注意・・・こちらは18歳未満立ち入り禁止です。 大人的描写がありますので、 18歳以上でもそういう話が苦手な方はお逃げ下さい。 |
『―――壁〜ヤキモチの結果〜―――』 |
この数日、頼忠は苛立っていた。 武士団での任務で京を離れたのは五日前。何時もならば、その日の夜には終わる簡単な仕事の筈だった。しかし今回に限って問題ばかり起こり、帰京が延び延びとなってしまった。 ―――愛する妻に逢えない―――。 しかも予定が立たず、文を送る事が出来なかった。当然、向こうからも来ない。 顔を見られないのは、声が聴けないのは、そして、書いた文字さえも見る事の出来ない寂しさは、言葉では言い表せない。 誰かに愚痴を言えるようものでもない事が、一層辛い。 この湿気と気温の高さも苛立ちを募らせる原因の一つ。流れる汗を乱暴に袖で拭った。 やっとの思いで全て片付けて妻が住む屋敷に帰ったのは、すっかり陽が落ちてからだった。 花梨は文机の側にいた。誰かに文を書こうとしていたようで、書き損じの紙が机の周りに散らばっている。書き直ししているうちに時間ばかり過ぎ、ついに眠気に耐えきれず、曲げた自分の腕を枕にして眠ってしまったようだ。 頼忠は夜着に着替えると、傍に寄って妻を見つめた。 少し伸びた柔らかな髪がうなじを隠している。髪の生え際にはうっすら汗が浮かび、夜着にしている薄い単衣が汗で身体に張り付いていた。 この世界に残って欲しいと、貴女の為に生きる事を許して欲しいと懇願したが、その望みが叶えられるとは思っていなかった。それも、このように花梨の傍で夜を過ごせるようになるとは。 未だに夢を見ているような気がする。 しかし婚儀を済ませて通うようになって二ヶ月、花梨に対して不満に思う事も出てきている。 文箱の引っくり返した蓋の中に、美しい文が入ってあった。手に取って開く。 「あいつか・・・・・・・・・。」 頼忠の留守を知った男から、困った事があったら何でも言ってくれ、との花梨を気遣う文だった。花梨曰く、優しい人、友人、からの文。 散らばっているのは、その返事だった。ただのお礼か頼み事があったのかは、この書き損じの文からは判らないが。 花梨は龍神の神子だった。龍神の神子を辞めた今でも、あの頃と同じく誰にでも平等に笑顔を見せ、優しい言葉を掛ける。八葉だった男達を、更に不用心と思えるほどに近付ける。 「んん・・・・・・。」 花梨が身動ぎをしながら顔や首筋に掛かった髪を払い除けると、頼忠が京を出る直前に付けた紅い口付けの痕が晒された。 あどけなさが残る顔。細い身体。女としてはまだ成熟していないが、無垢な乙女の風情で輝いている。穢す事を恐れながらも、触れずにはいられない。 眠りを邪魔する事に罪悪感が湧くが、首筋と肩の境目辺りの消えかかっている紅い痕の上に唇を押し付けた。小さいながらも形の良い胸を手で覆うと、ゆっくりとその柔らかさを楽しむ。 しばらくすると、花梨の身体が強張った。しかし、 「花梨殿、只今戻りました。」 耳元で囁くと、緊張を解き、小さく吐息を漏らした。 「お帰りなさい・・・・・・。」 「花梨・・・。」 もう一度耳元で囁くと、花梨は自分の胸を包んでいる頼忠の手に手を重ね、押し付けた。 思わず笑みが零れる。 初めての夜、あの日花梨はただ震えていた。頼忠との行為が嫌なのかと心配したが、花梨は首を振った。 『どうしたら良いのか、分からないの。』 接吻の経験も無かったようだ。どのように動けば良いのか、何をすれば良いのか。それこそ、呼吸の仕方すら忘れてしまったかのような混乱ぶりだった。 何も考えずに本能に従えば良い。嫌な事は拒絶、して欲しい事は強請る。それははしたない事、ふしだらな事ではないと繰り返し伝えた。頼忠に嫌われる原因にはならないと。 花梨が抱いた不安を取り除くのは困難な事だったが、頼忠を信頼し完全に身を任せて来る少女に愛しさが増した。 今も羞恥心は消えないようだが、控え目ながらも望みを伝えるようになった。 「花梨・・・・・・。」 妻の後ろに座って引き寄せ、背中から腰に掛けて頼忠の胸から下腹部とぴったりくっ付けた。衣の前合わせから手を差し入れると、すっかり身体を預けてきた。 うなじや肩に口付けて吸うと、新たな紅い痕が付いた。同時に、胸の頂きを摘まんだり押しつぶしたりして可愛がると、ツンと起ち上がって存在を強く主張する。頼忠の動きに呼応するかのように、花梨が喘いだ。足が落ち着きをなくし、曲げたり伸ばしたりしている。 頼忠は八葉だった頃、神子に対して浅ましい想像をした事がある。その時の花梨は、清らかで純粋で、無垢だった。 そして実際に知った褥の中での花梨は、想像していたよりもずっと可愛かった。しかし、想像していたとおりに清らかな龍神の神子のままだ。 「頼忠さん・・・・・・、イジワル・・・・・・。」 胸を弄びながらしばらくそうしていると、震えて泣き出した。 「・・・・・・・・・。」 散らばっている書き損じの文を見た。 呼べば何を置いてもすぐに駆け付ける男に返事を書こうとしていた花梨に激しい怒りを感じる。 何時もならば、花梨の望みはすぐに叶える。全て叶えてきた。しかし、今宵は己の我が儘を通す決意をした。 袿を丸め、壁の前に置く。そして花梨をそれに寄り掛かるように座らせた。 「頼忠さん・・・・・・?」 花梨の瞳が不安げに揺れる。 頼忠は花梨の瞳を見据えると、花梨の膝を曲げ立て、押し広げた。衣の裾が乱れ、花梨が息を呑んだ。慌てて直そうとしたが、頼忠は花梨の片足を自分の肩に載せて腰をがっしり掴み固定すると、その奥に顔を突っ込んだ。 「やっ!嫌っ!!」 悲鳴を上げて腰を引く。腕を伸ばし、頼忠の頭を押しどかそうとする。だが、唇がかぶさって舌が動きだすと、花梨の身体が大きく跳ねた。離れさせようとしていた頭を、夢中で押し付けていた。 文机の側の燈台の明かりが二人を照らし、頼忠が何をしているのか、はっきり見える。死にたくなるほど恥ずかしいのに、逃げだす事は頭に浮かばない。 頼忠の舌が深く差し込まれ中で動くと、苦痛とも快感とも分からぬ感覚が一気に押し寄せる。 「あ、ああーーーっ!」 耐えきれずに叫んだ。 ぐったり倒れ込んだ花梨の乱れた夜着を脱がす。そして花梨の片足を頼忠の腕に引っかけた格好で頼忠の膝に乗せた。 花梨は何度肌を重ねても羞恥心が消えない。頼忠の手が触れた事のない場所なんて無い。それなのに、肌を見られるのを恥ずかしがる。こうして明るい場所で見るのは初めての事だ。 ゆっくりと意識が浮上する。自分を抱きかかえている頼忠を見上げた花梨は、頼忠が花梨の全身をじっくりと観察している事に気付いた。 「ちょっ、ヤダ!」 逃げようとするが、がっしりとした頼忠の腕には敵わない。 「ダメです。貴女の全てを見せて下さい。」 子供っぽい体形だから見ちゃダメ、と言う花梨。確かに、胸も尻も小さい。足も細すぎる。しかし、肌は白く滑らかだ。香を焚きしめた衣を纏わなくても良い香りがする。そして―――指を一本、胸の頂きを弾くように触れると、花梨が息を呑んだ。それは硬く尖り、肌が紅く染まる。何か言いたそうな潤んだ瞳で頼忠を見つめた。―――とても感度が良く、可愛い反応をする。 顔、耳、首筋と口付ける。片方の手で胸を揉み、もう片方の手は背中、腰、足と撫でていく。 「ん・・・・・・あぁ・・・・・・・・・はぅっ!」 背中が反り、顎が上がる。身体の中心が疼く。涙が零れ落ちた。 「・・・・・・・・・花梨・・・・・・・・・。」 快楽で顔が歪んでいる。花梨の望みは分かっている。叶えてあげたいと思う以上に、己の身体もそれを望んでいる。 しかし。 八葉が知っている、龍神の神子ではない花梨が見たい。 誰も想像出来ない姿を、頼忠だけに、見せて欲しい。 ―――羞恥心という壁を、壊してやる――― 内股に手を伸ばし、少しずつ上に上げる。と、花梨は身体をよじって頼忠の手に足の付け根を擦りつけて来た。何度も。 そのまま組み敷いてしまいたい感情を抑え、長い指先で襞に沿って撫でた。途端、 「ひゃっ!?」 身体が跳ね、花梨の手が何かを探すように空を彷徨う。指を一本差し入れると、頼忠の身体にしがみ付いた。 しかし、頼忠の指はすぐに出てしまい、襞の方を中心に撫でている。気持ちは良い。とっても。だが、こんなんでは物足りない。愛撫だけでなく、圧倒的な強い刺激が欲しい。少しでも頼忠を感じたくて、顔を頼忠の胸に押し付けた。 しかし、温かい肌ではなく、布の感触が頬に伝わった。 苦しくて唇を噛みしめる。花梨は一糸纏わぬ姿だ。だが、頼忠は夜着を着たまま。 汗で濡れた肌に触れるほど気持ち悪いものは無い。しかし、愛する男(ひと)と愛を交わす時は、薄い布一枚でも心を隔たてているような気がして哀しくなる。 前合わせから手を滑り込ませ、逞しい胸に触れた。そして震える指が肌を探るように動く。 『あぁ、花梨・・・・・・。』 呻きそうになる声を呑み込んだ。既に頼忠の身体は準備が整っていた。花梨を求めて悲鳴を上げている。 自分は何をしているのだろうという疑問が頭を掠める。今までこんなに焦らした事は無い。苦しそうな表情を見るのが辛かったのもあるが、頼忠が愛しい女(ひと)の肌に触れる悦びに耐えられなかっただけだ。花梨は羞恥心を消さないのではなく、消えるほど肉欲に溺れた事が無かった、というのが本当のところ。 それが、頼忠を求める声が聴きたい、ただそれだけの望みでいきなり苦しめている。花梨の身体が頼忠を求めているのは判る。何時もよりもはっきりと。ほんの少し大胆に。 もう、今日はこれで十分ではないだろうか? 急激にではなく、少しずつ慣れさせていけば良いのではないか? その方が、花梨も気付かないうちに大胆になっていくのではないだろうか? そんな事を考えていたら、無防備になった。花梨が偶然頼忠の弱点に爪を立てた瞬間、身体がびくっと震えた。腕が汗で滑り、指が乱暴に花梨の中から抜け落ちた。 しかし頼忠が驚いていて体勢を整える前に。 「もう嫌っ!」 花梨が叫び、花梨の身体を支えている頼忠の腕を振り払った。その勢いのまま突き飛ばし、倒す。 頼忠は花梨に嫌われたかと恐怖で震えあがったが。 「頼忠さんなんか大嫌い!」 そう泣き喚きながら乱暴に頼忠の腰紐を解いて夜着を開く。そして熱く硬くなったモノをぎゅっと握り締めた。 「ぐっ!!」 全身を電流が流れ、心臓がひっくり返った。そのまま達してしまいそうになるのを、全ての神経を集中させて耐える。 そんな頼忠の心中など気にもせずに花梨は握り締めたモノの上に跨り、腰を下ろして飲み込んでいく。花梨自身の体重で最奥まで届くと、やっと得られたその悦びに花梨の身体が仰け反り、二度と逃がさないとばかりに締め付けた。 『あぁ・・・綺麗だ・・・・・・。』 花梨の恍惚とした表情に、頼忠は見惚れていた。 頼忠が欲しくて押し倒し、嬉々として咥え込んでいる。何時もの恥ずかしがり屋で清らかな少女ではない。快楽に溺れ、欲望に忠実な女。頼忠が見たかった花梨だ。 そんな観察している余裕も、花梨が動き出すとどこかに吹っ飛んで行った。 花梨の太腿が頼忠の腰をしっかり挟む。腰を持ち上げ、頼忠のモノが抜けそうになる。と思うと次の瞬間には、根元まで深く飲み込む。再びギリギリまで持ち上げ、また飲み込む。ゆっくりと、だが確実に頼忠の身体を、魂を虜にしていく。 花梨の閉じた眼から、涙が一滴流れ落ちた。 と、花梨の動きがだんだん速くなっていく。眉間に皺がより、顎が上がる。開いた唇から呼吸とも喘ぎとも判らない声が漏れる。髪を振り乱し、絶頂に向かい始めた花梨に遅れないよう、その動きに合わせて頼忠も腰を突き上げる。 何度も激しく繰り返したのち、花梨は全身を硬直させたかと思うと頼忠のモノを痙攣さするかのように締め上げ、全てを奪い取った。 放心状態だった頼忠は、花梨が頼忠ではなく、脇に落ちていた袿の上に倒れ込んだ事で我に返った。 「花梨殿、花梨!」 慌てて起き上がって声を掛けたが、花梨は煩そうに背を向けてそのまま眠りこんでしまった。 望みが叶った悦びも束の間、血の気が引いていく。 ―――もう嫌っ――― ―――頼忠さんなんか大嫌い――― 行為の最中の花梨の声が頭の中で響く。 「花梨、どうか私の話を聴いて―――。」 肩を揺らして起こそうとする。起こして今夜の行動を説明しようとしたが、途中で言葉が止まった。 疲れきって眠っているのに無理矢理起こせば余計に嫌われかもしれないと考えるのは当然の事で。だとすると、頼忠が出来るのは花梨が自分で起きるのをただ待つしかない訳で。 「・・・・・・・・・。ヤキモチを焼いただけと説明して、許して頂けるだろうか・・・・・・・・・?」 眠っている花梨の傍で一晩中、悩み続ける羽目になったのだった――――――。 ※勝真×花梨で愛を綴る十五のお題・13・壁※ |
注意・・・京ED・夏。婚儀から2ヶ月後頃。 『壁』というテーマで何で『羞恥心の壁』という年齢制限が必要な話が思い付くんでしょう? 花梨ちゃんにもっと大胆な行動をさせた方が良かったかなぁ? ―――でも、銀竜草がそういう文章を書けなかったの。残念・・・・・・。 2009/07/31 02:03:03 BY銀竜草 |