注意・・・こちらは16歳未満立ち入り禁止です。
大人的描写が少々ありますので、
16歳以上でもそういう話が苦手な方はお逃げ下さい。













『―――パンドラの箱―――』



真夜中。
花梨は足音を忍ばせ、ゆっくりとある室に近付いた。そして耳を澄ませ、室の中からも周りからも物音一つしない事を確認する。
「うん、大丈夫。起きている人は一人もいない。」
胸に手を置き、ゆっくりと深呼吸。覚悟を決めると、その室の中に滑り込んだ。



燈台の明かりは灯っていないが、輝く月の光が差し込んでいるおかげでぼんやりとだが見える。室の真ん中の褥で一人の男が寝ているのが。
「やっぱりぐっすりと寝ちゃっている。」
枕元に近付くと座った。
「くさ・・・・・・。」
キツいアルコールの匂いに顔を顰めるが、人の気配に敏感なこの男が眼を覚まさない事に苦笑した。
「結局、何も言ってくれなかったね・・・・・・・・・。」
ため息混じりに呟いた。



この京に連れて来られた時に最初に出会った人。龍神の神子と天の青龍として共に戦ううちに信頼関係というものを築き、そして恋心を抱いた。

―――心の中で貴女を想っていれば良かったのですが―――
―――貴女の傍にいる為に生きていたい―――

かなり凄い事を言ってくれたが、花梨の一番欲しい言葉はくれなかった。主と従者の関係は崩せなかった。

そして今日、神泉苑で龍神様を呼んだ。全ての怨霊は消え去り、京の危機は無くなった。それに伴い龍神の神子は必要無くなり、明日明後日には自分の世界に帰る。だから話をしたかったのに。なのに。
「もう、お酒ばっかり飲んでいるんだもん。酔い潰れて当然だよ。」
四条の屋敷で今までの苦労を労う宴会が催された。頼忠は八葉の役目から解放されてホッとしたのだろう、普段は警護をする為と殆ど口にしなかったお酒を断わりもせずに、注がれるままに、次々と飲み干していた。近付ける雰囲気ではなかった。
「ばか。大嫌い。」ほんの小さな声で呟く。「最後の最後まで私の感情を無視するなんて。」


悪口を言いながら睨んでいたが。
「・・・・・・こんなに傍にいるのに起きないなんて、腹が立ってきた。」
二度と逢えない遠くの世界へ帰るのに。こっちは淋しくて哀しくて、そして辛くて苦しくて眠れない夜を過ごしているのに。なのに、ぐぅぐぅ寝ているなんて。
「―――は、やっぱり止めておこう。」
一瞬、叩き起こしてやろうかとも思ったが、頼忠は毎夜花梨の警備をしていたから殆ど寝ていない。久し振りの睡眠を邪魔するのはさすがに気の毒だ。じゃあ、お約束の顔に落書きでも―――て、ペンも墨も無い。残念。だったら―――今は夜が明ける直前、月明かりも無くなり真っ暗。こんなに近くにいる頼忠の顔もほとんど見えない。そして何より、寒い。
「起きたらびっくり玉手箱〜〜〜♪」袿を脱ぐと、温かい頼忠の隣に潜り込んだ。堪えようとはしてもクスクスと笑い声が零れてしまう。「私が添い寝しているんだから、驚くだろうなぁ。」


飛び起きるだろうな。最初に発する言葉は何だろう?泣き真似したら、さすがに従者の仮面は剥がれ落ちるだろうか?―――などなど。どんな反応を示すのか、想像をして楽しんでいたが。


「ぅん・・・・・・。」
頼忠が寝返りを打った。そして。
「へ?え?ちょっと?え?え?え?」
花梨の背中に腕が回され、頼忠の胸に引き寄せられた。
「すぅ・・・・・・・・・。」
静かな寝息のまま、花梨の頭や背中を撫でている。
「・・・・・・・・・。」添い寝はさすがに軽率だったか。でも、好きな男(ひと)の腕の中で温めて貰うのも悪くない気分。ドキドキして心臓に悪いけど、頭や背中を撫でて貰うのって気持ちが良いし・・・・・・などと呑気に考えていたのだが。「ん?」
「すぅ・・・・・・・・・。」
さわさわさわ。頼忠の手が、優しく撫でる、とは違う動きをしている。
「わっ!や、やだ。」
今まで体験した事無い男の行為に怯え、逃げようと身体を捻った。
だが。
「ん・・・・・・・・・。」
後ろから再び引き寄せられる。そして、今度は頼忠の手が花梨の夜着の前合わせから忍び込んできた。
「くっ!」声を押し殺す。男の固い手が小さなふくらみを掴むと、そこから経験した事のない感覚が花梨を襲った。「わっ。ちょっと止めて!」
半べそをかきながら頼忠の手を押さえようとしたが。
「・・・神子殿・・・・・・・・・。」囁くように発せられたその言葉は、丁度花梨の耳元で。「・・・・・・神子、殿・・・・・・・・・。」
「っ!・・・・・・・・・。」
主に対する呼び方でも、頼忠が花梨にしているコトは―――。つい他に思考が飛んで、頼忠の手を押さえていた力が緩んだ。
シュル。
その隙に、花梨の手から逃れた頼忠の手が花梨の腰紐を解いた。
「わっ!」
頼忠の腕の中でもがき逃げようとするが。
「神子・・・殿・・・・・・・・・。」
少女のその動きは、男の征服欲を刺激するだけで・・・・・・。
「あ!・・・や、やっ・・・・・・・・・っ!」
衣を乱され、手や足が絡みつき、唇が這い回るその感触に恐怖心が湧くが。
「・・・神子殿・・・・・・・・・。」
酔っ払って半分以上眠っているような状態では理性など欠片も無く、己の欲望のままに柔らかな甘い肌に溺れていく。
「あ・・・・・・。よ、より・・・ただ・・・・・・さん。」
恐怖心の奥から疼くような新たな感覚が生まれ・・・・・・次第に快楽という言葉の意味を覚えていく花梨、代わりに抵抗という行為を忘れていった――――――。



ズキ。ズキっ!
頭痛で意識が戻り始める。
だが、それと同時に梅香の甘くて優しい香りが鼻をくすぐり、幸せな気分にさせる。
「神子殿の匂い・・・。」腕の中の匂いの元に顔を埋め、全身でその匂いを嗅ぐ。「神子殿・・・・・・・・・。」
最後の戦いが終わってしまった。京の危機は去ってしまった。神子殿が辛い役目から解放されたのは喜ばしい事だが。だが、ご自分の世界に帰ってしまう。今日にも明日にも。永遠の別れ・・・・・・・・・。
「神子、殿・・・・・・。」
少女の瞳が想いを伝えてくれていたが。ずっと前からそれに気付いていたが。だが、どうする事も出来なかった。たった一言伝えたい気持ちはあったのだが、全てを捨てさせる事になるその言葉はあまりにも重く、結局、何も告げぬまま時は過ぎてしまった。最後まで懇願出来なかった。姿を見るのも辛く、酒を浴びるように飲み干した。現実から逃げる事など出来る筈も無いのに。
「神子殿・・・・・・・・・。」
今更どうこう出来る訳でもないが。手遅れだとも解っているが。それでもせめて、この想いだけでも伝えるべきか。それともこのまま、後悔の痛みに苦しみながら生きていくのか。悩みつつ、匂いの元に鼻を擦りつける。と。
トクントクントクン。
規則正しい鼓動と共にゆっくりと上下に動いているのに気付いた。
「え・・・・・・?」
よくよく感じてみれば、すべすべとした感触のそれは温かくて。己は寝相は悪くないのに、夜着は肌蹴て殆ど脱げている。そして夜具もぐちゃぐちゃで、寒さから逃れる為に夜着やら袿やら滅茶苦茶に掛けている。
「夜着?袿?」
嫌な予感と言うか・・・嬉しい想像と言うか・・・・・・・・・。恐る恐る顔を上げ、抱き締めているそれを確認する。と、やっぱり。
「神子・・・殿・・・・・・・・・。」
白い肌を晒して、頼忠の腕の中で眠っている。頼忠が顔を埋めていたそこには、紅い刻印が多数散らばっていて。
「これは・・・私が付けたのか・・・・・・?」
何が何だかさっぱり解らない。いや、想いを寄せる少女の夢を見ていたのは覚えている。毎夜繰り返し見続けている情熱的な行為、己の手で幼げで無垢な蕾を開いていくのを。それは願望が見せた夢だった筈なのだが。
「何故、貴女が此処にいるのですか?」
一つの褥、頼忠の腕の中にいる少女。そして、夢にしては肉体的な満足感に包まれすぎている気もするのだ。
「ま・・・さか・・・・・・?」酔いに任せて寝込み襲ったのかと青冷め、周りを見回した。「ここは・・・神子殿の室ではない。」
置いてある調度品は高価な物だが簡素で、神子の室で見た物とは違う。これは、深酔いしてしまった頼忠の為に用意してくれた室の中にあった物だ。
という事は。
「もしかして・・・・・・貴女が頼忠を夜這いなさったのですか・・・・・・・・・?」


「ん・・・・・・・・・。」
身体を起こした頼忠のせいで、隙間から忍び込んできた冷たい風が花梨の身体を撫でる。その寒さで眼を覚ました。
「あの・・・・・・神子殿―――。」
どのように尋ねれば良いものかと言葉を探しながら話し掛けたのだが。
「っ!」一瞬にして顔色が変わった。「黙って!何も言わないでっ!」喚く。「後ろを向いてっ!!」
「はっ!」
必死の形相でのお願いに、頼忠、慌てて起き上がって後ろを向いた。
「こっちを見ないで。そのままでいて。」
飛び起きると自分が着ていた夜着や袿を掻き集め、取り敢えず着込む。そして逃げようと立ち上がったのだが。
「痛っ!」
昨夜の思いがけない行為のせいで身体のある部分に痛みが生じ、へなへなと座り込んだ。
「痛い?」花梨の言葉で反射的に振り向き、抱き抱える。「何処で御座いますか?何処に痛みがあるのですか?」
ふと花梨の手が押さえている部分に眼が行き、無意識の内に肌蹴た衣の裾から手を差し入れた。
「っ!?」
「ここですか?」優しく撫でる。「大丈夫でしょうか?」
「〜〜〜〜〜〜!」
衝撃に耐えようと顔を顰め、唇を噛み締める。だが。
「違うのですか?」手を更に奥へと進めて擦る。「こちらでしょうか?」
「・・・・・・・・・。」
ぐったり。頼忠の腕の中に深く沈み込んだ。
「神子殿?」驚いて少女の顔を覗けば――――――何とも解り易い表情をしていて。「・・・・・・・・・(ごくり)。」
己の手の位置を自覚し、鼓動が早まる。ちょっと試しに、同じ場所で違う撫で方をしてみる。と。
「あっ!」
ピクンと身体が跳ね、苦痛とは違う意味で顔が歪む。
「・・・・・・・・・。」
まだそれほど時間は経ってはいないのだろう。男を受け入れた直後らしい身体は敏感に、艶やかに反応する。頬が弛んでいく。もしかしたら、というのはただの夢、願望ではなく、現実にあった事だったのだ。この少女の瞳が己に向いているのには気付いていた。だが、ここまで熱く激しいものだとは思ってもいなかった。感激し、震えながら強く抱き締める。そしてその覚悟に応える。――――――唇を重ね、頼忠の想いを贈る。その間、手は花梨の中心を弄り、焦らし、煽る。
「ん・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」表情や声も楽しみながら足で少女の衣を乱していく。と、腰の下辺りに赤い染みが。『・・・血?・・・・・・・・・・・・・・・。・・・神子殿・・・・・・・・・。』
その意味に気付くと、更に愛しさが増した。諦めると言う事を知らず、何事にも一生懸命な少女。その心を頼忠にぶつけてくれた事が嬉しくて。だが、途轍もない勇気と決断が必要な行動を取らせるまで追い込んでしまった事が申し訳無くて。それと同時に、そんな重大な時に夢の中を漂っていた事が悔しくて。後悔してもしきれない。
「よ・・・りた・・・・・・だ、さ・・・・・・ん・・・・・・・・・。」
花梨が焦点のぼやけた瞳で見上げた。
「ご安心下さい。頼忠はずっと貴女のお傍におりますから・・・・・・・。」
乱れた衣を再び脱がせると、そっと褥に横たえる。そして自分も脱ぐと、覆い被さるように身体を重ねた。そして愛しい花梨の「初めての経験」を現実の事として覚えていない悔しさの反動から、時間を掛けてゆっくりじっくり少女の全てを味わうのだった。室の外では神子を探し回っていた女房が急激に変わった二人の関係に驚き、立ち尽くしているとは気付かぬまま――――――。



その後。
「花梨殿。」花梨の行動を勘違いしたままの頼忠、反省し考え抜いた末に、感情を抑える必要は無いとの結論に達した。その結果、情熱的で遠慮の無い瞳で見つめ、欲しがるようになった。「お慕いしております・・・・・・。」
「あ、あのね。だから、えっと・・・・・・。あの・・・その・・・・・・。ちょ、ちょっと、頼忠さん?」そして花梨は、誤解を訂正する隙が無いほどのその豹変振りに、悪戯っ気を起こしてした行動を―――後悔はしていなくても―――ちょっぴり反省し続けているのであった。「うぅぅ・・・・・・。私も・・・好きです・・・・・・・・・。」






注意・・・神泉苑での最後の戦いの日の夜。
      花梨ちゃん、頼忠を夜這いする、の巻。(違〜〜〜う!BY花梨)

花梨ちゃんが頼忠というパンドラの箱を悪戯半分に突付いたら、いきなり腹ペコ狼さんが飛び出てきてペロリと喰べられちゃいました。そして残ったのは・・・・・・花梨ちゃんを手に入れてご機嫌な狼さん。(←何ソレ?)

銀竜草にしてはこれでも頑張ったのです。頑張ったのは確かなのですが、過去創作とそれほど大差ありません。それでも話のメインが心理描写では無くて『行為そのもの』なので高校生未満禁止で。大人には全くつまらない表現で申し訳ないのですが。

2006/01/22 18:08:25 BY銀竜草

で、このサイトは『全年齢OK』のハズなので、これは2006年の3月中旬頃までの期間限定と致します。


年齢制限ありの作品も展示する事になったので、再掲。
他作品との関係で16歳未満禁止と変更になりましたが、ご了承下さいませ。

2006/09/11 0:10:35 BY銀竜草