『―――信頼―――』 |
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夕飯を食べ終わった花梨は、コーヒーを飲みながら夫と他愛も無い会話を楽しんでいた。その時、ふと昼間に掛かってきた電話を思い出した。 「そう言えばね、今日、うちにも振り込め詐欺の電話が掛かってきたんだよ。」 「振り込め詐欺?」 「うん。すぐに嘘だって気付いたから、騙されなかったよ。」自慢げにそう言いながら、胸をはる。「あまりにも馬鹿馬鹿しい内容だったからね、確認の電話を掛けようとも思わなかったよ。」 |
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「それはよう御座いました。」頼忠は微笑んだ。「どういう内容の電話だったのですか?」 「頼忠さんが電車の中で痴漢をして捕まったって。」 「え?」 「頼忠さんがそんな事をする筈が無いんだもん。」 「私の事、信じて下さったのですね。ありがとう御座います。」 嬉しそうに笑顔を妻に向けたのだが。 「うん。私、毎晩頼忠さんのエネルギーを受け止めているもんね。それも沢山。」 「はい?」 「あれでまだ有り余っていたら、病気だよ。」 顔を顰めて言うが、自分の言葉に真っ赤になってしまう。 『・・・・・・ビョーキ?』 行為の相手が愛しい花梨だから、限度というものを知らずに求め続けてしまうのだ。女なら誰でも良いという、ただの好き者ではないのだが。頼忠と言う男を完全に誤解されている事に、ショックを受けた頼忠であった―――。 |
「ふ〜ん。一体どういう内容だったのかな?」 翡翠にとってこの話はあまり興味は無いが、一応尋ねる。今夜はどうしようかと色々と考えながら。 「翡翠さんが電車の中で痴漢をして捕まったって。」 「へえ?」 「信じられないでしょう?」 「姫君。私の事、信じて頂けて嬉しいよ?」 にっこり微笑んだのだが。 「うん。翡翠さんなら捕まるようなヘマはしないよね?」 「・・・・・・・・・ヘマ。」 ヘマをするとかしないとか、そういう事なのか? 「それに、翡翠さんに触られたら突き出すなんて考えられないもん。」 あ〜んな事やこ〜んな事を想像した花梨、上気してしまった頬を手で抑えた。 「・・・・・・・・・。」ある意味、信頼されていると言えなくも無いが。悦んでくれている事も解ったが。『君は一体何を考えたのだね?』 翡翠という人間をどう感じているのか解って、複雑な心境だった―――。 |
「嘘だとすぐに気付いたのですか?」泉水が心配そうに尋ねてきた。「あの、どういう内容だったのですか?」 「泉水さんが電車の中で痴漢をして捕まったって。」 「え?」 「泉水さんがそんな事をするなんて信じられないもん。」 「私の事を信じて貰えて嬉しいです。」 にっこり微笑んだのだが。 「うん。これが泉水さんが女性と間違われて触られたって言われたら解るんだけど、触ったって言われてもねぇ。」 「はい?」 「どんな女性よりも美人だもんなぁ、泉水さん。」羨ましそうに見つめる。 「・・・・・・・・・・・・。」これも一応信じて貰えたという事にはなるが。『喜んで良いのでしょうか?』 真剣に悩むのだった―――。 |
注意・・・頼忠×花梨、翡翠×花梨、泉水×花梨の3本立て。 どうかお許し下さいませ! 「夫が痴漢をして捕まった」との振り込め詐欺で主婦が騙されたとのニュースが、最近多い。 花梨ちゃんは八葉の誰と結婚しても、「痴漢をして捕まった」では騙されないだろうなと思っただけ。ただそれだけなんです・・・・・・。 翡翠×花梨、泉水×花梨は初めて書いたのに、これとは・・・。ファンの方、御免なさい。 2005/04/27 23:07:31 BY銀竜草 |