発生した炭酸ガスを回収し充填前に注入するという方法を取っています。その意味では、シャンパーニュはその自然な味わいを作りだすために非常に手間のかかることをやっている訳です。また、使用する品種も限られており、白とロゼのいずれにも、白ブドウのシャルドネと、黒ブドウのピノ・ノワール、ピノ・ムニエが使われます。シャルドネもピノ・ノワールもブルゴーニュの主要品種であり、実際シャンパーニュとブルゴーニュは王宮をめぐって長い間ライバル同士だったのです。ブドウは必ず手摘みであることが決められており、かつ高級シャンパーニュは4,000kgのブドウから得られる初搾り果汁2,050Lしか使わない(これをCuveeキュヴェと呼ぶ)ので、普通のワインよりも贅沢なものとなっています。
 シャンパーニュ地方で作られる発泡性ワインのみが、「シャンパーニュ」を名乗ることができます。一昔前までは、他の地方で作られた発泡性ワインも「シャンパーニュ」を名乗っており、例えば日本でも「三ツ矢サイダー」は「三ツ矢シャンペンサイダー」などと名乗っていましたが、現在ではこのように勝手にシャンパーニュを名乗ることは厳密に禁止されています。フランス国内外にも、シャンパーニュに限らず、他に多くの発泡性ワインがあります。これらの中には、シャンパーニュのように瓶内2次発酵を行わず、タンクで2次発酵を行ったり、後から移し替えたりするものもありますが、イタリアのフランチャコルタや、スペインのカバのように、しっかりした瓶内2次発酵を行い、シャンパーニュに負けない本格的な発泡性ワインを作っているものもあり、あなどれません。
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シャンパーニュのバリエーション

 普通、食前酒として飲まれることの多いシャンパーニュですが、今回はそれだけでランチを通してしまおうということで、良い機会ですからなるべく色々なタイプを一気に楽しんでしまおうと、タイプの違うものを用意しました。作り手は、一つのグループは非常に歴史の古い、かつ小規模なメーカー、もう片方は非常にメジャーなメーカーによるもの。そして一方のグループは同じメーカーの白とロゼ、そしてもう一つのグループは同じメーカーの辛口と甘口。どれも同じ様な味ではないかと思われがちなシャンパーニュにも、非常にバリエーション豊かであることを実感して頂こうというのが主旨です。
シャンパーニュには、良く知られているように、白とロゼがあります。ロゼは通常、黒ブドウを潰してしばらく果汁に漬けておき、若干色が付いた段階で分離して作りますが、シャンパーニュの場合は例外的に、白ワインに赤ワインを少量混ぜてロゼを作ることが認められています。
 また、白ワインに辛口と甘口があるように、シャンパーニュにも辛口と甘口がありますが、今では殆どが辛口志向となっているようです。元々北の冷涼な地域で作られたワインは、糖度が低く酸味が強い傾向があるので、ドイツの白などは果汁を加えることによって甘味を付けています。シャンパーニュの場合も、澱抜きをした後目減り分を補うために、「門出のリキュール」と呼ばれる、ワインに砂糖を混ぜたものを加えます。これを一般的に「ドサージュ」と呼んでいます。

 ブルゴーニュやボルドーが、品種やビンテージの特徴を全面に押し出しているのに対し、シャンパーニュはブレンドワインであることが、他のワインとは大きく異っています。ブルゴーニュワインであれば、一つの畑で収穫されたブドウからワインが作られ、畑の名前がそのまま銘柄となりますし、その年に作られたワインと別の年に作られたワインを混ぜたりはしません。しかし、シャンパーニュの場合は、特級品を除いて殆どのものが、様々な畑で作られたワインをブレンドしており、ビンテージ違いのワインも味を合わせるために混ぜてしまいます。その銘柄の味を守るためにブレンダーが腕を振るうという点では、ある意味スコッチのブレンデッドの世界に近いと言えるでしょう。結果として、大量のストックと設備投資を必要とするために、畑名や品種名よりもメーカー名がメインとなります。大手10社が企業グループを形成して、総生産の半分以上のシェアを占めているのも、他のワインでは見られない傾向です。
 もっとも、品種やビンテージを訴求するシャンパーニュも、一つ上のクラスのものとして各メーカーから出されています。白ブドウだけを使用したものはブラン・ド・ブラン、黒ブドウのみのものはブラン・ド・ノワールと呼んでいます。また、通常品が異る年のブレンド物としてNV(ノン・ビンテージ)と表示されるのに対し、優良年のみ単一のビンテージで作られたものは、ビンテージ・シャンパーニュとして特級扱いとなり、価格も高くなります。多くの畑からブドウを買い取る大手メーカーであるNM(ネゴシアン・マニピュラン)に対し、自社畑のみで製品を作る小規模なRM(レコルタン・マニピュラン)が最近注目されるようになりました。
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シャンパーニュ・白とロゼのテイスティング

 まずはシャノワーヌ・フレール社の「シャノワーヌ・プルミエ・クリュ」(白)と、「シャノワーヌ・キュヴェ・ロゼ」(ロゼ)を用意して頂きました。自社畑のブドウのみでシャンバーニュを作る、いわゆるRM(レコルタン・マニピュラン)です。
 シャノワーヌ・フレール社は、シャンパーニュで2番目に古いメゾンです。ルイ15世の時代、1730年に、エペルネでも由緒ある名家の一つであるシャノワーヌ家の、ジャックとジャンの兄弟によって設立されました。(ちなみに最も古いとされているメーカーは、1729年創業のドン・リュイナール社です。)設立と同時にエペルネで初めて地下カーヴの採掘許可を得たとされています。「シャノワーヌ」シリーズの他、19世紀の主要輸出先であったロシアの皇帝(ツァー)に敬意を表して創った「ツァリーヌ」シリーズを製造・販売しています。カタログにも市販の読本にも載っていない希少品です。
 さて、いざグラスに注いでもらうと、フルートグラスの底から非常に細かい泡が浮かんできます。このキメの細かさは、瓶内2次発酵を行うシャンパーニュならではですが、特にこのシャノワーヌはより泡が細かく、かつ長く続くように思われました。白は輝きのある淡い黄金色で、香りはかすかにナッツ香があり、味わってみると酸味は穏やかでそれほど重さを感じないのに非常に長く余韻が続きます。ある意味NV(ノン・ビンテージ)の理想的な姿がここにあるように思われます。

 ロゼの方は、鮮やかな赤い輝きのある明るいルビー色。ロゼ・シャンパーニュはどこか褐色に近い色をしているのですが、このロゼは白と赤のブレンドではなく、果皮抽出で色を付けるいわゆるセニエ法を用いているためか、他のものには見られない鮮やかな色をしていました。まろやかで上品な味わいがあり、ボディも重すぎず軽すぎず、酸味が強くなりがちな通常のシャンパーニュに比べ、バランスの良さを感じました。
 合わせる前菜は「気仙沼牡蛎のシャンパーニュゼリー寄せ」。生牡蛎とシャブリの組み合わせは良く知られていますが、シャンパーニュとの組み合わせも最高のものとされています。シャブリもシャンパーニュも、石灰質土壌の豊富な土地で、フルーティというよりはむしろ強いミネラル感のあるワインが作られ、それが牡蛎や貝類と合う理由となっています。しかも今回は表面をわずかにボイルした牡蛎にシャンパーニュゼリーを合わせることによって、適度な酸味が加わりかつ生臭さは極力押さえ込まれ、抜群の相性となっていました。といいつつ、私は残念ながら生牡蠣が駄目なので(以前は好物だったのですが、一度“大当たり”して以来受けつけなくなってしまいました…)、代わりに大きな帆立貝の入った魚介のサラダを頂きました。
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シャノワーヌの
白とロゼを並べて
みました
キメ細やかな
泡がなんとも…
牡蛎のシャンパーニュゼリー寄せ
シャノワーヌ・
プルミエ・クリュ
シャノワーヌ・
キュヴェ・ロゼ
シャンパーニュの歴史

 大聖堂で有名な、シャンパーニュの中心地ランスは、ここでメロヴィング朝の創始者クローヴィスが戴冠したことで有名で、以降ここでフランス歴代の王の戴冠式が行われることになります。アレマン族(後のドイツ人)との戦いを前にして、クローヴィスはランスの大司教レミを呼び出し、勝ったら改宗してやるが、負けたらお前の首を刎ねると約束、見事勝利をおさめて約束通り改宗し、ワインによる洗礼を受け、これによりそれまでビールとミード(蜂蜜酒)を飲んでいたゲルマン人達はすっかりワイン党になったとか。
 百年戦争の頃、ジャンヌ・ダルクは1429年ランスの大聖堂でシャルル7世の戴冠式を上げることに成功します。当時シャンパーニュはシャルルと敵対するブルゴーニュに組み入れられていましたから、これは大変な難事業でした。しかし、そこまでしてジャンヌがランスでの戴冠にこだわったのは、他ならぬこの地で戴冠することが、フランスの王として君臨するために絶対必要だったからです。実際、英国のヘンリー6世はフランス王としてパリで戴冠したものの、フランス王として君臨することは出来ませんでした。

 なお、当時戴冠式に使われるワインは、今日のように発泡性ではなく赤ワインでした。シャンパーニュはもともと、ブルゴーニュと同様に赤ワインの産地だったのです。ブルボン朝の開祖アンリ4世は、シャンパーニュを愛飲し、これを国内外に広めることになりますが、ルイ14世の時代になって、ブルゴーニュが王室御用達となると、シャンパーニュは何らかの対抗手段を取らざるを得なくなります。そこで登場するのが、発泡性ワインとしてのシャンパーニュであり、ブレンド技術の先駆者であるドン・ペリニヨンです。盲目だった彼は、葡萄を一口含んだだけでその畑を言い当てたと言われています。
 ドン・ペリニヨンは発泡性ワインの発明者として知られていますが、実際に発泡性ワインを作りだしたのは、むしろ英国のロンドンでした。シャンパーニュ地方は非常に寒いため、秋に仕込んだワインが冬の寒さのために発酵を止めてしまい、そのまま樽で英国へ出荷され、瓶詰めされた後に発酵が再開し泡が出るということが当時既に知られていました。実際、ガラス産業が普及し、スペインやポルトガルからコルクが輸入されていて、かつ瓶詰めエールの発泡性も研究されていたイギリスだからこそ、発泡性ワインを楽しむことができたわけで、1600年代前半、フランスにはガラス産業もコルクもなかったのです。1700年代に入り、厳格なルイ14世が亡くなりオルレアン公の摂政時代に入ると泡物のシャンパーニュは見事に宮廷に返り咲くのです。
 18世紀に入り、次々と創業されたシャンパーニュ・メゾンでは、女性の活躍が目立ちます。27才の若さで事業を引き継いだヴーヴ・クリコ・ポンサルダンは、ルミアージュ(瓶内の澱を落とすための動瓶)を効率的に行う台(ピュピートル)を作らせ、またロゼを初めて作ったことでも知られています。1858年にポメリー社を引き継いだマダム・ポメリーも、英国での辛口嗜好に着目して、甘口が主流であった頃に、今日のブリュット(辛口)タイプの先駆者となる「ポメリー・ナチュレ」を発売しシャンパーニュに革命をもたらします。ロゼ・シャンパーニュも辛口シャンパーニュも、実は女性が作りだしたものなのです。もっともブルゴーニュのロマネ・コンティの共同所有者だったマダム・ルロワにしろ、ボルドーのシャトー・マルゴーを立て直したコリンヌ・メンツェロプーロスにしても女性ですから、優れたワインには女性の愛情と柔軟な発想が必要なのかも知れません。ちなみに時代は下りますが、第二次大戦の時、未亡人となってボランジェ社を引き継いだエリザベス・リリー・ボランジェも、ドイツ占領を乗り切り完璧主義による高度な品質の確立に成功します。
 さて、20世紀の前半、シャンパーニュには受難の日々が続きました。元々他国への輸出の比重が高いシャンパーニュは、世界の急激な変化に直接影響を受けやすいのです。ブドウ栽培者の暴動に始まり、第一次大戦で畑の4割が破壊され、ロシア革命と米国の禁酒法、そして経済恐慌により消費は落ち込み、第二次大戦ではドイツに占領され生産・販売を厳しく統制されたのです。
 ドイツ軍の要求は、毎週30万本を徴発するというもので、かなり無茶なものでしたが、軍の目をかすめてうまくやり過ごしたところもあれば、レジスタントを強行し報復を受けたところもあります。シャンパーニュ業界の代表であるヴォギュー伯爵は逮捕され収容所へ入れられました。ドイツがいよいよ撤退することになった時、ヒムラーはドイツのゼクトを守るという名目のため、シャンパーニュの地下貯蔵庫を爆破しようとしますが、間一髪で連合軍がエペルネになだれ込み、最悪の事態は何とか避けられました。連合軍総司令官アイゼンハワーがドイツ降伏のニュースを聞いたのは、シャンパーニュのランスでした。クローヴィスの時代から第二次大戦まで、この都市は劇的に歴史が大きく動く舞台となったのです。この厳しい時代を乗り越えた数々のシャンパーニュの名品は、戦後見事に復活を遂げました。現在、その販売量は年間3億本以上、フランスのブランド品売上高の約2割を占めています。
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シャンパーニュ・辛口と半甘口のテイスティング

 ポメリー社の「ポメリー・ブリュット・ロワイヤル」(辛口)と、「ポメリー・ドライ・エリクシール」(半甘口)を用意して頂きました。自社畑のブドウだけではなく、他の生産者から多くのブドウを買い取ってシャンバーニュを作る、いわゆるNM(ネゴシアン・マニピュラン)です。歴史ある小規模生産者のシャノワーヌに対し、生産量第4位の大手メーカーのポメリーを持ってきて、その違いを味わってみようというわけです。
 東の横綱がエペルネのモエ・エ・シャンドン社なら、西の横綱はランスのポメリー社と言われるほどの大会社です。自社畑は300haでシャンパーニュ・ハウスとしてはトップクラスですが、それでも年間50万函という出荷量の35%しかまかなえていません。貯蔵用の巨大な地下窟はその長さが18kmにも及ぶそうです。1836年にナルシス・グレノか創立し、1856年にルイ・アレクサンドル・ポメリーが参加してポメリー・エ・グレノ社となった2年後、ルイが死亡して当時39才のマダム・ポメリーが経営を引き継ぎ、英国市場にいち早く注目したマダムの手腕によって大きく発展することとなりました。クラシック・シャンパーニュの典型であり、色調・泡立ち・芳香・後口いずれも優れた優等生的存在と言われています。

 辛口のブリュット・ロワイヤルとやや甘口のドライ・エリクシール(Elixirは「霊薬」の意)は共にブドウの使用比率が同じで、黒ブドウ:白ブドウ=2:1となっています。ドサージュ(甘味添加量)はそれぞれ12g/L,25g/Lで、ドライ・エリクシールは倍以上の糖が含まれていることになりますが、実際に飲んでみると後者はそれほど甘さを感じさせません。ただしドライ・エリクシールを飲んでからブリュット・ロワイヤルに戻ってみると、シャープな酸と苦味がより感じられるようになり、なるほど辛口が初めて世に出た時には抵抗感もあっただろうことがしのばれます。
 シャノワーヌとポメリーを比べてみると、キメが細かく豊かさを感じさせるシャノワーヌの方がより好評だったようです。
 メインは鳥肉のソテー・クリームソース。メインまでシャンパーニュで通すことを考慮してのセレクト。クリーム系の味付けであればシャンパーニュでも十分食事に合わせることができます。
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ポメリー・
ブリュット・
ロワイヤル
ポメリー・
ドライ・
エリクシール
鳥肉のソテー・クリームソース
シャンパーニュの製法について

 9月中旬から10月初旬にかけて、全て手摘みで収穫されたブドウは、皮の色がつかないように静かに圧搾されます。得られた果汁は畑ごと、品種ごとに分けられた状態で、何度か澱引きを繰り返しながら、長いものでは約10週間発酵され(第一次発酵)、その年の12月頃にベースワインができます。発酵は通常タンクで行われますが、クリュグやボランジェなど、伝統的な製法を重視する一部のメーカーは木樽による発酵にこだわっています。
 翌年の2月頃、マスター・ブレンダーによってブレンド(アッサンブラージュ)が行われます。優良年のワインはヴァン・ド・レゼルヴ(リザーブ・ワイン)として貯蔵され、そのメーカーの特色を出すためにブレンドに使用されます。この良質なヴァン・ド・レゼルヴをいかに確保できるかが、メーカーにとっても勝負どころとなっているわけです。逆に言えば、いくら当たり年でも必ずその生産量の20%はヴァン・ド・レゼルヴに回さなくてはならないとされています。

 ブレンドされたワインに糖と酵母を加え、瓶詰めして地下カーヴで寝かせ、瓶内2次発酵を行います。この時加えられるのがリキュール・ド・ティラージュLiqueur de Tirageと呼ばれるもので、ティラージュは元来、樽からワインを取り出すことを意味します。発酵によって発生した炭酸ガスは瓶内に閉じこめられ、ワインの中へ溶け込みます。約6〜8週間後、2次発酵が終わり瓶の中には酵母の残滓が澱となって残されます。溜まった澱はすぐには取り除かれず、ノン・ビンテージでも瓶詰めから最低15ヶ月、ビンテージは3年以上そのままの状態で寝かされます。なお、この状態では多くの場合コルクではなく王冠が使用されます。
 瓶の中に残されたままの澱はどうやって取り除くのでしょうか。一定期間が過ぎると、ピュピートルPupitreと呼ばれる穴の開いた台に、ボトルの頭をやや下に向けて差し込み、5〜6週間の間毎日1/8ずつ回転させて、揺さぶることにより瓶の口の方へ澱を集めていきます。これをルミュアージュと呼びます。もっとも現在では、ジャイロパレットGyropaletteと呼ばれる機械によって1週間程度で終わらせてしまうことが多いようです。
 瓶の口部に溜まった澱は、マイナス20℃の塩化カルシウム溶液にボトルを逆さにしてつけ凍らせ、一瞬栓を抜いて外へ飛ばしてしまいます。これをデゴルジュマン(澱抜き)と呼びます。これにより減った中身は、門出のリキュールLiqueur dユExpeditionと呼ばれる原酒と糖を混ぜたものを加えて補います。これをドサージュ(調合・調整の意)と呼びます。加える糖の量によって、辛口(ブリュット:“自然のまま”の意)から極甘口(ドゥー)まで自在に作られますが、ここ20〜30年の辛口志向によって、甘口タイプのシャンパーニュはあまり見られなくなりました。極甘のドゥーは現在日本には輸入されておらず、南米にでも行かないとお目にかかれない代物だそうです。逆に言えば辛口タイプはごまかしがきかないため、各社の特吟ものは大体において辛口となります。大体ブリュットの表示のあるものはそのメーカーでも一番良いワインを使っていると考えて良いでしょう。ただし、近年フランスではロゼが見直されているようで、甘口も案外再評価されるかも知れません。
 デザートは「NYX」定番の「クレープ」、今回はパイナップルを刻んだものを上にのせた、フルーツタイプでした。
 次回は、フランスからところ変わって、イタリアがテーマです。特に有名な北のピエモンテと中部のトスカーナを取り上げ、フランスとはまた違ったワインの楽しみ方を御紹介したいと思っています。
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ポメリーの
泡立ち
デザートのクレープ